黒猫の額:ペットロス日記

息子は18歳7か月で虹の橋を渡りました。大河ドラマが好き。

【どうする家康】 #12 今川と惜別、家康と瀬名の夫婦間に影響はあるか

父とも慕う義元、兄とも慕う氏真

 NHK大河ドラマ「どうする家康」の第12回「氏真」が先週の日曜3/26に放送された。まだ投薬治療中でノロノロ寝床から起き出して再放送を見たところ、やっぱり少々書きたくなってしまった。頭がぼんやりする薬を言い訳に、まとまらない話に少しだけお付き合いください。まずは公式サイトからあらすじを引用する。

武田信玄(阿部寛)から攻め込まれ、家臣にも見限られた氏真(溝端淳平)は、駿河・今川館を捨てる。妻・糸(志田未来)は、彼女の実家である北条に身を寄せるよう勧めるも、氏真は耳を貸さない。一行が徳川領に近い掛川城に落ち延びたため、家康(松本潤)は兄弟同然に育った氏真と直接戦うことになり・・・。(これまでのあらすじ | 大河ドラマ「どうする家康」 - NHK

 「直接戦う」と言ったって、まさかの大将同士の一騎打ちが見られるとは思ってもみなかった。抜け穴からの敵将の侵入に気づかない今川&援軍に来ている北条の兵の皆さん、そんなことあるんですかー?

 ーーまあ、ドラマなんだから、ということで納得する。ああいった対話が無かったらね、ひねくれまくった荒ぶる氏真のメンタルが落ち着くのは無理だった。義元と家康の真意を知り、納得することが、彼を正気に戻すには必要だった。

 確かに、昔から少し不思議だった。どうしたら氏真と家康が将来的にあのような関係になることができるのか、どういうことなのかちょっと理解不能ぐらいに思っていたから、その1つの解としてはなるほどね、と考えることができた。どこかで両者が互いを思いやる瞬間を持っていないと、ああはならない。まあ、今後もドラマで出てくるのだろう。

 弟分だと思っていた家康が、実は自分よりも優れ、父にも才を認められて自分をむしろバカにしていたと信じてしまった氏真。さらに父には「将としての才は無い」と断言されちゃって今生の別れになった。

 まあ、頭に血が上りやすく最後まで話を聞かない氏真にも非はあるけれど、罪だよね。「己を鍛え上げることを惜しまぬ者は、いずれ必ず天賦の才ある者を凌ぐ。きっと良い将になろう」という、名言級の続きをちゃんと息子に言ってあげなきゃね、義元公。いくらなんでも息子がかわいそうだ。

 思えば、偉大な父・今川義元を失って以来、切羽詰まった「どうする」状態に置かれていたのは氏真もそうだったし、スケールの大きさで言ったら彼の方が上だったろう。桶狭間の戦いが1560年、そして今回の戦国大名としての今川家が滅んだのが1569年。思い通りに行かない「どうしたらいいんじゃ~」の泣きべその9年間だったよね。(彼は弱音を吐けない分、まわりに当たり散らして家臣を減らしていた。)

 これが、義元が思い描いた通り、氏真が家康と力を合わせての9年間だったなら。

 関口氏純が松平軍の苦境を度々告げた時、北条へ援軍を出すのに忙しかった氏真。妻の実家を優先したことが、松平等の国衆を離反させ、今川家の瓦解を招いた。今になって北条に身を寄せられるのも、その時に北条を優先した判断あればこそとは思うけど・・・あの時、松平を助けていたら。三国同盟が機能している中、敵討ちに打って出てたら、と「たられば」を考えてしまう。

 そんな「たられば」が空しい。混乱しきった9年間を、場当たり的に先も見ずに生きてきたように見えてしまう氏真。氏真には酷い目に遭わされた側でも、同じように翻弄されてきた思いのある家康には、兄貴分を同情する気持ちが、尚更ぬぐえないのかもしれない。

 しかし、尾張での織田信長によるいたぶり・かわいがりの下地があってこそ、駿府時代に義元と氏真に対するポジティブな気持ちが家康の中で爆発したわけか、なるほど。心底楽しかったんだね、駿府では。

 あの野村萬斎の義元様なら本当に尊敬に値する大人物だし、氏真は美しく優しい兄上として不足ない。正に、幸せな駿府に帰りたいと瀬名ともども心の中で願い続けていた家康が、自分の少年時代からの気持ちに区切りをつけた回になった。

 (それにしても・・・駿府という都会育ちのはずの鳥居元忠と平岩親吉、キャラ設定がおかしくないだろうか。なんであの田舎っぽい感じなのかな・・・三河衆の中でも抜きんでて都会派に見えるはずだと思うんだけれど、全然そうじゃない不思議。)

志田未来が遅すぎる

 氏真の正妻・北条糸さんを演じたのは演技派の志田未来。ずっと今か今かとお待ちしていたのだけれど、ようやくのご出演になった。遅すぎるでしょう!

 糸さんこと早川殿はとっくに居てもいいのにな、どこに居るのかなーとずっと思っていたら、ここまで引っ張って過去に彼女がいたはずのシーンも回想としてまとめてしまうなんて。そういう描き方だとは。

 駿府に珍しい雪が降る「亡者の祭り」のような回想シーンは3度は見たと思うけど、今作は回想が多い。義元と元康の関係もそうだけれど、駿府時代がこんなに度々回想で出てくるぐらいなら、普通に元康幼少期からの駿府での暮らしを昔から順に見ていきたかったなあ。でも時系列にしちゃうとアチコチ話が飛んでまとまらないとの判断だったのか。何だかな。

 桶狭間の戦いの前後でも、糸さんを取り巻く状況は大きく変わったはず。それに、先ほど触れた北条への援軍について、氏真の判断に糸さんはどうかかわっていたのだろう。瀬名が囚われの時には彼女は何をしていたのかな?見てみぬふりだったのか、遊び女扱いの一門衆の瀬名なんか知りもしなかったか。

 それにしても、今回の糸さんのお衣装の豪華なこと。前回、雪が降る中でも「薄ら寒い」と瀬名の後姿を見て思った粗末な麻主体の着物とは打って変わり、どう見ても豪華な絹の着物を重ね着して、ふっくらとかわいいフクロウのようだった。さすがに北条氏康の愛娘、実家の財力を感じさせてあまりある美々しいお姿だった。

今回、描かれなかった瀬名

 今回見終わって、姿がなかっただけにすごく気になったのが瀬名だ。前回も彼女が立場を失っていく心細さについて書いたのだけれど、家康の中で今川時代に区切りがついたとすると、彼女を目の当たりにした時に、思いが変化するところがあるのかもしれない。

 つまり・・・彼女も家康にとっては過去の仲間入り、というか。次に瀬名と対面した時に、家康は内心どんな感慨を持つのだろう。信康の嫁、五徳もいる中で。薄ら寒く、30代に差し掛かろうという瀬名。

 今回、家康は氏真に涙ながらに謝った。父と慕う義元公に長きに渡って支えてねと言われていたのにそれができず、兄とも思う氏真に矢を向ける結果になったこと。ただ、駿府にいた松平家の人質が吉田城下でむごたらしく殺されたということはあったけれど、松平家に向けられるべき罰の、その大きな大きな代償を支払ったのは瀬名の実家・関口家だということを忘れていないか。

 鳥居元忠が、氏真が我らにしたことを忘れるなと家康に言い、家康も憎い仇じゃと言いながら、兄と慕う気持ちが上回ってしまったのも、潰された関口家が被った甚大な被害が、本当には家康の身に染みていないからじゃないのか。

 瀬名は、氏真による遊び女扱いなど、駿府での仕打ちの詳細は家康に告げていない可能性もある。三河に来られて家康に会えたのだからもういいや、そんなこと言わずにパパに言われたように笑ってなくちゃ、だったかもしれない。自らの恥との考えもあったかも。もし、家康が関口家の扱い、それを呑み込んで自分の前で笑っている瀬名の思いをちゃんと受け止めていたら、あんなに甘く氏真を許せないのではないだろうか。

 今後、家康が瀬名の元に戻って「氏真に謝ったんだよね」と白状したら、どうなるか。自分の父母までが氏真によって処罰を受けて死に(たぶん。そのポイントがぼやかして描かれている?生きているのか?)、自身も子どもも生きるか死ぬかの辛酸をなめ尽くした瀬名だったら「はあ?謝った?謝ってほしいのはこっちだよ、こっち!何をふざけたことをふたりだけでやってくれてんの?」と怒髪天を衝かないだろうか。

 その氏真の件が、家康夫妻の決定的な亀裂になったりするのかな。妻の実家に対する思いを無下にしちゃいけませんよね、世の旦那様方。