望月の歌を四納言が解説
NHK大河ドラマ「光る君へ」第45回「はばたき」が11/24に放送された。源氏物語を脱稿したまひろ(藤式部)は、これまでの道長との生き方に別れを告げ、羽ばたいていった。まずは公式サイトからあらすじを引用する。
(45)はばたき
初回放送日:2024年11月24日
まひろ(吉高由里子)の源氏物語はいよいよ終盤を迎えていた。ある日、まひろは娘・賢子(南沙良)から、宮仕えしたいと相談され、自分の代わりに太皇太后になった彰子(見上愛)に仕えることを提案。まひろは長年の夢だった旅に出る決意を固める。しかし道長(柄本佑)の反対にあい、ついにまひろは賢子にまつわる秘密を明かすことに。旅立つまひろを思わぬ再会が待ち受けていた。一方、道長は出家を決意する。((45)はばたき - 大河ドラマ「光る君へ」 - NHK)
すぐにも主人公ふたりの別離に話を持って行きたいところだが、まずは望月の歌から。道長の娘3人が后の座3つを独占し一家三后となり、権力絶頂の驕る気持ちから道長が詠んだとされてきた歌についてだ。
しかし、前回のドラマで描かれた望月の歌は、得意満面ではなく、何か寂しげな気配も漂った。現在では解釈の分かれるところを、四納言が今回の冒頭で解説してくれた。
藤原道長の歌の回想:「(このよをば 我がよとぞ思う) 望月の 欠けたることも なしと思えば」
藤原斉信:昨夜の道長の歌だが、あれは何だったのだ?
源俊賢:「この世をば・・・」栄華を極めた今を、謳いあげておられるのでありましょう。何もかも、思いのままであると。
藤原公任:今宵はまことに良い夜であるなぁ・・・くらいの軽い気持ちではないのか?道長は、皆の前で驕った歌を披露するような人となりではない。
藤原行成:私もそう思います。月は后を表しますゆえ、3人の后は望月のように欠けていない、良い夜だという事だと思いました。
俊賢:うん。
斉信:そうかなぁ・・・。
まだ納得できない様子の斉信。彼のような人のために、NHK+はちゃんと解説を用意していた。
清泉女子大学藤井由紀子教授:「このよをば」の「よ」なんですけれども、世の中の「よ」と、「夜」の「よ」がかけられているというふうに考えられていて、「この世が私の世の中だ」っていう風に言っている訳じゃなくて、「今夜は本当に良い夜だな」っていう風に言っているんじゃないかって新しい解釈は言っています。
月は文学的な比喩では后、皇后を表します。この夜、道長の娘たち3人も揃っていて、全員が后の地位に就くっていう、前代未聞の栄華が達成されて、その情景、背景を表しているっていう風に言われています。
望月の「月」にも杯の「ずき」がかけられていて、ドラマでも貴族たち皆で杯を回してお酒を飲んでいるシーンが描かれていましたけれども、誰ひとり重要な人物が欠けることなく、皆で杯を回して皆でこの栄華を達成したんだっていうことを歌っている。皆ありがとう、本当に今夜は良い夜だよねっていう、そういう素直な歌。今夜の喜びを歌った歌だっていうのが新しい解釈になっています。(11/25 話題!リアル道長を深掘り ニュースーン* - #大河ドラマ 光る君へ - NHKプラス)
やはり、これまでの解釈は道長を悪く見過ぎていたようだ。既に結構体調も悪かったらしいこの頃、リアル道長もそんなに誇らしげにイケイケとは詠えない気もするし。気弱になって、みんなありがとう~(泣)の方が納得できる。
その陰には、今回「道長によって奪い尽くされた生涯であった」とナレーションも説明した敦康親王、道長の剃髪の時に仏頂面で参列していた敦明親王がいる。道長に結果的に丸め込まれ蹴散らされ、皇位に就けなかった皇子たちだ。
敦康親王の21歳という若い死の後、道長は灯に映し出された己の影を見ていた。次兄の道兼がまだ荒れて一族の闇を背負っていた頃、掃き清められた道を歩む道長に影を見せた場面があった。それを思い出した。
道長との物語を終える決意のまひろ
その時、縁に出て道長が眺めた月は、雲に隠れていた。たぶん同じ頃、まひろは文机に向かい、長い長い源氏物語に終止符を打とうとしていた。
まひろが書く物語:小君がいつ戻るのかとお待ちなされていたのですが、このように訳の分からないまま帰ってきましたので、がっかりした薫の君は「かえって遣らない方が良かった」などと様々思い、「誰かに隠し置かれているのではないだろうか」と思い込んでしまわれたのは、自ら浮舟を捨て置いたことがおありになったからとか、元の本には書いてあったのです。
ここで脱稿。まひろは心の中で「物語は、これまで」と思い、こぼれそうな涙をこらえて笑顔になった。縁に出たまひろは、満足そうに息を吐き、雲ひとつない半月を空に見上げた。道長の曇った半月とは対照的な、きれいさっぱりのまひろの半月。それをまひろは、しばらく見つめていた。
こんなにも長い物語の原稿を書いたことが無いので、書き終わったらどういう感情になるのだろうかと想像するしかない。本を書いた時、私はむしろ怖くなり、緊張して間違いがないか何度も読み返したものだが、そうか、まひろは泣きそうになりながらも笑うのか・・・そこは脚本家大石静の経験によるのだろう。そんな風に初見では思った。
しかし、一旦最後まで日曜の放送を見終わり、土曜日の再放送を見て、ただ物語を書き終わっただけの感情じゃないと気づいた。そもそも、これは道長に懇願され、まひろが書いたふたりの物語だった。まひろが道長に、出会った頃のふたりを描いた檜扇を貰ったのが大きかった。以前のブログでも書いていた。
まひろは、道長から贈られた檜扇を手に取った。出会った頃の道長、まひろ、追いかけた雀が描かれている。眺めるたび心が喜びで満たされる一品だろう。思いは当時に飛び、まひろは考えた。
まひろの心の声:小鳥を追って行った先で出会ったあの人・・・あの幼い日から、恋しいあの人の側でずっとずっと一緒に生きていられたら・・・いったいどんな人生だっただろう。
近くの雀を目にし、庭にいた女の子は誰?まひろは宮仕えをする女童でも見たのだろうか。それとも、まひろの物語の中に生きる幻影か。
そして、まひろは物語の本筋に目覚めた。ヒロイン紫の上が登場する若紫の帖だ。ただ一人で勝手にストーリーを思いつくのではなく、道長から贈られた檜扇にインスパイアされて、というところが2人の物語らしくて素敵だ。(【光る君へ】#34 まひろ、道長から贈られた檜扇にインスパイアされ、もう1人の自分「若紫」を書き始める - 黒猫の額:ペットロス日記)
この時、「雀」と私は書いているけれど違うらしい。「小鳥」とドラマでは呼ぶので何の鳥か分からないが、丘の上に移住してみたら、日常的にその鳴き声が耳に入る。そのたび、「光る君へ」の幼い2人を思い出す。
今回のドラマでは、古くなった鳥籠も映っていた。なぜ小鳥も飼っていないのに、古くなった鳥籠をまひろの家ではずっとぶら下げているのか・・・誰も片づけないのが不自然だ。まひろが命じて、そのままなのか。彼女の自由ではない「籠の鳥」意識があって、捨てられないのかな。
さて、紫の上が死んだときに、まひろは一旦筆を置き、「終わった」と言って物語を締めくくろうとしていた。でも、宇治で弱った道長に会い、また書いたのが宇治十帖。紫の上は、自分の成仏を諦めても光源氏に手を差し伸べ、だが、宇治十帖の浮舟は、出家によって薫から決然と離れていく。浮舟を探して縋りつくような薫と、対照的な浮舟。
紫の上も浮舟も、まひろの分身。道長は、女の言い分にピンとこない薫のようだ。
まひろは浮舟の自由になる生き方を書き切った時には、今度こそ道長との物語を終える、つまり道長との別れも自然に心が定まったのかもしれない。それで、脱稿した時に涙が溢れそうにもなりながらも、自由になる喜びがあって笑顔も出たのかな。
その気持ちをさらに後押ししたのが、賢子の宮仕え宣言だったのかも。もう賢子も21歳なのだね。まひろは、宮仕えに上がった賢子に、源氏物語と、書き上げたその続きの原稿を全て託していた。宇治十帖を賢子が書いた説が出るのも納得の描き方だった。
その時、賢子が「そんな、形見みたいに言わないで」と言って、まひろが笑ったのが大いに気になった。どうみても伏線?もうラスト3回、まひろの死まで描くか?リアルでは没年不詳だから、彼女がどうこの世を去っても脚本家の自由だ。
まひろは「これを読んでどう思ったか、帰ってきたら聞かせておくれ」と賢子に笑って言った。後に世を去ったまひろを想い、空の月に向かって賢子が物語の感想を語り掛けそうじゃない?妄想しちゃうな。
まひろの決断、受け入れられない道長
まひろと道長の別れの会話も記録しておこう。まずは、倫子様も臨席の表立っての会話から。
まひろ(藤式部):太閤様、北の方様。娘の賢子でございます。(道長、チラリと賢子を一瞥、サッとまひろに視線を戻す)太皇太后様の御為に、精一杯努めることと存じます。何卒、お引き立てのほどよろしくお願い申し上げます。(道長に贈られた織物の上着を着た賢子、まひろと揃って頭を下げる)
倫子様:藤式部はこれからどうするのです?
まひろ:私はこれから旅に出ようと存じます。(道長、顔が不自然に無表情)
倫子様:旅・・・誰と行くの?
まひろ:ひとりで参ります。
倫子様:何故、そのような心持ちに・・・。
まひろ:太皇太后様はすっかりご立派になられ、私がお役に立てることはもうありません。それで、物語に出てきた須磨や明石をこの目で見てみたいと思いまして。
倫子様:まあ、すてきだこと。
まひろ:亡き夫がかつておりました大宰府にも、行きたいと思っております。
倫子様:私と殿も2人で旅に行きたいわねと語り合っておりましたのよ。ねえ。(道長を見る。笑顔で頷く道長)
道長:大宰府への使いの船があるゆえ、それに乗ってゆくが良かろう。気を付けて参れ。
まひろ:はい。
表の顔はここまで。その後、もじもじした道長が、完全に三郎の顔でまひろの局を訪ねてきた。賢子が去るのを廊下で待ちかね、局に入ってくるやご丁寧に御簾を自らの手で下すのがおかしかった。女房を呼んで下げさせている場合じゃないってね。
道長(三郎):(まひろだけになった局にズカズカ入る。手早く、全ての縛りを解いて御簾を下す。まひろの前に座る)何があったのだ?
まひろ:私の役目は終わったと申しました。
三郎:(強く)行かないでくれ。
まひろ:船に乗って行けと仰せになったではありませんの。(むくれた顔全開の三郎)これ以上、手に入らぬ御方のそばにいる意味は何なのでございましょう。(拗ねた目でまひろを睨む三郎)
私は十分やって参りました。その見返りも、十分にいただきました。道長様には、感謝申し上げても仕切れないと思っております。されど、ここらで違う人生も歩んでみたくなったのでございます。・・・(道長を見つめて)・・・私は去りますが、賢子がおります。賢子はあなた様の子でございます。(一瞬、目を見開き、まばたきが激しくなる道長。道長の揺れる瞳がぴたりと止まる)賢子をよろしくお願いします。(頭を下げる)
三郎:(まひろの腕をつかむ)お前とは・・・もう会えぬのか?(みるみる涙が目に溢れそうに。見つめあうふたり)
まひろ:・・・(道長の手を押さえながら)会えたとしても(道長の手を解く)・・・これで終わりでございます。(立ち上がり、局から去る)
三郎:(呆然と1点を見つめ、浅く息をする)
道長は振られた。愛人の座に疲れた有能な女秘書が、社長を振って退社するみたいな感じかな。愛人の自立は、まったく予想外だったようだ。
退職を望む秘書を裏でどんなに慰留しようとも、社長は、莫大な資産を持つ社長夫人と別れる気はない。資産によるバックアップで、自分の地位を築いてくれたに等しい夫人には感謝するしかない婿だから。自分の地位はそのままで秘書にも僕を支えてずーっと居てもらいたいだなんて、虫が好過ぎる話だ。
秘書はよくやったよ。50歳にもなろうというところまで心血を注いで命じられた作品を期待以上の、千年後の歴史にも残るほどの素晴らしい物に仕上げ、裏でも社長の長女を精神的に開花させ国を支える女丈夫に育て、最近は瀕死の社長のメンターとしても見事に社長を返り咲かせた。陰に日向にここまで支えてきたのだから、もう十分。なんて有能なの!
こういう例えで考えると、まひろの気持ちも十分共感できる。しかし、柄本佑の道長があまりにも良いのでねえ・・・涙が溢れそうな姿を見て、道長に大いに同情して「可哀そう、三郎の頃から純粋にまひろを好きなのに」みたいな気持ちに、最初はなった。
所詮、身分を超えられない2人だった。まひろ、苦しかったね。道長は、まひろの苦しさを十分には理解せず、その上に胡坐をかいてしまったのではないかな。ボーっとした三郎だし、貴族のボンボンだし。
そして、まひろはここで、ようやく賢子の真実の父は道長だと告げた。
自分が去っても、羽ばたいていく賢子を見守ってほしいと託す気持ちだったのだろう・・・と思ったら。賢子に手を出さないよう釘を刺したのでは?という説をネットで見て、なるほどと思った。
確かにそうだよね、娘だよと言っとかないと、まひろ命の道長が何をするか・・・相変わらず深くまひろを愛する(まひろに依存する?)道長が、まひろが居なくなった後に、たまらず賢子になだれ込みそう。光源氏も、憧れの藤壺の宮ゆかりの姫だと聞くと見境ないところがあった。だから娘のように年の離れた女三の宮の降嫁も断らなかった。まひろの娘=道長の娘だと知らせておかないと危険だ。
娘だと知って宮の宣旨(賢子を「越後弁」とご命名。今や頼もしいね)が案内する賢子を陰から見る道長が、顔をくしゃくしゃにして涙していた。どういう心境かな・・・と思って副音声の解説を聞いてみた。
副音声:宮の宣旨に導かれ、廊下を行く賢子。
宮の宣旨:あちらにも、我らの勤めの場がある。
賢子:は。
副音声:陰から見ている道長。美しく、聡明な娘の姿。こみ上げる悔しさと、痛みと切なさに、道長の顔が歪む。
悔しいんだ・・・あと、痛みと切なさと。篠原涼子の往年のヒット曲「愛しさと切なさと心強さと」みたいだが、道長は、愛人の自立が悔しいのか。愛する人が自分の子を産み育ててきたのを20年以上も知らされなかったことが悔しいか。そうさせたのは自分だと分かって心が痛むか。まさか、若くてまひろ似の賢子に手を出せないのが悔しいとかは止めてほしい。
以前、まひろに「不義の子を産んだのか」と道長がズバリ聞いた時に、自分の子だと分かって聞いたのかと普通は思ったよね。でも、そうじゃなかった。ぼんやりの三郎め。まひろには夫宣孝と自分以外に第3の男がいると考え、猜疑心から聞いていたとしたらサイテーだ。
いや、それが平安のスタンダードなのかな。まひろには結局、周明もいる。早速大宰府で再会し(脳裏に「東京ラブストーリー」のイントロが流れそうだった)、シューッと吸い寄せられてたもんなあ・・・まひろは良いことしか覚えてないみたいだけど、周明はあなたをひっかけようとしたロマンス詐欺師だったのだよ、思い出してね。
倫子様、どこで気づいたのか😢
道長と倫子様に挨拶を終え、賢子と廊下を下がるまひろを、最初は倫子様が追いかけてきた。
倫子様:藤式部。(倫子が来る)あのこと、考えてくれたか?
まひろ(藤式部):は・・・心の闇に惹かれる性分でございますので、「枕草子」のように太閤様の栄華を輝かしく書くことは、私には難しいと存じます。
倫子様:あらま。
まひろ:どうかお許しくださいませ。
倫子様:仕方ないわね、旅に出てしまうし。
まひろ:長い間、お世話になりました。(頭を深々と下げる)
倫子様:くれぐれも気を付けてお行きなさい。
まひろ:はい。
倫子様:(柔らかな笑みで応え、廊下を下がっていくまひろと賢子を目で追う)
まひろに「殿の栄華を書いておくれ」と依頼していた倫子様。源氏物語を書き終えたまひろに、表向き「今度は私の仕事に取り組んでね」と言いつつ、自分の監視下に置こうとする一手か?とも見える動きだったが、あえなくまひろに断られてしまった。
でも、倫子様はさっぱり、執着しない。「あらま」「仕方ないわね」で終わり。と言うか、まひろが旅に出ると聞いて、むしろ安心したのではないだろうか。まひろの方から殿から離れてくれる、やれやれだと。
じゃあそれで倫子様の下に道長が帰ってくるかというと、なんとなんと出家希望。現世よりもあの世を選ぶというのだから、倫子様の顔色が変わっても仕方なかった。そこでとうとう心の奥底にしまっていた言葉が漏れた・・・という感じだった。
倫子様:今日はお加減いかがでございますか?
道長:話がある。(人払い)・・・出家いたす。(言葉を失っている倫子様)頼通が独り立ちするためにもその方が良いと思う。
倫子様:殿が、頼通のためにご出家なさるのでございますか?
道長:体も衰えた。休みたい。
倫子様:お休みになりたければ、私の下で、現世でお休みくださいませ。今わの際でもありませんのに、ご出家なぞありえませぬ。
道長:(そろりと動いて、倫子の前へ)気持ちは変わらぬ。
倫子様:(低い声で)・・・藤式部が居なくなったからですの?
道長:(フッと笑って)何を言うておる。
倫子様:(道長の手を取り、強く)出家はおやめください。
道長:(倫子の手を解き、立ち上がる)許せ。
倫子様:お待ちくださいませ!
道長:(廊下を歩き始め)太皇太后様に申し上げてくる。
倫子様:(怒りを含んだまなざしで道長の背を見る)
ああ、倫子様!何と悲しい。まひろが道長の手を解き、道長が倫子様の手を解く。表向きには6人も子を授かったおしどり夫婦の仲なのに、自分には結ばれていなかった道長の心の手。それを思い知らされた瞬間だったのでは。
ここまで表情を崩さず「オホホホホホ」と笑って何事もいなしてきた倫子様が、あんなにも怒りを露わにしていた。上流貴族の夫人として、耐えてきたのだよね。道長の心に居るのはまひろだと、遅くとも、道長とまひろが宴で歌を公然と詠み合ったあの時に気づいただろう。それを見た倫子様が、不快になって下がってしまった時ね。
また、道長が(というか、百舌彦が)まひろを宇治に呼んだ時も、誰が呼ばれたのか倫子様の耳に入らないはずがない。その後、道長があっさり生気を取り戻してしまったのだから、一体誰と会ったの?と不思議に思わないはずもない。
最近になって、昔のように倫子様の手元には猫が戻ってきているのが気になる。猫好きとしては猫様ご登場はいつでも嬉しいのだけれど、まひろに執筆依頼を断られて赤染衛門に栄花物語を書くように頼む場面でも、倫子様は丹念に猫様を撫でている。「猫がいなけりゃ息もできない」(by 村山由佳)くらい、心はズタボロかもね😢
それでもまひろを貶めたりも意地悪もしない。上流の姫育ちらしく、こんなにも出来た人なのに。貴族の姫でも、人の心はままならないね。
倫子様の嘆願も空しく、道長は出家した。暗い顔の倫子様の涙が悲しい。でも、まひろの代わりに栄花物語を書くように仰せつかった赤染衛門との強い絆が救いだ。
撮影協力に「下田市ロケーションサービス」
ところで、旅に出る前のまひろに対して、乙丸の妻のきぬが「お方様。この人がお供いたしますゆえ安心でございますよ。(乙丸に)あんたがお方様を無事に連れて帰ってくるんだよ。私はここで待ってるから」と力強く宣言していたのが、伏線じゃないかと気になる。
もしかしたら、乙丸は旅先で命を落として帰れないのでは・・・「ここで待ってる」と言ったきぬは、帰らぬ乙丸に涙することになるのではないかと嫌な予感がした。もうドラマも残り3回だし。
それとも乙丸は京に戻り、まひろは客死するのか宋に周明と旅立って戻らないのか?彰子に「そなたも必ず生きて帰って参れ。そして私に土産話を聞かせておくれ」と言われた時、まひろは「はい」と返事をしなかった。
ちょっと待て、帰らないつもり?と思ったら、まだ道長とも一波乱あるのだという(NHK+で見た吉高由里子のインタビューによる。)。つまり、帰京するのだよね。良かった。
まひろが須磨の浜に着き、全てを投げうつように市女笠を外し、杖を捨てて駆け出した、サブタイトル「はばたき」を象徴するシーンは、やっぱり感動した。50歳にもなっているし、じっと座って物しか書いてこなかった運動不足で大丈夫?と余計なことも頭をかすめたが。
大作も書き終えた。そして、愛しいけれど、これまで自分を縛ってきた存在でもあった道長。そのくびきから逃れ、何もかもから自由になった気分だったのではないか、空を飛ぶ小鳥のように。もう鳥籠は処分したかな。
感動のシーンだったのだけれど、SNSでは関西方面から「須磨じゃない」「あんな岩は無い」「淡路島が見えない」「海の色が違う」という声が上がっていた。刀伊の入寇でCGチームは多忙を極めていて、須磨どころじゃなかったのかもね。
あそこは、「龍馬伝」で最終回に出てきた浜辺に似ているような・・・茨城かそこら辺の海だったか、と思ったら、オープニングにそれらしき名前が挙がっていた。
オープニングテーマで「撮影協力」として挙げられていたのは
- 岩手県
- 奥州市
- 宮内庁京都事務所
- 下田市ロケーションサービス
・・・の4団体。④の下田市と言えば、伊豆半島のほぼ南端のあそこだろう。吉高由里子が撮影に来て、開放感いっぱいに浜辺を走っていたのは下田市だったのか。地形もそうだが、太平洋と瀬戸内の海じゃ、水の色は確かに違いそうだ。
まひろは、自分が浜辺で走っている間に道長が出家して剃髪に及んでいるとは思ってもみないだろうな。剃髪後、道長が言った。
道長:あっと言う間に何もかも過ぎていった。あっけないものだな、人の一生とは。
ほんとだよ・・・年末にこれを聞くと心が騒ぐ。しかも、もう「光る君へ」が終わってしまう。あっという間の1年だった。
さてさて、次回はそのものずばりの「刀伊の入寇」がサブタイトルになっている。やれ戦が無い大河ドラマなどは見る気がしないだの不貞腐れていた御仁も、たっぷり平安の武士の戦を楽しめるだろう。
隆家を演じる竜星涼も、「ちむどんどん」のニーニーの悪評(いや、あれはあれで真に迫っていたから嫌われちゃったのだよね)を払拭し、人気爆上げのチャンス!ぜひ国を救ってね。
(ほぼ敬称略)