黒猫の額:ペットロス日記

息子は18歳7か月で虹の橋を渡りました。大河ドラマが好き。

【どうする家康】#16 信玄の策にはめられた家康、泣き落としで家臣を動かす

義弟は、血のつながりが無いはず

 NHK大河ドラマ「どうする家康」第16回「信玄を怒らせるな」を最初に見たのは先月30日のお昼だったか・・・BS4Kで見た。そこから、まだ薬でボンヤリしているうちにもう土曜日となり、お昼の再放送を見てまた「そうだブログを書こう」と遅ればせながら思い立った。あらすじを公式サイトから引用する。

浜松に居城を移した家康(松本潤)だが、城下で虎松(板垣李光人)と名乗る少年に襲われる。遠江の民は徳川を恨んでいるという虎松の言葉に、家康は傷つく。一方、信玄(阿部寛)に対抗し、家康は上杉謙信との同盟を探るが、それが武田方に漏れ、信玄を激怒させてしまう。武田との決戦を避けられないと覚悟を決めた家康は、人質として武田に送っている義弟・源三郎(長尾謙杜)を救い出すが、そこには信玄の思惑があり…。(これまでのあらすじ | 大河ドラマ「どうする家康」 - NHK

 そうだった、日曜日の初見の時には、ある言葉が気になって気になって、そこから話が全然入ってこなかったのだった。あんまり重箱の隅をつつくようなことをしてもね、とは思うのだけれども・・・天下のNHKの大河ドラマで全国に向けて発する言葉なのだもの、定義がそのようになったのか、それもアリになったのかと「え?」となった。

 それは「義弟」だ。引用した上記のあらすじにも書いてある。義弟って、自分から見て配偶者の弟じゃないの?あとは妹の夫さん。もしくは、義理の親の連れ子で、自分よりも年少の男子。つまり基本的に「本人とは血のつながりが無い」はず、義理なんだから。私はそういう理解だった。

 「つまり殿の義理の弟にあたる」と源三郎を説明するセリフを言ったリリー・フランキー演じる久松長家は、家康母・於大の再婚相手だから家康にとって血のつながりが無い。だから「義父」で結構。逆に家康のことも義理の息子で結構だ、全然問題ない。

 だけど、於大との息子の源三郎は、於大によって家康とは血がつながっている。

 ご丁寧に画面にも「家康の義弟・松平源三郎勝俊」とご紹介があったが、家康母の於大が産んだ異父弟なのに「義弟」は変じゃないの?とピッとアンテナが立ってしまった。お母さんが同じだよね?だったら義弟じゃなくて父違いの弟だよね?

 それなのに義弟か・・・おかしいな~半世紀以上も日本人をやってきて、違和感がある。単に不勉強かもしれないけれどw  まあね、最近特に自分の記憶に自信がなくて、思い込みだったか?と知っているはずの基本的な事柄にも色々な場面でグラグラして口ごもることが増えた。

 こういう時、最終的に頼りになるのは広辞苑だ。「義弟」の定義についてはこう書いてあった。

①他人同士でありながら、兄弟の約束を結んで弟となった人。弟分。 ②義理の弟。妹の夫、または配偶者の弟。「義弟」の検索結果 - 広辞苑無料検索 (sakura-paris.org)

 ほらね・・・と言いたいところだが、「義理」の関係という謎が残ってしまった。義理の関係とは何ぞや。確認すべく、さらに広辞苑を調べると「義理」の意味の中にこのような説明が。

⑤血族でないものが血族と同じ関係を結ぶこと。「―の母」「義理」の検索結果 - 広辞苑無料検索 (sakura-paris.org)

 ほらね!「義理の弟」には血のつながりが無い。やっぱり半分血のつながりのある源三郎を家康の「義弟」とするのはおかしいと広辞苑が言ってますよ。

 念のために他のサイトでも調べてみた。goo辞書ですね。まず「義弟」。

  1.  義理の弟。夫または妻の弟、妹の夫など。

  1.  血縁関係はないが、兄弟の約束を交わして弟としている人。弟分。(義弟(ぎてい)の意味・使い方をわかりやすく解説 - goo国語辞書

 広辞苑とは説明の掲載順が逆なだけで同じ内容だ。そして「義理」について。

  1.  血族でない者が結ぶ血族と同じ関係。血のつながらない親族関係。「―の母」(義理(ぎり)の意味・使い方をわかりやすく解説 - goo国語辞書

 やっぱり!こちらは「血のつながらない親族関係」だとはっきり書いているので、源三郎は該当しないことになる。

 そう思ったら、こんな説明を書いているサイトもあった。

① 約束によって兄弟となったその弟分。

②直接血のつながらない弟。異父母弟。配偶者の弟、または妹の夫。義理の弟。

 ※思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉一〇「異姓を名乗らせた義弟」出典 精選版 日本国語大辞典 (義弟(ぎてい)とは? 意味や使い方 - コトバンク (kotobank.jp)

 注目は②。「直接血のつながらない弟」とわざわざ直前に書いてあるのに、半分とはいえ血のつながりのある「異父母弟」を直後に並べるこの面妖さ。後に続く「配偶者の弟、または妹の夫」は血のつながりが無いから良しとしても、説明が破綻してませんかね。

 しかし、言葉は変化するもの。松潤ファンを中心とする若い人対象の大河ドラマだから、NHKは変化を先取ったのか。それとも、母の血なんか無視して父の血を中心に考えて「義理」扱いするのが当時の常道だったのか。

 NHKさーん。聞いてますかー。どうなのー。大河ドラマの固定ファン層も置いて行かないでねー。「義弟」については、私はこれまでと変わらず広辞苑を信じることにしたい。あとgooも。

ビックリの少年虎松9歳!登場

 さて、前回終わりで家康を歓迎する踊りを舞っていた引間改め浜松の地元の子どもたちというか娘たち。その中でひときわの美少女が実は少年で、本多忠勝や榊原康政を軽々と蹴散らして家康を襲い、かすり傷を負わせて今回、生け捕りになった。

 少年は「わしを恨んでおるのか」と問われて徳川への恨みを口にした。

  • お前のせいで俺の家はめちゃくちゃになった!(そうだそうだby直虎ファン)
  • 今川様を裏切り、遠江をかすめ取った!お前が全ての元凶だ!
  • 遠江の民はみ~んなお前を恨んでおるわ!徳川家康は疫病神の裏切り者だとみ~んな申しておるわ!遠江から出て行け!
  • 武田様は我らのお味方。我らの暮らしを助けてくれる。武田様こそ新たな国守様にふさわしい。お前なんぞ武田信玄に滅ぼされるに決まっとる。ざまあみろ!

 ・・・と、家康は散々な言われよう。しかし、家康は少年を放免する。数え29歳にして、家康も精神的な成長をとうとう見せた格好だ。

この者は、遠江の民の姿そのものなんじゃろ。こやつが次、我らの前に現れる時、更なる敵となっているかあるいは味方となっているか、それは我らの行い次第。

 放免の際にこの少年は「井伊虎松、我が名じゃ」と名乗った。この少年が将来四天王に数えられる徳川随一の家臣・井伊直政なわけだから、今後、彼に関しては胸アツな展開は約束されている。

 けれど・・・この時、1570年秋だとすると、1561年生まれの虎松はまだ9歳(!)、三河の鳳来寺(愛知県新城市)で出家の上、修行中のはずなんだよね…。よく浜松まで出てきたね、遠江の世情にも詳しかったし。いったいどうやって?忠勝らは、虎松を放免するにしても、迎えに来た踊り子集団の素性をしっかり調べるべきだったのでは?

 この、寺で修行中の子どもがアクロバティックな技を習得して女子と見まごうばかりの姿をしながらめっちゃ強い、というイメージは、源義経と重なる。ちょうど「おんな城主直虎」で虎松役だった菅田将暉が昨年の「鎌倉殿の13人」で義経を演じていた。それにインスパイアされた描き方だったのだろうか?

 子ども虎松は、「直虎」ではまだ天才子役の寺田心が、可愛らしいくりくり坊主の小僧さんを演じていた。今作とはずいぶんと虎松のイメージが異なる。「麒麟がくる」の明智十兵衛と、今作の明智光秀とのイメージの乖離にも涙を呑んだが、それぞれの大河ドラマによるキャラの差よ。

 と言っても、虎松が家康に対面して小姓に取り立てられるのは1575年の事らしいので、5年後のこと。そこまで待てず、井伊直政を登場させておきたかったのはなぜだろう。あれだけボロクソに家康をこき下ろしただけに、5年後の対面シーンでのギャップにはきっとニヤニヤさせられるのかな。

 「直虎」の菅田将暉は素晴らしかったが、今作の板垣李光人も遜色ない井伊直政になりそう。「青天を衝け」での徳川昭武はその気高さに驚かされた。己にも他者にも厳しい優秀な赤鬼登場を待っている。

スパルタ育ちの千代の笑顔が怖い

 今回は、前述の家康の父違いの弟・松平源三郎が人質として預けられていた武田家が、ローマ帝国ではなくて古代ギリシアの都市国家スパルタのイメージだったかと認識を新たにした視聴者が多かったと思う。まったくね。

 もっと言えば、家族によると映画「300」の世界だとか。ウィキペディアであらすじを読むとそんな感じかも。だけど、甲斐の国でそんなスパルタ並みの子弟育成を行ってたなんてファンタジーのイメージが植えつけられちゃったら、山梨県民は困らないのか。時代考証の平山優先生、いいんですか?

 それと、「この勝頼なら長篠の戦で勝てそう」とのツイートを見たが、ホントにね!スパルタ式虎の穴で最強に鍛え上げられちゃった勝頼。今度は信長に勝ってみようか。

 そんなスパルタ式の鍛錬で心身ともに参った源三郎を救い出すにあたり、服部半蔵と大鼠が甲斐に侵入していたけれど、大鼠と戦う時、いつもの張り付いたような笑顔で戦っていた千代が怖かった。大鼠も千代も、中の人たちは身長が同じくらいなのに、千代は大鼠を余裕で屈服させそう。手足が長いのかな。

 だけど、服部党がふたりだけというのが何とも…。あの忍び然とした目立つ出で立ちでいいのか、隠れる場所が見張りの目線の高さだけどいいのか、あの武田菱の覗き窓から外ばかり確認していた赤い頭巾の兵たちは建物の外には出ちゃいけないのか、等々気になってハラハラした。

 まあ、信玄は源三郎一行を逃がすつもりだったとしてもね…赤い人たちは源三郎を背負う半蔵や手負いの大鼠を追ってこないし…華々しいスパルタ軍団vs.服部党で盛り上がるかと思っていたのでちょっと肩透かしだった。

信玄も怒るでしょ

 遠江について「地道にコツコツ民の信用を得ていくほかござらぬ」と言っても、信玄との対立はお尻に火が付いている状況なのでは?そんな時間が残されているのだろうか。

 そもそも「信玄だけは怒らせるな」と信長にきつく言われていると言うけれど…既に怒らせるようなことは家康はやってしまっているよね?信玄に対してそんなに用心深く振る舞っていたとは思えない。

 家康は、信玄との戦は避けられないと言っていた。

信玄は初めから決めておるんじゃ、遠江を切り取ると。怒らせようが怒らせまいが関わりない。ただ時を待っているだけじゃ。

 ドラマを見ている限りでは、家康が言うように信玄が遠江を手中に収めることを決めてしまって細工を巡らせ、じわじわとその策が効いていって徳川方はなす術もなく…という状況で、当然ながら主役の家康がかわいそう、なのだろう。

 でも、そもそも信玄との約束を破って今川氏真を北条方に逃がしてしまったのは家康だし…(気持ちはわかるけど)。それで北条ともいつの間にかよろしくお付き合いしてしまったら、タッグを組んでいた信玄は怒るでしょうよ。いくら海老すくい名人の忠次がサッと謝りに行ったとしても。

 その後、上京して色々と大変だったのは分かるけれど、やっぱり遠江支配については隙を見せすぎたのでは。そこに「切り取り次第なんだから、だったらもらっちゃうよ🎵」と信玄が手を伸ばしてきても、手を抜いていたのは自分なのだから恨むのが筋違いにも見える。

 そこに上杉謙信に起請文なんか送っちゃったらね。「危ういと存じます」と夏目に止められたのに家康はいつも独断で間違える。それに、使者にどうしてわざわざ信玄が支配している信濃を通らせるのか…そりゃ捕まるだろうし、そうなったら言い逃れしようも無い。

 そして、人質も奪い返してしまえば戦は決定的だ。確かに家康は、易々と信玄の策にはまっただけなのかもしれない。「可愛いもんだのう」と言われちゃってたし。でもね。

 (しかし、氏真は信玄の実の甥なのに。今川はずっと追放した父・信虎を預かってくれてたのに。長男を殺したり甥を殺そうとしたり、やっぱり信玄のやったことって戦国時代とは言え倫理的にどうなんだろう。)

「十に九つは負ける戦」に立ち向かってくれる家臣たち

 弟の源三郎が、雪の山越えで足の全指を失いながらも持って帰ってきた信玄の伝言。「弱き主君は害悪なり。滅ぶが民のためなり。生き延びたければ我が家臣となれ。手を差し伸べるは一度だけぞ」

 また「甲斐の侍と戦って勝てる者などおりませぬ」とは、虎の穴を経験したからこその、源三郎の実感のこもった言葉だった。

 徳川方が弱いことは動かし難い。何しろ「十に九つは負ける」とずばり石川数正が言い、酒井忠次もうなずいていた。両家老が認める確かな分析だ。そして、何が信玄に及ばないと家康が問うたら「全て」と数正は言い切った。

 それでも…「わしの独断では決められぬ。お主らには妻子がおり家来もおり所領もある。おのおので決めて良い」と家康に言われた家臣たちの反応が今回の見せ場だった。

  • 皆の衆、どうする。うちの殿はこの通り頼りないぞ。(酒井忠次)
  • 「勝って見せるからついてこい」と言えんとは。情けなや。(本多忠勝)
  • 情けない殿の家臣よりは、武田信玄の家臣の家臣の方が我ら、マシかもしれんのう。(石川数正)
  • 信長とも手が切れますな。代わりに、これからは信玄にこびへつらって生きていけばいい。(榊原康政)
  • この美しい浜松も苦労して手に入れた遠江も、信玄にくれてやりましょう。(大久保忠世)
  • ここまで守り抜いた三河、岡崎も信玄にくれてやりましょう。(平岩親吉)
  • 何もかんも一切くれてやって、信玄の下で惨めに生きていきましょうぞ。(鳥居元忠)

 そして、家康が「戦っても、十に九つは負けるんじゃぞ」と言ったのに対し、忠勝がこう言った。

十に一つは勝てる。殿、その一つを信長は桶狭間でやりましたぞ。信長はやりましたぞ!

 いや~、カッコイイ。痺れる。それに対して「よし、わしもやってやる!」とはならず、グジグジと「わしは信玄に何一つ及ばぬ。全て足りぬのじゃ」なんてボロ泣きするのが家康だ。手のかかることだ。そこに優しいダメ押し。

恐れながら、殿。その代わりに、殿にはこの家臣一同がおります。この一同で力を合わせ知恵を出し合えば、きっと信玄に及ぶものと存じます!(夏目広次)

 どうしてこんなに弱虫の家康が天下を取れたのか、その謎を解き明かすのがこの大河ドラマだと動画「虎の巻」でアナウンスされていたが、前にも書いた通り、それは優秀な家臣たちがいたから。それを再確認する回だった。

 しかし、こうも言えるのかも。家康が涙涙で家臣たちの母性本能をくすぐり、やる気にさせる泣き落としもなかなかうまいものだ。弱き者なりの操縦術。さすが白兎殿だ。

 最後に戦支度で勢ぞろいした徳川勢。藁を使った粗末な甲冑を身につけている家臣などいなくなっている。榊原小平太や平岩七之助などは、それがおもしろかったのに。いつの間にやらバージョンアップしていた。

 次回はいよいよ三方ヶ原だ。2時間で1,000人が命を落としたとか…。夏目広次の見せ場だ。心して見たい。(ほぼ敬称略)