=緒形拳の孫で、緒方直人と仙道敦子の息子
NHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」第26回「信長を笑わせろ!」が7/5に放送され、信長甥の織田信澄が舅のオロオロ明智光秀を操るという斬新な解釈によって、戦国最大のミステリー「本能寺の変」を描くようだと分かった。
まずは今回のあらすじを公式サイトから引用する。
第26回「信長を笑わせろ!」◆◇あらすじ◇◆
信長(小栗旬)は、長宗我部元親(磯部寛之)との約束を翻し、労せずして阿波と讃岐を手中に収める。元親は激怒し、間を取り持った光秀(要潤)は苦しい立場に陥る。そんな中、信長は甥(おい)の信澄(緒形敦)が長宗我部と内通して謀反を企てていると疑い、蟄居(ちっきょ)を命じる。光秀から事の顛末(てんまつ)を聞き、信長の苦しみを察した小一郎(仲野太賀)と秀吉(池松壮亮)。羽柴家一同である計画を立て、信長と市(宮﨑あおい)を長浜城に招く。(第26回「信長を笑わせろ!」まとめ|大河ドラマ「豊臣兄弟!」 - 「豊臣兄弟!」見どころ - 大河ドラマ「豊臣兄弟!」 - NHK)
まずは信澄を演じる中の人・緒形敦が、あの緒形拳(緒形拳 - Wikipedia)の孫だとのことで話題だ。
大河ドラマ歴を確認するだけでも、お爺ちゃん緒形拳は9つにご出演だ。大河デビューは「太閤記」の秀吉で主演だもんね。それが1965年、残念ながら記憶にない。1978年「黄金の日日」での秀吉再演だったら、好きな大河だし記憶にバッチリ残っている。飄々としながらコワさも秘めている、出来る秀吉だった。
もう1本の大河主演では、緒形拳は大石内蔵助を演じていた。それが1982年「峠の群像」だった。ただ、大石蔵之介は「元禄繚乱」の中村勘九郎(当時)の方が好きで、脳内で上書き保存しちゃったな・・・。
めっちゃカッコいいじゃん!と思った緒形拳は1976年「風と雲と虹と」の藤原純友と、1997年「毛利元就」の尼子経久だ。この二役は、唯一無二の感がある。未だに黒地に赤い渦巻のような経久の着物を着た役者さんが出てくると(大概が重要人物)、緒形拳の経久を思い出す。
晩年の2007年「風林火山」の宇佐美定満も良かった。翌年に亡くなるのだから、体はしんどかったことだろう。上杉謙信役で出ていた麗しのGACKTが浮かずに存在できたのも、横に緒形拳がいたからだと思っている。他の役者さんの宇佐美定満を見ても、緒形拳に軍配が上がる。
もうね、お爺ちゃんは大変なビッグスターだ。そして、親は緒形拳の次男の緒形直人と仙道敦子なんだよね。緒形直人は1992年「信長 KING OF ZIPANGU」で主演だった(緒形直人 - Wikipedia)。
おっと、豊臣秀吉も演じているんだね。「MAGI 天正遣欧少年使節」(2019年1月17日配信、Amazonビデオ)とのことだ。いつか家康も、戦国三英傑を走破してもらいたい。それから母の仙道敦子は・・・ごめん、目が印象的な色白の美人女優さんとしか覚えてなかったけど、人気があったね。
信澄の中の人、大変なビッグネームを背負って生まれてきたものだ。その彼だから、信長暗殺の首謀者なんていう大役も背負えるのか。申し訳ないけど、普通の30前後の若手俳優が話題性も含めてこの役を演じられるかと考えると、難しい気がするね。彼の場合は、多少のことはネームバリューが弾き飛ばすし、祖父と父の名が演技の品質保証にもなっている。
ひんやり冷たい、陶器肌輝く信澄
今回、クローズアップされた織田(津田)信澄。どんな人かと人物紹介を見てみると、公式サイトにはこう書いてあった。
信長の弟・信勝の長男
父が謀反の疑いで信長に謀殺(ぼうさつ)されたのちは、柴田勝家の下で育つ。明智光秀の娘婿となり、信長からの信任も厚い。(大河ドラマ「豊臣兄弟!」相関図・登場人物|第25回~ - 「豊臣兄弟!」キャスト・人物相関図 - 大河ドラマ「豊臣兄弟!」 - NHK)
信澄は信長が襲われた際に前に飛び出し、身代わりとなって腕を斬られるケガを負った。誰に襲われても驚かないほど恨みのベクトルが集中していそうな信長だが、まさかお寺のお坊さんまでもが刀を抜いて襲い掛かってくるとはね。
信澄が痛みを堪えた表情に、弟信勝の死の間際の姿がフラッシュバックしてしまう信長。彼が捉えた、信澄の表情から感じた危険シグナルは正しかったんだよな、決して勘が鈍った訳ではなかった。
それが後で分かった時に、ヒャッと背筋が寒かったが、羽柴兄弟は今後ものすごく後悔しそうだ。秀吉&小一郎は、あれだけ面白い家族や仲間に笑って囲まれて、幸せだからねえ・・・骨肉相食む争いの深刻さは想像もできなかったのでしょ。
信長の四男で秀吉が養子にもらった秀勝も、信長接待の宴会で羽柴家の中心になって面白いポーズを取っていた。絶対に織田家ではやらなかった動作のはず。羽柴に感化されたのだよね。

リアルの信澄の経歴をチラリと見てみるだけでも(津田信澄 - Wikipedia)、確かに悲惨なことをやらされている。天正六年(1578年)に、あの荒木村重の妻だし等、一族37名を捕えて京に護送したのは信澄だった。その後、処刑するんだもんね。
天正九年(1581年)四月には、検地に逆らった槇尾寺の僧侶800名を信長の命で皆殺し(!)にしている。今でさえ当然考えられない皆殺しだが、神仏の信じられていた時代には、御仏の弟子を皆殺しなんて、さらに恐ろしい行為だっただろうね。九月には北畠を滅ぼす伊賀攻めだ。これも悲惨な話だった。
そして、運命の天正十年(1582年)。信澄は、三月には甲州攻めに従軍して武田を滅ぼし、五月には四国遠征軍の副将として準備に入った傍ら、徳川家康の大坂での接待役を丹羽長秀と共に命じられていた。しかし、その前の六月二日に舅の光秀が本能寺の変を起こすことになって、信澄はとばっちりで命を落とすことになるのだよね。
信澄が光秀の娘婿であったことが災いし、市中には謀反は信澄と光秀の共謀であるという事実とは異なる噂が流れており、疑心暗鬼に囚われた信孝と長秀は、(6月)5日、信澄を襲撃して大坂城千貫櫓を攻撃した。信澄は防戦したが、丹羽家家臣・上田重安によって討ち取られた。謀反人の汚名を着せられたまま、信孝の命令で堺の町外れに梟された。享年は25とも28とも言う。(津田信澄 - Wikipedia)
一体誰がそんな「事実とは異なる噂」を流したものか。安土城下の船着き場の工事など、心穏やかに従事できそうな土木仕事が無いわけではないが、当時の織田家の武士のお仕事はメンタルに堪えるものばっかりだ。挙句、いい迷惑のとばっちりで殺されるなど、本当に信澄って気の毒な人だ。
ただ、宣教師のルイス・フロイスには散々に言われているようだ。びっくり。
宣教師ルイス・フロイスは、信澄の死去にあたり「この若者は異常なほど残酷でいずれも彼を暴君と見なし、彼が死ぬ事を望んでいた」と評している。同じく『耶蘇会報』でも「甚だしく勇敢だが惨酷」と評し、信澄が2人の罪人を馬に踏み殺させた逸話を記している。また、信澄を殺した信孝は、キリスト教に造詣が深いことで宣教師に高く評価されており、信澄を殺害したことで「三七殿は勇気と信用を獲得し、ただちに河内国のあらゆる有力者たちは彼を訪れ、主君として認めるに至った」ともフロイスは書いた。(同上)
噂を流したのは宣教師たちなのか?信長亡き後の信孝アゲ工作の一環か。もしかして、ドラマでは信澄に騙された格好の羽柴兄弟・・・というか主人公小一郎が、信澄を何とかしなければと躍起になって噂を振りまくとか?小一郎の見せ場を拵えねばならないもんね。
しかし、発想の転換が凄いよね。ドラマでは、信澄が黒幕で光秀を振り回す方向で描くのだものねえ。色白で気が弱そうにも見えていた信澄が、舅光秀を追い込む時には陶器肌を青白く輝かせて覇気が見えた。気の毒な信澄では終わらない、これこそが信勝と信澄親子の鎮魂のドラマになりそうだね。
まるで国譲りの羽織委譲
ところで、このドラマでは経費節約の為か、秀吉の残酷さを示すとかねてより言われていた鳥取城攻めをすっかりスルー、今回の冒頭では戦は終わっていた。えええ!
三木城攻めで干殺しはもういいでしょう、という事なのだろうか。鳥取の餓え殺しも、織田家中のメンタルだったら通常運転なのかもしれないが、ドラマの天使秀吉と万事円満小一郎がやるにしてはあまりにも悲惨なはず。どうするんだろう・・・と心配していたんだが。
今後、本能寺の変からの中国大返しもあるからね、撮影にはお金もかかる。(その前に水攻めもあったか、それはやるのかな。)だからスキップしちゃったかな。
一応、鳥取城は前回からの間で陥落させたとして、秀吉は相変わらず上様愛に溢れた天使、でも負の面を全部吸い込んだかのように信長がどんどんストレスをため込んでいた。その御姿が、まるで「鎌倉殿の13人」の北条義時の生まれ変わりのようなんだよね。黒い張りぼてを被って中で苦しむ義時のパターンでね。
信長が信澄への疑いを抱いたのも、羽柴兄弟は信長が心身の疲れを高じさせてのものだと考えた。それでお市まで巻き込んで、上様をいたわれ、上様をもてなせ、の号令一下、羽柴家一同が信長を長浜城に招いて大宴会を挙行した。
秀吉と小一郎は、信長のご機嫌を見計らって信澄を許してちょーとお願いした訳だが・・・そんな怖いことが良くできたものだよ。結局、寧々までが酒を飲んでの大芝居を打って空気を作り(浜辺美波がサイコー)、飲み比べで勝った秀吉の言うことを信長は聞くことになった。つまり、信澄を許すとね・・・余計なことをしちゃったよね。
宴会の翌朝、青天の天守に登り、信長と秀吉は語り合った。ここに、小一郎は主人公といえども介在する余地はなかったね。
信長:空には境目が無い。境目が無ければ争いが起きることも無い。空はどこまでもひとつじゃ。儂はそういう国を作りたい。
秀吉:では…拙者は太陽になりまする。昔、おっか様に言われました。お前はお天道様のようになれと。儂が太陽になって、上様が作り上げたこの国を照らし続けまする。
信長:この戯けが!それではお前が一番目立つではないか。
秀吉:あ、いや、決して決してそのようなつもりでは!(膝をつく)
信長:この!(自分の羽織を脱いで、秀吉の肩に掛けてやる。秀吉の前にかがんで)よき侍になりおったわ。(ほほえむ。立ち上がって離れて)さっさと毛利を倒して参れ。(秀吉が感激で涙にむせんでいる)戻ったら次は・・・茶会でもするか。
秀吉:は・・・ありがたき、ありがたき幸せ!
感動的な主従の最後の場面では、まるで国譲りのように信長が着ていた羽織を秀吉に着せ掛けた。これで、信長とはお別れなんだね。秀吉の純情に貰い泣きしたな。
復讐に燃える婿・・・光秀が気の毒過ぎる
信長に許された信澄は、舅の光秀に怖い種明かしをした。信長に誅殺された信勝の遺児として、彼は復讐を忘れていなかったのだ。ジャジャーン。ドラマではね。
光秀:信澄様。上様からの疑いが晴れて何よりでございましたな。羽柴殿が口添えをしてくれたそうでござりまする。礼を申さねばなりませぬな。(月が雲に隠れる)これからは、誤解を招かぬよう、十分お気を付けくだされ。ハッ、上様はあのご気性、次はどうなるか分かりませぬ。
信澄:よく分かっています。そうやって、真の父を殺された身ゆえ。舅殿こそ、お気を付けくださりませ。あの公方様からの御内書、上様に見つかりでもしたら言い逃れはできませぬ。(カッと目を見開いている)
光秀:(息を呑んでいる)なぜそれを。盗み見たのですか?
信澄:いいえ。
光秀:ではなぜ!
信澄:(光秀に顔を近づけて)あれを書いたのは、この私でございます。
光秀:(声も無く、驚いている)
あの御内書、最小限の漢文で署名も無かった。花押はあったけどね。でも、義昭の筆跡を見慣れている光秀が、見誤るものだろうか?不思議だけど、内容がショッキングだったから、光秀はそちらに気が取られてしまったのかもね。ああもう気の毒だ~光秀~!
さて、これで信澄の黒幕説をどう成立させていくのだろうか、本能寺の変が楽しみになってきた。ああもう始まるね!
(ほぼ敬称略)



