黒猫の額:ペットロス日記

息子は18歳7か月で虹の橋を渡りました。大河ドラマが好き。

力を結集すると、できること(被害者ノート)

一昨年の3月から仲間と取り組んできたプロジェクト、「被害者ノート」。今年3月初旬に脱稿、そして手分けしてのゲラチェックを経て、4月末日にようやく校了することができた。準備が整い次第、印刷が始まり、配布することになっている。
 
弱音を吐かないで涼しい顔をしていられたらカッコイイのだが、終盤、メニエール病が再発した中での編集作業はかなりしんどかった。なかなかダイエットに成功しない私が3キロぐらいは軽く痩せたが、その分、今は責任を果たせた安堵感が大きい。まずい薬もせっせと飲んだけれど、作業を終えてホッとしたせいか、めまいも軽くなって一時的に難聴に陥った聴力も戻ってきた。それに伴い、体重もめでたくリバウンド中だが、ああ、良かった。
 
 このプロジェクトは被害者遺族の発案に始まり、犯罪被害後のつらさを知る被害者側と支援者とが「被害者のつらさを少しでも軽減できるような物を作ろう」と知恵を出し合ってきた。そこらへんの、お役所が出す「役所に都合のいいことしか書いていない平均点もの」とは訳が違う、被害者視点を貫いた画期的なものが、私たちの「被害者ノート」だ。
 
だからこそ、みなさんの意見をきちんと形にしなければ・・との緊張感が格別にあったのだろうなあ、と思う。抜け駆けされて似て非なる物が先行して作られ、こちらの企画が潰されては元も子もない。また、関係機関から横槍が入って変に角が矯められたりすることがないように、との思いも強くあった。
 
言葉を守るのは、実はとても難しい。あちらにもこちらにも遠慮して、結局言いたいことを引っ込めると、波風も立たず楽だったりもする。普通はそれでもいいだろうが、被害者と支援者の声をお預かりしている今回は、それはしてはいけないことだと肝に銘じていた。
 
自分で記事を書くのも本を出すのも、出た後のトラブルばかりを想像してしまうところがあるけれども、今回は、上記のようなことで、さらに大きなプレッシャーを感じている。しかしまあ、とにかく悪いところは次の版で改善していってもらえばいいや!もう校了したのだから諦めなければ。
 
愚痴はともかく・・今回のノートは、集団の力が結集されたものだ。以前、被害者のための本を商業出版で出したが、あまりページを増やして高価にもできなかったし、カバーできたジャンルは限られ、不十分なことは分かっていた。
 
しかし、今回、支援団体として助成金を頂戴し無償配布するというプロジェクト形式によって、価格設定を気にすることもなく、また、プロジェクト参加者の多くの意見が寄せられたことで、内容面でかなり目配りができたような気がしている。これが以前のように私1人で取材して書いて、だったら労力も余計にかかるし、内容的にはきっと偏りができただろう。
 
さらに、以前のように被害者のためと銘打って本屋で売ったとしても、広がりに欠けただろう。また、人生最大のピンチにあえいでいる被害者にお金を出して買ってもらうのも、実に心苦しい。それから、出版を歓迎してくれる方たちもいるけれども、「偽善者」だとか「売名行為」だとか「被害者を食い物にする」だとか、個人で出版すると誹謗中傷も漏れなく付いてくるし、届けたい支援者や被害者にまで残念なことに警戒される場合もある。
 
「じゃあ、どうやったら余計な妨害を受けずに被害者に必要な情報を届けられるのか?」と思っていたが、それが、今回のように被害者も支援者も参加している団体が無償配布するとすれば、受け取る側の警戒心も、ぐっと緩むのではないかと思う。このプロジェクトでクリアできるものは大きい。
 
このように、集団なら、個人でできること以上のことができる。ノートの配布が始まるのが怖いけど楽しみだ。
 
蛇足だが、JTBの社員が遠足バスの手配を忘れたミスを隠ぺいするために自殺をほのめかす生徒の手紙をねつ造し、遠足を回避させようとした岐阜県多治見の事件が気になった。社員は手配忘れを前日の昼に気づき、夕方には手紙をねつ造して学校に届けたのだという。
 
本をただせば単なる過失によるトラブルだったのに、故意に偽装工作をしてしまうとは。魔が差したのかもしれないが・・・。その後、学校側は生徒の安全確認に追われたとのことで、偽計業務妨害だったかで警察に被害届を出したという。JTB相手に損害賠償請求もする可能性がある。また、観光庁などもJTBの立ち入り調査に入ったとの報道があった。
 
もし、この社員が自分のミスに気づいた前日昼の時点でトラブルを抱え込まずに上司に報告していたら・・・?この社員はそうは思えなかったのかもしれないが、JTB全支店の力を結集すれば、バスの11台など全国から意地でもかき集められただろう。会社は信用を失うのを恐れ、動いたはずだ。担当の社員は、始末書は書くことになっただろうが、こんな警察沙汰になることもなかった。こうなると、社内的にも重い処分も避けられないのではないか。
 
人間はみんなミスをするものだ。反面、社会では、ミスをどう解決するかで評価されるものだったりもする。そこで思うのは、何かプラスのことを成し遂げる時だけでなく、トラブルになった時こそ、己の限られた力だけでなく人の力を集めた方が文殊の知恵で解決に早く近づけるということだ。
 
だから、このJTB社員も、もっと会社の底力を信頼するべきだったし、変なプライドは捨てて早々に上司や同僚に相談するべきだったよね・・・今頃、それを本人も苦く噛みしめているのかもしれない。