ターニングポイント、ホメオパシー獣医へ
前回⑦の、ウイルスによる癌治療の話が有望だと新聞でも取り上げられていた件がぐっさり胸に刺さってしまった上に、先週の月命日もあって、次がなかなか書けなかった。
あのとき、せっかくS先生が提案してくださったセンダイウイルス治療を中断せずに続けていたら… これについて、家族は「あれが全てだった、息子のためにベストを尽くしたんだよ」と言った。
もう時計の針は戻せない。このブログだって、こうやって過去をなぞって自分を責めるために書いているわけではない。
少しずつトラウマに向き合い整理することによって自分の回復につながる部分はあるとは思うけれど、なぜ書いているかというと、不幸にして扁平上皮癌の猫さんを抱えてしまった飼い主さんが、多くの実例に触れることによってご自身なりの後悔のない判断をしてほしいからだ。
息子クロスケのケースが、その実例のうちの1つになればと思ってのことだ。とても成功例とは言えないけれども、失敗例から他の飼い主さんたちが得るものもあるだろう。息子には、失敗しちゃってごめんねと謝るしかない。
今も、納戸の奥にソファカバーやらファブリックを入れる大きなケース2つが並んで置いてあるが、息子クロスケは、その間に逃げ込んで出てこようとしなかった。そんなところに入っていくのだって既に息子は大変だったのに。今もありありとその姿が目に浮かぶ。
もう注射されたくない、口元を拭かれたくない、もう嫌だ、ママなんかあっち行け、と全身で訴えていたあの後ろ姿。その姿を見て、9日のセンダイウイルス接種4回目をキャンセルしたのだった。
ずっと息子を穏やかに送り出したいとは漠然と思っていたけれども、あの時がやはり具体的なターニングポイント。息子をできるだけ苦しまずに旅立たせてあげようと舵を切ったのが、2019年11月8日。その日、ホメオパシー獣医の下へ行ったのだった。
その日のことは「猫の絶望(猫の絶望 - 黒猫の額:ペットロス日記 (nekonohitai.tokyo))」に書いた通りだ。
読み返してみると、進行形で記録を残すことの大切さに今更ながら気づく。大切な息子に属する記憶だが、私にとってはトラウマ記憶でもあり自ずと忘れてしまいたいからか、あれほど鮮明だったはずの事柄も、薄れてきている。
当時、色々と飲ませていた薬は2種を残して整理し、ホメオパシーなどの代替薬に移行しているのだが、残した薬は鎮痛剤のメタカムと甲状腺機能亢進症(人間だったらバゼドー病)を抑えるメルカゾールだったように思う。
メルカゾールは、ここで半減させた。息子クロスケは、この薬が本当に苦手で飲み始めて数年来、毎回毎回ひどく抵抗していたので、息子の気持ちと穏やかな毎日を優先して回数を減らし、一日当たりの摂取量を半分にした。少しでも補えればと、缶詰のy/d缶(甲状腺疾患のための缶詰)は継続した。
息子の体重減少に与えた影響を考えると、何よりもこのメルカゾールを半減させたことが大きかったのかもしれない。今になって気づいた。
カレンダーに「11/8~」として残るメモには、ごはんの主力は「ciaoとりささみほたて貝柱」「y/d缶」「ちゅーる」、ここに「介護期用メルミル」も入る。これを息子の好物のほたてをベースに組み合わせて、ミキサーにかけて流動食にして与えた。
けいれん発作止めのイーケプラは、11/12を最後に与えておらず、けいれん発作も以後はあまり起きていなかったと思う。ホメオパシーのベラドンナに移行して問題なかったということだろうか。
そのほかのホメオパシー類も、信じない人もいるかとは思うが、何を飲ませていたか念のために書き出しておく。
マーキュリアス(Mercurius、口内潰瘍、歯肉炎など口の症状を抑える)とベラドンナ(Belladonna、急性症状に効く)を合わせたもの、プロテウス(Proteus、絶望的なストレスに対応)。これに、例の抗癌剤タキソールの原料になっている紅豆杉のエキス(!)、乳酸菌などの白いパウダーも出してもらった。
紅豆杉のエキスは茶色の液体で、まさにお茶を煮詰めたようなもの。「あるんだ!」と少し驚いたのをおぼえている。市販の高価な人間用の錠剤を与える前に、こちらでエキス剤を出してもらっていたら良かった…。やはり、代替医療にも並行してかかるべきだったと思う。
私のように既に自分で恩恵を受けていた人でないと、なかなか信頼を置くのは難しいかもしれないが、手術を受けさせるルートを経ずに、センダイウイルス治療➡並行して代替医療のホメオパシーと紅豆杉エキス、がクロスケにとってはベストな治療法だったなと今では思う。
あのホメオパシー獣医さんには、全国から患者の犬猫が来ていると待合室で隣り合った人から聞いた。その話を聞いたのは、もう20年近く前。うちに来たばかりの赤ちゃんだった息子が猫白血病ウィルス陽性で1年持たないと近所の獣医で言われ、見捨てられたようで途方に暮れ、探し当てたのだった。おかげで息子は寛解した。
その後、息子は5歳ごろ胃潰瘍で吐血し、死にかけて手術を受けたが(息子の真っ白な舌、今も忘れることができない)、その時も、手術を受ける傍ら、ホメオパシーを送り続けてもらった。おかげで19歳近くまで生きることができたのだったが、最後の最後でホメオパシー獣医に連れて行くのが遅れてしまったのが悔やまれる。
手術を経ない方が経済的にも格段に安かっただろう。病歴のために保険に加入できていなかった息子が下顎切除手術とそれに伴う治療を繰り返し、私は自分の保険を1つ潰して支払った。出費は3桁に上った。
出費を重ねてしまったが、代替医療を選ぶことは現代医学に見切りをつけること、イコール、息子の死への道筋を私が選んでしまうかに思え、死への運命が決定づけられてしまうような気がした。それで、踏み切れなかったのかもしれない。
でも、思い違いだった。代替医療も現代医学も、どちらも活用すればよかったのだ。その方が、よほど延命の可能性が逆にあったように思えてならない。
まず、下顎を骨ごと大きく切除するなんてことはせず、表面に出ている腫瘍をちょこちょこ切除する手法を選択、息子の自力で癌と戦う力を温存する。センダイウイルス治療はトライする。並行してホメオパシーと紅豆杉エキスで治療する。痛み止めは現代医学のメタカムをしっかり与える。そうすれば、発症からここまでの3か月半、どれだけ息子が穏やかに過ごせたことだろうか。
うまくいけば寛解して、今もおじいちゃん猫として私の傍らで寝ていたかもしれないな… 夢だ。
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