黒猫の額:ペットロス日記

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【鎌倉殿の13人】惜別、和田義盛。そして「黒い義時」は張りぼてだった

しっかり描かれた和田義盛の死に顔

 NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」は10/30、第41回「義盛、お前に罪はない」を放送した。いやー、凄かった。見終わってしばらく脱力しちゃったこともあり、また振り返りのブログが遅くなった。もう本日夜には42回「夢のゆくえ」が放送される。

 41回では鎌倉最大の市街戦とも言われる和田合戦が力を込めて描かれ、愛されキャラ「和田っち」和田義盛の最期が待っていた。「のえ」が「離れ離れは嫌です!」「二階堂に戻ります!」の切り替えの早さで笑わせるなど箸休めパートはあったけれど、「トロイ」か三国志の「レッドクリフ」か(BGMまでそんな感じになっていたような)を見ているような息詰まる戦の成り行きを固唾を飲んで見ているしかなかった。

 そういえば、初に水を豪快にぶっかけられて酔いから醒め、ようやく戦場に立った泰時。真っ赤な顔のメークや酔いの早い千鳥足が笑えたのも救いだった。

 泰時は意外に戦でカッコよく戦い、初陣なのか、弟の朝時はガタガタ震えていた。矢を板戸で受ける件で「活躍」したというので、和田勢の猛将と渡り合ったという吾妻鏡とはだいぶ違う朝時の描き方だった。

 朝時の中の人は芸人さんだとか。セリフが自然だった。「なぜ父は私に指揮を」とぼやく兄に対して、心境を吐露した朝時。

信じているからに決まってるじゃないですか。期待されて生きるのがそんなにつらいんですか?誰からも期待されずに生きている奴だっているんだ、そいつの悲しみなんて考えたことねえだろ!

 この言葉も、グズグズしていた泰時には効いたらしかった。

 肝心の戦の方は、和田義盛は弁慶張りに前後に無数の矢を受け、足から頽れていき絶命、一族も滅亡した。画面には、血の気を失い、真っ白になったリアルな死体に近い義盛の死に顔が、アップでしっかり映った。(この時、中の人の目に黄疸が出ているように見えるのは私だけ?心身ともにつらい撮影だったのでは・・・お疲れさまでした。)

 この無残な表現の仕方は、あの上総介広常以来ではないか?源氏の頼朝、頼家、範頼、全成の場合は、きれいなドラマ仕様の死に方で、その他も首桶が続々と出てくるに止まった。畠山重忠の乱と、源義経の衣川の戦いは、今作は骸までは映像として見せていない。

 人間の脳にインパクト大な死に顔をわざわざここで使う意味は、視聴者にそれだけ和田義盛の死がエポックメーキングなことなのだと印象付けたいからだろうか。

 義盛絶命の場面を、まず振り返ろう。

(和田軍に対峙する軍勢の中から、北条義時に続いて鎌倉殿・源実朝が姿を現す)

源実朝:義盛、勝敗は決した!これ以上の争いは無用である。大人しく降参せよ

和田義盛:俺は、俺は羽林が憎くてこんなことをやったんじゃねえんだ

実朝:わかっている

北条義時:(実朝に自制を促すように、小さく)鎌倉殿

実朝:(義時よりも前に進み出て)義盛、お前に罪はない。(義時、三浦義村に目配せ)これからも、私に力を貸してくれ。私にはお前が要るのだ!

(三浦が後方に行く)(和田、泣く)(北条泰時、異変を感じて義時を見る)

和田:もったいのうございます。そのお言葉を聞けただけで満足です。みんな、ここまでじゃ。聞いたか、これほどまでに鎌倉殿と心が通じ合った御家人が他にいたか?(義時、怖い顔)我こそは鎌倉随一の忠臣じゃ!みんな!胸を張れ!(義時、三浦に催促の目線)

三浦義村:放て(矢をつがえ、一斉に矢を射る兵。和田の背に何本も矢が刺さる)

実朝:(驚いた顔)止せ!

和田:小~四~郎~!(さらに矢を浴びる和田)羽林!

実朝:義盛!(泣いて前へ)

泰時:危のうございます!(実朝を抱きかかえて抑える)

義時:(和田を見て、周りに向けて大声で)おわかりか!これが鎌倉殿に取り入ろうとするものの末路にござる!

(和田は20本以上の矢を受け、崩れ落ちていく)

(三浦、渋い顔をして和田勢に襲い掛かる自軍を見る)

義時:(泰時に、実朝を)八幡宮にお連れしろ

(泰時、我を失って慟哭する実朝を抱え、顔を紅潮させ父を軽蔑した目で見る)

(和田の死に顔、真っ白)

(義時、軍勢から離れ背を向けて歩きながら、ひとり顔を歪め泣く)

実朝、権力者がそれをやっちゃおしまいよ

 一応主人公なので、北条義時から触れておく。義時は闇落ちしたと言われてきたけれど、中身の本人は変わっていなかったらしいことが和田を惜しむ涙の表現でハッキリした。外側で闇の真っ黒張りぼてを被り、外側の真っ黒さ加減に付いていけていない中身が泣く、そんな印象だ。義時は、やりたくないことをやっていた。

 きっと「義盛は私が必ず説き伏せて見せる。命までは取らぬと約束してくれ!」と実朝が言った後は無言の義時しか映らなかったけれど、間があった後に、いけしゃあしゃあと「助けます」と約束したんだろうな。そしてそれを破ったのだろう。

 なぜそんなことをするかと言えば、トップに立つ実朝が、居並ぶ御家人の前で公然と和田義盛を特別扱いしたからだ。ここまでの大乱を起こした張本人に向かって「義盛、お前に罪はない」と鎌倉殿が言ってしまった。そのインパクト。義盛も、それを誇って「胸を張れ」と一族に言った。

 じゃあ、この落とし前はどう付けるわけ?御家人のみんなの目にこれがどう映るか考えてるの?と義時が頭を抱えるのも分かる。

 実朝の父・頼朝は、軍を起こした時に歯の浮くようなセリフを集まってくれた有力武者たちにリップサービスでバラまいたが、それは個別の話。わざわざ「他人には言ったことが無かったが、そなたを一番頼りにしているのだ」など、陰で「一番」を連発して坂東武者たちのハートを掴んでいった。頼朝は、人の上に立つ人間として、さすがに人心掌握術をわかっている。

 ただ、千葉常胤に対しては、皆の見ている前で頼朝が「父と思うぞ」と言い、「えええ⁈俺だけじゃないの?千葉もなの?」という無言の戸惑いを背後で土肥実平が代表して表現していて、1つの笑いのシーンになっていたくらいだった。つまり、下にいる他者を考えたら、上に立つ人間が1人をえこひいきしちゃおしまいよ、ということだ。

 それを躊躇なくやってしまった実朝。このドラマの実朝は北条を牽制するために・・・まではしっかり考えられていない。和田義盛のことを一番、心底頼りにしているんだとの心根を公然と打ち明けてしまうことが、どんなに鎌倉殿としてやっちゃいけない事か、今回の義盛の討ち死で実朝は学ぶことができただろうか?

 今作の実朝はピュアすぎて、本音と建前の使い分けを知らなさそう。その悪意の無いキャラは乳母夫の全成仕込みのような気もするが、母・政子も乳母・実衣も、帝王学として教えていないのか。権力者がそれをやると、お友達政治になってしまうのだよな。権力者が孤独であらねばならないことを実朝が知るのは、いつになるのか。

 「心を許せる者はこの鎌倉におらぬ」「私は父上や兄上のように強くない。だから強き御人にお力をお借りする」なんて後鳥羽上皇を持ち出して、ガソリンを注いで義時の張りぼてをまた真っ黒に燃え上がらせちゃってるし・・・考えが浅い。言わなくてもいいことまで義時に言っている。

 次回予告ではとうとう覚醒したのか「この鎌倉を源氏の手に取り戻す」と言っていた実朝。源氏対北条の戦いが顕在化する。そうすると、もうすぐ迫る実朝の暗殺は、義時が義村に命じて公暁を唆した形になるのではないだろうか。京を頼る実朝と京をつなぐ役割の源仲章、ふたりは坂東武者の都・鎌倉のためにならないと義時に見られて、まとめて片付けられるのだろう。義時、真っ黒の張りぼてを手放せない。

また幼なじみを殺した義時、普通は狂うよね

 さて、和田義盛の最期はかわいそうだった。実朝が、もっと鎌倉殿として弁えた(義時に睨まれない)頼り方をしていたら、かしまし歴史チャンネルのきりゅうさんを含め、視聴者に愛された和田っちは滅亡させられることもなかっただろう。義時にしても、初回から登場している幼なじみを、また殺すこともなかった。

 もし、このまま義盛を生かして和田一族を温存させたとしたら、実朝をいただく幕府では明らかに和田は北条の上を行く。それを兄・宗時の言葉に忠実に従い「御家人のてっぺんに立つ」と覚悟を決めている(&真っ黒張りぼてを被っている)義時が許せるわけもなかった。

 でも非情な仮面をかぶり切れていない義時は、これを続けていけば外と中との乖離で気が狂うのではないだろうか。正気を保とうとするなら、外側との矛盾が無いように中身も真っ黒にしていくしかないような気がするが、きっと昔のままの小四郎なら、できない。

 義時は、実朝にこう説明している。

義時:人を束ねていくのに最も大事な物は力にございます

実朝:力?

義時:力を持つ者を人は恐れる。恐れることで人はまとまる。あなたのお父上に教わったことにございます

 つまり、本来の義時の性格からはそんなことをしたくないタチだけれど、力で人を抑える方法しか頼朝からは学ばなかった。そして「北条がてっぺんに立つ」を実行するには、イコール強権的に他を弾圧していくしかないと信じている。

 ある意味、小四郎は、自分なりのやり方をアレンジして生み出すことなく、頼朝の非情な支配をベストだと信じ踏襲していて、とっても素直なのだ。

 とはいえ、張りぼての中にいる自分自身は悲しいし、違和感は覚えている。だから、「父上は間違っている」と繰り返す泰時が希望になる。自分を反面教師に、できないことを成し遂げてくれそうな息子を、暗い張りぼての中から眩しく見ている気がする。

大江広元を攻略せよ、政子

 前回も書いたけれど、義時の力による支配をブレーンとして裏支えしているのは、間違いなく大江広元だ。大江広元は、源頼朝もそのようにして支えてきた。頼朝流の強権的な支配方法を義時に教え選ばせているのは彼だと思う。本来は広元流、その家元と呼ぶべきか。

 演じている中の人・栗原英雄は、劇団四季に四半世紀もいたそうで、とにかく美声。私には「真田丸」主人公が憧れるデキる叔父・真田信伊のイメージが強く残っているので、今回、文官なのに和田勢5、6人を相手に剣豪的大立ち回りを大江殿が見せた時には、真田信伊が降臨した!と大喜びだった。「叔父上だもんねー、強いよね」と。

 BGMも、遊び心たっぷりに西部劇チックな荒野のガンマンと言うか必殺仕事人的な曲が流れていたが、せっかくなら真田丸のサントラから、叔父上らしい1曲を流して欲しかった。

 今作の作曲者、エバン・コールは、既に著作権の心配のなさそうなクラシックの名曲をたくさんパクッて使っている。まさか大河ドラマの作曲家がここぞという場面で自作で勝負せず、歴史上の大作曲家たちの人気曲に乗っかるなんてと驚いたけれど、それなりに面白い試みだとは思う。

 だったら、最近の曲だからと尻込みせず、必要なら使用許可を取って著作権料をバンバン支払って、もっと「真田丸」「新選組!」のサントラを使ってほしい。山本耕史の登場場面なんか、鬼の副長を彷彿とさせる曲でいいじゃないか。遊び過ぎか。

 脱線したが、忘れたどくろを取りに行く件。「そのお役目、私が」「御所の中は知り尽くしております(さすが叔父上←しつこい)。近道を通ればあっと言う間」と文書を背負って現れた大江殿が言い出した時、駆け寄って(!)「危険すぎます」「このこと、生涯忘れませぬ」と大江殿の手を取った(!!)政子。その政子の手を、大江殿もためらいなくもう片手で包み込んでいた。

 何だこれ。実朝夫妻、実衣、三善康信、阿野時元、もしかしたら八田知家も見ていなかった?いいの?と思ったけれど・・・実朝も、政子も・・・💦

 次回予告ではふたりがただならぬ感じで見交わす場面があった。政子は、人が良かった父の時政が執権になって腐敗していく様に悩み、今度は素直だった弟の義時が真っ黒になっていく。実朝は自我を持って動き始める。そしていよいよ顕在化する源氏vs.北条の戦い。

 息子と弟の戦いの渦中に立つ政子の悩みを受け止められるのは、やはり大江殿だ。大江殿を引き込んだ側が鎌倉では勝つ。

 実朝の御教書を西相模の御家人に配る件での駆け引きでも、三善康信は義時の不興を買うのを覚悟で相当勇気のいる言葉を実朝のために義時の前で言い、実朝が花押を付すのを一旦は止めさせる寸前まで行った。が、結局は大江殿が言う側に実朝はなびいた。

 政子は、息子と弟のどちらにも付けないまま実朝を暗殺され、その結果、初めて政子は動くのでは。大江殿を含めて、色々な人たちを味方につけた政子が、黒い張りぼての中で狂っていく弟を憐れんで命を終わらせてやり、泰時につなげていくよう腐心してドラマは終わると考える。

 昔、政子が義時の首を絞めて遊んでいたという逸話は、示唆するものがある。

巴のこと。和田一族の他の女たちは?

 最後にちょっと触れておきたいのが、和田合戦を機にドラマから退場した巴御前。ひたすらカッコ良かった。

 木曽義仲の「一の家人なるぞ」と名乗って捕らえられたのち、和田義盛の妻とされていた彼女が、凛々しく戦場から立ち退くときに馬上で名乗るのが「我こそは忠臣和田義盛の妻、巴なるぞ!」だった。身に着けていたのは義盛の直垂に見えた。泣かせる。

 巴は「あなたのいない世に未練はありません!」と言ったが、義盛は「生き延びるんだ、あの時のように。生き延びよ」と答えた。それで巴はあの出で立ちだったのだと思うのだけれど、他の和田一族の女たちはどうなったのだろうと気になった。

 あれだけの髭面の「無数の和田義盛」がいたのだ。それだけの家族がいただろうが、和田家の女は巴しかドラマには出てこないのだ。

 和田家の有名人、サメのネックレスをドラマで付けていた朝比奈義秀は、ドラマでは活躍らしい活躍が全然描かれないのに等しかったし、巴に義盛の死を告げて直後に絶命する設定だった。だが、実は房総半島の安房国に逃げ、さらに高麗に逃げたと和田系図では書かれているとか(和田合戦 - Wikipedia)。

 他にも近江や越後方面にも和田の子孫がいて、織田信長の宿老の1人、佐久間信盛が子孫だとどこかのYouTube解説で拝見した時には驚いた。すごい。

 ということは、そちら方面に家族は逃げて生き延びたということなんだろうか。族滅したと言われても、しぶとく生き残っている和田一族。たどっていくとすごそうだ。スピンオフで和田一族の生き残りのドラマを作ってくれないかな。(敬称略)


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