黒猫の額:ペットロス日記

息子は18歳7か月で虹の橋を渡りました。大河ドラマが好き。

【光る君へ】#10 陰謀進みメンタル限界の道長、まひろに使命諭され別れ(?)の逢瀬

えっと、夜8時のNHKでしたよね?

 NHK大河ドラマ「光る君へ」第10回「月夜の陰謀」が3/10放送された。脚本家が「平安のセックス&バイオレンス」を宣言していたんだから、主役カップルがプラトニックのままな訳はなかった。

 が、やはりNHKの夜8時だから、ちょっと驚いた。例えば小学生の大河ファンがいるご家庭では、お子様方のお目目を塞いだりしたんだろうか?

 大河ドラマや朝ドラの女子の主役というと、物凄く恋愛関係に疎いとか鈍感であるように描かれることが多い印象がある。または、恋愛が成就して両想いになっても「なんでそうなるの」というくらい2人が会えなかったり。王道は、時間がワープして、いつの間にかママになっているパターンだろうか。

 でもこのドラマは脚本が大石静だから。朝ドラ「ふたりっこ」でさえ、ヒロインの片方がベッドシーンに至って話題になっていたんだし、今作でも、果敢に突き進んでも不思議ではなかった。

 これまでの大河ドラマでもそれなりにラブシーンはあったしね。昨年の大河ドラマ「どうする家康」の「側室をどうする」の回では、夜伽がコミカルに描かれていた。一昨年の「鎌倉殿の13人」では、ガッキーの「おかえりなさい」に皆でキュンとして「良かったね、義時」となったんだったよなあ。

 今年のまひろと道長の関係は、結ばれて良かったねと単純には言い難いほろ苦さがある。美しいとしか言いようのない月夜の逢瀬だったものの、オープニングテーマの一度は繋がれた指が離れてしまう映像が示唆するところを気にすれば、これっきりなのかもしれない。

直秀がいない廃邸は怖い

 本題に入る前に、あらすじを公式サイトから確認しておこう。

(10)月夜の陰謀

初回放送日: 2024年3月10日

兼家(段田安則)は道長(柄本佑)たち一族を巻き込んで、秘密裏に花山天皇(本郷奏多)を退位させ、孫の懐仁親王(高木波瑠)を擁立する計画を進め始める。その頃まひろ(吉高由里子)は、家に帰ってこない為時(岸谷五朗)を案じ、妾の家を訪ねてみる。そこには身寄りもなく最期を迎えようとしている妾の看病をする為時の姿があった。帰宅したまひろのもとに道長からの恋文が届く。まひろは道長への文をしたため始めるが…

 気になってしまったのは、2人が会ったのが、以前直秀が案内してくれた廃れた邸跡だったということ。まひろがフラフラ出歩くのが貴族の姫としてまず有り得ないところ、しかも夜中で徒歩だよ?

 前は、直秀という頼りになる人物が陰から守ってくれていた。だからセキュリティ対策はOKだったが、彼が居ないとなれば、治安の悪い当時、姫が夜中に廃れた邸に赴くなんか不可能なんじゃ・・・。

 どこかに乙丸が隠れているのか?それでも頼りないなあ。

 前回のブログで、弟は大学寮に入り、父為時は妾の看病のためにそちらに行きっぱなしになることで、まひろの周りが仕える人々を除くと何となく人払いされているようだと書いた。まひろの自由度が増し、恋愛をするには好都合だと思い、当然、道長がまひろの下へとやってくるのだと思った。

 まひろは、妾に関する父為時の振る舞いで傷ついていた「いと」に優しく接していたから、彼女を味方に引き入れることができそうだし、だとしたら、自邸で道長と普通に会えそうだった。(ところで今回、いとは弟惟規の乳母だけではない存在だったことがはっきりした。)

 廃れた邸なんて、「源氏物語」でも光源氏に連れていかれた夕顔が命を落としたじゃないか。ドラマの廃邸は六条にある設定だったと思うが、夕顔が襲われたのは六条御息所の生霊だ。

 物の怪だけでなく、住居に困った盗賊やら誰が住み着いているかわからない。掃除もされてなければ、夏なら虫だらけ。そこで貴族の坊ちゃん嬢ちゃんが夜中に会うなんて、無茶だよなあ😅若いなあ。

道長は謀略により追い込まれ、逃げ出したくなっていた

 さて、文句はこれくらいにして・・・前9回のブログでこう書いた。

直秀を欠いたからこそ、道長とまひろの間に離れがたい絆ができるのだと思う。こんな経験をしたんだから、幼なじみのような関係から本当の恋人同士へと一気に関係が変質するような気もする。直秀は、キューピッドの役目を終えたのだ

 直秀を死なせたことで、トライアングルの一角が欠けて残った2人が恋人同士として急速に近づくことになったのかなと前回を見た段階では思ったが、今回を見ると、どうも直接的にはそういうことではなかったようだ。

 一番の理由は、道長の父・兼家が強引に進めている謀略によって「俺もう無理」状態に道長のメンタルが追い込まれてしまったことらしい。そこで、何もかも嫌になって逃げ出したい道長は、まひろに縋りついたか。

 前9回は、まひろと父・為時が桜の花びらがこぼれ散る中、惟規を大学寮へと送り出したところで「つづく」となった。桜の花びらがハラハラとそんなに多くなく散っていたのだ。つまり、直秀らを葬ったのは986年(寛和2年)春か、その前だ。

 今10回の冒頭では、ユースケ・サンタマリアの安倍晴明が「23日は、歳星(木星)が28宿の氐宿を犯す日」だと説明し、「12年に1度の犯か」と兼家パパも受けた。当時当たり前の知識なのか。

 晴明は6月23日丑の刻(午前1~3時)のクーデター実行を兼家パパに進言したのだったが、パパは「すぐではないか!支度が間に合わぬ」と言っていた。旧暦だから6月は現在の7月?つまり、桜が散っていた第9回から数か月経過した初夏の話が第10回なのだろう。

 道長がまひろに手紙を送り始めたのは、この謀略が進み始めて以降。単に直秀を失ったことでまひろとの関係が進展したのなら、手紙を送り始めるのを数か月待つ必要などなかった。

 だから、手紙を受け取ったまひろは「(直秀の埋葬を思い浮かべ)あの人の心は、まだそこに」と言ったのだね。大切な友人が死んで、悲しみ、自責の念に襲われ悩んでいたとして、数か月じゃ「まだ」って言うほどの日は経っていないのではないかと引っかかりはするものの・・・まひろは頭の回転が速い。

 道長は、直秀を葬ることになってしまった己が罪による心の傷が癒えないうちに、貴族である自分の一族が恐れ多くも帝に対して冒そうとしている政変に直面し、どうしようもなく、いたたまれなくなったのだろう。

 家庭内では、

  • 得意がる道兼(でも父には道綱と共に便利使いされているだけだが)がうるさい兄弟間での駆け引きもあるし、
  • 父は陰で道長には「事をしくじった折には、お前は何も知らなかったことにして家を守れ」「父に呼ばれたが、一切存ぜぬ、我が身とは関わりなきことと言い張れ」と更なる謀を命じるし、
  • 仲の良いはずの姉・詮子様は自分の息子のために道長の結婚相手を2人も決めてしまうし(ところで源明子女王、演じるのは男女逆転「大奥」の阿部正弘の中の人かー。美しかったね)。

 道長は自分の意志とは関係なく、がんじがらめの駒。まともな心ある母・時姫を失ってから、まるで心許せる家庭環境じゃないのはよくわかる。ここまでよく耐えてきた。

古今和歌集をパクって送る道長、コピペはイケマセン

 女性に和歌を送るのが当時の恋愛上のルールだったとして、送るにしても自作ではないのか?まひろが「好きな人がいるなら歌を作ってあげるわ」と昔、道長に代作を申し出ていたのだから、このドラマの中でも自作の和歌を恋人には送るもの、という常識があったのだと思う。

 でも、道長君は古今和歌集からパクってまひろに送るのだ。余程自信が無いのか・・・まひろも「なんで」と言ってたが、恋路とはいえ剽窃はダメだよ、当たり前でしょう。

 まあ、まひろみたいな相手に自作の和歌を送るのは嫌だよねえ、添削して返されそう(全視聴者に添削されるのも😅)。それに、古今和歌集の和歌なら、どこかで聞いたことがあるし、後からでも調べられるから見ている側にはありがたいかな。その前に、ドラマで口語訳されていたが。

 道長の古今和歌集と、まひろからの陶淵明の漢詩とのやり取り(口語)を並べると、こうだった。

道長:そなたを恋しいと思う気持ちを隠そうとしたが、俺にはできない。

まひろ:これまで心を体のしもべとしていたのだから、どうして一人くよくよ嘆き悲しむことがあろうか。

道長:そなたが恋しくて死にそうな俺の命。そなたが少しでも会おうと言ってくれたら生き返るかもしれない。

まひろ:過ぎ去ったことは悔やんでも仕方がないけれど、これから先のことは如何様にもなる。

道長:命とは儚い露のようなものだ。そなたに会うことができるなら命なんて少しも惜しくはない。

まひろ:道に迷っていたとしてもそれほど遠くまで来てはいない。今が正しくて、昨日までの自分が間違っていたと気づいたのだから。

 このやり取りじゃあ大変だ。道長は「会いたい、会いたい、会いたい」と分かりやすくズバリと伝えてきているのが分かるが、まひろとは永遠にすれ違うのか💦追い込まれている道長に、まひろの返事の仕方は厳しい。

 ここで道長が行成にアドバイスを求めたところ、「道長様には好きなおなごがおいでなのですね」と、ちょっとしょんぼりした行成だったが(やっぱりね・・・)、こう言った。

行成:そもそも和歌は、人の心を見るもの聞くものに託して言葉で表しています。翻って漢詩は、志を言葉に表しております。つまり、漢詩を送るということは、送り手は何らかの志を詩に託しているのではないでしょうか。

 それで「少しわかった」と言った道長が、次にまひろに送ったのが漢文「我もまた君と相まみえぬと欲す」だったのが笑えた。これって陶淵明の続きなのか?そうじゃなさそう。ストレートな「志」ではあるよね・・・とにかく会いたいと。

 まひろもこれで、まどろっこしく漢詩を送っててもダメか、直接会って伝えようと観念したかな。

まひろの思いは

 前回「遠くの国」の終わりで、まひろは父とこんな会話をした。

為時:お前が男であったらと、今も思うた。

まひろ:私もこの頃そう思います。男であったなら、勉学にすこぶる励んで内裏に上がり、世を正します

 その後、「言い過ぎました」と父と笑ったまひろだが、「世を正します」を言わせたのは直秀の死だ。

 自分が男であったならという思いは、男で上級貴族である道長に対しては、「直秀のために」その立場を生かして世を正してほしい、となっていくのだね。正に、自分ができないことができる羨ましい立場に道長は生まれたのだから。男女差もそうだけど、身分制度の厳しい時代には殊にそうだろう。

 また、まひろは「直秀のために」と思って立ち向かうことは、道長の深い後悔の念をも救うことになると思っているのだろうな。実は道長が心を痛めているのはそれだけじゃなくて、家族の命運が懸かる大掛かりな陰謀が切迫している訳だけど、もちろん彼女はそんな事までは知らない。

 でも、道長はまるでマフィアの家に生まれちゃったみたいなものだよね。そうそう人に言えない陰謀なんか抱えちゃって。たまらんな。

 それで、出会っていきなりのキス!となったのはドラマチックだったけれど、まひろの気持ちとしてどうなんだ?とちょっと驚いた。彼女の方も、そこまで道長への気持ちが醸成されていたとは・・・甘く見ていた。

 そのあたりを説明してくれた2人の会話はこうだった。

道長:一緒に都を出よう。海の見える遠くの国へ行こう。俺たちが寄り添って生きるにはそれしかない。

まひろ:どうしたの?

道:もっと早く決心するべきだった。許せ。

ま:そんな・・・。

道:藤原を捨てる。お前の母の仇である男の弟であることを止める。右大臣の息子であることも、東宮様の叔父であることも止める。だから一緒に来てくれ。

ま:道長様・・・うれしゅうございます。

道:まひろ!(抱きしめる)

ま:うれしいけど・・・どうしていいか分からない。

道:分からない?父や弟に別れを告げたいのか?そのために家に帰れば、まひろはあれこれ考えすぎて、きっと俺とは一緒に来ない。だからこのまま行こう。お前も同じ思いであろう?心を決めてくれ。まひろも、父と弟を捨ててくれ。

ま:大臣や摂政や関白になる道を、本当に捨てるの?

道:捨てる。まひろと生きてゆく事、それ以外に望みは無い。

ま:でも、あなたが偉くならなければ、直秀のような無残な死に方をする人はなくならないわ鳥辺野で、泥塗れで泣いている姿を見て、以前にも増して道長様のこと好きになった。前よりずっとずっとずっとずっと好きになった。だから帰り道、私もこのまま遠くに行こうと言いそうになった。でも言えなかった。なぜ言えなかったのか、あの時はよくわからなった。でも、後で気づいたわ。2人で都を出ても、世の中は変わらないから。道長様は偉い人になって、直秀のような理不尽な殺され方をする人が出ないような、よりよき政をする使命があるのよ。それ、道長様も本当はどこかで気づいてるでしょう?

道:俺はまひろに会うために生まれてきたんだ。それが分かったから今、ここにいるんだ!

ま:この国を変えるために道長様は高貴な家に生まれてきた。私とひっそり幸せになる為じゃないわ。

道:俺の願いを断るのか。

ま:道長様が好きです。とても好きです。でも、あなたの使命は違う場所にあると思います。

道:偽りを言うな。まひろは子どもの頃から作り話が得意であった。今言ったことも偽りであろう。

ま:幼い頃から思い続けたあなたと、遠くの国でひっそり生きていくの、私は幸せかもしれない。

道:ならば!

ま:けれど・・・そんな道長様、全然思い浮かばない。ひもじい思いもしたことも無い高貴な育ちのあなたが、生きてくために魚を取ったり木を切ったり、畑を耕している姿。はあ、全然思い浮かばない。

道:まひろと一緒ならやっていける。

ま:己の使命を果たしてください直秀もそれを望んでいるわ

道:偽りを申すな。

ま:一緒に遠くの国には行かない。でも私は、都であなたのことを見つめ続けます。片時も目を離さず、誰よりも愛おしい道長様が政によってこの国を変えていく様を、死ぬまで見つめ続けます

道:一緒に行こう。

 この、2人の別れにも聞こえる言葉をまひろは告げているのに、その後、どうしてラブシーンになるのか?少々混乱した。

 そもそもまず、道長はともかく、そんなにまひろ側が道長を大好きだったなんて。幼い頃は気になる程度かと思っていた。左大臣家のサロンで道長の話が出るたび、分かりやすく目を見開いて固まっていたから、成長してから好きは好きだったのだろうが、道兼という仇の存在が、心の中で大きく邪魔をしているのかと・・・。

 逆なのか。道兼が居たからこそ、道長への禁断の思いが膨れ上がっていた。

 プラスして直秀の死、そしてその埋葬を共にしたこと。泥塗れの道長を見てずっと×4好きになったんだもんね。ここでぐっとまひろの道長への思いは高まったんだね。

 それなのに、出てくるのはあの漢詩なんだな・・・自分の気持ちを抑え込み、道長を使命へと振り向けるつもりで。高尚過ぎる。まひろが気持ちを抑え込みすぎちゃってたもんで、こちらはついて行けてなかった😅再会していきなり熱いキスを交わすほどだったとは。驚いた。

 道長は「偽りを申すな」と繰り返していた。家族や貴族仲間と気持ちを偽って生活をしているから、救いは偽りのないまひろと直秀だけ(百舌彦もいるけどねー)。まひろが言葉を尽くして説明しているのに、まだ「一緒に行こう」と言っていた道長に、死ぬまで見つめ続けるという自分の言葉が偽りじゃないと分からせるために、証として一緒に寝たってことなんだろうな。

 道長は「振ったのはお前だぞ」「また会おう。これで会えなくなるのは嫌だ」と言っているから、まひろのこれきりの気持ちも伝わっているらしい。これは2人の別れのシーンだったのだと、理解した。

 まひろは「人は幸せでも泣くし、悲しくても泣くのよ」「幸せで悲しい」と言っていた。両想いを確かめられても、別れるんだもんね・・・。

事変での道長は

 道長は、これ以後はまひろに指摘された「己が使命」をはっきりと意識しながら生きていくのだろうか。

 手始めに寛和の変での道長だが、内裏に呼ばれた際にも無の境地のような表情をしていた、異母兄の道綱が落ち着かない様子MAXだったのに比べて。

 「これより、丑の一刻にございます」の声で兼家パパが「これより、全ての門を閉める」と言った時、詮子様は目をギュッと閉じ、道長はいよいよか、というようなやや高ぶった目を向けたが、すぐに表情は消えた。

 帝の位の在りかを示す剣璽が兄2人の手で東宮の下へと運ばれ、いよいよ道長の出番。「行って参ります」と兼家パパに告げ、関白の下へと馬を走らせた。

関白頼忠:何事じゃ。

道長:ただいま帝がご退位され剣璽は梅壺に移り、東宮が践祚あそばされました。

関白:なんと・・・。

道長:関白様も急ぎ内裏へ。

 馬上の道長の表情は遠くて窺い知れなかったが、関白への口上を申し述べる彼は、引き締まった声で、ああ、運命を受け入れたのだろうかと感じさせた。

 ところで、この政変の途中でとても気になったのが道隆と道綱が運んだ、帝の即位に関わる剣璽のこと。帝のお住まいの清涼殿から持ち出して道隆兄弟に渡す典侍ら女房2人の顔も引きつっていた。なぜ易々と?協力させられている訳?

 女房らも、これは大変なクーデターにガッツリ関与しているとの意識はあったはずだ。怖かっただろうな・・・何か失敗したら消されるだろうし。いや、成功した暁にも兼家パパならもしかして?

 この辺の疑問は公式サイトで説明されていた。(をしへて! 佐多芳彦さん ~藤原兼家が運ばせた「剣璽」とは? - 大河ドラマ「光る君へ」 - NHK

 道長、兼家パパを反面教師に、こんな権力者にはならないでね。死ぬまで見つめているまひろが泣くよ・・・と思う訳だが、ドラマでは後の道長をどう描いていくのだろうか。

 次回、花山帝をたばかった道兼が、己の立場を思い知らされるらしい。それはそれで1ミリぐらい気の毒。花山帝に仕えていた父為時が、退位によって職を失い、立場を思い知らされるのは、まひろも同じことか。

(敬称略)