へっぽこ村重のせいで、670人もの命が
NHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」第24回「軍師官兵衛!」が6/21の父の日に放送された。はは~ん、それで織田信忠は「父上ならこう言う」という父べったりのセリフを繰り返していたのか・・・なんて、そんな訳ない。今回は信長ジュニアをも動かす、再生官兵衛の見せ場がありましたな。
さっそく公式サイトからあらすじを引用する。
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第24回「軍師官兵衛!」◆◇あらすじ◇◆
村重(トータス松本)に幽閉されて1年、官兵衛(倉 悠貴)は心身共に限界を迎えていた。籠城を続ける村重と織田軍の戦は膠着(こうちゃく)状態にあったが、小一郎(仲野太賀)が兵糧の補給路を断つことに成功。妻・だし(山谷花純)の説得で、村重はついに投降を決意する。信長(小栗 旬)への取り次ぎを任された小一郎は、だしに官兵衛への伝言を託す。無駄な血を流さず戦が終わると思われた矢先、驚きの事態が! 状況は一変し――。(第24回「軍師官兵衛!」まとめ|大河ドラマ「豊臣兄弟!」 - 「豊臣兄弟!」見どころ - 大河ドラマ「豊臣兄弟!」 - NHK)
ドラマでは、主人公小一郎が有岡城籠城中の荒木村重の愛妻だしにも調略の手を伸ばし、「皆を救う手立てがもうないから」と応じた彼女が、「必ずや殿のお命もお助け下さいませ」と小一郎に懇願、穏便な開城の道筋はほぼできていた(信長が何て言うかは心配だけど😅)。
陰で小一郎の手紙を受け取っていただしは、調略に従って村重に「皆を救えるのは殿だけ」と諭した。妻の言葉に村重も「饅頭ごと串刺しにされるのがオチじゃ」と言いながらも覚悟を固め、信長のご機嫌を取るための献上品として、城内の茶道具を搔き集めていたね。
そこで茶碗を落とし、自身の血が指先から流れるのを見た村重。このあたりの狂気への流れがうまかったなあ、茶碗と一緒に村重の理性が壊れたんだね。村重は「死にとうない」の一心になって、あろうことか籠城中の大部分の家臣や家族を置きっぱなしで有岡城を抜け出し、尼崎城に移動してしまった。
「この命に代えてもそなたのことは守る」の言葉が虚しい。妻だしは「おのれ村重」と怒りを露わに涙を流した。せっかく村重の命を考えた和平の道筋を付けたのに、一体誰のためだと思っているのかという話だ。
この後、ドラマでは無心になって茶を点てる村重の姿が挟み込まれていた。茶を点てて、現実から目を逸らしたか。そんな手段の無い常人だと、とてもじゃない。後に茶人として秀吉の前に出現する彼は、それで精神を保ち生き延びたってことかな。
ウィキペディア先生を見たら、彼の逃亡のせいで命を奪われた人たちは、六条河原で気高く斬首された妻だしを含め、670人を数える。信じられない数だ。ただ、リアル村重にもにっちもさっちもいかない事情があったようだ。
(城代の)荒木久左衛門が(有岡城の)開城を決意したのは、信長から講和の呼びかけがあり「荒木村重が尼崎城と花隈城を明け渡すならば、本丸の家族と家臣一同の命は助ける」とした為である。久左衛門は手勢300兵を率いて尼崎城に向かったが、村重はこの説得に応じなかった。フロイス日本史では、村重は大坂の仏僧(=石山本願寺)と協議したが、仏僧は全然同意しなかったとある。『戦国の武将たち』によると、この時尼崎城には毛利氏、石山本願寺、雑賀衆の御番衆もいたので、村重の意見は通らなくなってしまったとしている。村重の説得を約束していた久左衛門は信長に顔向けできないと思ったのか、300兵ともども姿をくらましてしまった。(有岡城の戦い - Wikipedia)
ちょうど上映中の、モックン本木雅弘が村重を演じている映画「黒牢城」では、見てないけど当然今作のトータス松本の村重よりもカッコ良い方向の村重なんだろう。今作の半兵衛(菅田将暉)が、囚われた官兵衛になってまたも痩せこけているそうだ。だし(千代保)は「光る君へ」の吉高由里子だから見てみたいとは思うものの、村重の苦悩がしばらく重くこちらの気持ちに残りそうだね。
官兵衛の「ふっくら」問題。いいんだよ、これで
この荒木村重の謀反に関しては、当時は小寺官兵衛と名乗っていた後の黒田官兵衛が、村重説得のために単身で有岡城に向かい、そのまま捕らえられて1年以上も土牢に閉じ込められた。
2014年の大河ドラマ「軍師官兵衛」では、家臣に救助された時の岡田准一演じる官兵衛が凄まじい程の見た目だった。足を引きずるのもそうだけれど、皮膚病を患ったせいであろう様子を示す頭部から顔面への変色した特殊メークが、そうと分かっていても痛々しかった。
今作の官兵衛は、しかし、割と血色よく再登場してくれたので、前回の菅田将暉の痩せすぎ半兵衛の記憶が鮮明な視聴者からは、SNSなどを見る限り、あんまり評判が良くなかったようだ。脚は引きずっているけれど、織田信忠にも大音声で呼ばわり、ピンシャン見えたってことで。
いやいや、前回も書いたけれど、役者は痩せるだけが能じゃないでしょ。それでも5㎏は水抜きで痩せたらしいよ、中の人・倉悠貴は。「あんぱん」の記者役の時は丸々していた彼が、頑張った。役者の健康を害するからそれでもう十分だ。他局のドラマ「銀河の一票」でも活躍中だから、急激に痩せることもできなかっただろう。
(この「銀河」には、大勢の大河俳優がご出演だ。官兵衛だけでなく家康も勝家も、北条時政も。「光る君へ」の倫子様が主役で百舌彦の彼女、道長の嫡男もいる。それも楽しい。)
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この「豊臣兄弟!」での設定も一応考えられていて、官兵衛が再登場したのは有岡城での救出から1~2カ月程度は経過していたと思う。有岡城の開城は天正七年(1579年)11月19日、そして、官兵衛再登場後に三木城城主別所長治の降伏・切腹が翌天正八年(1580年)1月17日だから。
という事は、だしに小一郎が「松寿丸は生きてるよ」との官兵衛への伝言を頼む➡今楊貴妃の光り輝く彼女からご託宣を賜って、よっしゃ、生きるぞーと気力が漲る官兵衛➡家来の栗山善助や母里太兵衛らに土牢から救出されて➡湯治や精の付く食事をバンバン食べて、心身の回復に努めたのだよね。
その結果があの官兵衛の「ふっくら」のお姿、ということだ。いいんだよ、それで。
小一郎は有岡城の悲劇にもいっちょ嚙み
ドラマでは、調略を仕掛けたにもかかわらず有岡城での悲劇の大量虐殺を止められず、だしら荒木一族の処刑にも立ち会った小一郎。薄々感づきながらも村重を信じようと自分に言い聞かせた結果、こうなったと悔やんでいた。
その心情を慮った秀吉が、一時的に三木城攻めの場を離れ、信忠に呼び出されたと嘘を言って小一郎に会いにやってきた。ホントにこのドラマの秀吉は弟に優しいよ、天使だ。
だから秀吉の闇落ちは小一郎を失った時に起こるんじゃないかと思うのだよね・・・いや、信長の死もあり得る。そこから、小一郎の新たなる苦悩が始まるって事かもしれないね、小一郎に立ちはだかるラスボスは兄秀吉ってことでね。
しかし、こんなにリアルの小一郎って有岡城攻めに関わっていたのだろうか?ウィキペディア先生を見ただけだと、この時期はずっと三木城攻めに携わっていたように見えるのだけれど。
天正5年(1577年)、秀長は秀吉に従い、播磨国に赴き、その後は但馬攻めに参戦した。竹田城が斎村政広によって落城(竹田城の戦い)すると、城代に任命される(『信長公記』)。
天正6年(1578年)、東播磨地域で別所長治が反旗を翻すと、秀長は兄と共に制圧に明け暮れることとなり、支配の後退した但馬を再度攻めることとなった。同年、黒井城の戦いに援軍として参戦する。
天正7年(1579年)、別所長治の三木城への補給を断つため丹生山を襲撃する。続いて淡河城を攻めるが、淡河定範の策により撤退した。しかし定範が城に火を放ち、三木城に後退したため補給路を断つことに成功する(三木合戦)。但馬竹田城より丹波北部の天田郡、何鹿郡に攻め入り江田行範の綾部城を攻略し落城に追い込む。
天正8年(1580年)1月、別所一族が切腹し、三木合戦が終戦する。(豊臣秀長 - Wikipedia)
だしら荒木一族の処刑に立ち会った武将の中にも、小一郎の名前はない。前田利家や佐々成政の名前があるね。
天正七年十二月十六日五ツ時、村井長門守奉行、けいこの衆、越前之大名衆也、
佐々蔵助殿 金森五郎八殿 前田又左衛門殿 村井専次 村井長門守内衆
以上警固衆三千警固候(立入左京亮入道隆佐記 - Wikisource)
あとね、有岡城関係でちょっと違和感が大きかったのは高山右近の描き方。彼は、信仰上信長を裏切ることはできなかったから村重に謀反を止めるように翻意を一生懸命働きかけていたはず。過去作「軍師官兵衛」でも生田斗真の右近が、古くは「黄金の日日」の鹿賀丈史の右近もそう描かれていて、私にはそう摺り込まれているんだよね。
なのに前回、今作の高山右近は有岡城に説得に来た官兵衛を斬ろうとまでしていた。それって中川清秀の役回りにしておかないと辻褄が合わなくない?と心配だったが、そのフォローも無かった。そもそも、中川清秀が信長に謝りを入れようとする荒木村重を諦めさせた話は、ドラマでは安国寺恵瓊が乗っ取っていたから清秀はいない設定かな。
まあ、クリーンな羽柴兄弟を描く小一郎が主役のドラマだから、有岡城での調略にも小一郎をいっちょ嚙みさせないとつまらんとか、もうひとつの播磨の山場・三木城攻めだけじゃ、小一郎が自分の変容を恐れるまでにはならないとかの判断だったのか。有岡城での反省あっての三木城の締めくくりだと見せる意図だろうね。
再登場官兵衛、悩める信忠に播磨の心を訴える
さて、 官兵衛が再登場、信忠に三木城への力攻めを止めるよう訴えた場面を記録しておこう。
秀吉:信忠様、有岡城攻めへのお力添え、ありがとうござりました。(一同礼)
信忠:そのようなことを言いに、わざわざ来たのか?
秀吉:はっ。ここまでくれば、いよいよ別所も観念いたしましょう。次こそ降伏させてみせまする。
信忠:手ぬるいわ。一人残らず、討ち取るのじゃ。
小一郎:お待ちくだされ。我らは既に有岡城で多くの血を流しております!
信忠:しかし肝心の村重を取り逃したではないか!三木城で同じしくじりは許されぬ。(立ち上がり)父上なら、そう申すはずじゃ。(一同無言)
小寺官兵衛:(後方から)ご無礼仕る!
秀吉:(振り返る)官兵衛!
官兵衛:(鎧姿だが杖を突いている)恐れながら、信忠様に申し上げまする!(一礼)三木城を、力で落としてはなりませぬ!私は播磨に生まれ育ち(足を引きずって前進)、別所がいかに播磨の国衆から慕われているかを知っておりまする。別所が立つなら立つ。別所が引くなら引く。我らは別所と共に・・・幼き頃より、そう聞かされて参りました。総攻めすれば、もはや容易く別所の城も領土も手に入りましょう。しかし・・・播磨の民の心は手に入りませぬ。逆に、血を流すことなく三木城の者たちを助けてやれば、他の国衆たちも皆、我らに心開き、織田家に忠誠を誓いまする。それこそが真の播磨平定にござりまする!(嬉しそうな小一郎)
信忠:しかし、父上は・・・。
官兵衛:信忠様のお考えをお聞かせくださりませ!(曲がらない左足のまま、右手の杖を手放し平伏す)何卒、寛大なお下知を!(秀吉と小一郎、その他一同が平伏)
信忠:(床几に腰を下ろし、一旦目を閉じ考えて)・・・もとより播磨の総大将は筑前じゃ・・・好きに致せ。
秀吉:(小一郎、官兵衛も共に顔を上げる)ははー!(また平伏)
信忠も苦労するよね、人の心の分からない父信長だ。例えば、信長が選んだのがライバル筒井順慶だった事が大きいが、松永久秀が心を込めて「西日本随一の豪華な城郭」として建造した多聞山城の扱いを見るだけでも、信長って結構ひどい。
本殿を信長が住むつもりの京の二条御殿(後の新二条御所)に移築しちゃったり、残った城もわざわざ完璧に久秀の息子らに破却させている。久秀としたら心がズタズタだろう。で、直後に謀反されても信長は久秀の気持ちが分からない様子。そんな心無いサイコパス信長を、村重や播磨の人たちは恐れの目で見ていただろう。
そういう父信長が、人心掌握のためとはいえ、三木城の力攻めを避けた自分を叱責するのではないか・・・家督を継いだ信忠は、自分がどう評価されるか大いに悩むところだ。弟たちと取り替えられちゃうかも?ぐらいは常時気になっていただろう。
ここで秀吉に「好きに致せ」と言う事で、責任を擦り付けたとも言えるけれど、バックアップしたのも同然。一応、信忠も父からの自立の一歩を示したか。
亡き半兵衛が官兵衛を止めた
この信忠との面会後、官兵衛は牢の中で亡き半兵衛に影響されたことを打ち明けた。ウンウンわかるよ、死んだ半兵衛は、病の体から自由になった🎵とばかりに有岡城の土牢にもウロウロ出入りしてたんだろう。そう妄想すると楽しい。
官兵衛:真を申せば、二度とおふたりに合わす顔など無いと・・・牢の中で・・・死ぬことばかりを考えておりました。しかし・・・(将棋を指す亡き半兵衛の姿)その度に、あの男が引きとめるのです。
回想の竹中半兵衛:官兵衛殿。我らの味方になっていただきたい。
官兵衛:だし殿から松寿丸のことを聞かされた時、決めました。まだ、死ぬわけにはいかぬと。竹中殿に借りを返さねばならぬ。あの約束を、守らねばなりませぬ。(跪く)これよりは小寺ではなく黒田官兵衛として生まれ変わり、お仕えしとうござりまする。竹中殿に代わって、必ずやおふたりをお守りいたしまする!どうか、今一度私を仲間にしてくださりませ!(頭を下げる)
秀吉:戯けたこと申すな。
小一郎:お主に半兵衛の代わりが務まる訳なかろう。(不安そうな官兵衛に顔を近づけ、にっこり)半兵衛は半兵衛。お主はお主じゃ。(ポンポンと叩く)
秀吉:とっくの昔から、お主は儂らの仲間じゃ。
この後の秀吉、小一郎、官兵衛のじゃれ合いが小学生のよう。官兵衛を秀吉が羽交い絞めにして、小一郎が殴るマネをした。見ようによってはお綺麗な官兵衛の顔に何かしたようにも見えて、直後の官兵衛が手品の花でもくわえて映るかと思った。
でもさあ、何かモヤモヤ。正直な気持ちを伝え跪く官兵衛は許されるか不安でいっぱいだ。その彼を、上司である兄弟揃って一旦はからかって、さらに殴るマネ。自分たちは楽しいのかな、でもやられる方は気の毒だ。ドラマの小一郎は、現代人の感性をお持ちかと思ってたのにね。
おや、三木城の悲劇の別所長治について書く時間が無くなってしまった。彼が反信長の旗を掲げることで、播磨では多くの国人衆が賛同し、結果、多くの血が流れることになってしまったのかもね。
でもね、浅井長政もそうだったと思うけれど、常人がサイコパス信長を目の当たりにしたら、抵抗したくなると思う。ある意味仕方なかった。
さて、そろそろ次回の放送が始まる。無理やりだけど、播磨攻めもこの辺で失礼💦



