会場アナウンスでは、「41年の人生を全うされた・・・」と故人について案内があった。「全うする」はマニュアルにそうあるのかもしれないが、聞いていて引っかかった。もっともっと全うすべき人生が彼の未来にはあったのではないのか?と、どうしても考えてしまったからだ。
一報を息子のお嫁さんから電話で受けて、私の恩人は「病院に行かないと」と言ったら「お父さん、もう死んでいます」とお嫁さんは答えたのだという。即死だったそうだ。享年41歳、お嫁さんと小学1年生のお子さんが後には残された。むごいことだ。
異国から来て大学で故人と知り合ったというお嫁さんは、「誠実な人」と亡き夫を喪主挨拶で語った。焼香後に短く私が挨拶をした時は、顔をくしゃくしゃにして泣いていた。どんなにか心細いだろうにと思ったが、今後は舅・姑の先生ご夫妻といっしょに息子を育て、生きていくとのことだった。
自分より若い有為な人が亡くなると、それだけでもやるせないものだが・・・長年、恩人は被害者支援に尽力されてきた方だ。その息子さんだけに・・・先日、できたばかりの「被害者ノート」を早々にお送りしたのは、支援者として関係機関にご紹介していただき、活用してほしいからだった。
それを被害者遺族として使っていただくことになろうとは思いもしなかった。他のご遺族からも「先生に被害者ノートを渡してほしい」との要望があり、新たに1冊をご自身用として受付にお預けしてきた。先生はともかく、ご家族は、訳も分からずいきなり渡されてすぐには反発する気持ちも起こるかもしれない。でも、いつか目を向けてくれる日もあるだろう。どうか、ノートが助けになってほしい。
明日は、告別式が行われる。通夜には、会場に入りきらない程の参列者が訪れていた。参列者の焼香の間、読経し続けていた導師は「久しぶりにこんなに長いお経をあげた」と言っていた。会場に入る前にちょっとロビーのソファに座っていたら、あっと言う間にロビーまでいっぱいになり、私はそこに居続けることになったが、さらに入り口付近には入りきらない人たちが立ちっぱなしで重なり、導師のお経に手を合わせていた。導師が帰ってもまだ、焼香の列は続いていた。
明日もまた、多くの人が彼の41年の人生を惜しみ、お見送りすることになるのだろう。
合掌