黒猫の額:ペットロス日記

息子は18歳7か月で虹の橋を渡りました

【鎌倉殿の13人】畠山重保が採るべき「正解」は何だったのか

中川大志の静かな圧が凄い

 9/11に放送されたNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の35回「苦い盃」。てっきり畠山滅亡回かと思い、前回ブログでは先走ってしまった。苦い盃=心ならずも畠山を討ち取った後の義時の苦い祝杯か?と予想してのことだった。

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 考えてみれば、確かにパッパッと片付けるなんてもったいないことを制作側がするはずがない。たっぷり見せるよね。畠山重忠を好演する中川大志の退場があまりに勿体なくて、こちらも身構えすぎた。

 次36回の「武士の鑑」はタイトルからそのものズバリでため息しかないが、前回の先走りを反省して予告についてはあまり触れない方が良さそうだ。

 今回のラストシーン。戦支度が整い鎧が背後に並ぶ中、畠山重忠が北条義時と酒を酌み交わしながら「あなたはわかっている」とジワジワと義時を心理的に追い詰めていく感じ。中の人は義時の中の人(小栗旬)よりもかなり若いのに、対峙しても全然負けず、静かな圧が凄かった。

 「真田丸」で、秀頼が「徳川が攻めてくる」とアップで言うシーンがあったが、あれをなぜか思い出した。あの時もカミソリのようなたった一言で悪い予感を引き出されてゾクッとしたが、成長した(といっても24歳)中川大志の畠山重忠は、戦の前でも穏やかで重みがあった。

 義兄弟であり、信頼する友人でもある畠山重忠討伐に追い込まれたことで、義時は重大な決断をするんだね・・・等とついつい先を考えてしまうけれど、この喪失が将来主人公に与えるインパクトの大きさを感じられる、ふたりの良いシーンだった。

 ツイッターで「中川大志を大河ドラマの主役に」という声を見たが、当然NHKもその心づもりで育てているのではないか。共演者よりもひときわ若い彼を畠山重忠役で使ったのも、再来年の大河「光る君へ」のメインキャストで使うつもりだからではないのか?

 この畠山重忠フィーバーを受けて、来月ぐらいには正式発表があることを勝手に期待している。あ、とりあえず来年の「大奥」でもいいよ(何様)。

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畠山滅亡への幕が開いてしまった

 さて、今回、畠山重忠の嫡男・重保が鎌倉に戻り、北条政範の京での急死について平賀朝雅の怪しげな動きを義時らに報告した。重保が見たのは「では、これを汁に溶かせば良いのだな。味で悟られてしまわないか」「味はございません」という庭での平賀と誰かのやり取り。「あれは決して味付けの話ではありませんでした」と重保は言った。

 ところが、重保はかえって平賀の罪を擦り付けられるに至る。

 平賀の立ち回りは完璧だ。重保に疑われた場面で「人に話すとご自分の正気を疑われますぞ」と怯ませておいて、鎌倉では「りく」に政範の死は重保のせいだと断言。その時に「畠山一門は武蔵の国府を巡り北条と揉めているのをご存知ですか?北条に恨みを持っておりまする」と脚色するのも忘れない。

 そして「策略にはまってはいけません。何を言ってきても信じてはいけませんよ」とご丁寧に「りく」に念押しして京に逃げた。これで、ひとり息子の死で判断力を失っている傷心の「りく」は一丁上がり。怒りに燃えて時政パパに畠山を討つように強硬に言い募ることになった。

 ここら辺の心理劇がさすがだ。心がズタズタの「りく」には、亡き愛息を皿に例えるなど配慮のない失敗をする時政を、愛すべき夫と受け止める寛容さなど消え失せている(最初から無かったかもしれないが)。全然「もう大丈夫」な訳がなく、簡単に怒りを掻き立てられる状態だ。そこに平賀がうまく付け込んだ。

 ホントに、詐欺師並みにうまい。自分がやったことをそっくり他人がやったことにして、そして他人が言ったことを自分が言ったことにして罪を逃れるような「置き換え」は、現実にも見る悪人の手口だ。平賀にしたら都合の悪い目撃者を消し、同時に自分の罪もなかったことにできて2度おいしい。

 他方で義時も時政パパを説得。平賀の動機は「政範殿を亡き者にして次の執権に」なることだと的を射てパパの理解を得ることに一時は成功した。それで時政パパも「りく、やっぱりワシら無理のし過ぎじゃねえかな」と妻に告げるに至ったが、りくの全身全霊を懸けた叫びが時政パパの頭から全てを吹き飛ばしたようだった。嗚呼。

 りくは「政範だけでは済みませんよ。次は私かもしれませんよ。そういうところまで来ているのです!」そして、りくに言いなりの時政パパは、勝手に鎌倉殿の花押入り畠山討伐の下文を拵えてしまった。

 次回、一度鎌倉殿が下文を発してしまったら、その重みを守るために畠山討伐は止められないと義時は判断するのか。畠山が気の毒すぎる。ただ、息子が犯罪の打ち合わせ現場を見てしまっただけなのに。

 ここまでの畳みかけの見事なこと。これでは畠山一族は滅びるしかない。そしてパパ・・・政子にしらばっくれた「りく」の態度を見ると、りくは完全にパパから自分を切り離して自分だけを安全地帯に置くことにしたらしい。切り捨てられたパパ、哀れだ。きっとそれで、泰時が御成敗式目に「妻も同罪」の項目を設けることにするんだろうな、と想像する。

どうすれば良かった、畠山重保

 史実は変えられるものではないし、これはドラマであって三谷幸喜によって上手に練られたフィクションだとは重々承知だけれど、このドラマの影響で、事件の目撃者が萎縮して証言をためらっても困る(そんなことないか)。罪を擦り付けられないために、重保はどう動けば良かったのだろうか。

  1. 鎌倉から一緒に上京していた御家人仲間に相談し、協力を仰ぐ
  2. 仲間と共に、できれば隠密裏に政範死亡前夜に平賀朝雅とやりとりしていた「誰か」の出入り先、正体を突き止めておく
  3. 京から父・重忠に手紙を書いて相談。先に北条家に根回しをしておいてもらう
  4. 平賀朝雅には、京では直接詰問しない(ここで警戒させ、工作を許してしまったのが致命的)。鎌倉に到着してから、義時や大江広元等に問い質してもらう

ーーこんなところか。やはり、証拠集めに徹してシッポをしっかり掴み、鎌倉と連絡が取れるまでは徹底して隠密行動が必要だったのではないだろうか。

 もし、どうしても京で平賀を詰問するなら、ひとりでなく誰か仲間と共に、そして事前に2の「誰か」の口を割らせることは必要だったのではないか。しかし、それも若者の判断だけでは危険。やはり、鎌倉の了解を得て、その指示のもとやるべきだ。

 いずれにしろ、目撃者である重保が、ひとりで動くのは危険だった。

実朝は、LGBTQ的描かれ方なのか

 さてさて、35回では第3代鎌倉殿の実朝少年に京都から上皇のいとこ(ドラマでは千世)がお嫁入した。雅やかな美少女。ふたりは数え年で13歳と12歳のカップルだったようだ。若いと言うよりも幼い。

 「りく」と坊門家は先祖を同じくし、千世の兄は、時政と「りく」の娘が嫁いでいた坊門忠清だというから、事前に情報収集したり兄嫁からの心理的サポートがあっての鎌倉入りだったかもしれないけれど、それでもアズマエビスの地・鎌倉に下ってくるのは、まだ小学生の年齢の京育ちの姫には勇気が要ったことだろう。

 そんな心細いところに、夫となる実朝少年が契りの盃(当時も三々九度だったのか?)をなかなか口にしないだなんて・・・気の毒だ。結局、実朝は乳母の実衣に「召し上がって良いのですよ」と促されて飲み干したけれど、歓迎されていないと感じ取ってザワザワするだろう。

 実朝は側室も持たず、千世とは仲が良かったと言われるが、子はできなかったとか(西八条禅尼 - Wikipedia)。まあ、そういう夫婦もいる。だから「側室も持たない実朝はLGBTQ案件か」と直ちに勘繰るのもどうかと思うが、ドラマではそうかもしれないねーという描写が盛り込まれていた。世の中の流れを酌んでの設定なのかもしれない。

 千世との婚姻に関して、善信(三善康信)が「あのように気高いご様子の方は見たことがない」と千世の美しさを褒めて「気もそぞろになられるのも仕方のないこと」と言った際に、実朝の視線の先には泰時がいた。

 「お前の妻は初と言ったな」と初のことを尋ね(実朝が泰時の妻について聞くのは2回目)、「気が強いおなごで叱られてばかりです」と答える泰時に「不思議だな。文句を言っているのにのろけにしか聞こえない」と言い、泰時を連れて和田義盛邸に気晴らしに出かけるなんてね・・・泰時へ思いがあるように見えなくもない。

 そして、和田義盛が連れて行った歩き巫女に「妻を娶った」「私の思いとは関わりないところで全てが決まった」と心境を吐露。なるほど、と見ている方は勝手に思った。もちろん、今の小中学生の年齢で結婚なんて考えもしない年頃だから、相手が男女関係なく、事の成り行きにとまどっていただけ、という可能性も十分ある。

 歩き巫女も、目の前にいる相談者が誰であるかを察して「これだけは言っておく」と、こう伝えた。

「お前の悩みは、どんなものであってもお前ひとりの悩みではない。遥か昔から同じことで悩んできた者がいることを忘れるな。この先も、お前と同じことで悩む者がいることを忘れるな。悩みとはそういうものじゃ。お前ひとりではないんだ、決して」

 涙を流す実朝。人知れず抱えた悩みは、やはり泰時への・・・?

初と泰時の離縁の理由は、もしかしてこれか

 以前のブログで、泰時が初と離縁するのが謎だと書いた。この35回まで見ても、前回の初による泰時へのビンタを引きずらず、若い夫婦の間は良好だ(心配損だった)。

 泰時は「あー、もうなんで父上はあんなおなごに」と、父親の後妻「のえ」が裏表の激しい人物であることを案じて、初に相談。義村の娘らしい答え「関わらなければいいのでは」を返した初。今のところ、ふたりには離縁する理由が見当たらない。

 となると・・・もしかしたら、実朝から自分への思いに気づいた泰時が、実朝に遠慮して初に別れてほしいと言い出すのではないだろうか?

 だとすると、実朝の思いに泰時が応える仲になるのか否かは別にして、鎌倉殿の嫉妬の対象になっているような初を守る意味で、別れは正当化される。「処世術」の先生である義村のことだ、事情は三浦側にも問題なく理解されるだろう。

 そうすると、初が三浦に帰っても北条との仲が良好だったことの説明が付く。

 「平清盛」で、三浦義村役の山本耕史は藤原悪左府頼長(藤原頼長 - Wikipedia)を演じた。慈円の叔父だ。頼長の男色は日記「台記」に残され知られているが、「平清盛」では、彼が悪役らしい描かれ方の中での男色描写だったような印象がある。

 今作「鎌倉殿の13人」では、LGBTQについて時代に合わせ修正した大河ドラマなりの描き方が改めて示されるのかもしれない。それも面白い。

 さて、話はどう転がっていくのだろう。

いきなりの大竹しのぶが「歩き巫女」

 先ほどの「歩き巫女」。オープニングで名前を見てびっくりしたが、大竹しのぶだった。いきなりの大女優が何をするのかと思ったら、実朝に「雪の日は出歩くな、災いが待っている」と大フラグを立てた。・・・うんうん、涙涙だ。これを聞いていた泰時、将来の雪の日に全力で実朝を止めてほしかったが、史実はそうならなかった。

 そうそう、泰時の双六!全視聴者が「なぜ具合が悪くなるかって、それはね、前世で双六をしながら騙し討ちにあったからなんだよ😢そうか、やっぱり君は上総介広常の生まれ変わりだったのか」と息を飲んだはず。このドラマは、その設定・セオリーで行くんだね。

 じゃあ、鶴丸には八重さんの魂が宿っていて泰時を見守っていたりするかな?八重さんが命を落とした日に鶴丸が生まれた訳じゃないけれど、身代わりになったのだし。巫女さんに、鶴丸のことも見てほしかった。

 それから、「肘が顎に付かない」エピソード。せっかくのおばあさんメイクがうまくいっていたのに、腕まくりして見えた腕が思いのほか若くて、中の人の実年齢がばれていた。顎に肘、私を含めてどれだけの人が試しただろう。そんな笑える話も交えながら、前述の実朝へのセリフは心に残った。

 これは、三谷の舞台「日本の歴史」でも全成殿の中の人が歌ったそうだ。あれは、やっぱり三谷幸喜の取って置きのセリフのようだ。

「のえ」は残念!政村の産声は「見栄え」?

 前回終わりの「控えよー!」だけではまだ判断材料が少なすぎると思い、見方を保留していた「のえ」。いや、これはもう強か。義時死後の騒動の首謀者になりそうな人物、それどころか、自分の意のままにならないなら毒キノコづくし膳を夫の義時に供しかねない人物設定だと理解した。

 三浦平六義村がさすがの眼力を発揮、握り飯を食いながら裁縫をする奴はいないと指摘して「出来たおなごなのだ」と自慢気だった義時の目を泳がせた。

 平六は、泰時が「のえ」の裏の顔を見てしまって父義時に伝えるべきか悩んでいることについて、娘の初から相談されていたのだろうか? そうじゃないかもしれないが、やはり、最初からおなごの吟味は平六に頼むべきだったね、義時よ。信じきれないとか言ってないで!彼の方は「刎頸の交わり」だと言っていたじゃないか。

 「りく」が亡き政範に北条の家督を継がせようと必死だったように、「のえ」も辛気臭い男・義時にガマンして嫁いだのだから、自分の息子を家督にしようと考えて当然だろう。

 義時は「子どもは、いたらいたで何かと大変」なんて言っていたが、息子の立ち位置によって左右される生母の立場を全くわかっていない。配慮がない。

 それにしても「りく」といい「のえ」といい実衣といい・・・夫を踏み台にすることをも厭わないような、強かさを持つ悪女キャラの多いこと。良く描かれていても、やっぱり強さは同じなのは八重、政子、比奈か。でも、人間味があって面白い。三谷キャラは、男性脚本家による女性キャラにありがちな人形的嘘くささ、女神臭、母親礼賛臭がない。

 「のえ」の産む政村(北条政村 - Wikipedia)は20年ほど前の大河ドラマ「北条時宗」にも登場し、伊東四朗が演じていた。それこそ、裏表ありの胡散臭い人物として描かれていたような気がしたが、史実では元寇でのまだ若い執権時宗を、長老として支えた人物だったようだ。

 政村が生まれるのは、あの「武士の鑑」が命を落とした日。運命的だ。ということは・・・今作のセオリー(泰時の産声は「武衛、武衛」だった)に倣うと、政村の産声は「見栄え、見栄え」に?いやいやいやいや💦

 この大河ドラマ、ラスボスは「のえ」か。彼女の策略に倒れる義時。対抗する政子と義村と、政子ラブの大江殿?まだ結末を想像するのは早すぎか。とはいえ、あと3カ月。終わらないでほしい。とりあえず、次回の畠山滅亡が来ないで・・・ああでも、続きが見たい。 

(敬称略)