なんで戦国の覇者がヘタレキャラに
2023年のNHK大河ドラマ「どうする家康」が始まり、初回「どうする桶狭間」が1/8に放送された。ホームページからあらすじを引用する。
武士が激しい領土争いを繰り広げていた戦国時代。尊敬する今川義元(野村萬斎)のもとで、人質ながらも楽しい生活を送っていた松平元康、のちの徳川家康(松本潤)は、心優しい姫・瀬名(有村架純)と恋に落ちる。このまま幸せな日々が続くと信じていたある日、織田信長(岡田准一)が領地に攻め込み、元康は重要なミッションを任される。命からがら任務を果たしたものの、戦場のど真ん中でまさかの知らせが!どうする元康⁉ これまでのあらすじ | 大河ドラマ「どうする家康」 - NHK
物語は1556年の神君が「次郎三郎元信」を名乗った時代、数え15歳でスタート。今川家の若君氏真との手合わせの相手を務めて接待ゴルフ並みに上手に打ち負かされたり、今川一門衆の関口家の姫・瀬名とままごとしたりといったのんびりな日々がまずは描かれた。
そして、亡父の七回忌の法要のために岡崎入りして一時帰国して戻った後に義元の粋な計らいで瀬名と祝言を上げ、ナレ初陣を済ませ(数え17歳、三河寺部城攻め)、名乗りも「松平蔵人佐元康(佐殿!)」と改めてから、長男竹千代(後の信康)が誕生(数え18歳)。
1560年5月(数え19歳)、瀬名のお腹にもうひとりの子(後の亀姫)をもうけてから桶狭間の戦いに臨み、かわいがってくれている義元からキンキラキンの金陀美具足を与えられて大高城への兵糧入れを成功させたところで義元の討死を知り、大高城を逃げ出し本多平八郎忠勝(劇中では12歳で初陣を務めさせていると言ったかな?成長が著しい。「真田丸」での藤岡弘のイメージが強すぎる・・・)に連れ戻されるところまで話が進んだ。
初回で神君の青春期4年間が描かれ、桶狭間まで終わってしまうとは。駆け足だ。駿府での師である太原雪斎さえ出てこなかった。人質の神君の身を案じて駿府に住まっていたはずの祖母の源応尼も。
このあたりの物語は、時代的に重なる杉本苑子作の「長勝院の萩」上巻を少し読み返して予習していただけに、肩透かしだった。
もう人質時代はやらないのか?織田家に捕らえられ、信長になぶられていたトラウマティックな幼少期は次回で描かれるようだけれど。
1/8夜になんと録画に失敗した(!)ので先ほど(1/14)再放送を見たら、直後の土スタに神君家康公の中の人(松本潤)がお出ましであられた。
土スタでの松潤によれば、ままごとシーンでは「これで大丈夫か」と瀬名役の有村架純と案じながら演じていたそうで・・・いややっぱりね、びっくりした。戦国の覇者が「うちの殿は、弱虫・泣き虫・鼻水垂れですものね」と妻に評され、「そうじゃそうじゃ」と笑って返すようなキャラwww
しかし、そんなメンタル軟弱キャラで戦国時代に生き残れるとは思えない。いくら優秀な家臣が全力で支えたとしても、まさか桶狭間の戦いの後の大ピンチに、家臣を顧みず大高城から逃げ出しちゃって。どう見ても家臣が見捨てるタイプ。主君として「俺は認めない」と言い放った本田忠勝が、今後「殿大好き」になれるほどの大進歩をあのヘタレが遂げられるのだろうか?
少なくとも次回「兎と狼」では、本職は武闘家だろう岡田准一演じる信長を相手に、また「嫌じゃ~」と泣きべそをかく松潤の顔が画面いっぱいに映るんだろう。ああ、見てる方が嫌じゃ。大進歩するんだったら、なるべく早いこと頼みます。
そうそう、昨年の「鎌倉殿の13人」で大河ドラマを毎週心待ちにするようになったウチの家族は終わりの「どうしたらええんじゃ~」で心が折れたそうだ。もう次回からは見たくないとのことで、「大河が始まるよ」などと日曜夜に声掛けしなくていいと宣言された。さようで。
過去に戦国大河は量産、もはやキャラ設定も大変か
やっぱり戦国大河がこれまで量産されてきたから、作る側も大変なんだろうとは思う。既に使い古された三英傑。近いところでは「麒麟がくる」「おんな城主直虎」の2作は良い出来で、印象も強い。徳川家康に限れば、幕末明治期の「青天を衝け」でも北大路欣也が案内人役で出演するぐらいだ。ここまで頻出する家康だからこそ、今作の場合は新奇な方向に振り切っちゃったんだろう。
これまでの大河の視聴経験から、視聴者側には自分なりの戦国キャラが頭の中で出来上がっている。だから、そこからずれると「え?」と違和感を覚えて脳が多分に抵抗するのを私の場合は感じる。大河のオールドファンなら、みなさんそうではないか。だから制作側はキャラ変の塩梅が難しいと思う。
変えるな!ということではなく、新たに解明された史実によってこれまでの通説が塗り替えられてこうなりました~なら面白く見られるのだ。しかし、フィクションによってあまりに飛躍されてしまうと、頭の中のキャラが新たに出てきたキャラに反発してしまって、ついて行けない。
私は、傑作の「鎌倉殿の13人」ロスにどっぷりだった後だということもあって、今作に慣れるのにはちょっと時間がかかりそうだ。三谷幸喜の後で、運が悪かったよね。
しかし、ぶっとんだなー。神君家康がヘタレの極み。地元の方たち、その描かれ方でちゃんと応援してくれるだろうか。松潤だから大丈夫か。このキャラ設定は、「おんな城主直虎」(期待以上の面白さだった)で阿部サダヲが演じた家康とも共通すると言われればそうだけれど、阿部サダヲはそこまで違和感なく見られたのはなぜだろう。少なくとも不快ではなかった。
そうそう、あの時の瀬名(築山殿)は菜々緒が演じていたが、私の脳内キャラ的にはピッタリ。子役までよくぞ見つけてきたと言いたいぐらいピッタリだった。この瀬名のイメージは、前述の「長勝院の萩」で刷り込まれたのかと思う(名はお領だった)。そして系図上は今川義元の姪である瀬名は、「直虎」では、実は井伊家の姫が今川に人質として入り、義元のお手が付いた後に妹として関口家に嫁がされ、産んだとなっていた。
後世の徳川家から神君を守るために悪女にされてしまった瀬名。彼女の在りようや直虎とのつながりが「おんな城主直虎」で描かれたのは、今作「どうする家康」でも時代考証を務める小和田哲男先生の説に乗っかったフィクションとしても目新しかった。
今作の瀬名はあの有村架純が演じる訳で、かなり愛らしい。そう考えると彼女の非業の死は悲惨さが増す。信康事件を含めて、どのような描き方になるのだろう。
「直虎」の太守様・義元は落語家の春風亭昇太だったが、全然口を利かないのが怖いけれどおかしかった。「どうする家康」の太守様・義元は野村萬斎が演じる人格者で「そなたは我が子も同然じゃ」と元康に言った。初回で退場とはかなり勿体ない。もしかしたら私の脳内の義元キャラ(「武田信玄」で中村勘九郎が演じた)を塗り替えてくれたかもしれないのに。もっと見たかった。
舞がさすがに素晴らしくて全部見たいよなーと思っていたら、NHKの公式インスタで全編公開されていた。
この義元は、武で治める「覇道」ではなく徳を以て治める「王道」を行く人となり。 対する信長が義元の兜首を投げ捨てて「待ってろよ、俺の白兎」とつぶやく姿は強烈だったが・・・ふーん・・・。その首の扱いについて、私が大ファンの「かしまし歴史チャンネル」きりゅうさんはひとこと言わずにはおれなかったようだ。
そこのところ、「鎌倉殿の13人」では北条宗時が殺された後も、梶原景時が滅ぼされた時も、作法に乗っ取ってきちんと首実検をやってましたからね。義経も頼朝との対面の場面では足つきの塗りの首桶に入ってきちんとしていた。わかりますよ・・・たぶん、今作でも信長の家臣の誰かが信長が投げ捨てた義元の首を拾ってきちんと作法に乗っ取ってアレコレやって今川に送り返すことになるのでしょう!(と次回以降に期待だけしておく。)
今作の信長は「覇道」を行くと評される人物。「麒麟がくる」の染谷将太の信長が非常に素晴らしくて、私の脳内の信長キャラを高橋幸治や高橋英樹から完全に塗り替えてくれたので、どこまで岡田准一が頑張ってくれるかは注目している。初回と予告のわずかな出演だけでは、今のところ、体力の有り余る人でなしの軍師・黒田官兵衛に見えてしまっている。私の官兵衛の脳内キャラ=岡田准一なので、そうなっても仕方ない。
そうだった、武田信玄は阿部寛が演じているのだけれど、どうも「天地人」で春日山城の洞窟にいた上杉謙信が私の脳内で邪魔をする。赤が効いた白地の衣装のせいで、テルマエ・ロマエのキャラ(ルシウスだっけ?)も出てきてしまう。なぜあの出で立ち・・・💦
色々と脳内で過去キャラと戦いながらではあるけれど、もうしばらく「どうする家康」は見てみようかと思う。しかしゲームっぽいCGがすごいけど、これ続くのかな。(ほぼ敬称略)