黒猫の額:ペットロス日記

息子は18歳7か月で虹の橋を渡りました。大河ドラマが好き。

【どうする家康】#5 松ケン本多正信登場!俄然面白く

松ケンは「懐刀」キャラが良く似合う

 NHK大河ドラマ「どうする家康」の第5回「瀬名奪還作戦」が2/5に放送された。今日2/12にはもう続編の第6回が放送されてしまう。このブログはいつも更新がのんびりで読んでくださっている方には申し訳ないが、まずは第5回のあらすじを公式サイトから引用する。

元康(松本潤)は、駿府に捕らえられている瀬名(有村架純)を取り戻そうと決意。家臣たちの反対を押し切り、イカサマ師と呼ばれ嫌われている本多正信(松山ケンイチ)の妙案に望みを託す。正信は、伊賀忍者の服部一党を使い奪還作戦を立てるが、頭領の服部半蔵(山田孝之)は過去の失敗ですっかり自信を失っていて・・・。(これまでのあらすじ | 大河ドラマ「どうする家康」 - NHK

 今5回は、服部半蔵役で山田孝之、本多正信役で松山ケンイチが出てきた。このふたりが画面に出ているだけで、なぜこんなにもワクワクするのか。絶対面白くなると思わせてくれる役者さん達だ。

 良かった、これで今年も大河ドラマを安心して見続けられそうだ。ちなみにうちの家族は、今年は見なくていいなんて言っていたのに、いつの間にか大森南朋(酒井忠次)の「えびすくい」踊りが出てくるたびに笑って見ている。「だって、龍馬伝で武市半平太を演じてた人だよ?同じ人とは思えないよね」と言うが、それが役者さんというものだろう。ということで、大森南朋目当てで今年も大河を見るらしい。

 私が期待しているのは、松山ケンイチ。彼が主演した大河ドラマ「平清盛」は、作り込まれたドラマ世界そのものは素晴らしかったのだけれども(初回の逃げていく身重の吹石一恵の映像は凄まじくも美しかった)、勝手を言ってしまうと、個人的にはどうも清盛の人物造形だけが気に入らなかった。

 ドラマの清盛は、幼い時から頭をフル回転させて、息をひそめて慎重にナイフのエッジの上を歩くような生き方をしてきてもおかしくない業を背負った生まれのように描かれていたと思ったのに、いざ出てきたキャラがまさかの脳筋タイプ。デリカシーに欠け考えが浅くて言動がいちいちうるさく、何か気に入らないと吠えてばっかりの恐竜男が清盛って!

 そんなはずあるか、と私の脳内で期待して膨らんでいた清盛イメージが、当時は大いに反発した。

 そのキャラを演じていたのが松ケンだった訳だが、それもミスマッチ。彼が演じた中で私が好きなのはデスノートの「L」だったので、松ケンが演じる上はもうちょっと静かで理知的な清盛キャラを用意してあげてほしかったというのもあった。だから、2つの意味で「平清盛」の時にはガッカリしていた。勝手な話なんだけれども。

 それが!今作は本多正信ですよ、家康の懐刀の。「真田丸」での近藤正臣はぴったりだった。「どうする家康」では「イカサマ師」と呼ばれる設定だが、松ケンにもこのくらいの頭と口の回る役がピッタリだと思う。本質的に似合わなかったあの清盛よりも、ぜひこっちを代表作にしてもらいたい。

 今回の締めくくり、「鵜殿長照とそのふたりの子、生け捕りに致しまする!」の決め台詞は痺れた。リベンジが懸かっていたのに失敗して後のない本多正信と服部半蔵、同様に妻子への心配MAXで気持ちが追い詰められ多分内心は狂いそうに苦しんでいる元康、この本腰の入った勝負を目前にした緊張感が現れていた。

 いや~、流石に大河主演経験者は見せ方が違う。安心して見ていられる。手放しで褒めたい。

曲者らしく丁々発止の小気味よさ

 ということで、今作の本多正信は、大久保忠世が「人が考えぬような奇策を思いつく奴でして、かつて西三河を荒らしていた盗賊を騙し討ちにして一網打尽にしたことが」と評価する以外は、松平家家中から嫌われていた。頭はあっても信用が無い。

 曰く「わっぱの頃からもう、悪だくみばっかり考えとる」「いつも口先だけ!戦になりゃあ決まってあそこが痛い、ここが悪いと言い出して逃げ出しまする」「大高の兵糧入れにも加わるはずでしたが、出立の前日に落馬して足を折り・・・」「ところが明くる日には酒を飲んで踊っておる姿を見た者が」「本多の恥」「三河侍の恥じゃ!」と。散々の言われようだ。

 その嫌われ者がイキイキと曲者らしく家臣団と丁々発止のやり取りを繰り広げ、一理も二理もあるのだから小気味良い。コケー!と人を食った鶏の真似なんかもしちゃって。やり取りを採録しておく。

鳥居元忠:はあ~!あ~鶏くせえ。くせえ。
鳥居忠吉:人の言葉を忘れたか。
本多正信:コケ~!・・・はあ、はあ。やりようはあるでしょうな。
松平元康:ほう、あるか。
正信:某にお任せくだされば、御方様とお子様方をお助けして御覧に入れることができようかと。
元忠:出た出た出た。
平岩親吉:吹き始めましたぞ。
酒井忠次:どうやる。
正信:まずは某に銭をお預け願いとう存じまする。
元康:銭?
正信:元手が要りまするゆえ。あ、かなり。
元忠:本性を現しましたぞ、ご一同!
親吉:銭をぶったくるつもりじゃ!
大久保忠世:正信よ。どのようにやるのか申し上げい。
正信:この場で申すわけには参りませぬ。策が漏れては台無しじゃ。①
本多忠勝:この中の誰かが話を漏らすとでも申すのか?
正信:今川に通じているお方がおられぬとも限らん!
元忠:なんだと!
忠次:彦、七、やめえ
忠世:座れ、座れ
石川数正:ここにおわすご一同は、殿のご信用特に厚き面々じゃ。②
正信:その信用厚きご家臣に先の殿も、先の先の殿も裏切られたのでは?うん?うん?うん?子細は殿おひとりにのみお話しし、殿直々のお下知で働きとう存じまする。
元忠:お主のような者が殿の側役になれるわけなかろうが!
忠勝:これは騙りじゃ。ゆすり。ぶったくりじゃ。
正信:皆様方は何の策も思いつかぬがゆえ、某が呼ばれたのでござろう!己は策がないくせに、策を考えたる者を、騙りじゃ強請りじゃと、あ~みっともない。あ~みっともない。
忠勝:外へ出ろ!
忠次:待て待て待て!
忠世:待て!
正信:コケ~!仮に某が騙りでその銭を持ち逃げしたとして、だったらそれが何だと言うのです。ただそれだけのことでござる!されど、あるいはその銭でお方様とお子様方を取り返して参るやもしれません。③
元康:皆々、外してくれ。

「失敗は女の浅知恵から」のはまりっぷり。何だかな

 正信の今後の活躍を十分に匂わせる、面白いシーンだった。ここで気になった点を3つ。まず①「この場で申すわけには参りませぬ。策が漏れては台無しじゃ」と、今回のテーマとも考えられる情報漏洩への前振りが、ご親切にもここでされている。後に「別れを言いたかった」と考えた瀬名の母・巴が田鶴に脱出計画を話してしまったことで計画は失敗するのだから、情報漏洩はカギ。見る側も心の準備ができる。

 瀬名は探りを入れてくる田鶴に対し、顔色を読まれても「虫歯が痛くてたまらぬのです」と警戒してとぼけ、視聴者を一時的にはホッとさせた。そこで田鶴が「虫歯が!心配ですね。かなり痛むのですか」等と瀬名の言葉に寄り添った反応を返さずに「え?」と反応しているのを見ると、「聞きたいのはそんなことじゃないってことか」と田鶴の考えも透けて見えてくる。

 そうすると、やっぱり田鶴は兄の鵜殿長照から言われ、氏真の指図通り、関口家の逃亡等に備えての探りを、彼女なりに理解した上で行っていたのだろう。

 ただ、田鶴は「氏真様と我が兄、鵜殿長照がきっと松平をお討ちくださる。さすれば関口家への仕打ちも終わりましょう」と菓子を持ってきた時に言っていた。それには巴も大きくうなずいた。彼女は、自分のお役目に対する理解はその程度だったのだろう。

 そう考えていたのは兄だったか。長照も「皆様は松平にたぶらかされただけ」と言っていたもんね。それとも、全て分かっていた上での気休め的ご挨拶か。妹にも、命令に従わせるためにその路線で嘘をついていたか。つまり、深謀遠慮の末の言葉ということかな。

 計画が露見し服部党が討ち取られた後、巴は自分のせいだと理解して大声をあげて泣く。その時、田鶴は怪訝な顔をして巴と瀬名を見た。

 巴は「罪人のごとく扱われては喉を通らぬ」と最初は怒っていたが、罪人のごとくじゃなくて罪人でしょ・・・と見ていて思った。置かれた状況を理解できていない。

 彼女ら今川一門衆として何不自由なく育った巴と田鶴の2人が、シビアには考えきれなかったことで悲劇を招く(このままだと)という展開は、話運びとして自然なんだけれど「物語の中で、失敗するのはまたまた女の役割なんだな」と思ってしまった。失敗する側には鵜殿長照を嚙ませず、長照は氏真の前で訳知り顔で黙っていた。

 女の浅知恵が・・・というのは時代劇のお約束。そこら辺は大河ドラマの伝統芸にしないでほしいものだけれど。

 もちろん、瀬名は巴や田鶴とは違っていた。侍女のたねも、よく弁えてつなぎ役を果たした。それは、三河衆のおなごたちの処刑を目の当たりにしていたから、ということなんだろう。「私も三河者の妻!皆と同じ!」みたいなセリフが瀬名と彼らとの間にあったけれど、巴は「三河なんぞ」と差別意識丸出しだった。

瀬名:共に岡崎へ、関口家もろとも出奔いたすのです。元康殿は迎え入れてくださるはず。
巴:そんな突拍子もないことを。
瀬名:ここにいても、関口家に先はありませぬ!
巴:私は、三河なんぞ。
瀬名:お願いでございます!共においで下さい(頭を下げる)
巴:何とか言ってください(氏純に)
氏純:瀬名の言う通りかもしれぬ。
巴:お前様まで!
氏純:このままでは、瀬名と竹たちはいつまでも政略の道具にされる。
巴:今川様を見限ると申されるのですか?
氏純:わしらが今川様に見限られておるのじゃ。そしてわしは今川家がかつてのように立ち直ることはもう無いと思うておる。(巴、ガックリ)巴、元康殿にお仕えいたそう。そして、見知らぬ地で暮らす瀬名と孫たちを助けて参ろう。それが一番良い。
巴:三河の・・・味噌は好きじゃ。(密書、燃やされる)

 ここまで夫の氏純が尻に敷かれているタイプに描かれていたのも、今川本家に連なる巴に遠慮していた風情だった。しかし巴に真実を語らず彼の考えを心に留め置き続けたことで、彼女の状況判断のマズさ&情報漏洩につながったとも言えそうだ。作戦失敗の遠因は、妻に対して事なかれ主義で来た氏純にも無かったとは言えないだろう。

 巴と氏純は、失敗を償う形で次回、悲劇的な死を遂げるのだろうね。瀬名の両親が死ぬことは既定路線だから、脚本家は罪を巴に被せて償いとさせたのかな。

田鶴の物語は今後も描かれるのかな?

 そして、良かれと思って作戦失敗に加担したらしい田鶴は、今川氏真と相対した時に「御屋形様!」と自ら声をかける。当時、おなごが自分から主君に話しかけるなどOKなの?そんな訳ないよ命知らずと思ったが、それだけ田鶴は、自分の思い違いが友を窮地に陥らせたと今さらながら理解して、一生懸命になって嘆願したということかな。

今川氏真:長照、お田鶴、よう務めを果たした。そなたたちの忠義、真のものである。長照は、直ちに上之郷へ戻り松平との戦に備えよ。
長照:は。
田鶴:あの、御屋形様。
氏真:何じゃ。
田鶴:お瀬名は・・・関口家はほんのひとときの気の迷いゆえの過ちでございますれば、どうかご寛大なご処分をお願い申し上げまする。
氏真:(立ち上がって)家臣や国衆たちへの示しというものがある。(牢に入って行く関口家の映像が入る)関口氏純、巴、瀬名、その子ら一同、死罪とする。(牢の戸が閉まる音)
田鶴:(驚く)

 今回の冒頭、何のアイデアも出ないまま三河家臣団が話し合っていた場面で、石川数正が「駿府は遠い。鵜殿長照、飯尾連龍(いのおつらたつ)、岡部元信と言った猛将たちが守る城々を攻め落とさねばならぬ」と今川方の3人の武将の名を挙げていた。

 この中で、飯尾連龍(いのおつらたつ)は物語の中で新顔。わざわざここで名前を挙げてきたのは今後、田鶴の物語も描かれていくということなのか。彼女は、「おんな城主直虎」で前田吟が演じていた直虎のおじいちゃんを、嫁ぎ先で毒殺することになるのかな?また前田吟が出てきたら面白いけど。

 そうだった、まだナンバリングした①についてしか書いていなかった。②で挙げた「ここにおわすご一同は、殿のご信用特に厚き面々じゃ」という数正のセリフ。その彼が元康を裏切って出奔することになるので、松平家では信頼されている家臣による裏切りの歴史が3代で繰り返されるんだなと・・・そこら辺は、どう描かれるのか。それも楽しみだ。

 ③は正信のセリフ。「仮に某が騙りでその銭を持ち逃げしたとして、だったらそれが何だと言うのです。ただそれだけのことでござる!されど、あるいはその銭でお方様とお子様方を取り返して参るやもしれません」

 この「それが何だと言うのです」は、於大の方が元康との初対面の場で口にした印象深いセリフだった。

 息子に妻子を見捨てろと鬼のような言葉を言うに当たっては、彼女なりの葛藤があるのかと思っていたのだが、今回、また「元康殿、余計な憂いごとは忘れなされ。妻も子も、すぐまた持てます」と屈託なくニコニコ言うのを見て、ああ、今作の於大は「上昇志向>人の心」のヤバい御方様なのかなと思った。

 そんな於大の方って大河ドラマでは異色だ、見たことない。いつも愛情深く元康を陰から支え続けた母として描かれてきたのだから。今作は、元康を傷つけ振り回す人としての於大なのかもしれない。

コミュ障服部半蔵の改心

 松平当主の先代、先々代の殺害を防げなかったことで忍び集団・服部党が没落していたという設定は、重臣ふたりが元康に説明していた。

酒井忠次:服部党は、もうおりませぬ。
松平元康:お、おらぬ?
忠次:あ、いや確かに清康公が確かにお抱えになり家中の探りを任せておりました。
石川数正:が、ご存知のように祖父君は家臣に裏切られ、それが命取りに。のみならず、跡をお継になった殿のお父君もまた同じように。
忠次:服部半三保長はその責めを負い役を解かれ、数年前に病で死にました。
数正:息子がその名を継いで形ばかりの禄をはんでおりますが、今や百姓同様。
忠次:配下の伊賀者どももチリチリバラバラ。今さら、使い物になるかどうか。

 これって大統領への襲撃から守る任務に失敗したSPの皆さんが味わう憂き目みたいなものだったかな。その復活が懸かっていた今回の作戦はあえなく失敗。彼らのせいじゃなく、上流階級の女ふたりが氏真の計略にまんまとはまったせいだけど。

 相変わらずの不自然な青のワントーンコーデの氏真様、大きな画面で今回よくよく見たら素材の良いお召し物だった。作務衣とは違う。しかし、記号のようなワントーンコーデ。お田鶴も黄色の素敵な着物だったけれど、ワントーンコーデ。なんなんだ。自由の無さを見せているのか。

 脱線してしまった。長くなったのでそろそろダラダラ書くのは締めくくろうと思うが、最後に書いておきたいのは山田孝之演じる服部半蔵のコミュ障張りの屈折っぷり。正信&半蔵のコミカルなやり取りではそれが活きて面白かった。

 ずっと下を向いて目を合わせなかった半蔵が、自分を救って殺されていく穴熊をじっと目を見開いて見ていた。悲しい目だった。半蔵を抱えて飛ぶ大鼠も、盾となって矢を3本も射られていた。

大鼠:お逃げなせえ
半蔵:お前は
大鼠:ここで死にまさあ
半蔵:俺も戦う
大鼠:たわけ!半蔵様が死んだら、誰が俺らの妻や子に銭を渡してくださる?(苦し気な息遣い)服部党はまだまだおります。我らの子や孫が。どうぞ、やり遂げて銭をたーんとくれてやって下せえ。(兵の前に走り出る大鼠。半蔵逃げる)

 正信が見ているのもお構いなしに、涙を流した半蔵。これで半蔵も、服部党の忍び達と、職務に対する意識がリセットされたのだろう。あとはリベンジあるのみ、神君伊賀越えでの大活躍も期待している。

 伊賀越えと言えば、「真田丸」を見た人たちはあの内野聖陽の家康による爆笑伊賀越えイメージがすぐに想起されて、笑いをかみ殺すのが大変になってしまっていると思うが、今作の伊賀越えはそれを超えるものになるだろうか?

 次回の「瀬名奪還作戦」の続編が楽しみだ。楽しみだ、と書けるようになって私も嬉しい。コンフィデンスマンもリーガルハイも好きなドラマだし、そりゃそうだ。BSの放送まであと半日だ。(敬称略)