黒猫の額:ペットロス日記

狭い場所から見える景色をダラダラと。大河ドラマが好き。

【べらぼう】#2&3 アイデアとパワー溢れる蔦重。応援団はそこかしこ、忘八オヤジの心もつかむ

今年もぐずぐずダラダラ書きたい

 2025年のNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」の放送が始まり、2回(1/12)、3回(1/19)と順調に回を重ねている。

 当方、昨年はコロナ、今年はインフルエンザで出足を挫かれているものの、今日はようやく起き上がり、幸いにもパソコンにも向かえている。今回は2回分をまとめて、また思いつくままグズグズダラダラ書いておきたい。今年もお付き合い、ありがとうございます。

 この「べらぼう」の舞台は、主人公の蔦重が生まれ育った、かの吉原。だから腹の底には「あんたも本当は女人を食い物にした一人なんじゃないのか」という疑念は正直ある。

 だが、ドラマでは清々しいヒーローだよね、どうにも格好いい。吉原をどうにかしたい蔦重の思いに、忘八と言われる徳を忘れ切った親父どもからも応援団が出てきたり。先が楽しみになっている。

花の井の啖呵にしびれた第2回

 では、第2回のあらすじを公式サイトから引用しよう。幼なじみの花魁花の井が大活躍、蔦重を食う存在感だった。

(2)吉原細見『嗚呼(ああ)御江戸』
 蔦屋重三郎(横浜流星)は吉原の案内本「吉原細見」で、吉原に客を呼び寄せる案を思いつく。細見の序文を江戸の有名人、平賀源内(安田顕)に執筆を依頼するため、地本問屋・鱗形屋孫兵衛(片岡愛之助)に相談にいく。自ら説得できれば、掲載を約束すると言われ、源内探しに奔走するが…。一方、江戸城内では一橋治済(生田斗真)の嫡男・豊千代の誕生を祝う盛大な宴が行われ、御三卿の面々や田沼意次(渡辺謙)らが集まっていた。(【大河べらぼう】べらぼうナビ🔎第2回 - 大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」 - NHK

 ちょうどこの「べらぼうナビ」に、「吉原細見」なんぞやとの説明があった。ドラマの中で、綾瀬はるか(九郎助稲荷)も説明していた。年2回の発行だそうだ。

吉原の地図や女郎の名前、料金、イベントなどを記したいわゆるガイドブック。冒頭の「序」は今でいう本の推薦文、帯のような存在で、平賀源内や山東京伝のような著名人が書くこともありました。(同上)

 このガイドブックの「序」によって「いっちょ吉原に繰り出してみっかって思わせてえのよ」と蔦重。そこで、情報をアップデートして内容を整えた上で、当時コピーが秀逸で売れに売れていた歯みがき粉のコピーライターを引っ張り出して「序」を書かせようというのが蔦重のアイデアだった。

 この歯みがき粉の売り口上を、蔦重は花の井と息ピッタリに諳んじて見せた。よほどの大ヒット商品(宣伝文句)だったらしい。

蔦重:東西東西、ふしあわせ商いの損あい続き・・・

花の井:きくかきかぬのほど夢中にて、一向存じ申さず候。

ふたり:歯磨き嗽石香!

九郎助稲荷の訳:金に困って出したから、効くかどうか分かんない。でもどうかひとつ助けると思って買ってちょうだい!

 口が回るよねえ、綾瀬はるかも加えて、真に滑舌が良い。最初は「は?何を言ってるんだ?」と思ったけど、意味を分かって見てみれば、江戸っ子っぽい歯切れよいセリフ回しに感服する。

 この引き札を書いたのは平賀源内ということで、まずは細見発行元の鱗形屋の許しを得た上で、蔦重の源内探しが始まった。この鱗の旦那を演じるのがラブリンこと片岡愛之助。大河はいろいろご出演だが、ラブリンは一筋縄では済まないよな。第3回の終わりでニヤリとしていた。

 話を戻すと、平賀源内は田沼屋敷に出入りしていると花魁から聞いて、初回の「厠の男」を思い出した蔦重。この男こそが本当は源内で、都合が良過ぎるじゃないか・・・と突っ込みたくもなるが、まあご愛敬か。

 で、源内に「タダで会わせるってわけにゃあいかねえな」と担がれ、蔦重が源内と連れの浪人の若侍を吉原に連れていくことになったのだった。

 ここでノーアイデアの蔦重を救うことになったのが、花の井だった。通り一遍の吉原案内で満足などしない平賀源内の、心の機微を突いてのサービスを提供できるのが花魁の凄みってことなんでしょう。

 源内は男色専門、しかも恋人・二代目瀬川菊之丞を亡くしたばかりだった。源内は松葉屋には「瀬川」という花魁の名跡があることを知っていて、「瀬川」と名乗る誰かと過ごしたい望みがあった。

 ここらへんを種明かしするセリフを小芝風花がまあ、カッコよく粋に喋る。よく口が回るよ、一体どこで息継ぎをしているんだか。また、亡き恋人を思い浮かべている源内(安田顕)の切ない無言の芝居もグッときた。

平賀源内:お前さん、改めて見ると相当いい男だね。

蔦重:え?

源内:(蔦重に迫る。逃げる蔦重)いいじゃない。いいじゃない!うん!なあ、お前さんが花魁の格好しとくれよ。そしたら俺、書けんじゃねえかなあ。うん!

蔦重:花魁の格好?

源内:ハハハハ!何もしやしねえよ。(蔦重の膝を叩いてさする)

蔦重:(女の仕草で)ほんだすかえ?じゃあ、やりましょうか。

(戸が開く音)

花の井:おぶしゃれざんすな!(傘をさして座敷に颯爽と踏み込み)べらぼうめ!(傘を閉じ、膝を付いて)平賀様、ご無礼仕りんす。なれど、男を差し出したとあっては吉原の名折れ。叶う事なら、吉原はあの平賀源内をも夢幻に誘ったと言われとうござりんす。

源内:ハハハハ。女郎が男の格好をして俺の気を引こうって魂胆かい?

花の井:男?果たして男かどうか。今宵のわっちは「瀬川」でありんす。

蔦重:瀬川って・・・。

花の井:不躾ながら、平賀様が瀬川をご所望なさるのを耳にいたしんした。「ここにも瀬川はいないのか」と。「にも」とおっしゃるその心は、平賀様の先だってお亡くなりになられた愛しいお方は、二代目瀬川菊之丞様だからではござりんせんか?平賀様は今宵、同じ「瀬川」という名の者と過ごしたかった。たとえそれが、別の誰かでも・・・。

 今の松葉屋に「瀬川」はおりんせん。けんど、わっちでよければどうぞ「瀬川」とお呼び下さんし。引け四つまでのたかが戯れ。咎める野暮もおりますまい。

源内:諸国大名弓矢で殺す 松葉の瀬川は目で殺す・・・ってなとこかな。

花の井:へえ。

源内:うん。んじゃ・・・な。(蔦重に目配せ。花の井も)

蔦重:(花の井に)ちょ・・・お前・・・。

源内:うん(アゴで蔦重に出ていけとアピール)

蔦重:わかりました。お楽しみくだせえ、ご両人!(退散)

 ということで、花の井の完勝。すっかり源内の心をつかみ、吉原細見の「序」を書かせることに成功し、ここぞで蔦重を助けた格好になった。蔦重に「やっぱり花魁てすげえわ。ありがとな。助かったわ」と礼を言われて、花の井はひとこと。

花の井:朝顔姐さんのこと、悔しいのはあんただけじゃないから。吉原を何とかしなきゃって思ってんのもあんただけじゃない。籠の鳥にできることなんて知れてるけど・・・あんたは一人じゃない。

 ふー、花魁いいね!ヒューヒューだ。

源内の「序」は

 花の井が登場する前、自分は平賀源内を知る「銭内」だと接待する蔦重を煙に巻きながらも、源内はちゃんと取材を始めていたように見えた。真面目というより、そういうアレコレが知りたい性分なんだろうね。

  • 吉原に人を呼ぶ「序」を書いてくれったって、これじゃあ源内先生どこを褒めたらいいのか分かんない。
  • よその岡場所と比べて吉原の良いとこってどこだい?

 女が綺麗、芸が確か、食事も華やかで・・・と蔦重は答えるが、深川芸者はみんな三味線が操れる、食事はマズいと源内に返り討ち。蔦重が強調出来た吉原の長所はこれだった。

蔦重:とにかく、好みの女が必ず見つかります。なんせ、3000もいますから!

銭内(源内):へえ、ほんとかい。

蔦重:ええ、どんな好みの人でもいい女が必ず見つかります!

 それで出来上がった源内の「序」は、しっかり自分の目で見定めに回った上で、蔦重の言葉にも沿ったものだった。人気戯作作家は、案外ちゃんとしてる。

「女衒、女を見るに法あり。一に目、二に鼻筋、三に口、四に生え際。ついで肌は歯は・・・となるそうで、吉原は女をそりゃ念入りに選びます。

 とはいえ、牙ある者は角なく、柳の緑には花なく、知恵のあるは醜く、美しいのに馬鹿あり。静かな者は張りがなく、賑やかな者はおきゃんだ。何もかも揃った女なんて、ま、いない。それどころかとんでもねえのもいやがんだ。骨太に毛むくじゃら。猪首獅子鼻棚尻の虫食栗。

 ところがよ。引け四つ木戸の閉まる頃、これがみな誰かの良い人ってな摩訶不思議。世間ってなあ、まあ広い。繫盛繫盛、ああお江戸。

福内鬼外戯作」

 さすがの一言。当然、源内の「序」は鱗形屋に採用され、蔦重が内容の刷新にも取り組んだ新しい吉原細見は、忘八店主らの期待するところにもなり、一般の話題も呼んで良く売れた。

蔦重が成したブレークスルーがすごい

 しかし・・・細見は「源内か、ならちょいと読んでみよう」で売れただけで、蔦重の所期の目的「吉原に人を呼ぶ」までには至らなかった。ここで、すぐに次の一手のアイデアを打ち出せるところが蔦重の凄いところだ。どういう頭をしているんだろう。

 第3回のあらすじを見てみよう。

第3回「千客万来『一目千本』」

 蔦重(横浜流星)は『吉原細見』の改(あらため)を行ったあとも、女郎たちから資金を集め、新たな本作りに駆け回る。駿河屋(高橋克実)は、そんな蔦重が許せず激怒し、家から追い出してしまう。それでも本作りをあきらめない蔦重は、絵師・北尾重政(橋本 淳)を訪ねる。そのころ、江戸城内では、田沼意次(渡辺 謙)が一度白紙となった白河松平家への養子に、再び田安賢丸(寺田 心)を送り込もうと、将軍・家治(眞島秀和)に相談を持ちかける…。(【大河べらぼう】べらぼうナビ🔎第3回 - 大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」 - NHK

 普通だったら、先の細見に引き続き、一般に広く売って吉原の魅力を紹介する別の本を出すことを考えそうなものだ。それならわかる。しかし蔦重が考えたのは、レベルが違った。「本屋に並ばねえことを逆手に取る」というのだ。

 本は出すけれど、一般には買えない受注生産本にする。欲しければ、吉原に来て馴染みになるしかないと。内容も、女郎を直接には描かない。流行りの投げ入れ花になってる形で性格まで見立てるという、ある意味謎解きが堪能できるような作りの本。仕上げは男が多数出入りするところにサンプルを撒いて、話題作りはバッチリというね。

 ここは史実なんだもんねえ、その何段ものアイデアのジャンプアップというか、仕掛けのブレークスルーはどうやって?と目が覚める思いだ。さらに、入銀本という企画をでっちあげてから本当に実現してしまい、ファンドレイジング方式というか、後の鬼平やら客の資力を利用する手法もそうだけど、単なる本好きじゃ思いつき実現するのは難しそうだ。

 音羽の姐さんも、新潟の古町に売られていった。「この妓らは、わっちが手ぇ離したら終わりだと思ってやってきた」と、梅毒で苦しむ女郎の面倒を見てきた女将のきく(かたせ梨乃)も「もう見世畳んじまおうかと思ってるんだ」と苦境を訴えた。

 「女将さん、もうちっとだけ耐えてもらえねえすか」と頼む蔦重。吉原の女たちの行く末を心底憂える、彼の必死さが生んだ奇跡ってことなのか。それで九郎助稲荷が乾坤一擲、「これしか中橋」の案を授けたか。とにかく彼の才知に感心した。

人の痛みに鈍感?

 話が少し戻るが、蔦重が「吉原細見」の刷新に取り組んだことを喜ばなかったのは高橋克実演じる義父・駿河屋市右衛門だった。鱗形屋が蔦重の細見改めへの献身を見て、良かれと思い、奥付に彼の名を入れその事情を説明したところ、訳を知った駿河屋は「てめえいつから本屋になったんだ?」と、またも蔦重に暴力を振るった。

 もうね・・・この時代はセックス&バイオレンスは仕方ないのかと思うけれどもね、NHKの看板の大河ドラマで毎回主人公がひどく叩かれるのを見るのは忍びない。初回の桶伏せも酷かったよね。こちらは慣れてない。特に麗しい平安大河の後だから、考えてほしいよ。

 きれいごとに描きたくないNHKの本気は分からないではない。けどさ、見境のない暴力でドラマを見るのが嫌になっちゃうヤワい現代の視聴者の気持ちも分かってほしい。

 茶屋経営をサボってるといじられても「そこだけは言うてもおくれな小夜嵐!」と、笑いで受け流す優しい次郎兵衛兄さんが、やはり駿河屋に殴られ鼻血を流すのも大概にしてほしい。人が鼻血を流していたら普通の神経だと心配するんであって、ちっとも面白くなんかないからさ。

 このドラマの作り手は人の痛みに鈍感?なんか暴力大好きなバラエティー番組の収録現場の粗雑さを見るようで、ヤダなあ。

 (粗雑と言えば、みんなで本を作っているんだと思って軽快なBGMに乗せられてうっかり見ていたら、女郎の本業進行中の画像が無造作に被さってくるところも嫌な感じがした。女郎にとっては確かに日常、でもあれは無くても良くない?)

 第3回で蔦重が次の一手を店主らに諮った時も駿河屋は激高し、今度は蔦重を蹴り損ねて自ら階段下に落ちた。それがある意味、暴力を振るった人間へのドラマとしてのお仕置きか。

 駿河屋に「出てけ」と追い出された蔦重は、「親父様の機嫌より河岸が食えるようになる方が大事だろ。吉原に客が来るようにすることの方がよ」と、かたせ梨乃の営む河岸見世に転がり込み、新規本の企画を続行。遊女らの協力も得て、めでたく本は完成した。

 本の制作過程では、北尾重政という絵師(「ちりとてちん」の弟君だね)や、現代にも残る彫師や摺師の貴重な仕事が見られた。美術さんありがとう。ドラマの蔦重ご本人も、女郎を花に見立てる面白さや、本を作る喜びを感じたらしいが、昨年の大河「光る君へ」での源氏物語本が作られたシーンを思い出させてくれた点でも良かった。

 平安のあの頃は、藤原道長の娘・中宮彰子という最高の身分の女性が、宮廷の高級女房を率いて書き写して本を作った。一般民衆が読むこと等及びもつかない。しかし、江戸の蔦重の作った本は、版画という出版技術の発展を経て、女郎屋の女郎たちにも楽しんで読まれている。この広がり。何かジーンとくる。

忘八なりに蔦重を助ける扇屋

 この蔦重と駿河屋の間を陰で取り持ったのがちょっと意外な人物だった。忘八の店主のひとり、扇屋宇右衛門(演・山路和弘)。蔦重が本の話を諮った時も「実は、うちの馴染みからも配り物の本、作ってほしいとせっつかれててな」と言って受けが良かった彼が、駿河屋に物申したのだった。

扇屋:(「一目千本 華すまい」をめくりながら)よう。これ玉川がタンポポってなあ、これはどういうことかね?ええ?

駿河屋:要るんなら、どうぞ持ってってくだせえ。

扇屋:まだ続けんのかい、こんなくだらねえ喧嘩。片手間に本作るくらいいいじゃねえか。

駿河屋:じゃあ、息子が今日から八百屋もやりますってったら許しますかい?

扇屋:ずっと聞きたかったんだが、重三だけはよそに出さなかったのは駿河屋を継がせる心積もりだからか。目端が利いて知恵が回って度胸もある。まあ、何よりてめえがなんとかしなきゃってあの心根。誰だって手放したかねえよなあ。

駿河屋:俺のこと、勝手に決めつけねえで・・・

扇屋:で、どうすんだい。このまま重三が戻ってこなかったら。

駿河屋:そもそも親でも子でもねえんだ。吉原から追い出すだけでさね。

扇屋:それが、らしくねえと思うんだよなあ。可愛さ余って憎さ百倍なんて、お前さん、まるで人みてえなこと言ってるよ。忘八のくせに。忘八なら忘八らしく、ひとつ損得ずくで頼むわ、なあ。まあ、とにかく店に置いた方が良いと思うぜ、これ。面白えから。ハハハハハ!

 この後、駿河屋の女将ふじ(飯島直子)が「一目千本」を見て大笑いするのが良い。トリカブトに見立てられた常磐木の、いわゆる腹上死を「食らうと死ぬってか」と駿河屋夫婦で大受けだった。(こういう意味がある女郎の本業描写にはあまり嫌悪感を感じないのだけどな。)

 ふじは「よくここまで見立てたもんだよねえ。誰よりも、この街を見てんだね、あの子は」と蔦重を評した。半月後、吉原には客が戻り、駿河屋も、とうとう「志津山の葛、最高だった。まあせいぜい吉原のために気張ってくれ」と蔦重に言うに至った。

 「思いつく限りのことはやった。後は神頼み」と言う蔦重の必死さが、こうやって思わぬ応援の輪を広げていったのだろうね。

大暴れしそうな石坂浩二vs.渡辺謙

 第2回で吉原への道すがら(平賀源内はすっきり黒の衣装にお着換え)、南鐐二朱銀の講義を源内から聞かされた蔦重だったが、それが江戸城内の田沼意次(渡辺謙)のセリフにリンクしているのが良く考えられていた。

 「金の手綱を握り直したい」意次だが、銀の採掘の重要性を理解しない老中は「米を高く買えと商人に命ずれば済む話」と一蹴。この眉毛の長すぎる重鎮・松平武元をかつてのミスター大河・石坂浩二が演じている。柳沢吉保(元禄太平記)、源頼朝(草燃える)などが懐かしい。最後にご出演だったのは何だったろう。大暴れが楽しみだ。

 既に吉宗がやった失敗を、またやれと言う武元。温故知新は大事だよ、過去の誤りからも学ばないと。意次は、元は足軽の家の出と出自が低いから、強く出られないのだろう。「恥を知れ!」とまで言われ頭を下げる、気の毒な渡辺謙だ。横で調子を合わせる老中のひとりが相島一之で、絶妙なタイミングで笑わせてくれた。

 第3回で、10代将軍家治の信任篤い田沼意次は、田安家の賢丸(演じる寺田心は、「おんな城主直虎」では井伊直政の幼少期を可愛らしく演じていたのに、大きくなっちゃって!)を白河松平家の養子にすることを家治に勧め、そうなった。眉毛の右近将監様・石坂浩二にも「上様を丸め込んだ」と怒られていた。

 これは吉宗の血を引く御三卿の面々を考えると、大きな意味合いを持つ。特に、後述する一橋治済にとっては。

 今ドラマでの田沼意次は、どの程度その意図があるのだろう。一橋治済のために動いているのか?この時点では家治の嫡男・家基は存命だし、ドラマでのセリフの通り、能力ある賢丸が部屋住みのままでは「哀れ」で、腕を振るわせたいと真に願ってのことなのか・・・それとも四角四面でうるさい賢丸を、間違っても将軍になどしたくなくて、これ幸いと白河松平家に追いやったか。さて。

 田沼家の用人役でネプチューンの原田泰造が出てきたので「おお!」と思った。彼の過去の大河での演技は大いに記憶に残り、「龍馬伝」での近藤勇の切れ味はゾクゾクした。「篤姫」での大久保利通も。芸人さんの中で、彼ほど上手な役者が居るのかな。今作でも大活躍してほしい。

傀儡師・一橋治済、にこやかに不気味に登場

 第2回の終わりで嫡男豊千代が生まれた祝いの席で、人形遣いの傀儡師のまねごとをしていた一橋治済は、「鎌倉殿の13人」で源仲章を怪演した生田斗真が演じていた。笑顔が爽やか、一見大らかな人物と見えるがサイコパスなのだろう。「まさかのことなど、起きてはなりませんしなあ」と子を抱きながら言っていたが、つまりは、まさかのことを起こす気満々。ああ恐ろしや。

 豊千代は、将来の第11代将軍家斉。父の意向でその地位に就き、操られる。何しろ男女逆転「大奥」で仲間由紀恵がコワーく演じた治済役、脳裏に焼き付いて忘れられない。ちなみに息子の家斉は、今作で蔦重の義理の兄・次郎兵衛さんを可愛らしく演じている癒しの中村蒼だったよね。

 第3回の終わりでは、ライバルとなる御三卿の田安家当主(寺田心の賢丸の兄)が早くも命を落としたようだった。その場面に治済が人形を操っている姿がオーバーラップしただけで、何かやったよね?と思わせられ、震えあがった。今後、嵐を巻き起こすのは間違いない。

 この時代の江戸城パートは、はるかかなた昔のフジテレビ(大変なことになってますな)の「大奥」では側室お知保の方を桜田淳子が演じていたような記憶がある。あれ?最近のフジテレビ版「大奥」では、花の井役の小芝風花が家治の正室だっけ?

 それは見逃してしまったが、ここらへんは幻の11代様家基が死ぬこともあって悲劇的、かなりドロドロ。それを裏で牽引するのは一橋治済だ。蔦重の真っすぐなひた向きさ、爽やかさを生かすダークヒーローが生田斗真の治済なんだろう。ぴったりだと思う。

 ところで、花の井に50両を差し出し、親の遺産を溶かした鬼平は、もうドラマではお役御免なのか?中の人が忙しいのかな。時々でも良いから、出てきてほしいなあ。

(ほぼ敬称略)