黒猫の額:ペットロス日記

息子は18歳7か月で虹の橋を渡りました。大河ドラマが好き。

扁平上皮癌になった愛猫を、天にお返しした⑬

風の通り道

 毎年夏になると、エアコンの掃除を依頼する。家をリノベーションした時の業者さんに色々な付帯サービスがある関係で、そのまま頼んでいる。その掃除に、先週晴れた日に来てもらった。

 エアコンの掃除だから、エアコンは止める。普通なら暑い。夏らしい暑さも戻っていたから。

 幸い、窓を開け放してしまうと、うちはすごく風通しが良い。「風が通りますねー」と、業者さんも口にしていた。風のある日だったから、尚更涼しかった。

 その風通しの良い自宅の、最も風が気持ちよく吹く場所は、息子・クロスケに教えてもらった。いつも息子が夏にどーんと寝ころんでいたところだ。

 通路の狭い場所は、風が集約されるのだろう。涼しいのは分かるけど、邪魔だったな!引き戸を閉めたくても閉められなかったし。

 その日の朝、顔を洗って化粧水と乳液を付けたところで「あー、ベタベタして暑い!」と思ったので、そこに立ってみた。そうしたら、風が顔を撫でるのがはっきりわかるくらいに吹いて、乳液もさっぱりと吸収されていった。

 息子が吹く風を好きだったのは、夏に限らない。寒い時期でも、風に顔を当てたい欲求があるらしく、冬に換気のために窓を細く開けていると、そこに出向き、風がぴゅーぴゅーいうのも何のその、座り込んでいることもあった。

 それを「風ぴゅーしてる」と、うちでは呼んでいた。

 もちろん、寒くなればコタツに戻る。うちは毎年、猫の息子のためにコタツを出していた。「風ぴゅー⇔コタツ」が気に入っていたようだった。

 息子の最後の風ぴゅーは、2020年年2月1日のこと。その日は、風ぴゅー後、見守る私を引き連れて自宅内をぐるっと歩き、パトロールもした。私が座ったら、膝にも少しだけぴょんと跳ねて、乗った。

 うれしくてうれしくて。息子の痩せてごつごつした体を撫でながら、もしかしたらこれが膝に乗ってくれる最後なのかもしれないと思い、涙した。

突然、ごはんを食べなくなった

 2/1の時点で予感があったのは、週始めから、息子が自分からは、ごはんを食べなくなってしまったように感じたからだった。

 前回の⑫で猫友さんに来ていただいた1/22後も、息子は旺盛な食欲があった。自分で進んで息子スペースの食事場所に行き、ポタージュ状の流動食を、不自由な舌を使って周りにはね上げながらもよく食べていた。

 ただ、1/26(日)に私が家族に息子の看病を頼んで、午後から長時間外出。そうしたら、午前中はハナマル付きでご飯をよく食べた息子なのに、午後から食欲が落ちてしまったのだった。

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2020/1/26 私の外出前に撮影。息子は熱心に外を見ていた

 こういうことはよくあった。甘えん坊の息子は、世話係の私が外出するとごはんや、ひどい時はトイレも我慢してしまう。いつからこうなってしまったのかはわからないが、「我慢しちゃだめだよ~」とよく息子に言ったこともあったのだった。

 またそれなのかと、この1/26に帰宅した時も思った。ところが、息子は翌1/27になってもごはんを食べないどころか、水も飲まないのだ。

 癌のためにぷっくりと腫れた口元が急に気になったのだろうか? それとも、口内の方で、腫瘍が大きくなって障りになっているのだろうか。もしかしたら、舌が曲がっている関係で口内にたまりやすい食べかすを気にしているのかも・・・理由は分からなかった。

 お通じとおしっこはしていたのが幸いだったが、水も飲まないのでは心配だ。往診を頼むしかないと、以前もお願いした往診専門の獣医さんに、急だったが連絡した。

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ごはんのお皿を覗き込むクロスケ。でも、食べなかった (2020/1/27)
息子に、素人の家族が点滴することに

 すると、他に予約がある獣医さんの指示で、急遽、いつもの動物看護師さんだけが来てくれた。

 やはり脱水している様子なので、ステロイド剤を入れた点滴をすることに。そして、今後のこともあるから、私たち家族が息子に点滴できるように練習しましょう!となった。

 そうでした。飼い主が点滴したほうが、猫は楽なのだと獣医さんに言われていたのだった。確かに、精神的に怖くないかも。何しろ、この獣医さんが部屋に入ってきたとたん、私の膝でお漏らししてしまったこともある息子だ。

 覚悟を決めてトライすることになったものの、手順を注意深く聞いても、すぐに忘れそう・・・まずは息子に点滴する看護師さんの様子を録画することに。その後、タオルを丸め、息子に見立てて練習した。

 聞いた手順を、録画を見ながらリスト⓪~⑧にまとめたが、その手書きのリストを今読むと、所々、よくわからない。とにかく、「無菌エリア」には触れないように、輸液パックから60ccを注射器で吸い出して、その輸液パックを電子レンジで温め、そこにステロイド薬液を注入して・・・という準備があった。

 それをいざ息子に点滴する。肩から背中にかけて余裕のある部分の、皮膚の間に入れるイメージだ。この、親猫が赤ちゃんを咥えるおなじみの部分は、つかむとニャンコ一般はおとなしくなるそうだ。

 ここの皮を、3本の指で持ち上げる。「3指で△テントを作って持ち上げる。真ん中の指で作った面に、垂直に針を刺すイメージ」とメモの④に私は書いたのだが、むむむ・・・今やわからない。

 「刺すときには、小指を使って底辺を押さえ皮膚をピンと伸ばす。刺す面に対しては垂直だが、全体としてみると肩に対しては45度」むむむむむ・・・。

 こんな覚束ない理解で、息子に点滴?しり込みしたいが、やるしかなかった。

 アルコール綿で拭くと、生えている毛が分かれて道ができ、肌が見える。針を刺すのは2回まで。針先がなまってくると、息子も痛いし刺さりにくい。針の数も限られ、息子になるべく痛い思いをさせないよう、失敗して何回も刺すわけにはいかないと思うと緊張した。

 親猫に咥えられたように動かなかった息子も、こちらの緊張を感じ取って固くなっているような気がした。

 この1/27から隔日に4回、息子には点滴した。ステロイド薬液を入れたのはこの日と、3回目の31日だった。