久しぶりに夢で再会
ゆっくり寝たのが久しぶりだったのだが、長時間寝てしまうと、私は大抵明け方に夢を見る。あまりいい内容でもない夢が多く、しかもグロテスクにクリアだったりすることもあって、どちらかというと夢を見たくない方だ。
だが、息子クロスケに会える夢ならば、いくらでも見たい。当然ながら。先日見たのも、起きて心がホカホカするような、楽しい夢だった。
夏の旅行。キャンピングカーの中か、アメリカのダイナーの中にいるかと一瞬思ったようなポップな飾りのある車中で、私は息子を抱き上げている。家族が車を運転していて、息子はそちらに行きたがって大変だ。
いつも、そうだった。ドライブが好きな息子は、後部座席で私と乗るのだが、前の運転席と助手席の間に立ち上がり、ドライバーの家族と肩を並べるように進行方向をしっかり見つめているのが好きらしかった。
でも、今回の夢の中で、結局息子は私と見合う形になり、抱き上げられて膝の上に納まったのだった。
5年以上も前、息子が甲状腺機能亢進症で発熱し始めていた頃だったか、まだそうとは知らない夏の旅行で、長野県上田市の高原に泊まった。ちょうど今頃、8月下旬だったように思う。サイトにはアメリカ製のキャンピングカーがいくつか並べてあって、その車内に泊まった。
暑い自宅からその高原に行き、息子は本当に涼やかで楽そうな表情をして、一人前の人間のように、どっかり座席に座っていたっけ。キラキラ光るガラスの器で、水もよく飲んだ。
その心地良さそうな表情をよく思い出すが、今回の夢に出てきたの車中のつくりも、そんな感じだった。
それにしても、どうして夢の中の私は、亡き息子を抱っこできているという特別な機会を、もっと大事に有難がらないのかな・・・それが不満だ。息子をもっとナデナデしたかったのに、そうすればよかったのに、夢の私は。
哺乳瓶で、ごはん
さて・・・2020年1月27日に食欲が落ちてしまった息子が、点滴を始めた話を前回⑬で書いた。明らかに食が細ってしまったのだが、全然食べてないわけではなかった。
ただし、自力ではない。私が、哺乳瓶で半ば無理に与えようとしてしまったのだった。
ニャンコを「ブリトー巻き」にして薬を与える動画を参考にしたのだと思う。バスタオルを使って息子をくるくると巻き、人間の赤ちゃんを抱っこするように抱く。そこに、流動食を哺乳瓶に入れ、乳首の先は少しカットしてご飯を飲みやすくして、くわえさせた。
当初はシリンジで与えようとしたが、それだと先端が口に迫ってきて「刺さる」感じが怖かったのかもしれないが、息子はイヤイヤしてしまって受け付けなかった。それが、哺乳瓶だと大丈夫だったのだ。
ちゃんと、くわえてチューチューと1回10ccは食べた。前週よりも圧倒的に少なかったけれど・・・。
哺乳瓶で与え始めたのは、1/28の夜からだった。急に食べようとしなくなり水も飲まなかったので、前日から点滴が始まったのだったが、あまりにガクッと食べなくなったのも、逆に点滴をしていたからかもしれない。
自分自身の経験からも、点滴をするとお腹いっぱいの感覚になることがあった。口から食べていないのに、十分な栄養が摂れているわけでもないのにお腹が膨れる感覚になったのだった。
息子は、本当は食べられるのに錯覚で食べようとしていないのじゃないか? それでは困る、食べなくなったらおしまいだと思った。
そう考えて始めた哺乳瓶ごはん。1日に4回、息子は付き合ってくれていたものの、迷惑な話だったのかも・・・と今は思う。
ちゃんと、寿命がわかっていたんじゃないのか。ぴったり1週間前から、飲食をやめてしまうって。
人間でも、尊厳死の意思を示す書類が無いと、死の間際までどんどん点滴を続けられてしまって体がタプタプになってしまう、それで死を迎えるのが本当にいいのかといった話がある。本来、放っておけば人間は飲まず食わずになって、枯れて死んでいくのだという。
自分だったらそうしたいと願っても、今はお医者さんがそうはさせてくれない。死ぬまで生かそうとするのが仕事だから。家族親族など周りも、諦められなくて生かそうとしてしまう。
私がやっていたことは、まさにそれ。息子を静かに見守れば良かったのに。きっとそうだ。おせっかいだった。
そのおせっかいに、息子は付き合ってくれていたんだと思う。
最期まで自力でトイレ
1/31、息子は下顎切除の手術からちょうど半年を迎えた。手術死するかもしれないと思われていた息子が、半年も生きてくれた。最初に猫の扁平上皮癌の予後を調べたことがあったが、すごいことだった。
この日も、8回も自力でトイレに行き、うち2回はお通じもあった。
いつものトイレは遠くて大変だろうからと、窓際の息子スペースにももう1つのトイレを用意したが、やはり息子はいつものトイレまで延々と廊下を歩いていき、そちらを使うことが多かった。
ただ、高さのある縁に上るのが大変そうだったので、数か月前に犬用のトイレを買い、そこにペットシーツを敷いて、猫砂を上からおいて、トイレにした。
息子は少し戸惑ったようだったけれど、すぐ慣れてそちらを使ってくれた。ただ、砂が周囲に撒き散らされるので、3方向に段ボールで壁を作った。
2/1にはフラフラしながらもしっかりパトロールをし、おしっこも7回もトイレでした息子だったが、2/2、帰ってこないと思ったら1度、トイレの中で倒れていた。この日も6回トイレ通いをしていたが、やっぱり、遠いトイレまで起き上がってくるのは大変だったのだろうと思う。
2/3には4回。2月に入ってからはお通じが無かったが、ちゃんと最後まで自力でトイレを使い続け、誇り高い立派な息子だった。