黒猫の額:ペットロス日記

息子は18歳7か月で虹の橋を渡りました

【鎌倉殿の13人】丹後局と大江殿、ふたりがかりで政子覚醒

時政の幸せなしめくくり

 NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の第42回「夢のゆくえ」が11/6に放送され、土曜日11/12の再放送を見逃したので先ほど(もう日曜日💦)録画で見た。今週は忙しかったのでブログで鎌倉殿ふりかえりは無理かな・・・と思ったのだが、今日、録画を見てしまったら、やっぱり少し書きたくなった。間に合うかな?

 録画を一緒に見た家族は、今、「ボーイスカウト歌集」(ボーイスカウト日本連盟発行)を引っ張り出してきて歌を歌っている。前のパートからドボルザークの「新世界」がBGMで流れていたが、時政の伊豆邸での場面は「🎵遠き山に日は落ちて」のパートになり、家族はそれに触発されたのだ。

 見せてもらうと、作詞は堀内敬三さんで「新世界より 夜の歌」というタイトル。「遠き山に日は落ちて 星は空を散りばめぬ・・・」と続く。この歌は、ボーイスカウトの集まりがあると、その終わりに必ず歌っていたのだそうだ。意味も分からない幼少期から歌っていた家族は、体に染みついていて、その歌が流れて嬉しくなったらしい。

 (ところで「星は空を散りばめぬ」じゃなくて「空は星を散りばめぬ」じゃないの?誤植?と思って確認したけれど、「星は空を」でした。作詞者がそういうのだからその通りで。)

 その「夜の歌」に乗せて、北条時政の幸せな終焉期が描かれたのはうれしかった。時政が死んだのは和田合戦(1213年)から2年後の1215年頃らしい。今42回の「夢のゆくえ」ではドラマサイトによると1214年から1217年にかけてがカバーされていて、史実では実朝が作った大型船の入水失敗(1217年)から時政の死は2年遡っている。ちょっと混乱したけれど、時政のシーンが後に来る方が、ドラマを見ている側も気分的に救われた。

 義時からの見舞いを言付かったという泰時が「爺様」時政を訪れての会話。

泰時:りく様のことは聞きました

時政:儂を置いて京へ戻っていきやがった。いいんじゃねえか、アレにここの暮らしは似合わねえ

泰時:爺様は、穏やかになられました

時政:政を離れて久しいが、今が一番幸せな気がする。力を持つってのはしんどいなあ

 最後の「力を持つってのはしんどい」との言葉を、泰時はどう聞いただろうか。時政は愛妻に踊らされ、無理をしてきたからしんどかった。父・義時が現在抱えるしんどさには、気を巡らせることができただろうか?それとも、将来、自分が力を持つことになる日に向けて、どう改善していったら自分もしんどくなく、皆が幸せになるかを考えていただろうか。

 出世欲と支配欲の権化のようだった「りく」が去ったことで、時政に平穏が訪れていた。本来の好々爺に戻り、私はホッとした。そして、磯山さやかもこれまで頑張ってきて良かったね、と思った。晴れて大河女優さんですよ。彼女が醸し出す温かさに包まれて生を終えたなら、今作の時政は幸せだったはずだ。しかし、気の強い女が好きだこと。 

実朝の決意、和田合戦と震災を受けて

 しかしドラマ冒頭では、後鳥羽上皇の「私だよ、上皇様だよ」の、にしおかすみこか!的な登場と、退場の飛び立ち方はウルトラマンか!という作りでいきなり笑わされてしまってうっかりしたが、実朝がうなされていたのは、後鳥羽上皇が夢に出てきたためだけではないだろう。

 和田合戦であれだけの死者を出し、鎌倉の都市部にも被害が甚大だったところに、あまり日を置かずに起きた大地震。ドラマではちょこっと描かれたにすぎないが、当時は為政者が悪いと天変地異が起きると言われたのだから、真面目な実朝のこと、一生懸命に何がいけなくてどうすべきかを考えたことだろう。もちろん、和田義盛一族の祟りだとも考えただろうし。

 その結論が、泰時を呼んで言った「父上が作られたこの鎌倉を源氏の手に取り戻す」「上皇様を手本としたい」だった。泰時は「北条から取り戻すということですか」「私も北条の者ですが」だったが「義時に異を唱えることができるのはお前だけだ」と言われて「鎌倉殿のためにこの身を捧げます」となったのだった。

 実朝は泰時ラブだったはずだから、「この身を捧げます」という言葉は格別にうれしかっただろうけれど、その感情を抜きにしても信頼できるのが泰時ということだ。いや、義時に反論できるから泰時を信頼できて、恋もしたのかもしれない。とにかく真面目者ふたりのタッグ。麗しいが、将来を思うと悲痛なものがある。ううう😢

 その真面目者実朝が、救いを求めていた先に後鳥羽上皇から差し出された陳和卿の話に乗せられるのは、無理もなかった。三谷幸喜、話運びがうまいですよね。

丹後局と大江殿が、政子を説得してきた

 長沢まさみのオープニングナレーションはこうだった。

和田一族は義時によって滅ぼされる。しかし、そのことが実朝を覚醒させた。強大な義時に対抗するため、実朝が頼ったのは後鳥羽上皇

 実朝の覚醒は、視聴者みんなが多分そうなるだろうと期待していただろう。しかし、今回、驚いたことに、覚醒したのは政子もだった。驚く私は、どうも、時代劇の見過ぎで受け身的な女性像が頭に沁みついていたらしい。

 前回のブログでは、状況を打開するために「大江広元を攻略せよ、政子」(【鎌倉殿の13人】惜別、和田義盛。そして「黒い義時」は張りぼてだった - 黒猫の額:ペットロス日記 (hatenablog.com))と書いたのだったが、大江殿の方が、リーダーとして自覚して立てと政子を説得してきた。

 船の建造継続を巡って皆が揉め、三善康信には「どうか、船の建造は続けさせてください。鎌倉殿の思いがこもっておるのです、尼御台!」と懇願され、ダークな張りぼてを被った義時には「頼家のようになる」と事前に脅された上で「鎌倉殿にとって何が一番大切か、よくお考えいただきたい」と迫られた政子。相談相手に呼んだのは大江殿だった。

政子:もちろん、実朝には好きなようにやらせてあげたい。でもそれがあの子の命を縮めるようなことになるとしたら

大江:鎌倉殿は後ろ盾として上皇様をお選びになった。頼朝様のお考えとは異なるかもしれませんが、世は変わりました。今ならあの御方はご子息にどうおっしゃるか。むろん、小四郎殿にも一理ございます。後は尼御台のお気持ちひとつ

ま:私が決めるのですか。私はそんな大事を決められるようなおなごではないのです

お:逃げてはなりません

ま:逃げたいわよ

お:頼朝様が世を去られて、どれだけの月日が流れようとあなたがその妻であったことに変わりはない。あの御方の思いを引き継ぎ、この鎌倉を引っ張っていくのはあなたなのです。逃げてはなりません

ま:とうに腹をくくったはずなのに、ダメですね・・・皆を集めなさい

お:ははっ(礼をする)

 その後集まった皆に、政子が船建造継続の決断を言い渡しただろうシーンが描かれなかったのはちょっと残念だった。毅然とした政子と、それをほほ笑んで見守る大江殿が見られたのでは?

 大江殿の中の人はどんな思いで「どれだけの月日が流れようとあなたがその妻であったことに変わりはない。あの御方の思いを引き継ぎ、この鎌倉を引っ張っていくのはあなたなのです」のセリフを言ったのだろう。政子ラブを断ち切るような、自らに言い聞かせるようなセリフ回しだった。

 大江殿は、実朝の船を建造して宋へ渡航する計画が京の後鳥羽上皇に踊らされているとわかって反対する義時の考えそのままを推さず、どちらでもOKとフリーハンドで政子に決断しろと言っているのだから、ある意味大胆だ。これまで義時に寄り添ってきた大江殿だったら、何とか政子を船反対の方向に持っていったのではなかったのか。

 政子にフリーハンドを許す姿勢は、政子の実朝を支えたい気持ちを十分尊重するから出てくるものであって、大江殿の変化を感じる。目を患って評議に参加しないことで義時の考えから自由になり、政子推しを実践しようと心に決めたのだろうか。

 大江殿がブレーンとなるのだったら、政子は安心だ。

鈴木京香の丹後局、悟った感がすごい

 その前に、丹後局と面会したのも良かった。なんでも、YouTube解説「かしまし歴史チャンネル」きりゅうさんによると、吾妻鏡には別の「丹後局」が強盗に身ぐるみはがされて鎌倉に逃げ帰ってきた話が書いてあるそうだ。そこに想を得てアレンジした脚本だろうとのことで、これは面白かった。

丹後局:近頃は暇を持て余し、修行と称して諸国を巡っております

政子:お久しゅうございます

た:私もあなたも、大きな力を持った方に仕えた似た者同士。困ったことがあるなら、遠慮なくおっしゃい

ま:たまに心の芯が折れそうになるのです

た:でしょうね

ま:4人の子のうち3人を亡くしました。背負うものが多すぎて、慎ましやかで良かったのです。身内の誰ひとり欠けることなく・・・

た:話の途中で済まぬが、頼朝殿と一緒になったのは何年前ですか

ま:40年

た:それで、まだそんな甘えたことを言っているのですか?いい加減、覚悟を決めるのです。あの頼朝殿と結ばれたというのは、そういうこと。人並みの人生など、望んではなりません。

ま:申し訳ありません

た:何のために生まれてきたのか、何のためにつらい思いをするのか。いずれ分かる時がきます。いずれ

 これは謎めいた物言い。丹後局は、自分について「何のために生まれてきたのか、何のためにつらい思いをするのか」何事かを得心したのだろうか。鈴木京香のスパッと美しい丹後局の悟った感がすごい。以前の大姫の入内を巡る出演シーンも、一方的に政子をいびってきたイケズと書いてある記事も見たけれど、そうだろうか。京女なのに、あそこまで率直に言ってくれるのは親切だと受け取るべきではないかと思った。

 ともかく、政子はこの丹後局の言葉「人並みの人生など望んではなりません」を胸に刻んだつもりだったから、大江殿にも「腹をくくったつもりだった」と言ったのだろう。人並みの幸せは諦めなさいと言われて「はい、そうですか」とできるものでもない。

立ち上がる政子、ガンバレ実朝泰時

 政子は、実朝が大失敗を受けて大いに意気消沈するところに、力強く笑顔を向けた。(船を朽ち果てるまで由比ガ浜にさらしておくなんて、ダークはりぼて義時も人が悪すぎる。小細工もトキューサにさせていた設定で、それが失敗報告を受ける時に見え見え💦これが主人公だなんて。しかし、船をまんまと重くしたらしいトキューサ優秀。)

 「母は考えました。あなたが揺るぎない鎌倉の主となる手を」(ニッコリ)。それが家督を譲って大御所に納まる手だったのだが、山岸凉子作の「日出処の天子」を思い出した。

 聖徳太子伝説は、今42回で多く語られている。もしかして、三谷さん「日出処の天子」も意識した?そんなことないかな。

 大臣・蘇我馬子率いる蘇我氏の力に大王家(天皇家)が抑えられている状況下で、厩戸皇子は自ら天皇の位に上るのではなく、自分は推古天皇の摂政となって大王を支えることを選ぶ。それによって「まるで大王がふたり」と天皇家の発言力が倍増したと馬子が実感するシーンがあった。

 実朝が大御所になって、やんごとなき高貴な生まれの鎌倉殿が存在すれば、将軍家の力は倍になる。それだ。実朝は、聖徳太子にそこを学んだかな?

 今思えば、「日出処の天子」の厩戸皇子は同性愛者。蘇我蝦夷に恋愛感情を抱いているが、父の馬子とは政治的に対立している。「鎌倉殿の13人」の実朝を厩戸皇子、義時を馬子、泰時を蝦夷とすると相似形だと思うのは私だけか?

 ともかく、実朝は「家督を譲る」と宣言した。「この先、子ができる事はない」とも言った。この点、「日出処の天子」の厩戸皇子は子作りはする。自分を愛さなかった母親似の、知的障害のありそうな少女を相手に。痛々しいが、同性愛者が跡継ぎを期待される立場に生まれた不幸だ。押し付けることで、本人も回りも辛いことこの上ない。

 ここからのシーンは、息詰まるやり取り。本音を出す実衣やトキューサ、泰時もいての正に力の入ったシーンだった。

実朝:外から養子を取ることにした

義時:お待ちください。嫡流であれば公暁様がおられます

実朝:あれは仏門に入った。おいそれと還俗はできぬ

トキューサ:どなたか当てがあるのですか

実朝:朝廷に連なる、特に高貴な方をもらい受ける。上皇様にお願いしてみるつもりだ

実衣:ありえません!

義時:鎌倉殿は代々源氏の血筋から出すことになっています

実朝:誰が決めた?

トキューサ:頼朝様が

実朝:文書は残ってなかろう

トキューサ:確かに

実朝:すぐに仲章と話を進めよ

泰時:かしこまりました

義時:鎌倉殿とは武士の頂に立つ者のことでございます

実朝:その鎌倉殿を今後は私が大御所として支えていく

義時:どなたの入れ知恵かわかりませんが、そのようなことをお一人で決めてしまってはならない

政子:鎌倉殿の好きなようにさせてあげましょう

義時:尼御台?

政子:すぐに取り掛かりなさい

実衣:北条はどうなるのですか

義時:鎌倉殿は源氏と北条の血を引く者が務めてきました。これからもそうあるべきです

政子:北条が何ですか!小四郎、あなたが言ったのですよ、北条あっての鎌倉ではない、鎌倉あっての北条と。まずは鎌倉のことを考えなさい

泰時:執権殿は、ご自身の思い通りに事を動かしたいだけなのです

義時:そういうことでは

泰時:鎌倉は、父上ひとりのものではない!

義時:黙れ!

政子:都のやんごとなき貴族から養子を取り、実現すればこれ以上の喜びはございません

実朝:ありがとうございます(BGMはドボルザークの新世界)

 義時は、「のえ」に以前、北条が鎌倉殿になっちゃえばいいと言われたことがどこか頭にこびりついているのではないだろうか。だから「文書は残ってなかろう」と言われた時に、「文書はともかく、私はそう頼朝様から聞かされております」と言えばよかったのに、そうしなかった。「鎌倉殿は代々源氏の血筋から」とキッパリ言わなかったのは、つまり、北条が鎌倉殿になる余地を残したのだ。

 そして、出ました。どこかで必ず出てくるだろうと思っていた言葉「北条あっての鎌倉ではない、鎌倉あっての北条」。これは、りく&時政が、政子&義時に対峙していた時に義時が言った言葉だった。それがブーメランになった。待ってました。

 最後に、公暁について。実朝は、自分が鎌倉殿にさせられてつらかったから、公暁のように鎌倉殿になりたい人の気持ちが分かっていない。一緒に育った阿野時元が愚痴を言ってたもんね。その鈍感さは政子も同じ。辛い立場に自らなりたい人なんて、とちょっと軽く思っていないか。それが誤算として表面化しそうだ。

 もうあと1時間もすればBSで始まる43回「資格と死角」。そこで実朝の養子プランを三浦義村がどう意味づけし、それをどう公暁が聞かされるのか。義村の動きは義時につながり、源氏殲滅方向に義時が動き出すのか。興味深い。(敬称ところどころ略)