口中にあった異様な「赤」
息子・クロスケの異変に気付いたのは、窓際のソファに座っていた時だった。7月14日だった。私の膝に座りたくて、いつものようにお尻を振ってぴょーんと飛び乗ってきた可愛い息子とじゃれていたら、チラッと口の中に異様な「赤み」が見えたような気がした。
え?ちょっとちょっとちゃんと見せて…と息子の口を開いたら、右側下の歯茎が赤く2~3センチほども腫れ、その部分の歯が無くなり、代わりに赤いブツブツとした突起が生えていた。ゾゾゾと悪寒が走るような異物感のある突起だった。ちょっと違うけどイソギンチャクを思い出した。
なんだこれ… とにかく写真を押さえようと思い、異変を察知したのか嫌がる息子を家族と二人でつかまえて、写メを撮った。息子が激しく動いてしまってきっちり撮影できなかったが、口中の異様な赤みは、分かる写真になった。
7月15日、10:30にかかりつけ獣医を受診。クロスケは、数年前に「甲状腺機能亢進症」で一気に痩せ衰えてしまい、死ぬところだったのをこちらの病院で助けていただいて以来(その時の担当獣医師は辞めてしまったが)ずっとお世話になっていた。その後もこちらでは「吸収病巣」という、歯が溶けてしまう病気の治療を受け、牙を削り取る手術も受けていた。
その日、クロスケの口の中を診たのは、まず甲状腺を診てくださっていたS医師、そして歯科担当のK医師だった。
K医師は、耳障りな声音と言い回しで、断定はできないが「口腔腫瘍」の疑いがあると言った。
その病院には、定期的に来る専門医がいるのだという。既に右下歯茎に広範囲にできものがあることから、診察の時点で、その専門医の判断によってはその場で切除となるかもしれないという話だった。
クロスケは6月に18歳になったばかりで、立派な老齢猫。もう手術には耐えられないのではないか。受けさせるとしても、腎臓などへのダメージを考えてできるだけ麻酔の回数は少なくしたいし、手術自体が避けられるならその方が…でも、今見えている腫瘍だけでも、手術で取れるだけ取ったほうが良いのかもしれないし…。
恐ろしくて、早く早く取ってもらいたい気持ちでいっぱいになった。K医師の言うもう1つの選択肢が、やんわりと安楽死であることにもショックだった。
ふたつにひとつなら、こんなに毛づやも良くてフワフワ元気いっぱいの猫をいきなり安楽死なんかさせられない。何を言っているんだろう。
頭が痺れて、何が一番いいのかわからない。冷静に考えろ!しっかり!と内心で自分を叱咤激励した。セカンドオピニオンを誰かに聞いてみたい、そうしようと思いつつ、7月20日に専門医の診察を受けることにした。