黒猫の額:ペットロス日記

息子は18歳7か月で虹の橋を渡りました

「鎌倉殿の13人」長いプロローグが終わった

弟を活かせる兄であれば、歴史は変わったか

 まるでここまで主役のように物語を引っ張ってきた大泉洋演じる源頼朝が、先週25回「鎌倉殿の13人」の最後で意識を失って落馬した。「佐殿!」と長きにわたって従者として仕えてきた安達藤九郎盛長が、古い呼び名で叫ぶのが涙を誘った。直前の頼朝の最後の言葉も、「藤九郎」だった。

 アサシン善児が、馬を驚かせたり足を取るようなことをして頼朝をワザと落馬させるようなことは・・・無かった。義経の亡霊を見ることも無かった。誰の指金でもなく、淡々と、死に近づいていく頼朝の様子が描かれた。

 前週24回で描かれた範頼の殺害から数年で頼朝は斃れるのだから、皮肉なものだ。

 範頼は、頼朝が考えたような人間ではなく、「真田丸」で三谷幸喜が描いた真田信繁や真田信伊のように、兄を真面目に支えるタイプだったのではないだろうか(それぞれの兄は信之、昌幸)。範頼は慎重に振る舞い、兄を立ててもいたのに。罠にはまったかのように、担がれてしまったところを炙り出されてしまった。

 もし頼朝の死後にも範頼が生きていたら、彼の頼家らへのサポートが期待でき、こんなにも早く頼朝の血統が断絶することも無かったのでは・・・と、詮無いことを考えてしまう。北条家が実権を握っていくことになる鎌倉幕府も、頼朝の望みの通り子孫が継げたかもしれない。返す返すも残念だ。

 ちょうど日曜朝に佐久間良子主演の「おんな太閤記」をBSで放送しているので、秀吉の弟・小一郎秀長のことも併せて頭に浮かぶ。中村雅俊が演じている。

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 秀長が死んでしまったことで晩年の秀吉の暴走を止める人がいなくなり、豊臣政権は短命に終わったと私は思うのだけれども、優秀な弟が存在すると・・・存在するというか、兄がそんな弟を活用できるといいんだろうなあ、武田信玄(弟はオリジナル信繁)や、真田信之みたいに。

 川中島合戦で討ち死にした武田典厩信繁は、昔からファンだった。真田信繁の父・昌幸が典厩信繁にあやかって我が子に命名したのが真田信繁と聞いた(が、彼は幸村として有名になってしまった)。大坂の陣の後、真田信繁を大っぴらに弔えない兄の信之が、典厩信繁が葬られている川中島の典厩寺で、やはり弟・信繁を悼んだと聞く。いつか、ふたりの信繁ゆかりの典厩寺に行きたいものだ。

惜別、源頼朝を好演の大泉洋

 そうだった、その兄・信之を「真田丸」で演じていたのが今回の鎌倉殿・大泉洋で・・・大いに見直したのだった。これまた大ファンの真田信之が全部大泉洋によってギャグにされてしまうのかと戦々恐々としていたのだけれど、本当に杞憂だった。

 犬伏の別れのシーン、自分だけ徳川に付くけれど真田を守るために父と弟は豊臣側に付くんだと説得するシーンは、有名な話だけにどうなるかと心配していたけれど、まっすぐ奇をてらわない感動の演技だった。

 徳川に「信幸」から父の名前にある「幸」を除いて「信之」と改名させられた際、名前の読み仮名は従前通りを死守したと家臣に説明する時の「儂の意地じゃ」というセリフも心に残っている。大した役者さんだったのだ、大泉洋は。

 もちろん「黙れ小童!」のお約束の笑えるシーンも顔芸たっぷりに卒なく演じていたのだけれど。真面目な人は、その真面目さの中におかしみもある。それがうまく面白く出ていた。

 当時、体調の様子を見ながらだったけれど、わざわざ長野県上田市まで遠征して大河ドラマ館を見てきた。その時に抽選で当たり、古い映画館(?劇場かな)での大泉洋のトークショーで大いに笑わせてもらった。(こんなに素では面白い人が、あの真面目な信之を演じるんだからねえ)と、少し納得できない気持ちはありつつも。

 全国から駆け付けたファンの人たちが大勢いて、たまたま仲良くなった人が「洋ちゃんのおっかけ」で、お仲間もいて。それなのに私以外は皆さん抽選に外れてしまって。信之は好きだけど大泉洋のファンでもない私が当たって申し訳なかった。

 その大泉洋が、今回もまさに絶妙なさじ加減で鎌倉殿・頼朝を演じてくれた。現在、彼以外に誰が演じることができただろうか?ちょっと想像ができない。こんなにも軽妙で、笑わせながらも威厳とサイコっ気のある頼朝なんて。・・・唐沢寿明だったらできたかな?顔が良すぎるか。将来は、菅田将暉ができそうだ。

 そうそう、「おんな太閤記」で秀吉を演じているのが西田敏行。彼の秀吉は、温かく面白いのに怖い。西田敏行も、「鎌倉殿の13人」では日本一の大天狗・後白河法皇を演じたけれど、今は面白さが勝ってしまって怖さがない。昔の山本勘助や益満休之助は鋭く怖かった。もう少し若かったら、文句なく「鎌倉殿の13人」の頼朝もできただろう。

 大泉洋に戻るけれど、彼は回を重ねるごとに頼朝の肖像画にも段々と似てきていた。役者さんってすごい。

天のお鈴、満を持しての主役登場を告げたか

 そのドラマ前半の功労者・大泉洋の頼朝を丁寧に見送るように、第25回「鎌倉殿」は頼朝が倒れるまでの1日を、正夢というか悪夢にうなされている時点からゆったりと頼朝中心に描いたものだった。

 頼朝は、いつもの調子ではない。全成にしつこく禍を避ける方法を問いただしたり、方違えに行った先で、義仲討伐の件を巴御前に泣きながら謝ったり。病に倒れる兆候も見られた。

 比企尼の視線にたじろいで(尼は寝ていただけだったが)席を立った時、頼朝は足がすくんだのか痺れたのか、よろけていた。北条の法要で餅をのどに詰まらせたのも、嚥下障害が出てきていたのだろうか。

 最終的に、寒い中を馬で帰る途上で、馬を引く藤九郎相手に喋っていたはずがろれつが回らなくなり、手のしびれやめまいを感じたのか、頼朝は落馬した。

 「飲水の病」糖尿病を患っているところに、年末の木立の寒さの中で脳梗塞を起こした、という設定だったのだろうか・・・義時に「のどが渇いた」と言い、水を持ってこさせていたし。症状が亡父に似ていた。

 SNSでは、義時が水筒に毒を仕込んで毒殺した!と主張する人たちも見たけれど、いやいや、皆さん、ミステリーの見すぎでしょう。そんな謎解きドラマじゃないんだから。頼朝が今死んでも、義時には得は無い。

 そして、落馬の時に不吉な鳥の声が2度聞こえた後、9回も(数えた)お鈴が鳴り響いた点についても色々とご意見を見た。

 新聞で見た脚本家三谷さんのインタビュー記事では、三谷さんが昔「草燃える」を見た時に、頼朝の落馬シーンで考えたのが他の人たちはその時何をしていたのかな、ということだったそうで、それで「鎌倉殿」では他の縁のある人たちの日常の様子を描くシーンがそれぞれ差し込まれた、ということだったのだけれど・・・お鈴については特に書かれていなかった。

 私には、天からのお告げの音に聞こえた。頼朝の退場によって長い長いプロローグが終わり、さあいよいよ「鎌倉殿の13人」の本番が始まりますよ、主役登場ですよ、プレーヤーの皆さん用意は良いですか?というような。ホテルのロビーでアテンションの鈴が人探しのスタッフによって鳴らされるように、本番の幕が上がる報せが天からあったような気がした。

 時政パパではなく、妻のりく(牧の方)がお鈴の音を聞いていたのが興味深かった。「臆病なこと」「意気地なしが2人、小さな盃で」と今回も挑発するようなセリフを言っていたが、事あるごとに上昇志向の強さを見せてきたりく。やはり、時政パパは彼女に引きずられて今後様々な事件を引き起こしていく描き方になるのだろうか。

 パパも、「比企の奴、うまくやりやがったな」と、日頃の鍔迫り合いを意識するセリフに続いて、蒲殿の件で比企が絡んでいると噂を流したのは自分だと、息子たちに白状していた。察するに、前回の曽我兄弟にうまく利用されてしまった結果、情け深いばかりじゃないパパに変節したのかもしれない。

 義時には聞こえなかったようだったお鈴の音。義時は、妹のお墓に祈りを捧げていたところだったのだろうか。それとも、亡妻の八重さんの・・・違うか。とにかく、ここから満を持して主役登場だ。