黒猫の額:ペットロス日記

息子は18歳7か月で虹の橋を渡りました。大河ドラマが好き。

【光る君へ】#13 退場近い兼家、ここでのまひろ&道長の再会は何を意味するか

朝ドラ「虎に翼」も始まって

 NHK大河ドラマ「光る君へ」第13回「進むべき道」が3/31に放送された。今回は、悲劇のヒロイン定子様が少女らしく可憐にご登場、安倍晴明に寿命を見切られているらしい兼家はすっかり弱って道長を悲しませ、宣孝のまひろへの恋愛感情の覚醒も感じられた。

 まひろは「より良き世の中を求め、あなたは上から政を改めてください。私は、民を一人でも二人でも救います」との道長への気持ちを胸に、読み書きできるよう庶民の子どもに字を教え始める。

 道長は、民の声を黙殺しようとする兄道隆始め先輩公卿に対して「民なくば、我々の暮らしもありません!」と抵抗。賛同してくれる公卿は「黒光る君」の実資だけ、亡き直秀への誓いが空回りする。

 会わない4年が過ぎても、健気にもふたりは互いへの思いは忘れず生きているようだった。

 では「進むべき道」のあらすじを公式サイトから引用させていただく。

(13)進むべき道

初回放送日: 2024年3月31日

4年が過ぎ、道隆(井浦新)の娘・定子(高畑充希)が、元服してわずか20日後の一条天皇(柊木陽太)に入内する。道隆たち中関白家が絶頂期を迎え、兼家(段田安則)の後継争いが始まろうとしていた。一方、為時(岸谷五朗)は官職を得られず、貧しい暮らしが続くまひろ(吉高由里子)。ある日、さわ(野村麻純)と出かけた市で揉め事に巻き込まれる。文字が読めずに騙された親子を助けようとするまひろだったが・・・

 ドラマ冒頭の表示は永祚2年(990年)、一条天皇が元服した。前回から4年後の今回、20歳前後になっているまひろは、髪や衣装の出で立ちが多少変わって成長した様子だった。そして、家計を助けるための婿探しには相変わらず難色を示す一方で、職探しを始めた。

 貴族の屋敷での女房仕えを希望している訳だが、父・為時が未だに官職無しなので「下女なら」とまで言われてしまう。まひろが漢籍を読み書きできようが、彼女の能力は関係ない。父親が五位の受領であれば良いのだ。

 また、字が読めないがために騙され、子ども3人を売ったことにされて泣きを見た市井の女性もドラマには出てきた。

 ここで唐突ながら・・・新朝ドラ「虎に翼」が第1週を迎え、主人公は女性初の弁護士&裁判官となるはずの猪爪寅子(ともこ)だ。寅子の昭和の始め頃と、まひろの平安半ば頃で、さすがに同じとは言い難いが女には「したたかさ」が必要な、連綿と続く生きづらさがどちらの世の中にも存在しており、両者ともちょうどそこに焦点が当たっているようにも見える。

 その中で、朝ドラも大河も、主人公2人は「進むべき道」に向かって歩んでいる段階だ。ガンバレ寅子とまひろ。道長もね。

 朝ドラの話だが、第5回は感動ものだったのでちょっとだけここに記録しておく。私のお気に入りの松ケンが悪者で気の毒だったけど、今後主人公の味方に転びそうだ。

寅子:あの、ご無沙汰しております。以前、夜学の授業にお邪魔させていただいた・・・。

桂場(松ケン):ああ、君か。

寅子:猪爪寅子です。その節はありがとうございました。

桂場:私は別に何も。

寅子:いえ、あの時背中を押していただいたおかげで明律大学女子部法科への道が開けました。いや、まだ完全には開けてはいないのですが・・・実は、母に女子部進学を反対されておりまして。あの、先生ならばどのように母を説得されますか?

桂場:私も女子部進学には反対だ

寅子:えっ、何でですか?

桂場:君が女だからだ

寅子:はて?

桂場:穂高先生の言葉に騙されない方がいい。あの方のお考えは進んでおられて素晴らしい。だが、あまりに非現実的だ。

寅子:えっ、でも・・・。

桂場:君は頭が良いんだろう。女学校で1番だったかもしれないが。

寅子:2番です。

桂場:とにかく時期尚早だ。いつかは女が法律の世界に携わる日が来るかもしれない。だが、今じゃない。

寅子:それは、やってみないと・・・。

桂場:今、君が先陣を切って血を流したとしても何の報いも無いだろう。

寅子:それも、やってみないと。

桂場:母親1人説得できないようじゃ話にならない。この先、戦うのは女だけじゃない。優秀な男と肩を並べて戦わなければならなくなるんだよ。

寅子:あの・・・私の母は、とても優秀ですが?

桂場:は?

寅子:恐らく、今想像してらっしゃるよりもずっと頭がよく記憶力も誰よりも優れています。

桂場:何言ってるんだ君は。

寅子:ですから、母を説得できない事と、私が優秀な殿方と肩を並べられないことは全く別問題かと。心躍るあの場所に行けるなら、血くらいいくらでも流します。それに私、同じ土俵にさえ立てれば殿方に負ける気はしませ・・・。

桂場:いいや負ける!通うまでもなく分かる。君のように甘やかされて育ったお嬢さんは、土俵に上がるまでもなく血を見るまでもなく、傷つき、泣いて逃げ出すのがオチだろう。

寅子母はる:お黙んなさい!

寅子:お母さん!

桂場:お母さん?

はる:何を偉そうに。あなたにうちの娘の何が分かるって言うんですか?何が時期尚早ですか。泣いて逃げ出すですか。そうやって女の可能性の芽を摘んできたのはどこの誰?男たちでしょ!

桂場:そんな、私に感情的になられても・・・。

はる:自分にその責任は無いと?それならそうやって無責任に娘の口を塞ごうとしないでちょうだい!(娘に向かい)行きますよ寅子!行きますよ!

 そして、はるは法律専門書店に駆け込み、「六法全書ください!」と言うのだ。娘の新しい見合用の振袖は、六法全書に化けた。まず六法全書の存在を知っていることからして、確かにこの母は優秀じゃないか?そして娘に言う。

はる:私は私の人生に悔いはない。でもこの新しい昭和の時代に、自分の娘にはスンっとして(押し黙って)ほしくないって、そう思っちゃったのよ!そこにきて、あんな若造にあんなこと言われたら、こうならざるを得ないでしょ?寅子、何度でも言う。今、お見合いしたほうがいい。その方が間違いなく幸せになれる。それでも本気で地獄を見る覚悟はあるの?

 うなずく娘に微笑む母。まひろの平安時代からほぼ千年でもこう。そして寅子の昭和からほぼ1世紀経って、令和でも報道で見る会議に並ぶ面々は片方の性に偏りがち。女はどこへ行ったやら。口を塞がれ押し黙ってきた結果だな。

 そう考えると、千年も前に「源氏物語」という文句のつけようのない結果を残した紫式部・まひろは、本当に偉大だ。

倫子様、今は気づいていなくても後が怖そう

 大河に話を戻そう。

 職探しをする「まひろ」の噂をサロンで耳にした倫子様(こっちも「ともこ」)は、まひろにどうやら親切な手紙を書き、まひろを雇うと申し出たようだった。しかし、さすがに道長が婿入りした先の土御門殿に出仕するのもねえ・・・と普通は考える。案の定、まひろは他で仕事が決まったと嘘をついた。

 倫子様は「それならこうして、たまにお訪ねください。まひろさんとお話ししとうございます。今日はまだ内裏から戻りませんが、今度、殿にも会ってくださいね」と無邪気に言ったが、これって、まひろの嘘が後でバレる流れでしょ?今は気づいていないようだけど、そうなったら地獄だよね。こういうの鬼脚本って言うのかな。

 その倫子様、道長の文箱から見つけてきたある物をまひろに見せた。なんと、まひろ自身が道長に送った漢詩だった。それを「女の文字では」と倫子は勘づき、もう1人の道長の妻・源明子からの文ではないかと疑っていた。

倫子:(懐から文を出す)これ、殿の部屋で見つけたのだけれど大切そうに文箱の中に隠してあったの。

まひろ心の声①:(私が書いた漢詩だ・・・。)

倫子:これ、女の文字ですよね?

まひろ:さ、さあ・・・。

倫子:漢詩だから殿御かとも思ったのだけれど、やはり女文字だと思うのよ。

まひろ:(とぼけて)はあ・・・。

倫子:あの方が送ってきたのかしら?

まひろ:あの方?

倫子:高松殿の明子女王様よ。あの方は盛明親王のもとでお育ちだから漢詩も書けるのよ。これ、どういう意味か分かる?

まひろ:この詩は陶淵明の詩です。陶淵明とは古の唐の国の詩人で、この詩は帰去来辞でございます。

倫子:もういい。

まひろ:あ・・・ご無礼を。

倫子:あちらとは文のやり取りがあったのね。殿、私には一通も文を下さらず、いきなり庚申待の夜に訪ねて見えたの。突然。

まひろの心の声②:(庚申待の夜・・・。)

回想の道長:左大臣家の一の姫に婿入りすることとなった。

倫子:でも漢詩ですから、やはり殿御からということにしておきますわ。

まひろの心の声③:(あの人はこの文を捨てずに土御門殿まで持ってきていたの・・・。)

女房:姫様!(彰子がやってくる)

倫子:あらあら、どうしたの?今、お客様なのに。まひろさんよ、ご挨拶して。(倫子の後ろに隠れる彰子)ごめんなさいね。

まひろ:お初に。まひろと申します。

倫子:この子、うちの殿に似て人見知りするのよ。

まひろ:倫子様、わたしそろそろ・・・。

倫子:あらそう。働くのは無理でも、また遊びにいらしてね。

まひろ:ありがとうございます。

 まひろがポーカーフェイスを保つのが大変だっただろうこの場面。見ているこちらもヒヤヒヤだ。まひろの驚きを伝える心の声3連発、さらに道長の2歳の子まで登場で、まひろはノックアウトだったろう。道長行動早すぎ!

 倫子から手紙をもらい、土御門殿に上がる段階で色々と想定はしていても、道長が自分からの漢詩を捨てずに取っていたのは想定外、さらにそれを倫子の手で目の前で見せられるなんて。

 そして、庚申待の夜のこと。子どもは道長似だとか・・・あれこれを考えれば目の前の話にはとても集中できないし、とぼけるのも限界がある。帰りたくなる。

倫子にひとつも文をやらなかった道長

 漢詩について。まひろは、倫子様に「どんな意味か」と問われているのに、倫子様が嫌う説明からわざわざ入って倫子様をイラっとさせた。倫子様の気性を知っているのに気遣いが無さ過ぎると思ったが、余裕が無かったか。まひろは倫子様に意地悪をするような子じゃないから。

 倫子は当初は源明子を疑い、結局、漢詩は男から贈られたものであるとすると気持ちを切り替えたが、そもそも道長の文箱を漁ったりしたらダメだったよね・・・道長がまひろの漢詩を土御門殿に持ってきて大切そうにしまっておくのも、倫子の前にわざとニンジンを置くみたいで良くないけど。

 オープニングのすぐ後で、中関白家の道隆が、兄・伊周の恋文を見つけたと騒ぐ娘の定子に「過ちは文を盗み見たお前の方にあるぞ。恋心とは秘めたるもので人に見せるものではない」と教え諭していた。見れば自分の精神衛生上も良くない。知らぬが仏、見ないが一番。

 どうして文箱を漁ったか。倫子としては「自分には文も寄こさなかったのに」が引っかかるんだろう。「スカスカ(たぶん)の文箱の中に大切そうに取ってある文は何?何この漢詩!」だったのでは。

 庚申待の夜に、文を先に差し上げなかった点を倫子母に驚かれていた道長。後朝の文も倫子には差し上げなかったか?よく婿入りできたな・・・倫子の思いに付け込んだか。倫子父の左大臣がまた悔しがったんだろうな、漢字5文字だけの手紙をよこした兼家の子らしいと。舐めてる、と。

まひろと道長、4年ぶりの再会

 倫子に別れを告げて席を立った後、まひろも4年前の庚申待の夜に思いを巡らせて歩んでいたのでは。頭は想定外の事態にオーバーヒート気味、そこに当の道長が帰ってきての驚きの再会だ。

 いや~ここで「つづく」って、ベタだけどヤキモキする。

 道長はもう、ズギューンと撃ち抜かれた顔をしちゃってる。完全ドッキリ成功みたいな顔だ。視線はまひろに固定だし、ごまかしようがない。まひろも、多少は想定していたのかもしれないが、気が緩み虚を突かれた感じ。負けてない。

 どう見ても恋人同士の再会、こっちには「東京ラブストーリー」の小田和正の曲が聞こえてきそうだ(古い)。

 道長の周りのお付きの人たちもいるのに、2人ともそんな顔してたらダメ!でもねー、どうしようもないよね。これでは倫子様には遅かれ早かれ勘づかれる。どーするのー。

 その場では何とか誤魔化したとする。でも、まひろを久しぶりに見てしまった以上、すぐに行動に移す性格の道長がそのまま終わるとは思えない。何かが2人の間に起こるはず・・・こちらもスタンバイして待ってるから!!!

 案その①:社長さんが奥さんにはとぼけて自分の愛人を家政婦に押し込む、みたいなことかもしれないけど、道長・倫子・まひろの三者が揃ったところで改めてまひろの女房勤めが議論され、決まった勤め先(嘘)にはお断りを入れ、まひろの土御門殿での女房勤めが始まる。スリリング~。

 まひろ宅の経済を考えたら(いとの気持ち的にも)それが一番いい。でも、倫子様を裏切る毎日が始まってしまうってことで・・・公共の電波がそんな倫理にもとる内容のドラマを夜8時に流すだろうか。

 案その②:道長は、まひろには土御門殿以外の仕事を陰で世話し、また廃邸での逢引きが始まる。これも倫子様を裏切っていることには変わりないが、貴族が多くの妻妾を持つのが普通の当時、自邸にまひろを引き込まない点でまだマシかと。

 案その③:無いと思うが、道長がまひろを正式に妾として囲いたいと、再度まひろに迫り、まひろが妾になる。

 でも、もしかしたら道長は、踵を返し、まひろに何もしないかもしれない。手を回した結果が直秀の死だったから、安易にまひろを助けて二の轍を踏むのは怖いかな。もし直秀が生きていたら・・・ふたりの間をつないだと思うのになあ。惜しい人材を亡くした。

 とにかく、まひろと道長の焼け木杭に火の展開を期待して、次回を待つ。

黄昏の兼家、めぐる思惑

 今回は、段田安則演じる兼家のボケぶりが物凄く真に迫っていて、舌を巻いた。定子が入内する時に見に来た兼家が足を滑らせたぐらいはご愛敬だが、公卿の面々に醜態をさらしてしまった内裏での言動は痛々しかった。

道長:民なくば、我々の暮らしもありません。

雅信:摂政殿、お考えを。

兼家:(もぐもぐと、下を向いて)おお・・・道兼か。橋の修繕は急ぎ行え。(皆が驚く中、顔を上げて)わしは今、何か申したか?

 一同驚いていたが、それを受けて道兼は兄の道隆に「父上の正気を失う前に後継を指名してもらわねばなりませぬな」と言った。道隆も妻の貴子に「父上は今年の夏は越えられまい」と、摂政になる場合の心積もりを求めた。兄2人の間では、兼家の後継争いが現実化している。

 しかし道長。土御門殿での倫子との会話は、癒される。後継は自分には関係ないと思っているからだろう。

道長:父がおかしい。物の怪にでも付かれたのであろうか。話のさなかに訳の分からぬことを言い出された。

倫子:摂政様も人の子だということではございませぬか。

道長:ん?

倫子:我が父は摂政様よりも年長。このごろすっかり老いました。

道長:あれは老いなのか。

倫子:恐らくは。でも私は老いた父も愛おしゅうございます。ここまで一生懸命働いてきたんですもの。

道長:我が父も長い闘いを生き抜いてこられたからな。帝が即位され、定子様が入内して、気が抜けてしまわれたのやもしれぬな。

倫子:お優しくしてあげてください。

道長:そうだな。

 いい妻だなー倫子様。土御門殿は、ほのぼのだ。道長も誠実な倫子を信頼し、真っ当な話ができている。ここには後継争いも、まひろと道長のドロドロも持ち込んじゃダメだよね。似つかわしくない。

 ところで小麻呂はどこに?父の雅信が倫子からもらい受けたかな?子役と一緒に猫まで出すのは難しいのだろうけど、姿が見えないと寂しい。

 他方、不穏な妻・源明子。兼家が老い先短いと知っても、自身が道長の子を孕んでも、兼家の呪詛を止めない。

 明子が道長に「子ができました」と報告した際、「こんな時でも笑顔は無いのだな」と道長に指摘され「ほほ笑むことすらなく生きて参りましたゆえ、こういう顔になってしまいました」と答えていたのに、呪詛のための扇を兼家から入手した時の満面の笑顔といったら!

兼家:(東三条殿。顔の右半分が引きつり、目線の定まらない様子で座る)

道長:父上、明子女王にございます。

明子:(一礼し、兼家を見る)お加減、いかがでございますか?

兼家:お前は誰だ?

道長:妻の明子にございます。

兼家:(声を詰まらせながら)ああそうか、そうか。お父上はご息災か

明子:父は・・・大宰府から帰った後、身まかりました

兼家:(落ち着きなく)ああ・・・それは気の毒であったのう。(道長、こらえきれず座をはずして廊下へ)

明子:(ほほ笑んで)その扇は、良い作りでございますね。

兼家:ん?

明子:その扇を頂戴いたしとうございます。(立ち上がり、2,3歩前へ行き兼家のそばに座る)父上、それを私に賜りませ。

兼家:これか?ああよい、持って行け。(扇を投げる)

明子:(扇を拾って)フフフフフ・・・ありがとうございます。(笑顔)

 扇を手に入れようと、ゆっくりゆっくり兼家に近づいてゆく明子の様子には背筋が凍ったが・・・その直前に兼家は、藤原が大宰府に追いやった源高明の娘である明子に藤原が言うか?と耳を疑うような事を言った。その正気を失った様に耐えられず、道長は席を外したのだった。

 兼家の扇を入手した明子は、兄の俊賢に「今度こそ息の根を止めてやります」と宣言。だが「お腹に子もいるのだから呪詛など止めておけ。摂政様は何もせずとも間もなくであろう」と言われ、「兄上はいつからそのような腰抜けに?」と詰った。

 この後の兄妹のやりとりで、俊賢にもそれなりの葛藤があったが生きるために分別を付けたことが分かったが、明子が執着を持ち続けた理由は詳しくは語られなかった。彼女は「私は必ずやり遂げます」と言い、兼家のうなされ飛び起きる様子が映った。倫子とは対照的な禍々しい妻、明子だ。

 まさか、まひろを明子の高松殿に仕えさせたりしないよね、道長・・・彼女は怖すぎる。「源氏物語」の六条御息所がモデルなんだろうか?生霊が夕顔とか葵上とか呪い殺してたと思うが、血祭は兼家だけ?

 しかし、本当に段田安則の老いた兼家がすごい。隠れ設定は脳梗塞なのかな?ちょうど再放送が始まった「オードリー」(こちらも大石静脚本)にも日系人役で彼は出ているが、英語が半端ない。元々話せるのか?後から習ったものだとしたら、かなりの努力の賜物だろう。脚本家に頼りにされるのも分かる。

 兼家に呼ばれた安倍晴明。「陰陽寮の勤めは夜を徹しますので、朝は力が衰え、何も見えませぬ」と言ったが、彼には兼家の寿命が見えているから何も言わないのだろう。

 兼家の終幕を真に惜しんでいるのは道長と倫子だけのようだ。というか、悲しむ道長を倫子が優しく支えている。この状況で、まひろが道長の前に出現しても、青春の1ページではあったとしても、今は倫子の存在の方が圧倒的に大きくなっていそうだ。

 ここでまひろと道長が再会する意味は何だろう。青春への決別か。

 兼家は、道長にこう言った。

  • 民におもねるような事だけはするなよ。
  • お前が守るべきは民ではない。
  • 政・・・それは家だ。家の存続だ。人は皆、いずれは死に腐れて土に還る。されど家だけは残る。栄光も誉も死ぬが、家は生き続けるのだ。家のためになすこと。それがわしの政である。
  • その考えを引き継げる者こそ、わしの後継だと思え。

 道長は「はっ」と言って頭を下げた。今後、兼家の遺言ともいえるこの言葉に従ってしまうのか?直秀の死、引いてはまひろの存在も、道長の中では薄れてしまうのだろうか。

 それとも逆に、兼家という重石から逃れ、まひろと直秀への思いを強くするのだろうか。

宣孝、まひろへの恋愛感情を自覚した模様!

 兼家の目の黒いうちは官職に恵まれないことが決定的なまひろの父・為時にとって、兼家の現在の病状は確かに不謹慎だが喜ばしい。

 それで「摂政様の御加減が悪いそうだ・・・身まかられるようなことになれば、風向きも変わろう」と為時に告げにきた宣孝だったが、まひろは「父上は人の死を願うような御人ではありませぬ!」と、その言葉を即座に切って捨てた。

 また決めつけてしまい父を縛ったまひろ。逆に、為時には頑なに夫を持たぬ真意はどこにある?と聞かれ、「あまり己の行く先を決めつけぬ方がよいぞ」と諭された。まひろは決めつけて、父も自分も縛るばっかりだもんね。

 このまひろへの恋心を、どうやら宣孝は自覚したらしい。

 御嶽詣への派手な出で立ち(これは清少納言によって有名なお話ですな)も、わざわざまひろに見せるのが目的で、褒めてもらいに来た感じ。土産も為時に渡さず、まひろに手渡した。

 この宣孝の衣装には「あまり褒めたもんじゃない」と思ったらしく不服な表情の為時と、面白がって「よくお似合いでございます」「まことに神様のご加護があれば、その時はお祝いいたしましょう」と笑って答えるまひろの違い。宣孝とまひろはきゃあきゃあと楽しそうだ。

 前回から4年経っても、相変わらず宣孝はまひろの婿探しをしている様子。だが、読み書きを子どもに教えていてやりがいがあると断固として断ったまひろを「実入りも無いのに楽しいのか、おかしなおなごじゃの」と、見つめる宣孝の横目は、どう見ても恋するまなざしだ。

 これは、ミイラ取りがミイラになったかな。まひろの魅力を伝える役割だったはずなのに、自分がまひろの魅力にやられてしまったのだろう。

 思いついた為時が「宣孝殿のご子息は、まひろの夫になってはいただけぬであろうか」と言い出した時には、宣孝は何回否定するんだというくらいの駄目を繰り出した。「あれは駄目だ。あれは駄目。駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目・・・まひろのような賢い娘には到底太刀打ちできぬ」と言い、そこで話を変えてしまった。

 そして「婿取りの話はこれまでといたそう」と、宣孝の息子の案にすがる為時を払うように退散していった。わかりやすい!これはもう、まひろに恋心が芽生えてしまったね。

 このふたりが夫婦になることは史実だから、ネタバレも何も無いだろうが・・・どうやってまひろがその気になるのか、その気にならざるを得ない環境が作られてしまうのか、ドラマの描き方が気になる。

(ほぼ敬称略)