まひろが「ここ」にいる違和感
NHK大河ドラマ「光る君へ」第46回「刀伊の入寇」が12/1に放送され、かつて長徳の変でやらかした藤原隆家が、日本を救うヒーローとして大活躍した。合戦シーンも満載で、平安大河で初、だけれど通常大河では見慣れた「首」も登場した。
隆家が外国からの侵入者に対して鏑矢をつがえる姿を見て、花山院の御車に矢を放ったあの姿(ノリノリの若気の至りの表情が最高だった)を思い出した視聴者は多かったのでは?隆家にとっては、あれは一族の没落を引き起こした取り返しのつかない一矢、当人も後悔しきりだったようだが。同じ行為なのに、今回はもたらす結果がだいぶ異なる。
隆家役の竜星涼は、「ちむどんどん」のニーニーの悪夢を払拭できたのではないか。代表作が平安日本を救うこっちになって良かった!
さて、公式サイトからあらすじを引用する。
(46)刀伊の入寇
初回放送日:2024年12月1日
まひろ(吉高由里子)は念願の旅に出て、亡き夫が働いていた大宰府に到着。そこでかつて越前で別れた周明(松下洸平)と再会し、失踪した真実を打ち明けられる。その後、通訳として働く周明の案内で、政庁を訪ねるまひろ。すると稽古中の武者達の中に、双寿丸(伊藤健太郎)を発見する。さらに大宰権帥の隆家(竜星涼)に、道長(柄本佑)からまひろに対するある指示を受けたと告げられる。そんな中、国を揺るがす有事が…。((46)刀伊の入寇 - 大河ドラマ「光る君へ」 - NHK)
「失踪した真実を打ち明けられる」だと?誰が失踪してた?周明?・・・今年の話なのに、既に記憶が薄い。まあいいか。
まひろは亡き宣孝が赴任していた大宰府を経て、親友さわが落命した松浦を目指して旅立ったが、折悪しくその途上で刀伊の入寇に巻き込まれ、上陸してきた侵入者に襲われることになってしまった。
源氏物語の作者・紫式部が刀伊の入寇に出くわすなんて?刀伊の入寇を「光る君へ」で描くと知り、当然まひろは京に居て、九州で起きた事件を耳にする側なのかと思っていた。ところが、だ。
大河ドラマの「江」は、「主人公は歴史的イベントなら何でもどこでもしゃしゃり出ます」というRPG的な有様で、大河ドラマファンを自認する私でも付いていけずに途中で脱落した。江が家康の伊賀越えに同行していたのはどう考えてもおかしいよ。
その「江」に追随する真似だけは止めてほしいと思った。それで、まひろが刀伊の入寇の現場にいるなんて違和感たっぷり、と書こうと思ったが・・・「光る君へ」の場合は、まだ納得できるかも。
まず、まひろは、下級といえど一応は貴族の姫なのに、昔から京の町中を疾走していた有り得ない程のお転婆気質だと描かれてきた。宣孝が大宰府に赴任していたのは本当だし、さわも松浦で死んでいる。だから、はるばる離れた九州まで旅に来るのも、彼女なら無いことは無い・・・と舞台装置は整っていた。
ただ、やっぱり普通は御簾内に居る貴族の女がひとりで(供はいるけど非力な乙丸💦)大宰府をフラフラ見に来るなど、セキュリティを考えても当時はかなり素っ頓狂な特別なことなのでは?
大宰府で会った双寿丸が、まひろに「へぇー、ただの女ではないと思ってたけど、すごいな」と驚いてみせ、大宰権帥の隆家も「大宰府に居たいだけおれ。いくら夫が居た場所が見たいからといって、女子がこんな所までやって来るのは何か訳があるのだろう」と言うぐらいだもの。
こういった「普通の事じゃないよ」という周りの反応の積み重ねが、主人公が刀伊の入寇前夜の大宰府までシレッと物見遊山に来ちゃってる違和感を、丁寧に消すことにもなっているのかもしれない。
周明絶体絶命ラストに茫然自失
ヒヤヒヤするような、こんなにも危ない現場に乗り込んできたまひろ。その傍らには、なんと大宰府で再会した周明がいる。前回終わりに再会を果たした2人については、ご都合が過ぎる気もしないではないが、私は大いに喜んだ。
周明は、この刀伊の入寇のために仕込まれていたオリジナルキャラだとは薄々分かっていた。乙丸だけじゃなくて(「姫様に何をするー」と立ち向かうけどいつもやられるから💦)周明がいて良かった。
この危機を共に乗り越えることで、まひろは真に道長のソウルメイトとしての役割を終え、周明と次のステージに行くことになるのか・・・残り数話でずいぶんと慌ただしいけどな・・・と、ちょっと期待したが、そうは問屋が卸さなかった。
襲われ、足場の悪い岩場を逃げる際に倒れたまひろの手を取り、立ち上がらせようとした周明の左胸に、矢がブスリ!白い服に血が赤く滲み、スローモーションで倒れる周明・・・驚くまひろ、で「つづく」となった。
どういうこと?!手に手を取った2人に未来が見えるかと思ったのに?やっぱりまひろは道長との特別な絆を断ち切れない。「最愛」の松下洸平をもってしても、道長からは逃れられない運命的ソウルメイトなんだと、彼女と視聴者に思い知らせるための仕掛けなのだね。
直秀の時もそうだった。「私をどこかに連れて行って」という、まひろの現実逃避の気の迷いを実現してくれそうなオリキャラは、盛り上げの後にあっけなく殺される。ドラマはどこまでも道長の味方、ふたりはソウルメイトと決まっている。それ以外に変な虫はつかないのだ。
周明は、あれだけきれいに矢が左胸に命中しているのだもの、絶命するのだろう。左胸に実は鉄板が仕込まれていたとか、偶然小さな盾となってくれる何かを入れてたりはしないか?乙丸に倣い、こっそりまひろの紅でも買ってあったりする?昔、まひろを脅した思い出の陶器の破片でも大事に胸にしまってたり?(いや、そうしたら更に陶器が砕けて胸に刺さりそう💦)
いくら薬師でも、周明が自分自身を治療できそうな浅手でもなさそう。戦いで混乱しているし、彼とはお別れなのだろうな😢切ない。
直秀にも周明にも、文字を教えていた少女たねにも、大石静はオリキャラに冷たい。死ねば、そりゃインパクトは大きい。
だけれど、人間、悲劇的に死なないと何かを残せない訳じゃないと思うんだけどな。オリキャラは不遇の死を遂げる運命なんでヨロシク、というのは受け入れ難い。どうか、おみやげの紅を持った乙丸を、京のきぬの下に無事に帰してほしい。
(書いている今、往年のトップアイドル中山美穂の急死でもちきりだ。ヒートショックの疑いもあるそうな・・・残された人に「入浴の際には室温に気を付けましょう」という学びはあるだろうけど、まずはミポリンどうぞ安らかにと祈る。)
まひろ、周明に本音を打ち明ける
再会した周明は、大宰府で通詞をしていたところ腕の良い薬師(目の名医・恵清)が宋からきて、今はその人に付いて薬師の仕事も再開したと言った。当然、隆家の目を治療した薬師だ。周明自身がその名医として再登場するかと思ったが、そこまで厚かましくはなかった。
そして、周明は「まひろは何しに来た?」と聞いた。
まひろ:亡き夫が働いていた大宰府を見てみたいと思ったの。
当たり障りのない表向きの答え。そして、亡き夫は周明にも会ったことがあると告げたところ、越前の海辺に馬で来たかなり年上の男(=宣孝)を周明も覚えていた。
まひろ:そうなのだけれど、越前から都に戻って妻になったの。でも、2年半で私と娘を置いて旅立ってしまったわ。周明は?
周明:ん?
まひろ:妻はいるの?
周明:いない。
まひろ:そう。
みんなに「妻はいない」と言ってやしないか、周明・・・と過去の実績から突っ込んでみたくなるが、まひろに謝罪し、ピリピリ感の失せた周明の笑顔はいいね。今度こそ大丈夫そうだ、演じてるのは「スカーレット」で「八郎沼」を出現させた松下洸平だもんね。
周明に連れられて大宰府政庁に行ったまひろは、宋の商人たちが居るのを見た。そこで「今でも宋に行ってみたいか?」と周明に聞かれたまひろは「もう年だもの。そんな勇気も力もないわ」と言った。
そうしたら周明は「そのような年には見えぬが」とニッコリ。すっかりふたりはリラックス、口説いてます?
まひろは、大宰府政庁で武術の鍛錬に励む双寿丸にも会い、大宰府権帥の隆家にも会った。そこで、まひろは道長の自分への計らい「太閤様から、そなたを丁重にもてなし旅の安全を図るようお達しがあった」を知らされた。
続けて「俺たちを追いやった源氏の物語を書いた女房をもてなせとは酷なお達しだ」と笑って言う隆家。これが呪詛が得意の兄の伊周・ジュソチカだったら、まひろの茶には毒が入っているよね。
隆家からはさらに、京を離れて間もなく道長が出家したことを知らされた訳だが・・・当時だから、大ショックだよね(今でもそれなりのインパクトはありそう)。
隆家:太閤様はご出家あそばしたそうだな。知っておったか?
まひろ:いいえ、旅立つ前はまだ・・・(目を見開いて顔色が変わる)。
隆家:お体もかなり悪いらしい。いくら栄華を極めても、病には勝てぬ。それが人の宿命だ。
道長の出家は、自分が道長に別れを告げたことと無縁ではないと当然思っただろう。自由に飛んでこそ鳥、とばかりに道長との物語から羽ばたいて自由を満喫していた気分に、突然冷水を浴びせられたようだったのでは。
その後、大宰府を出て松浦に向かう道中、雨に降られて一緒に泊まった小屋で(乙丸もいるけど)、まひろは周明に心の内を明かした。周明が聞き出し上手なこと、ちょっとカチンとさせ、まひろがムキになって話し始めていた。分かってるねー。
抱えてきた気持ちを話し、まひろは涙をぽろぽろ。出家した道長が心配だよね、当時は死に際に出家する人が多かった訳だから、もしかしたら相当体が悪いのではないかと心配にもなるだろう。
それに、道長に「源氏の物語も、もはや役には立たぬ」と言われたことも、あの扇を貰って以来2人の物語を書いていると思っていたまひろには、深く心の傷になっていたのでは?自分はもう道長の役に立たぬのだと、思いつめていたんじゃないのかな・・・。
周明:(雨宿りの小屋に戻ってくる)はあ・・・干しいいを分けてもらった。
まひろ:周明が一緒でよかった。
周明:筑前に来てもう20年だ。この辺りのことはよ~く分かってる。
まひろ:20年か・・・。
周明:(濡れた服を拭いながら)20年前の左大臣は、今の太閤か?お前の思い人か。(頷くまひろ)なぜ、妻になれなかったのだ?(首をかしげるまひろ)弄ばれただけか。
まひろ:・・・あの人は、私に書くことを与えてくれたの。書いた物が大勢の人に読まれる喜びを与えてくれた。私が私であることの意味を与えてくれたのよ。
周明:ならば、なぜ都を出たのだ。
まひろ:・・・偉くなって世を変えてとあの人に言ったのは私なのに、本当に偉くなってしまったら・・・空しくなってしまったの。そういうことを思う己も嫌になって都を出ようと思ったの。
周明:それだけ慕っていたのだな。
まひろ:でも、離れたかった。
周明:捨てたか捨てられたかも分からないのか。そんなことをしてたら、俺みたいな本当の一人ぼっちになってしまうぞ。
まひろ:(目を逸らす)もう、私には何もないもの。
周明:ん?
まひろ:これ以上、あの人の役に立つことは何もないし、都には私の居場所も無いの。今は、何かを書く気力も湧かない。私はもう、終わってしまったの。終わってしまったのに、それが認められないの。(涙が流れる)
周明:(正面に座り直して)まだ命はあるんだ。これから違う生き方だってできる。
まひろ:書くことが全てだったの。違う生き方なんて、考えられないわ。
周明:・・・(考えて)俺の事を書くのはどうだ?親に捨てられて宋に渡った男の話は面白くないか?(泣き笑いのまひろ、周明も笑う)ダメか。
まひろ:どうかしら。
周明:だったら、お前がこれまでやってきたことを書き残すのはどうだ?
まひろ:残すほどのことはしていないけれど・・・。
周明:松浦にまで行きたいと思った友のこととか、親兄弟のこととか。何でも良いではないか。そういう物を書いている間に、何か良い物語が思い浮かぶかもしれない。書くことはどこででもできる。紙と、筆と墨があれば。
まひろ:どこででも・・・。
周明:都でなくても。
まひろ:・・・(ウンウン肯いて、明るく)そうね。
副音声:体勢が崩れても、眠りこける乙丸。
まひろ、周明:(乙丸を見て笑う)
周明に「俺の人生を書かないか」と言われたまひろは笑っちゃっていたけど、言葉の端々がプロポーズに聞こえた。これまでは道長との物語を綴ってきたまひろ。そのまひろに、今度は周明との物語を紡げとか、都でなくてもどこでも書ける(から大宰府に居てね)と言っていた。
書くことで道長の役に立ってきたまひろだけれど、「2人の絆=書くこと=自分の人生」だと、決めつけ過ぎなのではないか。書くことが無くなったから2人も終わり、自分も終わり、自分には何も無い、居場所も無い、それが認められないと泣くだなんて、思いつめ過ぎだよ・・・どうしてそう思っちゃうのかな。
この辺りのまひろのセリフ、聞きながら脚本の大石静が、今回の脚本の仕事に取り掛かる頃にパートナーを亡くしたことをどうしても想起させられた。「まだ命はあるんだ。これから違う生き方だってできる」という周明のまひろへの言葉は、亡くなったパートナーさんから降ってきたものなのでは?
ところで、周明。思えば数奇な運命だ。周明は十分物語になりそうな人生を歩んできている。
口減らしのために生まれ故郷の対馬の海に親に捨てられ、宋に連れていかれて奴隷になりそうなところを薬師の師匠に救われた・・・だったか。その後、薬師の助手をしながら通詞として働き、宋のためにスパイ行為と言うかロマンス詐欺を働こうとした相手(最高権力者の左大臣の恋人・まひろ)に恋をして、20年ぶりに再会して思いを遂げる、となれば・・・壮大なラブストーリーだよね。
周明:(まひろに)松浦に行って、思いを果たしたら必ず大宰府に戻ってきてくれ。その時に、話したいことがある。
何を語りたかったのか、周明は。松浦から戻ったら話したいことって・・・実は、まひろのためにずっと妻を持たなかったとか?過去を悔いて、今度こそ一緒に大宰府で暮らそうとか?
この言葉が巷でフラグだと言われているように、いやーな予感で背中がゾクッとしたけれど、すぐあんなことが起こるなんてなんとあっけない・・・こんな幕切れは、切ないな。
刀伊の入寇で大活躍!隆家と仲間たち
隆家は、まひろに宋の抹茶のような茶を飲ませて驚かせていた。目にも良いと、薬のように飲んでいた。その後、こんな会話をしていた。
隆家:目が再び見えるようになったら違う世が見えてきた。内裏のような狭い世界で、位を争っていた日々を、実にくだらぬことであったと思うようになったのだ。ここには仲間がおる。為賢は武者だが、信じるに足る仲間だ。
為賢:隆家様は、この地の力ある者からのまいないもお受け取りにならず、何事にも自らの財を用いられる身ぎれいなお方で、それも皆がお慕いし懐いている所以でございます。
隆家:富なぞ要らぬ!仲間がおれば。
いい感じで吹っ切れた様子。ヤンチャな彼には、内裏での公卿生活は向いていなかったのだろうね。この時、隆家と仲間たちは踊りを共に踊ったが、京の雅なそれとは違う。何を歌っているのやら。
大蔵種材:🎵やすみしし 我が大君の こもります 天の八十蔭(あめのやそかげ) 出で立たず 御空を見れば 万代(よろづよ)に (おー!)斯くしもがも(おー!)千代にも 斯くしもがも(おー!)(略)拝みて(をろがみて)(おー!)
藤原友近、藤原助高に「さあさあ!」と促されて隆家も共に踊った。何だこれ・・・と、書きとれた詞をサーチしたら、ちゃんと答えが出てきた。サイトにアップしてくれた方に感謝して引用する。
即位20年。春1月7日。酒を置き、飲んで、群卿(マヘツキミタチ=臣下たち)と宴会をしました。この日に大臣(オオオミ=蘇我馬子)は寿(オオミサカヅキ=天皇からの杯)を奉って歌を歌って言いました。
やすみしし 我が大君の 隠(カク)ります 天の八十陰(ヤソカゲ) 出で立たす 御空を見れば 万代に かくしもがも 千代にも かくしもがも 畏みて 仕へ奉(マツ)らむ 拝(オロガ)みて 仕奉らむ 歌(ウタ)献(ヅ)きまつる歌の訳(やすみししは「我が大君」の枕詞)私の大君が、住んでいる大きな影ができるほどの立派な御殿。出て、空を見れば、万代にわたり、立ち続け、千代にわたり、立ち続け、かしこみ仕え奉りましょう、拝み、仕え奉りましょう、と歌を献上いたしましょう!(推古天皇(三十五)蘇我馬子との歌い合い)
へぇ!蘇我馬子と推古天皇だって!後述するが、赤染衛門が「藤原を語るなら大化の改新から」と言っていた。645年を「蒸し米(645)炊いて、大化の改新」と覚えたのは記憶にしつこく残っていて、おかげで年号がすぐに思い出せたが、道長が出家したのは1019年だ。
ウィキペディア先生によると(推古天皇 - Wikipedia)、推古天皇の即位は593年。即位20年なら、613年か。まひろから見れば、もう406年も昔の話だ。平安の都では廃れているかもしれない飛鳥時代の歌を、大宰府で武者が歌って踊るというのが面白い。
(ちなみに、放送日12/1は愛子内親王のお誕生日。この日に日本初の女帝推古天皇を寿ぐ歌を持ち出すNHKの意図は?SNSで目敏く指摘している人が居て、そういうこと?とちょっと驚いた。気づく人スゴイね。)
踊りを踊っていた人たちだけじゃなく、隆家の仲間はこの後大活躍。私が中途半端に刀伊の入寇(刀伊の入寇 - Wikipedia)あたりを書いてもな・・・と思うので、良さそうな説明をお借りして張り付けておく。まずは公式サイトの用語集(用語集 大河ドラマ「光る君へ」第46回より - 大河ドラマ「光る君へ」 - NHK)から。
【刀伊の入寇(といのにゅうこう)】
平安時代中期の寛仁3年(1019)3月末~4月に、中国大陸北東部を拠点とする民族「東女真(じょしん)族」とされる賊が大宰府管内に侵入した事件。
こちらの動画👆は勉強になった。ところで、隆家から独自ルートで情報を得ていた実資が「小右記」にたくさん刀伊の入寇について書いていると知り、公式サイトの「ちなみに日記には」のコーナーをワクワクして見たところ・・・あれ?公式サイトには第46回の日記紹介コーナーが無い?えーなんで、とガッカリした。それはないよ。
赤染衛門に火が点いた
北九州の戦が多く描かれたので、今回京パートは少なめ。道長なんか一言しかセリフが無かった。倫子様が前回、道長の栄華を書いてほしいと依頼して「衛門が良いのよ」の言葉にウルウルしていた赤染衛門。あれ以来、歴史好きな心に火が点いて、創作に励んでいたようだ。
副音声の解説:土御門殿。赤染衛門を前に、物語を読む倫子。
倫子様:(腑に落ちない顔で、しばらく赤染衛門を見て)殿の栄華の物語を書いてほしいと申したと思うが・・・。
赤染衛門:そのつもりで書いておりまする。
倫子様:でもこれ、宇多の帝から始まっているわ。殿がお生まれになるより、はるかに昔だけれど・・・。
赤染衛門:お言葉ながら、藤原を描くなら大化の改新から書きたいくらいにございます。とはいえ、それでは太閤様の御代まで私が書き切れないと存じまして、宇多の帝からに致しました。
倫子様:殿がお生まれになった時は村上の帝の時ゆえ、そこからで良いのではないかしら?
赤染衛門:(ムッとして)「枕草子」が亡き皇后定子様の明るく朗らかなお姿を描き、「源氏の物語」が人の世の哀れを大胆な物語にして描いたのなら、私が成すべきことは何かと考えますと、それは歴史の書であると考えました。仮名文字で書く史書は、まだこの世にはございませぬ。歴史をきちんと押さえつつ、その中で太閤様の生い立ち、政の見事さとその栄華の極みを描き尽くせば、必ずや後の世までも読み継がれる物となりましょう!
副音声:ふたりのそばで、毬を転がす(子猫の)こまる。
倫子様:(圧倒されて)・・・もう、衛門の好きにしてよいわ。(微笑む倫子様。猫の鈴の音と、泣き声が聞こえる)
大化の改新から書きたい赤染衛門の気持ち、ちょっと学校で習った歴史を思い出せばよく分かる。そうだよねー、大化の改新で活躍した中臣鎌足だよね!藤原の祖は。そして、宇多天皇の御代から書いているというのも、ちゃんと倫子様の家系を考えている。倫子様の曽祖父が宇多天皇だもんね。
それにしても、この2人の会話は戦が中心に進む今回の中で癒される。昔から学問に興味の無かった倫子様。歴史に造詣の深い赤染衛門に口出しせず、お任せするのが正解だよね。
この赤染衛門が書いた「栄花物語」(栄花物語 - Wikipedia)を私も読んでみたい。図書館で借りたいけど予約がいっぱいかも。山本周五郎の小説の方だったら、家にあるんだけどなあ(無関係)。
え?もう残り2回?信じられない・・・。
(ほぼ敬称略)