黒猫の額:ペットロス日記

息子は18歳7か月で虹の橋を渡りました。大河ドラマが好き。

【光る君へ】#11 まだ子どもだったまひろ💦現実離れの頭でっかち故に道長のプロポーズを潰す

現実を知る道長、頭でっかちなまひろと伊周

 NHK大河ドラマ「光る君へ」第11回「まどう心」が3/17に放送された。エンディングで破局したまひろはあの恐ろしき廃邸にひとり残されすすり泣いたが、もうね、こちらも急転直下の破局にアララ・・・だった。

 先に行く前に、あらすじを公式サイトから引用させていただく。

(11)まどう心

初回放送日: 2024年3月17日

兼家(段田安則)の計画により花山天皇(本郷奏多)が退位し、為時(岸谷五朗)は再び官職を失うこととなった。まひろ(吉高由里子)は左大臣家の娘・倫子(黒木華)に父が復職できるよう口添えを頼むが、摂政となった兼家の決定を覆すことはできないと断られる。諦めきれないまひろは兼家に直訴するが…。一方、東三条殿では道隆(井浦新)の嫡男・伊周(三浦翔平)らも招いて宴が催され、栄華を極めようとしていた。((11)まどう心 - 大河ドラマ「光る君へ」 - NHK

 今回の残り数分。BGMのギターがカッコ良くかき鳴らされる中、廃邸で待つ道長に、駆け寄る笑顔のまひろ。乙丸に「若君、もういいかげんにしてくださいませ」と、まひろを垣間見に行った道長が怒られながらも(乙丸カッコイイ~言う時は言うね)、恋してる2人がようやく会えたシーンの幕開けだ。

 2人は無言で抱き合い、口づけを交わす。

道長:妻になってくれ。遠くの国には行かず都にいて、政の頂を目指す。まひろの望む世を目指す。だから、傍にいてくれ。2人で生きていくために俺が考えたことだ。

まひろ:それは、私を北の方にしてくれるってこと?・・・妾になれってこと?

道長:そうだ。北の方は無理だ。されど、俺の心の中ではお前が一番だ。まひろも心を決めてくれ。

まひろ:心の中で一番でも、いつかは北の方が・・・😢

道長:それでも、まひろが一番だ。(抱きしめる)

まひろ:(振り払って)耐えられない、そんなの!

道長:お前の気持ちは分かっておる。

まひろ:分かってない!

道長:ならば、どうしろというのだ!(一瞬怒鳴った後、穏やかに)どうすれば、お前は納得するのだ。言ってみろ。

まひろ:(怯えたように声を失っている)

道長:・・・遠くの国に行くのは嫌だ。偉くなって世を変えろ。北の方でなければ嫌だ。勝手なことばかり・・・勝手なことばかり言うな。(まひろを置いて、去る)

 もちろん、現代では「お前が心の中で一番、だけど妾になって」等と言う価値観の男は早々に「バカにするな!」と切って正解。それに、怒鳴る男も最低だ。男に怒鳴られたら、非力な女は怖さが発動して固まるだけだろう。

 だけれど世は平安。偉くなる男ほどたくさんの妻妾を持ち、それにも耐えて他の妻妾を気遣うのが、できた上級貴族の北の方なのだろう。

 まひろの母「ちやは」は、北の方だった。父は妾の下にも通ったが、基本的にまひろは両親の仲睦まじい姿を見て育ったから・・・。でも、それは下級貴族だから出来たこと。身分高い男を相手にそれを望むのは酷だよね、ましてや更に偉くなることを望むのだったら、彼には経済的にも身分的にも強い北の方が必要だ。

 物語上、まひろはまだ成長途上の16~17歳の頃。夢見る女子でも仕方ない。無残に死んだ直秀のためにも自分ができない「世を正す」立場に道長を押し上げようと、遠くの国には一緒に逃げないし、全て理解して込み込みで道長に別れを告げ「死ぬまで見つめ続ける」と前回は言ったのかと思い、ブログでもそう書いた。

 が、ぜーんぜんそこまでの大人じゃなかった😞紫式部への道は、まだ遠かった。

 まひろの頭の中では、学問にすこぶる励むことで出世もできるし、世も正せる、という程度の理解だ。現実はそうじゃなく、あの手この手、汚い偽りを繰り出しても帝を引きずり降ろしてトップに立つのだと、道長は知っている。

 その場合、結婚は政治の一部だ。打毬の後で着替えながら公任&斉信が述べていた通り、貴族の女は身分が全て。妻の財力政治力が無ければ男もトップには居られないのだ。好きな女は妾にするものと言っていた。

 まひろ、あの時は何を聞いていたのか・・・道長と自分の世界を阻む身分差を受け入れたくなくて、ボーイズの言うくだらない貴族の現実から目を逸らせていただけかな。その点も、道長様と私が正すべき、と考えていたのか。

 人は一面的でもなく、あの反応は年相応なんだから、まひろが現実離れしていると責められたもんじゃない。けれど、書物の理想しか知らないまひろじゃ、道長と思いがすれ違い、気に入らないプロポーズを粉砕しても仕方なかった。

 道長は、自らの落ち度によって直秀を失って自責の沼に落ち、政治の世界でトップに立つという熾烈な現実に揉まれ育ち、一家挙げての息詰まる政権乗っ取りの謀に直面したばかりだ。

 何と、即位式で使われる高御座に据えられていた、嫌がらせと見られる子どもの生首まで平然と始末し、自分の袍で拭って「穢れなど無い」と言い切った。まるで兼家パパみたいになってきたじゃないか。蛙の子は蛙か。

 急速に大人にならざるを得なかった道長とまひろのギャップは開くばかりだ。

 そうそう、大人と言えば、道長の長兄・道隆の嫡男・伊周が、いつの間にか大人びて出てきた。ママ高階貴子に「大人のお話に口を挟むものではありませぬ」と窘められても、演じる三浦翔平は見るからに立派な大人。「は?」となってしまったが、12歳前後の設定らしい。

 彼はいきなり「晴明殿。父は笑裏蔵刀。顔は笑っておりながらも刃を隠し持っておりますぞ。お気を付けなさいませ」と安倍晴明に威嚇的に言った。たぶん母方仕込みの漢文だろうが、晴明は心中で苦笑(きっと)。

 いつも晴明は意味ありげに相手の顔を見ているが(顔相を見ているのだろう)、印象は以前晴明に父の非礼を詫びていた道長の方が断然良いだろうね。

 頭でっかちで無鉄砲という点で、伊周はまひろと共通するキャラだ。先行きを考えると、三浦翔平の整った顔なんだけど既に小憎らしい。ドラマではどう造形されるのだろうか。隣に座る定子の子役ちゃんが、大人の定子を演じる高畑充希にそっくりで、NHKの子役発掘力がまた発揮されていた。

政治が分かり、花も実もある倫子様

 さて、まひろなんだが。賢い賢い言われても、現実には通用しない点では父為時そのまま、こちらも蛙の子は蛙だ。ただ、紫式部になるんだし、こういった経験が執筆の肥やしになっていくんだね。

 貴族社会の何たるかの一端をまひろに率直に教えてくれた人が今回2人はいたが、彼女は理解できないままに終盤で道長と向き合い、別れることになった。2人とは倫子と兼家だ。

 花山帝の突然の退位によって官職を失って散位になった父の、打ちしおれた姿を受け、まひろはまず左大臣家の姫である倫子に会いに行き相談した。左大臣の力で官職を得ようとしたのだ。

倫子:まひろさん、どうなさったの?

まひろ:突然お伺いして申し訳ございません。

倫子:私は暇ですからよろしいんですけど。

まひろ:今日はお願いがあって参りました。実はこの度のご退位により式部丞の蔵人であった父が、官も職も失ってしまいました。

倫子:まあ・・・。

まひろ:父は裏表のない真面目な人柄で、学者としても右に出る者がいない程の学識がございます。必ずや新しい帝のお役にも立てると思いますので、何とか左大臣様に・・・。

倫子:(かぶりぎみに)それは難しいわ。だってそれ、摂政様がお決めになったことでしょう?

まひろ:はい、ですから左大臣様に・・・。

倫子:摂政様のご決断は、すなわち帝のご決断。左大臣とて覆すことはできません。(言葉を失うまひろ)ごめんなさいね、お力になれなくて。

まひろ:では、摂政様に直接お目にかかって・・・。

倫子:(ビシッと)おやめなさい。摂政様はあなたがお会いできるような方ではありません。

 ここまで物事をハッキリ言ってくれる倫子様。なんと優しい。書物は読まないと言いながら、政治的な物事の動きはちゃんと頭に入っている。それをもったいつけず、まひろに教えてくれたのだ。

 カッコいいなあ、倫子様。花も実もある誠実な大人だと思う。おっとりと、でも姉御肌というか。

 それなのに、人の言語を理解できないとしか思えないまひろ。必死なんだろうが、ある意味倫子様の言葉を軽んじる行動に出た。なんと、おやめなさいと言われたのに、摂政兼家に直談判に及んだのだ。

 優しく、けれどしっかり本質を言ってくれる言葉を軽んじる人ってどうなのかな・・・心の中で「そうは言っても」と自分を譲らない。相手が怒鳴るとか、叫ぶとかしないと耳を貸さないのだろうか。必死過ぎてか。

 そんなまひろが、倫子様から見て「何か、嫌」とならないか心配だ。

 後半の、倫子様とまひろの女子トークは恐ろしかった。互いの想い人が同一人物だと知らずに会話をしている2人には震えあがったが・・・こんなに政治力のある人を敵に回しちゃいけないよ、まひろ。

 やっぱり、まひろが「源氏物語」の明石の上のように道長の子を産み、それを身分高い紫の上の立場の倫子様が育て、入内させるという妄想が捨てきれない。道長のために協力し合い、彰子の入内プロジェクトを成し遂げる2人が見てみたい。倫子様、道長に頼まれたら断れなそうだから。

夢の中を、ホップ、ステップ、砕け散るまひろ

 倫子様の次にまひろが会いに行ったのが、前述のように摂政兼家。まひろは止まらない。

藤原兼家:為時の娘?

家人の平惟仲:ええ。お目にかかれるまで帰らぬ(!)と申し、裏門に居座っておりますが、やはり追い返しましょうか。

まひろ:(面会のために案内される。「ここがあの人の家」と心中で息を飲む。座って待っていると、兼家がやってくるので深々と礼)

兼家:面を上げよ。賢いと評判の高い為時の娘とはそなたのことか。

まひろ:お目にかかれて恐悦至極に存じます。(頭を下げる)

兼家:わしに何の用だ?

まひろ:父のことでお願いに上がりました。摂政様の御為に、父は長年お尽くし申して参りました。不器用で至らぬところもあったやも知れませぬが、不得手な間者も精一杯務めておりました。何故、何もかも取り上げられねばならぬのでございましょうか。どうか父に官職をお与えくださいませ。どうか、どうかお願い申し上げ奉ります。(頭を下げる)

兼家:(立ち上がり、まひろを見下ろす)その方は、誤解しておるのう。(顔を上げたまひろの顔まで腰をかがめて)わしの下を去ったのは、そなたの父の方であるぞ。

まひろ:存じております。摂政様が「長い間、ご苦労であった」と仰せくださったと・・・。

兼家:(強く)そこまで分かっておって、どの面下げてここに参った。そなたの父はわしの命は聞けぬとはっきり申した。わしは去りたいと申す者を止めはせぬ。されど、一たび背いた者に情けを懸けることもせぬ。わしの目の黒いうちにそなたの父が官職を得ることは無い。下がれ。

まひろ:(呆然と、涙目で兼家を見上げる)

 「兼家様はわしをお許しにはなるまい。この先の除目に望みは持てぬ」と為時パパは息子惟規に言っていた。当初は「兼家様が長い間ご苦労と言ってくれた」などと、かなりおめでたいパパ・・・💦と思っていたが、佐々木蔵之介演じる宣孝が「今すぐ東三条院に謝りに行け」と慌てふためき、召人のいとが泣くほど常識外れを自分がやっていると、実は分かっていたのだね。

 その時に、まひろは「父上はご立派でございます」と言ってしまったと思う。見ていて、ああ、そんなこと言っちゃったらダメだよ!と世俗にまみれたコチラは思った。娘の理想で縛られているパパに、上塗りするような事を言ってさらに縛るほど、まひろは事の大きさが理解できていなかった。

 道長がまひろを妾にしたくても、今回の兼家への押しかけ談判がアダになりそう。絶対に兼家には会わせられないだろうな。しかし、妾なら親に会わせ許可をもらう必要も無いか・・・。

 まひろは今も、直談判の何がいけないの?と思ってそうだ。若さゆえの無鉄砲な行動力が眩しく見えてしまう宣孝が、かなり彼女を褒めちゃうからな・・・さすが将来の夫。

藤原宣孝:摂政様に会いに行ったのか。お前、すごいな。

まひろ:すげなく追い返されました。

宣孝:会えただけでも途方も無いことであるぞ。ひとこと慰めを言うぐらいのつもりで来たわしに比べて、お前は真に肝が据わっておるのう。摂政様に直談判するとは・・・。

 今回、賢いと音に聞く娘はどんなもんかとの興味から引見しただけだったろう摂政兼家に、まひろは当たって砕けて、現実をご丁寧に教えてもらった。陰で「虫けら」とまひろを呼びつつ、なんとお優しい(皮肉)。

 もちろんドラマ的には面白いから、まひろの無鉄砲は悪くない。ただ、会えるまで帰らないと言い張るなど、まひろもまひろで強引なハラスメント気質見え隠れでハラハラする、単に子どもなのかもしれないが。

 だけど一応、突破力があってさすが将来の紫式部だと書いておく。隠れていたい凡人の目線で見ると空恐ろしいばかりだが、表に自ずと出る大物は違うのだな。

妾は嫌だのこだわりはどこから

 先ほどの宣孝との会話の続きで、まひろの婿取りの話が出てきた。まひろの北の方へのこだわりが見える。

まひろ:私に何かできればと思いましたが・・・下女たちにも暇を出して、私もどこかで働こうかと。

宣孝:婿を取れ。有望な婿がおれば何の心配もない。

まひろ:このような有様の家に、婿入りする御人なぞおりますでしょうか?

宣孝:北の方に拘らなければ、いくらでもおろう。(まひろ、途端に気まずそうに目線を外す)ほほう・・・そなたは博識であるし、話も面白い。器量も・・・そう悪くない。誰でも喜んで妻にするであろう。婿がおれば、下女に暇を出すこともないし、働きに出ずともよい。為時殿は好きな書物でも読んで暮らせばよい。誰か心当たりはおらぬのか?

まひろ:妾の話が出てからずっと不機嫌そう)おりませぬ。それに私は妾になるのは・・・

宣孝:わしにも幾人かの妾がおるし、身分の低い者もおるが、どのおなごも満遍なく慈しんでおる。文句を言う者なぞおらぬぞ。男はそのくらいの度量は皆、あるものだ。(呆れたような顔をして宣孝を見ているまひろ)もっと男を信じろ、まひろ。身分の高い男より、富のある男が良いな。若くてわしのような男はおらぬかのう・・・ハハハハ(まひろ、一緒になって笑ってしまう)探してみるゆえ、心配するな。(まひろ、イヤイヤとかぶりを振る)為時殿には会えなんだが、まひろと良い話ができた。では帰るぞ。

 この会話が、道長との喜びの再会からスピーディに破局に至った際に思い出された。2人は離れていても思い合い、互いに逢瀬を思い浮かべるほどだったのに、まひろは道長の妾になってほしいとの要望に「そんなの耐えられない!」と反発し、道長が考える2人が寄り添って生きる未来を砕いた。

 そもそもが現代の視聴者(女子)に寄り添ったキャラ設定なのだと思うが、まひろが妾を毛嫌いする理由には、道長の兼家パパの妾である道綱の母(財前直見)の手による「蜻蛉日記」を左大臣家のサロンで倫子様たちと読み、学んでいるのもあるだろう。

 赤染衛門先生が「言葉の裏に込められた思いを感じ取れるようになると、良い歌が詠めるようになります」という点では、まひろはまだまだ。話の行間が読めて良い歌詠みになるのはこれからだろうが、妾の恨みつらみだけは、蜻蛉日記によってずっしり受け止めてきたはずだ。

 プラスして、一家の使用人ながら「いと」という身近な存在が、このところ為時の妾以下の召人の立場で苦しんでいる。まひろも男女関係について深く考えさせられているだろう。

 今回も「父上は?」とまひろに為時の所在を聞かれて「殿さまは高倉に」と、引きつった顔で妾の下に(介抱に)出かけていることを、いとが告げていた。(いとは為時が瀕死の妾の介抱に行っていることは知らされていないか?前回の高倉探索の後、まひろに様子を聞こうとしたのに、タイミング悪く道長から手紙が来ちゃってたから。)

 いとは前回も、まひろの琵琶に涙しながら繕い物をしたりしていた。惟規が婿入りしても姫様のそばに置いてくれとまひろに懇願した時、惟規についていけば良いと返されたら、多少元気を取り戻して「殿さまは高倉にくれてやります」と言っていた。

 まあまあ、なぜ妾が嫌なのか色々あるのだろうけれども、これから後出しで出てくる決定的理由もあるかもしれない。

 しかし思うに、何よりもまひろは道長が大好きで、他の人とシェアするなどとんでもなく、彼を独占して2人の世界を生きていきたいのだろうな。意地悪な見方かもしれないが、支配欲は強そうだ。ナンバーワンでありたいのかも。

 そんなまひろが分不相応にも北の方を望み、皮肉にも道長と別れることになった。何もかもを望み過ぎると、こうなる。ほどほどを知るんだろうか。

北斗七星の意味

 今回は、番組の最後の「光る君へ紀行」でユースケ・サンタマリア演じる安倍晴明が取り上げられていた。

 紫式部や道長の時代に、朝廷に置かれた役所の1つ、陰陽寮に所属したこと、朝廷や貴族たちの相談役として人々の信望を得ていたこと、千年の時を越えて今尚人々の心を魅了し続けていること等がナレーションで語られたのだったが、見事に「占い」とか「呪術」とは言わない。なぜ?

 晴明が人々の信望を得るにしても「占いで」だったのに、NHK的にNGなのかな、あまりに迷信的じゃないかと言われるのを恐れて。

 ちなみにテロップや映像では、道長の「御堂関白記」での晴明に関する記述の他、晴明が子孫に残したと伝わる占術の書「占事略决」の「占病祟」といった字が大写しになっていた。

 確か、安倍晴明ら陰陽師が呪詛を解くための、北斗七星の形に歩みを進める呪術的な足づかいがあるというのを、磯田道史の「英雄たちの選択」という番組で見た気がする。(「陰陽師・安倍晴明 平安京のヒーローはこうして誕生した」 - 英雄たちの選択 - NHK

 明治になって、大久保利通や西郷隆盛が明治天皇を表に引っ張り出したい時に、厄除け(?)のために、いちいち北斗七星の形に天皇を歩ませようとする陰陽師がいたら邪魔だったろうと、磯田は言っていたと思う。想像するとおかしかった。

 それぐらい、陰陽道では大切に扱われている北斗七星。それが、今回は目についた。

 まず、即位する幼い帝の衣装の背中に北斗七星の刺繍が。幼帝は例の、嫌がらせの生首が置いてあった高御座に座った訳で、当時の死穢思想からいったら・・・それを跳ね返し幼帝を守る意図の北斗七星だったか。(私は生首よりも、帝の後ろに立っている介添え?の黒い袍の公卿の方が、絵面的に怖かったけど・・・。)

 また、兼家らの策略によって退位させられた花山帝が、新帝即位のタイミングで呪詛の真言を唱えていたものの、数珠が切れて呪詛はならなかった。その時に、散らばった数珠が北斗七星の形に並んだのも、陰陽師の力によって呪いは妨げられたと示していたのかな。

 そして、兼家と道長が生首の件を話し、道長の判断を兼家が褒めた夜の空を飾るのも、北斗七星だった。安倍晴明に守られ、即位式を一通り終えたということを示しているように見えた。

 そもそもが、兼家は晴明の策を買って花山帝退位⇒一条帝即位⇒兼家摂政を成し遂げた。それを忘れちゃいけなかったね。

兼家に噛みつく道兼

 花山帝を退位に追い込んだ功労者だと自負のある道兼が、道隆一家と宴を楽しんでいた兼家に噛みつき、報いることを忘れてはいないと言いくるめられていた。道兼の娘も一条帝に入内させると兼家は約束していたが、確かに道隆の定子に次いで、道兼の娘も入内していた。(藤原尊子 (藤原道兼女) - Wikipedia

 しかし、彼女が入内したのは、兼家(990年没)も道兼(995年没)も亡くなってからの998年、数え15歳だそうだ。母は一条帝の乳母だそう。道兼の娘は、兼家の存命中はまだ幼く、約束は果たせなかったか。それに、あの兼家ならなんだかんだと理由を付けそうだ。道兼本人も、娘をなかなか入内させられなかったようだ。あまりに幼くてもね。兼家がわざわざ言及したところを見ると、そこら辺も後にエピソードになるか。

 兼家はドラマではどんな死に方をするのだろう。陰陽師に守られて、安らかな死なのか、それとも・・・。道長は、心優しき三郎を完全に脱し、頂に上ると心に決めたせいか父の片鱗を見せるようになった。道長の今後の変貌が心配になっている。

(敬称略)