MVPは顔芸の恋川春町かな!宴の多い回でした
NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」第21回「蝦夷桜上野屁音」が6/1に放送された。えなりかずき登場のサイコパス殿ども勢ぞろいの恐怖の宴から、酔っ払い春町のひと暴れ後に下ネタ「屁」で突破口を見つけた戯作者・狂歌師らのふざけた宴会まで、いつにも増して宴会が目立つ回だった。満開の春の桜と、秋の紅葉と。
まずは公式サイトからあらすじを引用する。
≪あらすじ≫ 第21回「蝦夷桜上野屁音(えぞのさくらうえののへおと)」
蔦重(横浜流星)は、歌麿(染谷将太)と手掛けた錦絵が売れず、さらに鶴屋(風間俊介)で政演(古川雄大)が書いた青本が売れていることを知り、老舗の本屋との力の差を感じていた。そんな中、南畝(桐谷健太)が土山(柳 俊太郎)の花見の会に狂歌仲間を連れて現れる。蔦重はその中に変装した意知(宮沢氷魚)らしき男を見かける。一方、意次(渡辺 謙)は家治(眞島秀和)に、幕府のため、蝦夷地の上知を考えていることを伝える…。(【大河べらぼう】べらぼうナビ🔎第21回 - 大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」 - NHK)
ラスト、皆の「屁」コールが続くどんちゃん騒ぎの最中に、恋川春町(演・岡山天音)はパキッと筆をへし折って出ていき、蔦重は呆然。こりゃ大変だ、春町は絶筆するつもりだね。
だけどわかるよ、朝ドラ「エール」のミュージックティーチャーに転生するはずの絵師北尾政演(戯作者名は山東京伝)がウザすぎたもんね。歌麿の名を売るはずの宴会の席で、何をキャンキャン甲高い声で調子に乗って騒ぎ回ってるのか、あ~ウザいと思わせる軽口演技は素晴らしいアシスト。おかげで春町の怒りは最高潮だ。
春町は今回のMVPで良いよね。怒りをどんどんためつつ酒を飲んでいるネガティブ演技に挟みこまれる顔芸とジェスチャーが面白すぎる。そこから爆発、周りを揶揄する狂歌連発には吹き出した。特に喜三二「根詰めろ」で。
もちろん緊張の場を救った(場を読まない?)屁を放ち、春町の爆発の腰を折った癒しの次郎兵衛兄さんも、恥ずかし気な表情が自然でいつもながら良かった。それを「俺たちは、屁だ~!」と持って行った大田南畝(桐谷健太)の「この場をどうする」の力技も。
いやあ、この「上野屁音」宴会シーンの撮影は力が入ったよね、演者は大変、お疲れ様でした!文字にしちゃうと春町の顔芸を始めとする全身表現が伝わらないから面白さ半減かもしれないけれど、記録しておこう。それだけドラマで面白く3Dにするのが大変だということが分かる。
恋川春町:(紅葉の色づく屋敷で、北尾政演の青本「御存商売物」を読む。本を置き、無表情に頭を掻く。)
九郎助稲荷(綾瀬はるかの語り):蔦重は、後に「うた麿大明神の会」と呼ばれるものを開きました。
(上野の料理茶屋。屏風を背に女芸者の三味線のBGMが流れる中、歌麿が緋毛氈の中央で扇の女絵にササッと色を着けている。両脇に蔦重、次郎兵衛兄さん)
蔦重:(集まった客を前に口上を述べる)墨摺りから錦絵。春信風、湖龍斎風、石燕風、清長風。あらゆる絵を描き分けていけますので、ぜひ、この歌麿を~よしなにお願いいたします。
九郎助稲荷:(幇間が座敷中央で踊る。蔦重が歌麿を連れてあいさつに回る)戯作者や絵師、狂歌師。もしくはそれらを志すなら誰でもどうぞという宴会で、それは歌麿の名を売る為でもあり、さらにはこんな目的も。
智恵内子:狂歌集?
蔦重:へえ。そこで歌拾って一冊作れるじゃねえすか。なあ?(横を向くがいるはずの歌麿がいない)歌麿?(馴染みと飲んでいる歌麿を見つけて)あ~・・・。なんで燕十さんと話し込んでるんだよ。
喜多川歌麿:やっぱり気安いし・・・。
蔦重:なあ、お前の顔を売る会だぞ。ほら、あっち行って話して来い。
歌麿:はいよ。
唐来三和(戯作者):なあ、蔦重。俺も義兄弟にしてくれよ。
蔦重:この人、誰です?
志水燕十:誰だっけ?ハハハハハ!
唐来三和:誰だっけッて、そりゃねえよ!ハハハハハ!
蔦重:・・・楽しんでいってください。
朋誠堂喜三二:蔦重!蔦重!蔦重!ちょいと春町と話してくんねえか?
恋川春町:(イライラひとり酒。盃を落とす音がする。目が据わっている)
蔦重:あ~、春町先生、何かあったんすか?
喜三二:どうも政演のことが引っ掛かってしょうがねえと思うんだな。今年の一番を取った政演の「御存(ごぞんじ)」、ありゃ春町の「辞闘戦(ことばたたかい)」を下敷きに使ってんだろ。あいつ、てめえの褌で相撲取られた気がしてんじゃねえかって。(政演は調子よく大田南畝らの輪を沸かせている。それを背にするひとりの春町)
蔦重:んなこと、気にする人います?お互い様も様様でしょう。
喜三二:いやだから、あいつも口にしやしないけどさ。
北尾政演(戯作名は山東京伝):(大田南畝らの輪で絶好調)んじゃ、んじゃ、んじゃ、狂名・身軽折助(みがるのおりすけ)ってなあ、どうですかね!(体を折ってジェスチャー、笑い声が起きる)
大田南畝:いいのではないか!あっちこっち節操なく出入りしそうで。(笑い声)
政演:これで居続け5日はいけまさあね!(笑い声でご機嫌、癪に障る声。爆発しそうな春町が背後から見ていて、動き出しそうな様子)
蔦重:こいつはいけねえ。
喜三二:春さ~ん、蔦重が来たぞ~!
蔦重:春町先生、お待たせ山~!
春町:俺に構わずとも、構った方が良い相手が大勢いるであろう。
蔦重:何を仰ってんですか。ウチの大看板をほっとけるわけねえでしょう!さあさあさあ!
南畝:(背後から大声で)へえ!蔦重んとこで女絵やんの?
政演:そうなんですよ!何だか見込まれて!やることになっちまって!(声も上ずって相当嬉しそう)
南畝ら輪の一同:おお~!
春町:(聞き捨てならず、蔦重に)あいつ、錦絵描くのか?
蔦重:(固まって聞いていたが)・・・あ~。
喜三二:・・・まぁ、あいつ女好きだからな!そこだよな!
蔦重:ああ、女郎描くには向いてるかなってそんだけで!
南畝:(また裏から大声)「御存商売物」も、絵もよく出来てたもんなあ!(春町、たまらず酒を一杯あおって眉を吊り上げ目を見開き、落ち着かない)
勝川春章:ありゃあ描き入れ細かすぎて参ったぜ!(ポンと政演の肩を叩く)
政演:ハハハ!(師匠の北尾重政に)春章先生にまで褒められちまいましたよ、俺!
北尾重政:つけあがんなよ、この野郎。おめえよ。(春町の舌も口の中で忙しく動き、頬が突き出る。眉毛はつり上がっている)
南畝:いやいや、ほんとに「御存」はよくできておった!「辞闘戦」と似ているが、地口の化け物という趣向を捨てることでグッとしまったのだな。(顔色が変わっている春町。蔦重と喜三二、マズいという顔で聞いている。)
政演:へへッ!(ぺこり)
蔦重:春町先生、俺ゃ地口の化け物、好きっすよ!(焦ってフォロー。春町、また飲んで杯を派手に置く)
喜三二:もう帰ろうか。
南畝:下手くそ~!(笑い声)下手くそ~!(春町が人差し指だけで口の周りを盛んに拭いている?酔いが回って不審な動き)
政演:何だよ、下手下手言いやがって~!(笑い声)
南畝:戯作はいけても狂歌はダメだな!
政演:じゃ、次次次!春町先生!(背後からジャンプ、滑って春町の肩をつかんで)
蔦重:政演!
政演:俺、狂歌が下手だってんですよ~。ここはひとつ、戯作者も狂歌詠めんだって目に物見せてやってくだせえよ!ねえ?ねえ?(酔いが回ってガックリ頭が下がっている春町を揺さぶる)
蔦重:政演!先生出来上がってっから!
喜三二:もう帰ろ!な!あ~蔦重、俺たちお先に。
蔦重:へえへえ。政演、お前、あっち・・・。
春町:(顔をパッと上げて)いや、詠む!
政演:おっ!そうこなくっちゃ!
春町:(半ば白目、口は半開きで立ち上がる) 今日出んと(京伝と)女にもてぬと焦りける 人の褌 ちょいと拝借
政演:ん?!
春町:調子に乗ってんじゃねえよ。てめえはただの盗人だろうが~!(床の膳か何かを蹴る。悲鳴。政演はようやく悟って柱にしがみつく)
春町:(大田南畝の前に座り込んで酒をぶちまけつつ) 四方の赤 酔った目利きが品定め 岡目八目 囲碁に謝れ~
喜三二:春町、帰ろう!帰ろう!ほら、よいしょ!(春町を持ち上げて連れ出そうとする)
春町:(抵抗して喜三二を蹴飛ばす) 気散じと(喜三二と)名乗らばまずは根詰めろ 詰めるも散らすも 吉原の閨
蔦重:帰りましょう。
春町:うら~!(大暴れ、蔦重を倒して大上段)朝から晩までふざけやがって!てめえらな・・・てめえら・・・てめえらなんかなぁ!
次郎兵衛兄さん:(ぷう、と屁音。一同が次郎兵衛を見る。照れて立ち上がり)す・・・すいません。すいません。へへっ!(笑い声)
南畝:・・・俺たちは、屁だ~!それ、へ!へ!へ!へ!
一同:(笑い声と共に立ち上がって踊り出す。太鼓の音)へ!へ!へ!へ!
南畝:七へ八へ へをこき井出の 山吹の みのひとつだに 出ぬぞきよけれ!
一同:へ!へ!へ!へ!よっ!
元木網:芋を食ひ 屁をひるならぬ夜の旅 雲間の月を すかしてぞ見る
一同:いいぞ!へ!へ!へ!へ!(太鼓、鳴り物の音)
智恵内子:芋の腹 こき出でてみれば 大筒の 響きにまがふ 屁い(兵)の勢ひ
一同:へ!へ!へ!へ!(喜々として踊っている。春町は気が抜け立ったまま)
南畝:山里に 尻込みしつつ 入りしより 浮世のことは 屁とも思わず
蔦重:あの・・・春町先生・・・。(目が虚ろな春町、矢立てを懐から取り出す)
一同:へ!へ!へ!へ!あそ~れ!(繰り返し続く)
春町:(筆を出して蔦重に見せながら)・・・恋川春町、これにて御免。
蔦重:え?(春町が筆をバキッと折る)ああ~!(へし折った筆を捨て、去っていく。驚愕の喜三二、歌麿)春町先生!(折れた筆を拾う。一同の踊りは続く)
長いシーンだった。春町は誰もしたことが無い「案思」に取り組みたい性分だと前回までに描かれていたから、だからこそ自分の作品のプロットが政演によって「盗まれた」と感じたんだろうな。
しかも、自分独自の工夫だった「地口の化け物」も青本評論家の南畝に貶されてしまった。また、鶴屋の「指図」にうまく対応できなかった自分に比べて、政演は飄々とそれに応えることができた・・・と、自分の限界も考えただろうね。
クリエイターはデリケート。自分の創作物を世に問うのは勇気がいることだ。春町の心の傷つきが、「屁踊り」のおかしみと対比されて浮き彫りになっていたが、ここから蔦重はどう春町を癒して創作に引き戻すのやら。春町の良い点を伸ばす蔦重のプロデュース力が求められる流れだよね。
歌麿意欲的に成長中、応える蔦重と北尾重政
「指図」という点では、蔦重も歌麿もまだまだ。耕書堂の「雛形若葉」の絶望的な売り上げによって、売れに売れている西村屋の「雛形若菜」と似たようなものを歌麿が描いてテキトーに出しゃ売れるってもんじゃないと証明されてしまった。
蔦重は、「雛形若菜に取って代わって西村屋を吉原から追い出し、歌麿の名を売り、錦絵でも耕書堂の名を上げようって寸法」と鼻息も荒かった。が、目論見が外れて蔦重はスポンサーの呉服屋や忘八(二代目十文字屋でやっぱりのチビノリダー再出演!)の信用を失い、駿河屋に階段から落とされることにもなった。
甘んじてお仕置きを受け入れている蔦重の表情がおかしかったが・・・ケガは痛そう。落とす場面は実際に映らなくなった。時は1782年、32歳にもなろうという蔦重が、まだ駿河屋にお仕置きされているのか。
また、蔦重がかわいがって吉原で遊ばせていた絵師の北尾政演が、鶴屋から出した戯作「御存商売物」が大田南畝の青本ランキング本「岡目八目」でトップに選ばれ大ヒット。この点も、ライバル鶴屋に油揚げを攫われた形になって忘八に詰められ蔦重は散々だったが、政演の師匠の北尾重政が、弟子の不義理を蔦重に謝りにきた。
北尾重政:蔦重!ちょいといいかい?
蔦重:おっ、重政先生!・・・政演。
重政:何だかこいつが不義理をしたって聞いてさ。おい!
北尾政演:へへへ!すいやせん。どうも一等になっちまって。
重政:なんてえ謝り方だよ!
蔦重:まあ、どこで何書こうがお前の勝手だ。けど、戯作書けること黙ってるってなあ、さすがに水くせえんじゃねえの?
政演:いや、俺も書けるたあ思ってなかったんですよ。けど、鶴屋さんの言う通りやったら、何だか出来ちまって。へへっ!
蔦重:「できちまって」って、何だそりゃ。
政演:ここ足せ、ここにうがちを、ここ省けって言われる通りやったら、何となくコツがつかめるようになっちまってよぉ。(ウズウズ、ニヤケ顔)
重政:鶴屋の「指図」がうまいってことかい。(歌麿が重政を見ている)
蔦重:指図?
政演:でも、絵師の仕事はこちらでやりますんで!これからもよろしくお願いします!ハハハハハハ!(笑顔で会釈して、吉原大門に向けて飛び出していく)
重政:お、お~い!あ~・・・。
蔦重:ハハハハハ。
重政:済まねえなあ。(店先に腰を下ろして)あいつ、吉原でずいぶん遊ばしてもらってんだろ。
蔦重:いや、あいつがモテるってのもありますんで仕方中橋でさ。
歌麿:あの、重政先生!ちょいとお聞きしてえんですが。(店の奥から、2枚の絵を手に)
重政:おお、どうした?(歌麿と清長の絵を見せられる)
蔦重:色の出が全然違え・・・。
歌麿:この、色の出の差ってどっから来んです?絵の具や紙ですか?摺師の腕?
重政:う~ん、フフ。一番はコレも「指図」の差かね。(驚く蔦重)絵師と本屋が摺師にきちんと指図を出せるかどうかで、仕上がりは全く変わっちまうんだ。これがまあ、錦絵の西村屋って言われる所以だね。
歌麿:やっぱりすげえんですね、西村屋って。(蔦重、深刻な表情)
指図ね。現代的には編集ってことかな。編集者の力が出版物には欠かせないものね。政演は謝ってんのか?という態度だったけれど、師匠の重政は本当に良い人。元々、重政は蔦重の初作「一目千本」を描いてくれた絵師としてドラマに出てきた。
この後、重政は「錦絵の西村屋」の底力を思い知った歌麿の素直な問いかけに応え、摺師を耕書堂まで連れてきて、いかに摺師への指図が大事か、指図が結果にどう響くのかを実際に見せて教えてくれた。
歌麿:すげえ・・・元とは別もんだ!
重政:だろ?ただ濃く摺りゃあ良いってもんじゃねえ。絵の具を少なめにして板にむらなく伸ばし、しっかり摺り込んでって指示すりゃあ、そういう仕上がりになんだよ。
歌麿:ハハハ・・・すげえなあ!
それが、弟子の不義理について、耕書堂に対する詫びでもあったのだろう。でも、それだけじゃない。この場面の続きで、歌麿の才を見抜く大局的な発言が、重政からあったのでワクワクしたよね。蔦重の「そうきたか」第3弾、以前の「青楼美人合鏡」を錦絵でやる話の、絵師は歌麿でなく重政の弟子の政演がやるとなった件について。
蔦重:いやほんと、重政先生にゃ頭上がんねえや。
重政:世話焼きは俺の性分だからよ。それより、やるんなら政演、よろしく頼むよ。
蔦重:そりゃもう。
重政:・・・と言いつつ、俺ゃ、歌にやってほしかったけどねえ。
蔦重:え?
重政:俺ゃ、駆け出しの奴の絵は山ほど見っけど、そいつらが落ち着く先の画風も大体は読めんだよ。けど、歌はからっきし読めねえんだよなあ。・・・じゃ、また。
蔦重:ありがとうございました!
重政:おう。
この重政からの宝のような言葉を受けて、蔦重は「これからお前の名をどんどん売るぞ!」と歌麿に宣言した。
今は人まね上手の歌麿でいい、こいつどんな絵を描きやがんだと興味が湧いたところに「お前ならではのとんでもねえ画風の絵をぶつける」と。俺がそうしたい、歌麿こそが、蔦屋史上とびきりの「そうきたか」になるんだと。
いいよね、こういうの・・・重政の、自分の弟子だからとかそうじゃなくて、後進の才能を温かく見つめている感じ。重政は歌麿の開花が楽しみなんだろうな。もちろん蔦重も。何だかジーンと来て、見てるこちらも歌麿の成長が楽しみでしかない。
蔦重にもヒント
あっちもこっちも上手くいかない。「ここんとこ老舗の本屋との力の差を感じて」と落ち込んでいた蔦重にも、太陽のように明るい南畝や仲間の狂歌師から励ましの言葉があった。さすがリフレーミング上手の南畝だ。今回、蔦重も自分の長所「そうきたか」を指摘してもらって調子が戻った。
蔦重:(耕書堂に大田南畝、元木網、朱楽菅江の3人が来た。笑い声)お待たせしました。よいしょ。(酒を運んでくる)あ、すみません。
歌麿:お待たせしました。(そばを運んでくる)
蔦重:おう、ありがとな。
朱楽菅江:おお~そばだ~!そばだそば。朝そば。昼か!(笑い声)
大田南畝:蔦重~。
蔦重:へえ。
南畝:みこころに つゆもたがはず 正直に おそばを去らず 長きよよまで 蔦の唐丸
蔦重:じゃあ、先生。狂歌集、お願いできませんか?
南畝:何で?
蔦重:以前、やりたいと仰ってたじゃねえですか。
南畝:言ったっけ。
蔦重:言いました。
南畝:んじゃまあ、5年後くらいにな。
蔦重:5年後!?
南畝:(そばを食い、酒を飲む)ここんとこ、どこの本屋も狂歌集くれくれってうるさくてな。次の正月は伊八んとこだろ、その後は上総屋、伏見屋。
蔦重:え~、何で急に、一斉に?
元木網:みんな、ず~っと頃合いを見てて「今だ!」って思ったんじゃないの?
蔦重:はあ・・・こっちも取り逃がしたってことか。
南畝:ん?
蔦重:いや、ここんとこ老舗の本屋との力の差を感じてて。俺ゃちゃんと奉公もしてねえし、色々足りてねえんじゃねえのかなって。
南畝:けど、そこがいいとこじゃないか。
蔦重:え?
南畝:だからこそ、ずっとやってるやつには出せねえもんを出せんじゃないか。細見がせんべえみてえになった時は「そうきたか」って。
蔦重:そうきたか・・・。
菅江:俺ゃ、あの祭りの本の時に思ったね。
木網:俺なんて「一目千本」の時に、そう思ったよ。
南畝:そうそう。お前さんには「そうきたか」がお似合い。
蔦重:(顔を輝かせて)・・・じゃあ・・・南畝先生。うちから青本書いてくだせえよ。
木網・菅江:えっ!
南畝:えっ?青本?俺が?
蔦重:へえ。狂歌集が出りゃ、来年は間違いなく四方赤良の年になりまさ。そこに、先生が書いた青本をあえて当てる。こりゃ間違いなく「そうきたか!」ってなりません?
南畝:戯作か・・・。
蔦重:あ!他に狂歌の指南書なんてお願いできませんか?(3人に)
木網:指南書?
蔦重:へえ。狂歌をやりたがる人が増えりゃ、狂歌の指南書を求める向きは必ずありまさ。(興味深そうにうなずく菅江)
南畝:(笑顔でポーンと膝を叩いて)はあー!そうきたか!
蔦重:へえ!
いいよねえ、こうやって人の長所を引き出すことで、自分に仕事も運も回ってくるってもんだ。これこそウィンウィンなんじゃない?おかげで「そうきたか」その①は南畝の青本、その②は指南書をポンポーンと思いついた。その③は前述の通り。
プリンス田沼意知、見るたび不憫😢
ドラマは先回りして変な気を巡らせたらつまらないとは思うのだけれど、やっぱりね・・・どうしても幕府パートは気が重い。宮沢氷魚を見るたび、息が詰まるような・・・とにかく不憫だ。
繰り返すが、歴史は勝者のもの。田沼親子の運命は広く知られていて、賄賂の権化のように言われた後世の最低な評価も長く有名だった訳だし(最近の評価は別にして)、徳川将軍は10代家治の後、11代家斉から一橋家の方に血筋が移った事実は厳然とある。
そこから読み取れるのは、コテンパンに田沼派がやられ、しかも世子家基に続き、将軍家治までもが、まんまと一橋派の手によって片付けられてしまったのではないかということだ。敗者の言い分は残りにくい。
前回あたりから、田沼派の勘定組頭・土山宗次郎が出てきていて、今回は大文字屋の花魁誰袖と並んで座っていたのがもう怖い。そこに、サブタイトル前半の「蝦夷の桜」を名乗る湊源左衛門がやってきて、意知の隣に座ってこう言ったのだ。
湊源左衛門:蝦夷地を松前より召し上げてくださるのなら、どのような労も厭いませぬ。松前道廣は・・・あの男は北辺に巣くう鬼にございます!
湊は、松前家の元勘定奉行だとか。松前藩の当主・道廣は、北辺の地を良い事にやりたい放題、家中を恐怖で従わせ、蝦夷の民にもひどい仕打ち。ご法度の抜け荷(密貿易)もオロシャとの間で行い、莫大な利を得ているという。
鬼の松前道廣を、優し気なえなりかずきが演じているのも効果的だと思う。そう見せるライティングが怖い。前回も一橋治済のお友達として出ていた島津重豪と、主賓の治済が興味津々の前のめりで見つめる中、道廣は、粗相をした家臣の妻らしき武家の女を満開の桜の木に括り付け、彼女の周りに散りばめられた小皿を的にして鉄砲をぶっ放していた。
田沼意次はそれが見ていられないようだったし、やってみるかと治済に勧められても「的を殺めてしまうやも」と辞退。そこに「ご心配なさらずとも、的は当家からいくらでもお出ししますゆえ」と返すのだから、道廣が家臣の命など何とも思っていないことが分かる。
このサイコパス3人(治済、道廣、重豪)が束になって、将軍家治と田沼派を引きずり下ろしにかかるのだろう。闘争が激化するきっかけは、松前藩からの蝦夷地の上知との描き方になるのかな。
そこに誰袖。あまりプリンスに身請けプレッシャーをかけないでほしいが、彼女だって毎日身を売らされて、吉原という苦界を抜け出したくて必死だもんね。責められないな。
ドラマよりも事実の方がもっと陰惨な駆け引き、戦いがあったのかも。田沼派はどう戦い散っていくのか。今回は1782年を描いていたのだから、そろそろ覚悟して見届けるつもりでいよう。ビクビク。
(ほぼ敬称略)