「カムカム」受賞おめでとう!
昨期のNHK朝ドラ「カムカムエヴリバディ」が、4月のギャラクシー月間賞をもらったそうだ。おめでとうございます!
色々とモンクを連ねつつも最後まで見た私。謎解きで引っ張られて見たような形になったけれど、それでも私のような視聴者でも離さなかったドラマだ。巧みの一言。脚本家ってすごいなと思った。
その「カムカム」でさえ、安子編の惨状が続いて見る気が失せた時期があったので(その時期に「るい編」にバトンタッチした巧みさよ)、今期も我慢して見続ければ沖縄の青空のような晴れ晴れとした心境になれる日が来るのだろうか・・・。
朝からイライラ、見てられない
今期「ちむどんどん」は、ほぼ見たくない状況になっている。離脱したいのだけれど、ニュースと「あさイチ」の間にいちいち他のチャンネルにもできず、ところどころ目に入ってしまっている。
でも、もういい。離脱しようと思う。朝からイライラして見てられない。
離脱理由①:影を落とすどころじゃない、借金とニーニー
主人公・暢子の家の借金問題。それに責任大のニーニー賢秀。5/20の放送では、妹の財布から10円だけ残してごっそりお金を盗んで消えた、救いようのないクズ人間だ。
- 実家に送った60万円は、東京でボクシングジム関係者に借金し直しただけ
- 返済もせず逃走
- 無銭飲食
- その店に、悪びれずにまた来る信じ難い神経
- 妹の財布の金を盗んで逃走
- それを競馬だか競艇だかの賭博ですってしまう
警察沙汰になりそうなものがちらほら。娘を売り飛ばそうとした「おちょやん」の父・テルヲ並みの悪質さか。そろそろ美人な妹たち3人を、借金の形に順に売り飛ばしそうな勢いだ。このまま「闇金ウシジマくん」に話はつながっていくのだろうか。
売り飛ばされるわけではないが、ネーネー良子は借金返済のために金持ち金吾からの求婚を受け入れそうな話が持ち上がっている。家族の苦境を全くニーニーは自分のせいだとは思っていないだろうし、良子が恋を諦めても、勝手にそうしただけでしょと言い放ちそうだ。
こんなニーニーが、一生縁も切れずに死ぬまで兄でいるのは怖い。またテルヲのように、ここぞという時にヒロイン暢子の前に現れて金をせびっていくのだろう。それに翻弄されるヒロインと姉妹。それが見えるようで、身震いする。
離脱理由②:暢子のピンチに流れた明るいBGM
そして、何より嫌なのが、制作側はこれを楽しいものとして描いていることだ。ニーニーのせいで女どもが理不尽に振り回され困るのがそんなに面白いのか。
賢秀が消えた朝にお金まで消えて驚愕する暢子。その時にBGMに流れた曲は、何かハッピーな事柄にでも見舞われたかのような明るいものだった。
なんで明るいテーマ曲?おかしいでしょ。暢子は困っているよね?鶴見から銀座への勤め先への電車賃だって無くなったはず。家族じゃなければ、立派な窃盗被害だ。それを面白がる神経を疑う。
暢子も、ニーニーがそして母もそうだったように、また誰かに平気でお金を借りるのだろう。別に金銭を保管してあったとかじゃなければ、少なくとも借りないと出勤できないはず。
「借金は、そんなに軽いものじゃないよ。貸してくれた人だって大変なんだよ。人のお金を当てにしちゃいけないよ」と、誰かドラマの中で暢子に懇々と諭して、ちゃんと彼女が「うちの実家の考え方はおかしかった」と理解させてほしい。
離脱理由③:酔客にからかわれる女は面白いか
前述のBGMは、鶴見に来たばかりだった暢子が、大荷物を両手に酔客に絡まれて逃げようとした時に、反対側に行ったらまた別の男に絡まれそうになったのでまた戻り、元の酔客につかまりそうになって・・・の右往左往する場面で、追い詰められて泣きそうになった彼女のバックに流れた曲と同じものだろうか?
違うものだったかもしれないけれど、鶴見で絡まれた時も、泣き顔の暢子を尻目に明るめな曲が元気に流れた。たぶんテーマ曲。
見ていたこちらは呆気にとられた。上京した人への蔑視も感じられたし。そして、このドラマを作っている人たちは、酔客にからかわれている女の子を見て、助ける方に回るのではなく、面白いとか楽しいとかの感情を持てる人たちなんだと思ったら、嫌悪感が込み上げた。
絡まれた側は本当に怖いし、追いかけられたことには相当後になっても怒りを感じるものだ。PTSDになる人だっているだろう。それだけされる側にとっては重い出来事なのに、キャーキャー言って逃げるのを「楽しんでいる」と誤解しているのか。
波打ち際でキャーキャー言ってパシャパシャ水を浴びせあってはしゃぐ場合とか、子どもの頃の鬼ごっこ遊びと同じではないのだ。体力差が厳然としてある見知らぬ男に追いかけられたら何をされるかわからず、真剣に怖いのだ。これだけセクハラや性暴力が問題視されているのに、そんな場面を描く意味が分からない。
「当時はセクハラなんか当たり前だった」というのを描きたかったのか?そんな問題意識など、微塵も感じられなかったけど。
②も③も、主人公の暢子が哀れだ。暢子が兄から搾取され、町で酔客にからかわれて怖い思いをする場面では、視聴者が笑う余地などない。それをただ面白がって見る立ち位置でドラマを作っているのなら、今どきその感性がおかしい。何でそんなものが2022年の朝ドラで許されるのか。1990年代か。
人が転んだら、助け起こさずに指をさして笑う人たちがドラマを作っていそうだ。今後もヒロインいじめが続くのか。それを元気に乗り越えていくヒロイン?「純と愛」の失敗は知っているのかな。
離脱理由④:入浴シーン、要りますか?
「なんでそんなものが朝ドラで」という点では、暢子の姉妹の入浴シーンをわざわざ入れているところもそうだ。ご丁寧に、妹と姉と、最近だけで2回もお風呂シーンがあった。
会話の内容は、そんなに入浴に必然性のあるものとも思えなかった。台所に並んで立ちながら話すのでも、居間で話をするのでも良かったのでは。なぜいちいち、若い娘たちに入浴させ、湯船に入っている姿を映すのだろう。
ドラえもんのしずかちゃんの入浴シーンを思い出す。昔は「お楽しみ」感覚で入っていたのが後に叩かれるようになって久しい。そんなことも知らないのだろうか?まだ制作現場にかつての「水戸黄門」の由美かおるの入浴シーンを忘れられない人たちがいて、お風呂シーンをあえて入れたかったのだろうか。
英字新聞の制作現場で、「週末だから」と気が緩んだデスクが、海外配信の水着の美女の写真を何の脈絡もなくページにでかでかと使おうとしたことがあった。90年代末の話だ。
「週末ぐらい、堅苦しくなくったっていいじゃないか」と意に介さず進めようとして、何人かスタッフがその場で抗議して掲載されなかったが、「なんでだよ」とデスクは最後までむくれて文句を言っていた。かつてのデスクのような人たちが「ちむどんどん」を作っているのだろうか。
離脱理由⑤:そもそも、大切な倫理観をスルー
クズのニーニーがそこら中に居て、母親に甘やかされて家族を振り回すことが「沖縄あるある」だと聞いて心底びっくりしたことは前にも書いた。そんな風に沖縄県民を貶めるような描き方をして良いの?と憤りさえ感じた。
そんなニーニーを育てた母・優子さんは頑張っているようで、結局は叔父さんのお金を当然のように当てにして生きている。「暢子を東京に行かせてやりたいんです」などと、いつも叔父さん側の痛みを全く考えずに懇願するばかり。
みんなにいい顔をしているようで、他人の痛みには鈍感になって現実を見ずに暮らしていくのが生活の知恵になっているのか。それじゃあ現実をひっかぶる人たちが気の毒だろう。
見ないようにしても、主人公一家のせいで、確実に迷惑を被っている人たちはいる。「他人の迷惑はどうでもいい」と言っているようなドラマは、基本的な倫理観も感じられず、不快だ。
とりあえず「女のクセに!」とかなり非難を浴びるはずの言葉を使って暢子を叱った叔父さんは、悪役のはずが、ジェンダー観を除けばこれまで一番まともに見えている。おかしいのは主人公一家の感覚だ。
いくら頑張っている豆腐屋のニーニー智のケースを見せられても、主人公一家はインパクトが違う。本当に、沖縄県民に対する見方が悪い方向に変わってしまいそうだ。
この印象は、ドラマの結末に行くにつれて払拭されていくものなのか。楽しんで見ていく自信が失せたので、一旦見るのを止めておく。