「あんたらは、お天道様みたいにおなり」
NHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」第2回「願いの鐘」が1/11に放送され、戦国のヒロインお市の方(宮﨑あおい)が登場して目を奪われた。さすが篤姫、オーラが違う。全然「どうする家康」の北川景子に負けてない。当然か。
さっそく公式サイトから、今回のあらすじを引用する。
第2回「願いの鐘」◆◇あらすじ◇◆
故郷の中村に戻った小一郎(仲野太賀)は、直(白石聖)の縁談が決まったことを知る。自分の気持ちを押し殺して喜ぶ小一郎に、寂しげな表情を浮かべる直。一方清須では、尾張統一を目指す信長(小栗旬)が岩倉城攻めを決行する。清須での居残りを命じられた藤吉郎(池松壮亮)は、信長の妹・市(宮﨑あおい)から呼び出しを受ける。そしていよいよ直の祝言の日。花嫁姿の直が突然、小一郎の前に姿をあらわす。(第2回「願いの鐘」まとめ|大河ドラマ「豊臣兄弟!」 - 「豊臣兄弟!」見どころ - 大河ドラマ「豊臣兄弟!」 - NHK)
前回のブログで、母なかと妹あさひは「幸せぼんやり」だと書いたのだったが、今作のふたりはそういうキャラじゃなかったね。「兄藤吉郎は、基本に俯瞰する底知れない目があっても、母親の幸せぼんやりキャラを外側に纏っている」と書いたが、母の方も底知れなさを秘めた人物だった。小一郎相手に滑らかに大ウソをつき、背中を押していたもんねえ。
姉とものアシストもあり、母なかは小一郎を何とか藤吉郎と共に旅立たせようとしている。ぼんやりしているように見えて、きっとそれが息子たちのためになると俯瞰して考えていたんだ。
(家の中に響く、藤吉郎のイビキ。家の外で、月明かりの中一人座っている小一郎。家から母なかが出てくる)
なか:全く、うるさいのは起きてる時だけにしてもらいたいわ。さっさと清須に戻ってもらわにゃあ、おちおち寝てもおれん。(小一郎の隣に腰を下ろし、小一郎を見る)あんたの好きにしなさい。藤吉郎には藤吉郎にしか、あんたにはあんたにしかできんことがある。それをおやり。
小一郎:そんなこと言うても、わしがおらんくなったらこの家はどうなるんじゃ。(姉ともが来る)
とも:心配ないわ。うちの人がおるから。
小一郎:うちの人?
とも:この先の村で馬貸しやってる独り者なんじゃけどね。この家に来てくれるそうじゃ。なかなかの優男よ。あんたが居なくなれば家の中も狭くならずに済むから、ちょうど良かったわ。(ポンポン小一郎を叩く)
小一郎:勝手に決めんな。まだ、わしは行くとは・・・。
なか:8年前、藤吉郎が出てった時の事、覚えてるかい?
小一郎:何じゃいきなり。覚えとらんわ、そんな昔の事。
なか:そうじゃろうねえ。あんたはあん時、えらい熱を出してうんうん唸ってたから。
小一郎:ああ、そうじゃったな。
なか:あの時、藤吉郎はあんたに飲ませてやってくれって薬を置いてったんじゃ(ウソ)。あの頃も今と同じで・・・いや~今以上に貧しくてね。あんなバカ高え薬、なかなか買えるもんじゃなかったんだよ。
小一郎:もしかして・・・(立ち上がる)
回想の藤吉郎:仏画も盗んだのではないぞ。その嫁に持ってきてもらったのじゃ。どうしても銭が要り様じゃったからのう。
なか:これを言ったらあんたが負い目に感じると思って、黙ってたんだけどね。あの子が村を出たんは、あんたを助けるためでもあったんだよ。だから今度は、あんたが藤吉郎を守っておやり。あの子には、あんたがいてやんないといけないんだよ。・・・あんたにしか、できんことをおやり。
回想の藤吉郎:わしは、みんなを喜ばしたい。そんで「ありがとう、藤吉郎よくやった」と言ってもらいたい。
小一郎:(背中の暖かさに振り返る。日がのぼる。山の向こうの朝の光に向かって踏み出す)行くわ、兄者と一緒に。
藤吉郎:(あさひを前にして家から出てくる)聞いたぞ聞いたぞ、小一郎!よく決心してくれた!
小一郎:まだ侍になると決めたわけではない。だが、助けてもらったからには借りは返す。
藤吉郎:何でもいい!決まりじゃあ。(小一郎を抱き上げる)
小一郎:うわ~、わ~わ~!わわわわ!
なか:あんたら、どうせならうんと偉くなっといで。
小一郎:もちろんじゃ。わしが行くからには、兄者を侍大将くらいすぐにならしてやるわ。
藤吉郎:お前、小さいのう。どうせなら国持ちの大名くらいにならんとな。
小一郎:大名?
藤吉郎:おう!
なか:あんたも小さいわ。
あさひ:えっ、じゃあ侍で一番偉いと言えば・・・(藤吉郎と肩を組んで)将軍様!
小一郎:(笑って)なれるわけないだろうが。
あさひ、藤吉郎:えっ?えっ?
なか:もっと上じゃ。(空を指さす)あれみたいにおなりよ。あんたらは、あのお天道様みたいにおなり。(昇り始めた太陽に、手を伸ばす藤吉郎と小一郎)
なかは、わざわざ「覚えてるかい?」と小一郎に確認して「覚えとらんわ」と返事が来てから嘘をつき始めた。戦略的、強かだよね~。
それに今回ラストで小一郎と藤吉郎を見送ってからの話だが、なかの大ウソを、ともも知ってて黙っていたと判明する。
ともは、ドラマ冒頭で家に戻った小一郎の様子を探り探り話を聞いていたように見えた。「あんたまでいなくなったら、うちらみんな飢え死にだからね」と言いながら、「侍になんぞなったら、命がいくつあっても足りんわ」と口先だけで言う弟の様子をじっくり観察。そろそろ出ていきそうだと理解して、婿にきてくれる「馬貸しの優男」を速攻で調達しておくとは・・・さすが長女、しっかりしてるー。
当時の尾張中村の庶民は、婿取り婚なのか。なかの家に秀吉らの父も婿入りしたなんて話もどこかで読んだ。だったら分かる話だ。
妹あさひについては、まだ天真爛漫だけで、その裏の人物像はよく分からない。けれど、実は母なかや兄秀吉に似た性格だとすれば、ドラマは面白く転がりそうだよね。後々徳川家康の妻になった時に、ただのぼんやりじゃ哀れさは増すかもしれないけれどつまらない。(いやでも、「真田丸」での無口すぎる清水ミチコの旭姫はかなり面白かったか・・・。)
今のところ、土豪の箱入り娘だった直が、気が強い設定なのにイザとなるといつも棒立ちでウロウロ、戦の中でかなり目立つ白い花嫁衣裳の自分を客観的に見ることもできない点がイライラする。「小一郎に助けてもらうの待ち」専門キャラのようで、少年マンガにおける主人公の典型的な恋人の役回り=愛らしいアクセサリーみたいになってやしないか。
小一郎に「わしと一緒に来てほしい。わしの側にいてくれ」とプロポーズされて「私すごいな。小一郎なら、きっとそう言うと思った!」と歓喜の涙で顔を濡らしていたのは可愛かったね。清須で揉まれて、彼女も成長してほしいところだが・・・。
そういえば、竹中直人の「秀吉」では、母大政所役の市原悦子に「日吉~日吉~」と秀吉は呼ばれていたような。太閤秀吉と言えば「日輪の子」であり、幼名の日吉丸が知られてきたと思う。生まれる前の夢で母の体に太陽が飛び込んだとか、そんな太閤記の従来の秀吉伝説のイメージが「秀吉」では押し出されていた。
でも、今作ではこれまで、そんな「日輪の子」なんて話は無かったね。ようやく、今回の「お天道様におなり」という母の言葉で太陽と結びつけられた。しかも、「あんたら」だから、秀吉だけじゃなくて秀長もお天道様になれってことだ。「秀吉の陰にいた弟」以上の活躍が、このドラマでの秀長には約束されているようだ。主役だもんね。
戦国の庶民の現実を描く
遡るが今回、小一郎の住む尾張中村は、ひどい蹂躙を受けて村人の多くが殺戮された。第一陣は野盗で、まだ自分たちが利を得ようとする、目的が分かる襲い方だったが、次の第二陣は、どう見ても戦略的に尾張の国力に損害を与えようと、村全体を壊滅させるために襲来した様子だった。
いずれにしても、泣かされるのは百姓の民ばかり。戦があると、百姓たちは早めに山中に逃げて戦況を眺め、決着がついてから鎧兜刀など金目のものを遺体から回収して金にする。でも、遺体の埋葬など戦後の片付けにも駆り出された(早く片付けないと農業にも困る)と聞いた。戦で田畑はボロボロ、お侍さんは勝手で困るよね。
田畑の損害だけでなく、山に逃げる暇もないと悲惨だ。ドラマでは、女子供までも含め、逃げられなかった村人が手当たり次第の無残な殺され方。道端には死屍累々、そして道にはわざわざ切り落とされた腕が落ちていたりね・・・。
これは美術さんも死体を演じるエキストラさんも大変だったろうけれど、逃げ遅れた庶民が直面する悲劇の再現にはかなり力が入っていたように見えた。ドラマはフィクション、でもそういう点は、史実をできるだけ描きたい意図があるのだろう。
切り落とされたと言えば、首だ。直の嫁入り話を聞いて小一郎を慰めていた信吉は、植えたばかりの苗を守ろうとして田んぼで首を切り落とされ、殺されていた。最初は信吉の体を泥の中から助け起こそうとした小一郎だったが、首のない胴だと気づき、近くに転がる生首を抱えて慟哭した。
死体はゴロゴロ、そして友達の生首だよ・・・想像すると相当きついよね・・・これが戦国の庶民の現実か。「戦で手柄を立てるっちゅうんは、大勢人を殺すっちゅうことだで」と、なかの今回のセリフにもあった。「光る君へ」「べらぼう」と戦がほぼない時代の大河ドラマが続いた後で、令和の視聴者にガーンとショック療法か。
現在、世界でも戦争は続いている。こんな庶民の悲劇は現実から遠い話とも、もう言えない。侵略者を誰も止めてくれない。ロシアが占領した地域のウクライナ人が、「ロシア兵」として、前線で戦わされているなんて話を聞くと、何という不条理がまかり通るのかと暗澹たる気持ちになる。
誰かが言葉では勇ましく美しく語ったとしても、現実の戦は庶民の殺され損の世界なんだよと、ドラマも教えようとしているのか。
きょうだい間の第六感
小一郎:何じゃこれは・・・次から次へと・・・わしらが何をした。(切断された信吉の頭を抱きしめて泣く)何なんじゃ、これは~!ああ、あ~!あ~!ああ・・・ああ~あ~!
藤吉郎:これが、この世じゃ!
小一郎:(振り返って)何で、ここにおるんじゃ!
藤吉郎:わしにも分からん。気づいたら来ておった。おみゃあに呼ばれた気がしてのう。
小一郎:いい加減なこと言うなよ!兄者など呼んどらんわ!要らんのじゃ!役に立たん!役に立たん、足軽なんか!(田んぼで泣きながら、雨に打たれている小一郎)信長も信長じゃ!偉そうなこと言うて・・・ちっともわしらのこと守ってはくれんじゃないか。わしらが米作らにゃ、生きていけんくせに!だから、わしらは必死に、今年こそ豊作にするんじゃて・・・必死に・・・信吉も、あんなに泥にまみれて・・・これじゃあまりにも惨めじゃ。惨めじゃ!わしらのこと、何じゃと思うとるんじゃあ!
藤吉郎:言いたいことはそんだけか?なら、今度はわしの番じゃ!行こう!わしと一緒に!侍になれ、小一郎!(雷鳴と雨の音が響く)
弟に呼ばれた気がして「来ちゃった」という藤吉郎。なんで?とも思ったが、この前のシーンで、藤吉郎はお市からこんな話を聞いていた。
皆が戦に出てしまって退屈だから何か面白い話をしろとお市に呼ばれ、藤吉郎は母から聞いた「願いを叶える不思議な鐘」の昔話をした。少し気が紛れたと言うお市は、「退屈というのは嘘じゃ」と言い出す。
お市:退屈というのは嘘じゃ。本当は苦しいのじゃ。きょうだいとは不思議なものよのう。お互いのことを分かりたくなくても分かってしまうことがある。なぜそうなるのか不思議じゃが。私が今苦しいのは、多分兄上が苦しいからじゃ。
(炎に包まれた岩倉城と、城下の町を眺める信長。戦渦に巻き込まれ傷つき、身内を失った多くの民の姿。)
信長の家から見ると格上の、岩倉城の織田伊勢守は破れ敗走。これで信長による尾張の統一が成ったのだった。「勝ち鬨を上げろ」と配下に言いながらも背中に辛さが滲む信長の心情を、お市は分かち合っていたようだった。
この戦については、お市は軍師のように、信長にこんなことを言っていたよね。
お市:その降伏の申し出は、ただ時を稼ぐためのものでございましょう。
信長:なぜそう思う。
お市:近頃、今川の息のかかった野武士の一党が、我が領内にまで足を踏み入れ、狼藉を繰り返していると耳にします。誰かが手引きしなければ、成し得ぬこと。伊勢守は、我らに降伏したと見せかけ裏で今川と通じ、いずれ尾張を手に入れようと目論んでいるのでは。
信長:考え過ぎだ。
お市:ええ、考え過ぎです。兄上と同じで。
信長:フッ。たとえ僅かでも不安の種を残すわけにはいかぬ。肝心なのは、ただ勝つことではなく、勝った後をどう治めるかじゃ。誰も抗えぬ、揺るがぬ力を示さねばならぬ。
信長に語っていたお市の見立てが、中村で起きていた悲劇の真相だったのだろう。第二陣で雪崩れ込んできて殺戮の限りを尽くした野武士たちは、今川の息のかかった者たち。桶狭間前夜の駆け引きなのだろう。
この時点で、織田伊勢守からは使者が来て、降伏したいと言ってきていたのに、その使者を切り殺せ、城下に火を放ち町を焼き払えと命じ、信長は非情なところを見せて出陣するところだった。
それにしても、体を斜めにして恐ろしいことを命じる信長(小栗旬)が、真っ黒になった北条義時(鎌倉殿の13人)に見えてしまうよ・・・斜めになればなるほど、無理して危うく見える信長のメンタル。それを感じるお市。
お市の話をまっすぐに聞いていた藤吉郎は、魔法にかかってしまったように小一郎に呼ばれているように思い、中村に来てしまった。それで出くわしたのが村人の悲劇。藤吉郎、なか、ともも小一郎の心情が分かる。
こういう第六感の働く人たちじゃないと、戦国の世は生き残っていけないのか?そして、藤吉郎は、肉親以上に大切に思う信長の心情を察することができるようになって・・・それで中国大返しができたってことになったりして。何か別の「エスパー秀吉物語」にでもなりそうな。
はした金で嫁取り💦
かくして、小一郎は清須に向かった。気の毒なのは直の父、坂井喜左衛門(演・大倉孝二)だよねえ。8年前に妻は藤吉郎に付いて出て行き、今回は娘の直が小一郎に付いて行く。小一郎は「兄者と違ってわしはちゃんと・・・」と言うものの、坂井家に届いたのは、小一郎が「藤吉郎の墓」に埋めておいた、小銭を溜め込んだ壺だ。
そりゃ「おのれ~」って言われるよね。そんなはした金で、掌中の珠である娘を渡せるかっつーの。心情お察しする。
そうそう、彼の盗まれた「妻」は直のお母さんだってことだけれど、その彼女は今どこに?生きているのか死んでしまったのか、今回も判然としないままだった。ほったらかしが気になるなあ。清須に向かった直は、母親に会えるのだろうか?
(ほぼ敬称略)




