千田先生の優しい眼差し😿
NHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」の魔の第33回「北庄(きたのしょう)城の別れ」は8/30に放送され、これ以上ない柴田勝家と織田家を背負って立つ力強いお市の方の、北庄城天守からの爽やかキラキラな飛び降りダイブの最期が描かれた。いや、こんなのは初めてだ。
主人公小一郎は吠え、秀吉は血の涙を流しつつも、千利休にヒントをもらって笑顔で今回は締めくくり。小一郎はこれから秀吉の天下一統を笑顔で引っ張っていく。
まずは公式サイトからあらすじを引用する。
(33)北庄(きたのしょう)城の別れ
羽柴軍の圧倒的な兵力の前に勝家(山口馬木也)は敗走、市(宮﨑あおい)の待つ北庄城に籠城する。小一郎(仲野太賀)は降伏を促すべきと言うが、秀吉(池松壮亮)は勝家が降伏するなどありえないと一刀両断。利家(大東駿介)に先鋒を命じる。羽柴軍が北庄城を取り囲む中、市は茶々(井上和)ら三姉妹を投降させ、自らは勝家と果てる覚悟を決める...。苦い戦ののち、大徳寺にこもっていた小一郎は、一人の茶人に出会う。((33)北庄(きたのしょう)城の別れ | 大河ドラマ「豊臣兄弟!」 | NHK)
戦いの後、小一郎が北庄城の焼け跡で吠え始めた時、もしかして9層の大天守から飛び降りて死んだお市と勝家の亡骸を見つけちゃって、そのスイカ割り後のスイカのような姿にショックを受けたのかと思ったが、イヤイヤそんなはずはなかった。
専門家によれば、北庄城の天守から飛び降りればすぐ下には大屋根があるそうだ。だから、そこに引っかかったまま城と共にふたりは完璧に焼け死んだとの設定ではないかと思う。城をふたりの棺桶にしたわけで、飛び降りた勝家の首に群がりたい秀吉軍の手も届かない。
だが・・・猛将勝家の最期が、知られた十文字の切腹じゃなくてお市とお手々つないでの飛び降り自殺なのはガッカリだとか、あれこれ言いたい。リアルの勝家は、わざわざ自分の天晴れな死に様を伝える係の老女まで用意していたというじゃないか。
しかし、千田先生の目線がとびきり優しくて、感心した。
北ノ庄城天主は内部9階という巨大天主。建造時期から望楼型天主と推測されます。すると天主最上階のテラスの手すりから飛び降りた場合、すぐ下の大入母屋屋根に落ちます。見事に下層の屋根に着地した勝家とお市は、屋根伝いに城を脱出して、幸せに暮らしたに違いありません。たぶん。 #豊臣兄弟
— 千田嘉博_城郭考古学 (@yoshi_nara) 2026年8月30日
はい。ふたりとも鍛えているので、勝家もお市も鮮やかに北ノ庄城天主の入母屋屋根への着地を、ピタッと決めたとイメージしています。あのふたりなら間違いありません。たぶん。 #豊臣兄弟 https://t.co/ATqLZcRJpu
— 千田嘉博_城郭考古学 (@yoshi_nara) 2026年8月30日
そうそう、ジブリキャラだったら朝飯前で大屋根に着地できるね。そこから打掛を投げ捨て、ダダダと包囲網をかいくぐってどこに逃げたのやら。そうか、そのために秀吉側に投降したふりをして前田利家が先鋒になって攻めてきていたんだな。利家とまつが、親父様とお市の方を北陸のどこかに匿っているに違いない。たぶん。
勝家=ランバラルじゃん!との声もあったので、どなたか懐かしの映像をアップしてくれないかと思ったらありました!素晴らしい!ありがとう!
ランバ・ラルの死に様と見比べて見ましょう……。#豊臣兄弟 #柴田勝家 https://t.co/r8gsbx5244
— 林祥大 (@E9F06o) 2026年8月30日
それにしても、早い段階で火矢も掛けられていたのに、小一郎はよく燃え上がる城の天守からあんなにきれいなままで戻れたものだ。若手の七本槍も(全員じゃなかったが)無事だったか。
その天守まで追って来た若武者たちに対する、お市様の言葉が覇者織田家の姫って感じで堂々として良かったよね~みんな自分に槍を向けていたんだけどね。
お市:頼もしいのう。皆、良い顔をしておる。
その言葉を聞いて、勝家は笑って太刀を捨てたよね。それで「よう見ておけ。これが戦じゃ」と、青空に向かって、お市の手を取って飛び降りた。完全にラブロマンスのワンシーンだった。
少女マンガ風、愛の逃避行
このダイブに至るまでに、既にこちらは宮﨑あおいと山口馬木也の力技に圧倒されて涙ボロボロ。いつも少年マンガ風と揶揄される今年の「豊臣兄弟!」だが、今回は少女マンガ風味だったよね。
だって、勝家は傷を負った手でお市の手をつかみ、もう片方の手で刀を振るって羽柴兵をバッタバッタと斬り倒しながら、天守まで逃げていくんだよ。途中「お市、見るな!」のセリフでキュンとした人はいたはずだ。
少女マンガに切り替わったのは、お市の自害の刃を勝家が素手で止めたところからだよね。以前の浅井長政が焼けた鏡をお市のために炊き火から取り出し大やけどを負ったのも見ていて痛かったが、今回の勝家もなかなか痛い。普通は日本刀をつかんだら指が落ちるっていうもんね。秀吉が足の甲に刀を突きたてたのも加えて、今作3大痛いシーンの3位にしておこう。
しかし、勝家は刃を握った手から血を滴らせても物ともせず、妻に対してというよりも、ずっと憧れだったお市様に対して「最後まで抗いましょうぞ」と丁寧語にして言ったのだ。カッコいいぞ~勝家!愛の逃避行のスタートだ。ヒューヒュー!
お市:(勝家の前で自害しようと小刀の切っ先を喉元に当てる)さらばじゃ。(目を閉じ、刺そうとするが、滴る鮮血。目を開けると、勝家が刃をつかんでいる)は・・・。(思わず涙が流れる)
勝家:やはり、そなたを死なせることなどはできん。(呆気に取られているお市を前に、涙涙の勝家)アハハハハハ・・・いま一度、抗いましょうぞ。(小刀を捨てる)この勝家が、最後までお守りいたしまする。(笑顔で市の手を握り、部屋を出ていく)
この、勝家の「抗いましょうぞ」の決心を引き出したのは、お市の涙ながらも笑顔の感謝の言葉だったと思う。ここの夫婦のシーンが今回は出色、大好きだ。
賤ケ岳から敗走し北庄城に戻った勝家に、お市は心づくしの膳を用意していた。たぶん織田家の姫様だから、手づから作ったことなど無いだろう。美味しくないかもしれない。
お市:侍女たちは皆逃がしましたゆえ、私が作りました。
勝家:すぐに羽柴の者どもが来よう。今はこのようなことをしておる時では・・・。
お市:せっかく作ったのに・・・。
勝家:(飯と汁物と煮物の膳。手を付ける)
お市:いかがです?
勝家:・・・美味しゅうござる。(食べ続ける)
お市:フフ・・・相変わらず、嘘が下手じゃなあ。
勝家:いや、儂は真に。
お市:そこが、あなた様の良いところです。あの秀吉と違っての。
勝家:(完食)はあ、馳走になった。はあ~。(座り直して)逃げよ、お市。
お市:・・・覚えていらっしゃいますか?私が浅井の家に嫁いだ日のことを。
回想のパッツン前髪のお市:いっそお前と一緒になる方がマシであったな。
回想の勝家:そそそ、そのようなことを、ととと、突然言われましても・・・。
回想のお市:戯言じゃ。(勝家、跪く)
お市:あの時の、狼狽えようときたら・・・。
勝家:フー(肩も視線も落として)。からかうでない。
お市:でも今は、戯言ではありませぬ。(目に涙を湛える笑顔のお市、ゆっくり顔を上げる勝家)長政殿もあなた様も、私にはもったいないお人でした。
勝家:あ・・・(激しくかぶりを振る。泣きそう)
お市:私は、良い夫に恵まれました。(顔を逸らし、泣く勝家)もう十分でございます。(涙の目で微笑む)私も、共に逝きます。
こう言われてみたいよね・・・いや、相手に恵まれたと、感謝の言葉を今わの際には言いたいものだ。この勝家に向けられたお市の夫婦愛を見せられて、さぞリアルで宮﨑あおいの夫・岡田准一は嫉妬していることだろうと・・・そんなこたーないね。
お市、娘3人との別れ
こうして、お市は勝家と共に逝く覚悟を固め、浅井長政の遺児である娘3人に別れを告げ、一緒に逃げてと願う娘には「そういう訳にはゆかぬ」と答えた。
そうだよね、年齢的にどうなのかという意見もあるけれど、生き残れば秀吉の側室に形だけでもさせられるのは決定的だったと思う。「織田家」が秀吉に屈服したという生きた証に自らがなるのは、お市は耐えられなかっただろう。
結果的に茶々が側室にさせられるが、じゃあそれは良いのかと言えば、茶々は織田の血を引いてはいるが「浅井長政の娘」だ。こう言っては何だが、浅井家ならば、秀吉の側室を出そうが、織田家代表のお市としてはどうでも良かったのかも。
お市は、茶々の「共に残る」という願いも却下。その代わり、信長からの守り刀を渡した。ただし「守り刀は己の身を守るためのもの」であって「秀吉と刺し違えようなどゆめゆめ思うてはならぬぞ」と言い含めた。
辛い選択だ。娘の幸せな将来を願えばこそ、秀吉に刃を向けたら全て終わるのは目に見えているからね。この守り刀、印象的な場面での登場が決定的なアイテムだ。茶々の生涯を考える時、大坂落城の時に・・・とも思うが、そこまでやるのかな?
秀吉に投降してから、寧々の部屋に案内される時、茶々は一瞬守り刀に手をかけた。秀吉も気づき、立ち止まった。現れた蝶が茶々を止めなければ、秀吉は、いっそ斬ってほしかった?そんなことないか、その場で茶々を返り討ちに斬り捨てたか・・・。
別れの場面に戻ると、お市は茶々と初、江にこう言い遺した。
お市:そなたは生きて、妹たちを守るのです。そなたがこのふたりの守り刀となるのです。そしていつか・・・父上のような御方と巡り会って良い子を産むのです。さすればその子が、きっとあなたたちを幸せにしてくれる。この母が、そうであったようにな。姿はなくとも、触れることはできぬとも、母はいつも傍におりまする。
何と皮肉な、ずいぶんと楽観的だなお市。「父上のような御方」じゃなくて、茶々の相手は秀吉だ。ある意味、お市の身代わりに、とばっちりを食わされる悲劇の茶々なのだ。
しかし、茶々は見事に「妹たちの守り刀」の役割は果たしていくんだよね。ここで、母に縋りつく妹にも「泣くでない!」と一喝。
茶々:これ以上、母上を困らせるでない。(市に、微笑んで)我らのことは何も心配要りませぬ。上様と父上にお伝えくだされ。織田と、浅井の血は我らが決して絶やさぬと。どうか、見ていてくだされ。
お市:それでこそ・・・それでこそ私の娘じゃ、娘たちじゃ。強く、しなやかに生きるのじゃぞ。(娘たちを抱きしめる)
ううう・・・健気で涙が出る。確かにそうなるよね。現代の天皇家にまで血がつながるのだよね、天晴れだ。定番の話で内容は分かっているのに、戦国大河のたびに毎度毎度旬な女優さんが演じる浅井三姉妹の純な演技に泣かされるよ。
お市を思い、秀吉も血の涙。皆が涙
幼少期からおとぎ話を作って相手をしてきたお市の方が相手方となっての戦で、小一郎も秀吉も心は千々に乱れていた。お市の3人の娘たちが秀吉の下に投降したのを機に、最終的に落城させるための城攻めが始まった。
秀吉は「これより城を攻め落とす」と一同に告げた後、小一郎に「お前は副将として儂の側を離れるでない」と言った。小一郎は秀吉を見たが、腑に落ちない顔だった。
そもそも、仲良しのお市なら勝家との間を取り持ってもらえるのではないかと期待して、秀吉はお市と勝家の再婚を勧めたのだったっけ。それが、まさに織田家の盟主として自分たちの前に立ちはだかったのはお市その人であり、ある意味誤算だった訳だ。
血の涙を流し震えながら「行くでないぞ」と、北庄城に向かいたい小一郎を止める秀吉。行かせれば、危険を顧みず小一郎は何とかお市を助けようとするのかもね。血の涙のメイクが・・・ちょっと・・・だったけど秀吉の気持ちはわかる。
秀吉は、鬼柴田が降伏するなど有り得ないと言っていた。誇りを胸にお市と共に散るだろうと考えていたが、小一郎はそうじゃないね。降伏を促すべきだと青臭いことを言っていたよ。
落城を迎え、秀吉は泣きながら勝ち鬨をあげていた。それは前田利家や皆も同じ。勝っても負けても、織田家中の身内同士の戦いが爽やかな訳はないが、あまりにも後味が悪すぎる戦いだった訳だね。これでは、秀吉は前に進めない。
一方の小一郎は、北庄城を陥落させた後に、大徳寺にこもってしまった。そこで「茶嫌い」の茶人・千宗易(利休)に会うなんてねえ。これまた大茶人に対してずいぶんと奇をてらった設定だが、演じるのが純(「北の国から」の吉岡秀隆)だから、これも何とかしてくれるはず。
茶嫌いは、苦く嫌いな茶を飲めるのもその先に甘い菓子が待っているからと、小一郎に指針をくれるための設定だったのだよね。苦い闘いの先には、笑える良き日も待っていると。山口馬木也も宮﨑あおいも去った今、吉岡秀隆はこれから楽しみな存在だ。
そして今回の最後、秀吉を何とか笑わそうとしていた小一郎。何事に取り組むにしても、笑顔が大事なのは確かだね。特に秀吉は、ポスト信長の世の中を引っ張っていこうとするリーダーなんだから。それをまた笑顔で支えなきゃならん小一郎だってことだ。
・・・しかし、ふたりのキャッキャキャッキャは子どもっぽ過ぎる。ふたりとも、一体いくつなんだ。小学生じゃないぞ。
このようにメンタル面で秀吉を支える話も良いんだけど、時代考証の黒田先生によると、小一郎の戦上手がかなり秀吉の天下一統の助けになっていたらしい。ならば、もう秀吉軍の副将であるはずの小一郎が刀を振り回してワーワー戦ってる場面ばっかりじゃなく、調略や戦略の方面での小一郎の活躍を見せてほしいかな。九州攻めあたりで、ぜひ。
奇をてらわず、もっと役者を信じてほしい
小一郎は、侍の誇りを理解したくないのか、やっぱりまだ百姓気質に近いのだろうかと思わせるところがある。というか、小一郎は視聴者代表の現代人感覚の持ち主の設定なんだろうね。
今回に限らずだけど、その過度にも見える現代人感覚って必要なのかなあ。邪魔だと思うんだけど。小学生にも分かりやすく、現代人目線の演技プランに従っているからなのか何なのか、それが学芸会の演技とか言われてしまう所以になっている気がするよ。
いくらドラマはエンタメでありフィクションだとはいえ、今回のお市様と勝頼の天守閣ダイブといい、史実から離れたアレンジが目立つのでブーイングも聞こえてくる。が、せっかく良い役者が揃っているのだ。それはNHK大河ならでは、他の民放ドラマがなかなか望めないことだと思う。
小一郎の仲野太賀も秀吉の池松壮亮も、かなり演技が上手な良い役者さんだと思う。お市の宮崎あおいも勝家の山口馬木也も・・・特に勝家は、これまでで一番エモい勝家を見せてもらったと思うぐらいで、言うまでもない。
(個人的には、「おんな太閤記」の勝家がこれまでで一番ハマっていたなあ・・・名前が思い出せないが。「江」の勝家も、子煩悩で良かったよね。でも、今回の情熱的なラブストーリーは、山口馬木也だから成立したんだと思うね。)
だから、彼らの演技力を以てすれば、あまり奇をてらわず、真っ当に分かっている史実に沿って物語を展開しても、十分面白く見られると思うんだよね。
脚本家さんは、史実を一捻りも二捻りもしたりすると、考証の黒田先生が下の動画で言っている。それは脚本家の独断ではなく、NHKの制作側の要求だろう。そんなことをせず、今後の小一郎の真の活躍を期待しているが・・・もう遅いかな。
お慶がコワイ
吉岡秀隆の吉岡と言えば、吉岡里帆が演じるお慶が、またも恐ろしい鬼のような形相で大徳寺にやってきて、小一郎を縄で縛って連れ帰ろうとしていたね。ふさぎ込んでいると聞いて心配して来てみたら、小一郎はスッキリと立ち直っていて、それが面白くないのだと。
え~💦何か自分勝手な子どもっぽい嫁だ。いいじゃない、心配だっただろうけど、夫が立ち直っているんだよ。相手を思えば「良かった」ってホッとしたっていいじゃん。自分が自分が言いなさんな。
それに、この人の睨んだ顔は、どうも本当に恐ろしい。浅井三姉妹を相手ににっこりと笑顔を見せた寧々は、笑っても十分貫禄も見せていた。だから、今回のコメディーパート担当のお慶にも、ちょっと拗ねて冷たくとも、夫が立ち直った喜びがこぼれる笑顔の感じで小一郎を縛り上げてほしかったかな。
さて次回、松下洸平の家康が楽しみだ。
(ほぼ敬称略)
