黒猫の額:ペットロス日記

息子は18歳7か月で虹の橋を渡りました。大河ドラマが好き。

「カムカム」憎まれ役のベリー!憎めない

年末年始はスイーツ三昧

 新年が明け、早くも成人の日がらみの3連休だ。昨年末には猫友さんからスイーツをどっさりいただき(差し上げた書籍のお礼だと言うのだけど、まるでクリスマスプレゼントのように盛沢山)、あれこれをほのぼのと嬉しく食べながら年末年始を過ごすことができた。

 段ボール箱で届いたスイーツは、なんでこんなに私の好きな物ばかり・・・と驚くくらいのセレクションで、つまり、私は普段から会話の端々に好みの食べ物を駄々洩れさせているらしい。自分の口が信用ならないけど、とにかくありがとうございます!

 その最後の虎屋の羊羹をさっき食べ終えてしまった。元気をもらったところで、前回書いた「鎌倉殿の13人」も9日には始まってしまうのだし、第二部に突入している朝ドラ「カムカムエヴリバディ」についてちょっと書いておきたい。

さすがの深津絵里

 絶賛を呼んでいる深津絵里の登場。確かに十代の娘に見える初々しさに、彼女がアラフィフだと聞いて改めて驚いた。相手役とみられるオダギリジョーも、実年齢は彼女とあまり変わらないというから、ふたりともすごい。ちゃんと若者の物語として見られる。

 3人のヒロインのうち、二代目の深津絵里だけはオーディションではなくて最初から制作側からのオファーで演じているとか。深津絵里の朝ドラ演技が「すごい」と称讃される訳 | テレビ | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース (toyokeizai.net)

 アラフィフでも若くて透明感があって・・・といった点だけで考えれば石田ゆり子も行けたかもとは思わないでもない。けれど、あの昭和感が出せて、ぎくしゃく影を引きずって生きづらくしている感じを出せて、しっかりヒロインの女優さんが彼女の他にいるかな・・・と考えると、ちょっと思いつかない。さすがの深津絵里だ。

 この「カムカムエヴリバディ」は、ヒロインは3人いると言っても実は主役は2代目なのではないだろうか。2代目の彼女を描くために、前振りで戦時を生きて渡米した母としての初代、そして2代目が母として生きる姿を描くための娘を3代目ヒロインとして登場させる、という仕組みなのではないか。

 となると、ようやく物語の本編が始まったのか? 第一部の終わり方が悲惨で見ていられなかったから、頼みますよ。

 朝ドラで悲惨と言えばの「純と愛」。主演の夏菜が精神を病みそうなくらいだったらしい悲運が次から次へとヒロインに降りかかり、家族も頼りにならず、黒木華が演じていた友達も、友達の皮をかぶった敵であるいわゆるフレネミーだった。上司の吉田羊がかっこよかったけれど。

 脚本家は、東日本大震災の後だったからか(たぶん)、不幸続きでも笑顔ですべて跳ね返すヒロインをイメージしていたように聞いた。感情はどこにあるのか、そんなサイボーグのように無敵な人物像は人間として全く現実離れしている。

 とうとう夏菜は現場で立てこもって「こんなの無理だ」と泣いたらしいし、父親役の武田鉄矢も「あんなに難しい役、仕方ない」と言ってたのを後日テレビで見た。

 その時に相手役だった「愛くん」を演じていたのは、今作では弁護士の卵役で出てきた風間俊介だった。「純と愛」最終回では意識不明というか、全身マヒ状態になっていたような?あれは悲惨な終幕だった。

 風間俊介が出てくるまでもなく、「純と愛」を思い出させ凌ぐような第一部の安子の不幸の連鎖。朝ドラでは厳しすぎた。

宇宙人的なのは「るい」の方

 そうまでして2代目ヒロインに影を背負わせたかったのだろうが・・・やっぱり「るい」は安子に似ている。親子だから、というのではなく、「ちりとてちん」のヒロインB子にも似ている。つまり、脚本家・藤本有紀が思い描く「かわいらしいヒロイン」というのは、こうした、どこか抜けた天然のぶきっちょさんなんだろうか。

 その天然ヒロインが、「なんで?なんで?」と社会でもがく様がドラマになっていくというのもあるだろう。常識にとらわれない天然の人物の方が、実際にも社会で何かを成し遂げていきやすい、まさにヒーロー・ヒロインとして光を放っている場合もあるような気も、私はしている。

 しかし、安子の場合は努力の方向がとんちんかんだと先日書いたのだけれど、その片鱗を娘のるいに見たのが、るいがオダギリジョー演じる「宇宙人」が持ち込んだ大量の洗濯物に本当に「宇宙人」と赤い糸で刺しゅうをしてしまったシーンだった。

 当時は、クリーニング屋さんがそうやって顧客の服に名前を入れて、服の持ち主を判別できるようにしていたそうだ。その頃は名前を聞きそびれていたので、まだ物語の中では「るい」はオダギリジョーが演じる人物の名前が分からなかった。

 それも、ああだこうだと余計な想像を膨らませたりしていて名前などを聞きそびれているのだから(それも2回も)、ちゃんと集中して仕事しよう!と言いたくなった。 

 そして、城田優が「She secretly named him 'an alien'」 みたいなナレーションを入れていたように思ったが、どこが「secretly」なのかと噴き出してしまった。だって、心で思っているレベルでなく誰からも読めるように刺繡をしてしまった訳だから、もう全然こっそりにはなってない。

 それをいたずらでも何でもなく、大真面目にやっちゃう「るい」。すごいな・・・ぶっ飛んでいる。現実に、職場の同僚でいたら真っ青、伝説になりそうだ。空恐ろしい。さすが安子の娘だ。

 当然、クリーニングやアイロンの段階で刺繡に気づかれて、竹村店主夫妻のどちらかに「あのね、るいちゃん。お客様の服に、いたずらなんてしちゃいけないよ」とキッチリお叱りを受けてしかるべき。

 ところが、その段階ではドラマでは何も起こらない。

 竹村夫妻のどちらもが「かわいい、健気」とばかり「るい」のことを思っているらしくて、悪気なく「宇宙人」などと刺繍してしまう、とんでもないことを悪意無くしでかす人間だと評価しないまま話は進む。

 この点は引っかかった。まあ、そこはコメディなんだろう。

 てっきり、るいの後始末を店主の妻の和子さん(濱田マリ)がするのか、怒られた「るい」が刺繍を入れ直す場面があるのかと思ったが、そんなところはない。

 ただ、服を引き渡すときに「宇宙人」の刺繍がお客さんのジョーに見つかって、るいは「記号」だととぼける。そして、彼の「感性」のおかげで単に「るい」の心の声でほっこり笑えるシーンで終わり、るいが自分の手で刺繡を「ジョー」に直すのだった。

 (ふーん・・・(;^ω^) 宇宙人は「るい」だよなあ・・・)と思ったのは私だけだろうか?

 もし、るいが「宇宙人」の刺繍について竹村夫妻に怒られていたとしたら、と考えると・・・るいは(怖え人じゃあ)と相手に思い、(なんで?なんで?こんなにたくさんの枚数、私は頑張って画数の多い「宇宙人」を刺繍したのに)みたいに心の中で受け止めて、ひとりで落ち込んでダンマリが続く人のような気がする。

 だとすると、立派なpassive aggression=PA だろう。注意した側が(言い過ぎたかな)と心苦しく思うような受動的攻撃。明らかに注意をする方は間違っていないのだが・・・ここまでは想像だ。

 もちろん、そうでなければいい。ただ、ジョーの演奏の途中で自分の気持ち優先で派手に出て行っただけでなく、ジョーに対して「あなたのせいで、思い出したくないものを思い出してしまった。余計なことを、忘れたかったのに」と自分の内心でのイベントについて他者を責めてしまえる人ではある。

 そんなの知らんがな、と言いたくなる。

 また、そもそも額の傷の治療を頑なに拒んでおきながら、傷に気づいた周囲の人間に「見てしまって悪いことをした」と思わせるような素振りをすることで自責感をなすりつける、他人を悪者にする癖のあるPAヒロインとしての描かれ方だから、気になる。

 額って・・・誰でも簡単に気づきますよ。そのたびに「見ないで!」といった風に振る舞われたらねえ・・・そんなに見られたくないなら、ハチマキでも巻いておいたらどうだろう。るいの手術への抵抗も、まさにとんちんかんだった安子のようだ。

憎まれ役のベリー登場

 そんなPAヒロインの香り漂う「るい」を悪者にしないために、配されているのは「かわいいかわいい」と無条件でベタかわいがりする竹村夫妻と、正に絵に描いたようなはっきりとした憎まれ役のベリーだ。ベリーはあからさまに憎まれ口を連発していて、おかげで「るい」の危うさが誤魔化されている。

 貧乏人、クリーニング屋の娘、場末の音楽家の娘、田舎者・・・思い出せるだけでもこれだけのレッテルを、ベリーは短時間で総動員して「るい」に貼っていた。焦っている証拠。急にジョーが気に入っているらしい、「ライバル」と思しき女の子が現れたせいで、子どもっぽく分かりやすい素直な攻撃の数々を繰り出している格好だ。

 悪い人ではないし、宇宙人でもないとわかる。ただ、子ども。典型的な憎まれキャラだけれども、私は彼女みたいなのは嫌いにはなれない。ヒロインの横にいて、彼女の思いはたぶん報われないのだなあと思うと、かわいそうになるキャラだ。

 ベリーは「ええとこの人」として育った「るい」に対して、そういう人間にはそれなりの苦労があるんだ、わからないのか?といった説教までしていて、るいは「勉強になります」と返す。

 視聴者は(ベリー、るいの育ちを知らないのはあなたの方だよね)と考える仕掛けだ。後から「るい」の正体を知って、「やられたー!」とベリーが思わされるシーンが用意されているのかな? 世事に通じ勘の良いトミーが、既に「雉真繊維のお嬢さんだ」と正解にたどり着いていたので、ジョーだけでなくベリーに対しても「るい」の正体を明かす役回りも担いそうだ。

 それで、るいに対して一生懸命マウンティングを仕掛けて追い払おうとしていたのに鼻をへし折られた形になるだろうベリーだけれど、単なる悪役では終わらず、ジョーの気持ちを知って「るい」を応援する側にさっぱりと回りそうな予感もする。単純だから。後々は、るいの良い友達になるのではないか?

 ・・・ここまで想像して、深津絵里は好きでもあまり「るい」には感情移入できそうもないので、今後はベリーに注目していこうかと思う。果たして、ベリーは「るい」のPA攻撃の餌食になるのか❗️ そうそう、「ラジオ英語」もドラマの中から消えたままなので、そちらも待ってみたい。

(敬称略)