蔦重、言い返せるご身分か?とヒヤヒヤ
NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」第45回「その名は写楽」が11/23に放送され、おていが捨て身の「出家する」宣言をするなど歌麿に必死の説得をしかけ、MVPの大活躍だった。さっそくあらすじを公式サイトから引用する。
≪あらすじ≫第45回「その名は写楽」
定信(井上祐貴)らに呼び出された蔦重(横浜流星)は、傀儡(くぐつ)好きの大名への仇(かたき)討ちに手を貸すよう言われる。芝居町に出向いた蔦重は、今年は役者が通りで総踊りをする「曽我祭」をやると聞き、役者の素の顔を写した役者絵を出すことを思いつく。蔦重は、南畝(桐谷健太)や喜三二(尾美としのり)らとともにその準備を進めていくが…。一方、歌麿(染谷将太)は、自分の絵に対して何も言わない本屋に、いらだちを感じていた…。(【大河べらぼう】べらぼうナビ🔎第45回 - 大河ドラマ「べらぼう」見どころ - 大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」 - NHK)
・・・ということで、ドラマ冒頭は前回から続いての定信らが蔦重を呼び出して、仇討ちチームへの加入を誘った場面から。お誘いへの蔦重の回答がまだだった。
蔦重、源内先生がホントに好きだったのねえ、会えなくてガッカリは分かるよ。だけど主人公とはいえ町人なんだから。ハハーッと素直に控えないものだから、松平定信の腹心の水野某なんてもうイライラMAX。お偉いお武家様相手に、そのふてぶてしい態度は危ないって💦
松平定信:どうだ、蔦屋重三郎。我らと共に仇を討たぬか?(定信、高岳、三浦庄司らが同席)
蔦重:(原稿を突き出す)これは、源内先生が書いたんじゃねえんですね。
定信:それは、三浦の話を基に私が書き起こしたものだ。
蔦重:然様にございますか。では、ここにてお暇いたします。(原稿を残し、座を立つ。首をかしげる定信)私は、源内先生に会いに参りましたもので。ああ、このことは聞かなかったことといたします。
定信:そなた、源内の遺志を継ぐ気はないのか?源内は生きておればそこにある源内軒のように、傀儡好きの大名を成敗し、仇を討ちたいと思ったはずじゃ。
蔦重:越中守様は源内先生に会ったことねえでしょう!(強めに言い返す)「どうしたいか」は、源内先生に会った時に直にお聞きしますんで。
定信:そなた、源内が本気で生きておると思うておるのか?
蔦重:へえ。では。
柴野栗山:そなたは世のために悪党を成敗したいとは思わぬのか?この先、同じことが繰り返されぬように。
長谷川平蔵宣以:そうだ!世のために悪党は捕らえねばならぬであろう!
三浦庄司:そなた前に、悪党を野放しにするのは間違いであったと殿(田沼意次)に申したではないか!
高岳:然様。我々は天誅を下すのだ。
蔦重:(扉に向かい、定信らに背を向け立ったまま)はあ・・・。けど、そいつが悪党だって証はねえわけですよね?(振り返る)もし間違いならとんでもなく間抜けな話ですし、こんな話に関わりゃ、私も身内の身も危うくなります。吹けば飛ぶような本屋にございますゆえ、何卒ご勘弁を。(帰ろうとするが、扉が開き、抜刀間際の水野ら定信家臣団がいる)
定信:確かに関われば身は危うい。残念ながら、お前はもう関わっておるのだ。
蔦重:(家臣に囲まれ)随分、野暮なお仕打ちで。
定信:生憎、こちらは野暮だ粋だで生きておらぬのでな。なに、吹けば飛ぶような本屋に頼むのは大したことではない。「源内が生きているのではないか」と、世の中を大騒ぎさせてほしいだけだ。お前ほど、この役目にふさわしい者もおらぬであろう?
人にものを頼む態度じゃない。さすがDV気質・上から目線の定信だ。まあ仕方ない。あちらは高ーいご身分。武士でも将軍様の孫なんてそうそういない。新興商人の蔦重はせいぜい無礼打ちされないように、身を処していなければ。
だけど、源内先生には会えないし、無理やり変な企てに巻き込まれて逃げ場無し。蔦重がへこむのは分かるよ。
不思議なのは、これまで定信は、自分ヨイショの読売を撒くなど社会を騒がせる手はたぶん水野経由で自前で賄ってきていたと思うのに、何故ここにきて蔦重を頼るのか?「お前ほど、この役目にふさわしい者もおらぬ」と蔦重に言ってたけれど、餅は餅屋ってことでやらせる気になったのかなあ?蔦重なんか信頼できなくないのか?
それとも、あの「七ツ星の龍」の物語を復活させて書いてみたはいいけれど、広め方で悩んで行き詰ったのかな。
「七ツ星の龍」の源内作に見せた物語は、やっぱり裏で黄表紙好きの定信が書いていた訳だけど、死を呼ぶ手袋にまつわる真相の目星をつけた源内が生きているとなれば、治済は焦る。その噂の出所は、保身のため、定信としてはなるべく遠ざけたいのか?そのために庶民を使うか・・・冷たい奴!
結局、下々に対するものの考え方は、一橋治済も松平定信も使い捨てOKで一緒だということかな。同じ吉宗の孫だ。
今回、大崎が身の危険を感じて再雇用を治済に願い出ていた。いや~、ダメだよ大崎、会いに来たってあなた、治済にトカゲの尻尾切りで殺されるだけだと思うけどな。「恐ろしいことじゃ」と言っていた治済の眼がトカゲのように怖かったよ。
この時、大崎が挙げた陰謀話の多さに笑ったよね。そりゃ身に覚えはあるんでしょうね、どこからかは狙われますって。
おていがビシッとMVP
今回のMVPはおていさんだと思う。定信への反発心やら何やら納得できない気持ちでグズグズしている様子の蔦重に、ビシッと方向性を示したのがまずあっぱれ。そして、アーティスト歌麿を「描きたい欲」で突き動かすことに成功した点だ。
蔦重はていを巻き込みたくないし、考えが定まらずに嘘をつくのだが、そんなことでおていを煙に巻けるわけがない。「それは、狐ではなく狸の化かし方にございますね。一体、何があったのでございますか?」と冷静に返されてしまうのだ。
そして、事の次第を正直におていに伝えた蔦重。
てい:つまり、世を騒がせねば、旦那様も私たちもどうなるか分からぬということにございますか?
蔦重:ああ。ほんとすまねえ!こんなことになるたあ・・・すまねえ。(ひれ伏す)
てい:・・・仇討ち。「忠臣蔵」の大星由良助は、茶屋遊びで世を欺きましたかと。やらぬという道が塞がれておる上は、やるしかございませんでしょう!(副音声の解説「丸眼鏡の奥で瞳が輝く」)よろしいのではございませんか。悪党を討つのは世のためにもなる事でしょうし。この際、蔦屋重三郎らしい、うんとふざけた騒ぎになさってはいかがでしょう?しみったれのふんどしの守様から掛かりをふんだくり、かつてないほど贅沢でふざけた騒ぎを起こすのです。そして、それを以て春町先生への供養と成すのはいかがでしょう?
蔦重:・・・春町先生の。
てい:はい。きっとお喜びになられるかと。
回想の恋川春町:(褌一丁で踊っている)皆様にはせめてお笑いいただきたく!
蔦重:(思い出して頬が緩む)おていさん。
てい:はい。
蔦重:極上々吉。極々上々々々々々・・・。
てい:お褒めに預かり恐悦至極にございます。では、いかにふざけましょうか?
蔦重:まあ・・・手っ取り早いのは読売なんだけど、それじゃつまんねえな。
てい:持ち込まれたあの草稿を本にして出す・・・のは、難しうございますね。
蔦重:うん。そりゃ、俺も店もあっという間にお縄でさ。
てい:では、危ういことには触れぬ筋で、源内先生が書いたとしか思えぬ黄表紙。
蔦重:黄表紙、洒落本、浄瑠璃・・・。
てい:市九さん!確か、市九さんは・・・。
蔦重:あいつは、浄瑠璃が書ける!
てい:しかも、源内先生が生きておるかもしれぬとお告げを持ってこられたお方です!
蔦重:こりゃ、天の導きとしか思えねえな!
てい:では、源内先生が書いたとしか思えぬ新作の浄瑠璃を、市九さんに書いてもらい・・・
蔦重:小屋にかけてもらいましょう!
てい:はい!
わざわざ副音声の解説では、おていさんの瞳のキラリンを伝えていた程、やる気満々。なんと頼りになる女将さんだろう。定信によって死に追いやられた恋川春町への供養として贅沢にふざけるのだ、かかる金銭も定信からふんだくってやれと。
このおていのビシッとした言葉で蔦重も腹が定まり、前向きにエンジンがかかった。ではいかに?という点も、ふたりでブレインストーミングの結果、浄瑠璃と決まった。脚本を書くのは、源内生存説を持ち込んだ十返舎一九だ。
何を書いたかな?とウィキペディア先生をチェック(十返舎一九 - Wikipedia)。しかし、1793年(寛政五年)10月あたりなのだよね・・・ウィキによると、彼は翌1794年に通油町の蔦重の下に寄食するようだ。そもそも「源内先生が書いたとしか思えぬ」浄瑠璃本を書かせる心づもりなのだから、十返舎一九の名前では残ってないのかもね。
源内作っぽい「役者絵」を出すプロジェクトへ
蔦重はその後、新作浄瑠璃をかけてもらう芝居小屋を探しに芝居町に行ったらしい。長谷川平蔵の手下・磯八が営む二八そばの屋台で、懐かしの歌舞伎役者・市川門之助(濱尾ノリタカ)とバッタリ。おお、門之助の中の人は「あんぱん」でもご活躍だったね。眉毛が記憶に残る。
ところで確認したくなったのが「江戸三座」。ウィキペディア先生をここでもチェック、以下一部引用した。
・・・正徳4年(1714年)には山村座が取り潰されて中村座・市村座・森田座の江戸三座となる[2]。その三座も座元(座の所有者)が後継者を欠いたり経営が困難になったりすると、興行権が譲渡されたり別の座元が代わって興行を行うことがしばしばあった。享保末年以降(1735〜)になると、三座にはそれぞれ事実上従属する控櫓がつき、本櫓が経営難で破綻し休座に追い込まれると年限を切ってその興行権を代行した。(江戸三座 - Wikipedia)
この頃の江戸三座は、風紀粛清、倹約奨励のご時世により大打撃を受けていたらしい。蔦重は、三座が立ち行かなくなっている芝居町で、控櫓が「三座に取って代われるまたとない折だ」として鼻息荒く催す「曽我祭」について門之介から聞かされた。
曽我祭では「菊之丞や宗十郎、鬼次、鰕蔵」といった人気役者も通りに踊り出て、「総踊り」する。「役者の素の顔をお天道さんの下で拝める」ので「お祭り騒ぎ中のお祭り騒ぎ」になる話だと門之助が蔦重に説明した。
これを聞いて蔦重が「役者の素の顔・・・」とつぶやき、久々に妄想が頭に広がった。蔦重の妄想が出てくる時は、頭が回転し始めた時だ。
妄想の客たち:何だこりゃ、こんなの初めて見たぞ!こんな店、初めてだ!
妄想の八五郎:(店に入ってきて絵を手に取る)おお~!熊さん、これ!
妄想の熊吉:な、何だい?こりゃ!
妄想の八五郎:今評判の役者の似せ絵でよ、これを片手に役者の顔を拝むってのが通よ!
妄想の熊吉:けど、誰なんだい?こんなふざけたもん描いた奴は?
妄想の八五郎:それがよ、平賀源内じゃねえかって噂なんだよ!
妄想の熊吉:平賀源内?
蔦重は「これだ・・・」とニヤリとし、「源内先生が描いたと思われるような役者絵を出す」プロジェクトを始動させた。浄瑠璃は止めたってことかな。
プロジェクトには耕書堂に関わる絵師、戯作者らが勢揃い。そして「何で役者絵で何で源内先生なんだい?」という喜三二の問いに、蔦重はこう言った。
蔦重:(芝居は落ち目、役者絵も春章先生の死でひどいものになってるが)けど、逆手にとりゃ何をやっても目立つわけでしょ?そこに、こんな役者絵をどーんとぶつけんでさ。(大田南畝の家にあった源内作の蘭画を見せる)こりゃ、源内先生が描いた絵にございます。役者絵と蘭画は相性が良いと思うんだ。しかも、今年は芝居町の通りで「曽我祭」をやるってんだ。役者の素の顔、お天道様の下で拝めるっていう寸法で。そこに役者の素の顔を写した役者絵がありゃあ、どうなります?芝居に客が戻り、絵も売れる。しかも、それを描いた絵師が、死んだとされてる平賀源内なんじゃねえかってなりゃあ・・・。
「江戸中が祭りだ!もう、上から下まで大騒ぎ!」「乗った!」「俺もやってみてえ!蘭画風の役者絵!」等々と絵師たちは大盛り上がり。
他方、戯作者たちも、乗り気じゃなかった様子の大田南畝までが「画号だな!源内先生じゃないかと思わせる画号がいるな!」と前のめりに言い出し、それを受けて蔦重は「絵師の画号や、騒ぎがどんどん派手になる仕掛けを考えてもらいてえんです」と発破をかけた。
画号は写楽!とうとう写楽!
このように、蔦重の号令で、プロジェクトチームは思いきりふざけることになった。 しかし、ふざけると言っても、ヘラヘラしている訳じゃなく真剣そのものだ。メンバーは知恵を絞って、真剣にエンタメを追求している。
源内らしい画号については、さっそく朋誠堂喜三二が「しゃらくさい」はどうか?いかにも源内先生が言いそうだと言い始め、蔦重も「源内先生にピッタリ」だと言い、南畝も賛同。「洒落斎」、次に閃いて「写楽」と蔦重が文字にした。
「この世の楽を写す、またはありのままを写すことが楽しい・・・写楽!」と一同の意見はまとまったが、それはそれは・・・虫撰を描いた時の歌麿の心持ちそのものなんじゃないか?このドラマで描かれてきた、歌麿のためにあるような言葉だと思った。
ていが心に火を点け、歌麿が復帰
蔦重はプロジェクトの資金を定信から出させることに成功した。「この仇討ち、奉行所にお届けはお出しに?」の一言は定信の痛いところを突いたよね。出せる訳ないから。眉を吊り上げ奥歯を噛んだ定信が目配せし、ワナワナの水野が蔦重の前に千両箱を置いた。蔦重は一転、明るく「ありがた山にございます!」と受け取った。やるね!
「写楽」プロジェクトの肝心の絵の方は、絵師チームで試行錯誤が続けられていた。くどい蔦重が、頭の中にある役者絵を追求するあまり絵師らにダメ出しを続け、温厚な重政先生がキレて退場。
北尾重政:やってられっか!こっちはてめえの言った通り、知恵絞ってんだ!これじゃねえ、あれじゃねえならガキでも言えらあ、べらぼうめ!大体、源内風だ似顔だって言うけどよ、おい、てめえの胸の内にゃ、そりゃこんな絵だってもん、浮かんでんのかよ?当たりが出るまで闇雲に描き散らせってなあ、流石に付き合いきれねえぜ!
ごもっとも!思えば「一目千本」以来、蔦重とは付き合いも長く、優しくサポートしてくれていた重政先生が😢・・・ここで大物の庇護者が離脱したことは大きなショックだ。
そして、「画風を言葉で指図するのは至難の業」「歌さんは呼んでこれないの?歌さんなら何とかできんじゃないかい?」の言葉を耳にして、おていも黙っていられなくなっただろう。
てい:旦那様の胸の内には、絵は浮かびましたので?
蔦重:ああ・・・「十躰」の折に、歌が描いてきて、良かったんだけどそん時は「違う」ってよした絵があってさ。あんな風に役者描けりゃ、面白えんじゃねえかって。
おていは、飾り気のない女たちの表情を描いた、歌麿筆の揃い物の女絵5枚を手に、歌麿の下へ赴いた。全部分かってればそうなるよね。歌麿も「たかが浮世絵1枚にどうかしている」と他の本屋に陰口を叩かれても、納得のいく絵を描こうともがいていた。
歌麿:こりゃ、蔦屋の女将さん。
てい:ご無沙汰しております。
歌麿:(描き散らした絵が部屋に一杯広がっている)こんな有様ですけど、いいですか?
てい:押しかけましたのは、こちらでございますので。(絵を避けて進み、歌麿の傍に座る。包みから絵を取り出す。5枚の女絵を並べる)「歌撰恋之部」5図すべて出来上がりましたので、お納めいただきたく。
歌麿:(背を向けたまま)差し上げたもんなので。
てい:これは、蔦屋重三郎からの、恋文にございます。正しくは、恋文への返事にございます。どうか、一目でも見てやってくださいませ。(両手をつき、頭を下げる。歌麿、振り向き、座って女絵に手を伸ばす。生え際の髪の毛一本まで表現した繊細な仕上がり)あの人は、その毛割を何度も何度も何度もやり直させました。歌さんは、こういうところを気にするからと。色味も、深く柔らかいものを好むのだ、着物の柄も、きっとこういうものを考えていたのではないかと、それはしつこく。摺師と大ゲンカしておりました。(次々と手に取る歌麿)
板元印と名の位置には、終いまで悩んでおりました。歌さんを立たせるべきだが、自分と歌さんの仲に上下を付けたくはない。肩を並べ、共に作りたいと思っていることを伝えたいと。(歌麿、黙って聞いている)歌さんの名が上のものが3図、蔦屋の印が上のものが2図と、落ち着きました。
歌さん。よそにも素晴らしい本屋はおりましょう。けれど、かように歌さんのことを考え抜く本屋は、二度とは現れぬのではございませんか?歌さん、どうか戻ってやってはいただけませんか?(ていを見ている歌麿)今、あの人は何よりも歌さんを望んでいます!
歌麿:(苦笑)・・・悪いけど、もうこういうの懲り懲りなんで。
てい:私は出家いたします!(え?という表情の歌麿)産んでやれなかった子、義母上様、父、新之助さん、おふくさん、とよ坊、石燕先生、春章先生、春町先生、田沼様、雲助様、土山様、東作さんも。あの人には、関わった方々の菩提を弔う暇もございません。代わりに、寄り添う者が入り用です。
決して身を引くのではございません。もう男と女というのでもございませんし、私は今後、そのような形であの人と共に生きていきたいと存じます。
歌麿:・・・嘘だね。
てい:・・・(小さく笑う)見抜かれましたか。然様にございますね。私の本音を申せば・・・見たい。(歌麿がていを見る)二人の男の業と情、因果の果てに生みだされる絵というものを、見てみたく存じます。私も本屋の端くれ。サガというものでございましょうか。(ていを見つめる歌麿)
最後、歌麿が、明らかにアーティストとしての「描きたい欲」に点火された顔をしているよ!ていの言葉の何が嘘だと思ったか、細かいことはどうでもいい。歌麿は、もう蔦重と描きたくなってるんだよ。これまで、他の本屋でイライラが募っていたから余計だね。
そうだそうだ、前回ブログで蔦重を唐変木呼ばわりしてしまった板元印と絵師名の位置。ちゃんと訳がありましたねー。前回は、意地悪にも蔦屋の印が上のものしか映像では見せてくれてなかった、歌麿も気づいてなかったってことなんだね。
このシーンではほとんどおていが喋っていて、歌麿のセリフはごくわずか。でも、その視線が彼の感情を物語っている。やっぱり大した役者だね、染谷将太は。
もちろん、おていの橋本愛もスゴイ。渾身の説得を展開したものの、難物歌麿相手にあえなく撃沈。そこで素のまま本音を打ち明ける。本屋に生まれ育ち、「端くれ」なんて謙遜するけど、生まれながらの本屋はおていなんだよね。その彼女が「見たい」という本音が歌麿の心に刺さったどころか火を点けた訳だけど、ここまでの肝の座った女優さんになるなんて、「あまちゃん」の時には想像もできなかった。
大河は「西郷どん」「青天を衝け」「いだてん」も出てたか、でもこの「べらぼう」のおていの橋本愛が確実に一番良いね。そして、今作の中でも私的にはベストのおていだった。
ていが歌麿を連れて、耕書堂に現れた時のワクワク感。BGMもいい感じに盛り上げてくれている。歌麿、戦場に赴くみたいに表情がめっちゃ引き締まってる。待ってました✨✨優しい重政先生が当て馬みたいで悪いけど、どうぞ許して!
さあ、チーム写楽の本格始動だ。
血脈重視のキモイ治済、キモ過ぎる💦
蔦重は、芝居町で平蔵の手下の仙太と出くわした時に、平蔵が大崎の行方を追っていると知った。葵小僧の装束一式は芝居町の衣装屋に頼んだものだったと平蔵は蔦重に明かし、その指図をアレコレしていたのは姿を見せない「やたら武家に詳しい女」だったとのことだった。
そりゃ大崎でしょ・・・!あの葵小僧の事件の時、なぜか治済が葵の御紋の、一部焼け焦げたような提灯を持っていた気がする。怪しかったけど、やっぱり関係していたね。
騒ぎを起こし、為政者定信の評判を落とすつもりだったのかもしれないが、一党をお縄にした火付盗賊改方の鬼平の株は江戸で大いに上がった。葵小僧一党は、定信の改革で仕事を失った者どもだって後から本多忠壽が言っていた。治済に操られそうな者どもだ。
蔦重に「それが大崎様ってことですか?」と聞かれ、平蔵は「まだわからぬが、世間を煽り立てて事を大きくするのは、あやつのやり口だ。葵小僧もただ食うに困っただけの小悪党だったものが、傀儡とされたのかもしれぬ。そして、その葵小僧という傀儡により大勢の者が襲われ、命を落とした」と言った。
「あやつ」は大崎じゃなくて治済だよね。視聴者のこちらはピンと来たけど、蔦重は分かっているのか?
今回、治済はキモーい信念を将軍家斉や老中との問答で明らかにしていたよね。生田斗真がセリフを優しく噛んで含めるように言うものだから、背筋が余計にゾオッとしたよ。冗談じゃなくて、心底信じている人の言い回し。
治済:上様。将軍の務めとは何か、仰せになってみられよ。
家斉:・・・将軍家の血筋を絶やさぬため健やかな男子を作り、かつ、血脈を日の本に広げていくことにございます。
治済:フッ(笑う)。清水の家が、そろそろ空きそうじゃ。(家斉、ビクッとする)上様には急ぎ、お励み頂きたく。(女たちに目を転じて)そなたらも、上様のお気に入りとならねばのう。(つらそうに目を閉じる家斉)
ドラマの大奥では、亡くなった(殺された)幻の11代様・家基の祟りで家斉の子が育たないとの噂があるようだった。あの世でもこの世でも、ふたりの11代様は哀れだね。
リアルで、家斉がずっと家基の供養を欠かさなかったというが、気持ちも分かるよね。次は順番からいったら増上寺なんじゃないの?と思うが、家斉は10代家治と家基が葬られている寛永寺に葬られている。家斉の望みだったのだろうか。
家基に代わって第11代将軍となった家斉は、晩年になっても命日には自ら墓参するか、若年寄を代参させていたが、遠縁である先代将軍の子にここまで敬意を払うのは異例であった。また、家斉は文政元年(1818年)に重病に倒れ、なかなか回復しなかったため、家基の祟りと噂された。後に回復したが、家斉はその噂を聞いて震え上がり、木像を刻ませて智泉院に下付し、文政11年(1828年)の家基50回忌には、新たに若宮八幡宮の社殿を建立させたほどであった[4][5]。
なお、家基の生母である蓮光院は家斉の将軍在任中の文政11年(1828年)に、没後30年以上経って従三位を追贈されているが、将軍の正室(御台所)や生母以外の大奥の女性が叙位された例は珍しい。(徳川家基 - Wikipedia)
ドラマでも、家斉が家基の霊を恐れて供養を始めるのだろうか。そして、次は治済 vs. 老中のふたり。
松平信明:大奥に、もっと金を入れよと?
本多忠籌:恐れながら、異国に向けての備えを始めたばかりですし・・・。
治済:(分かってないな、といった顔)そなたらのう、上様のお子こそ日の本を強くする一番の薬ぞ。日の本の諸国を「一橋」の血脈で染め上げてこそ、謀反の恐れもない、心ひとつの真に安寧の世となるではないか。
忠籌:しかし、日の本中とは。然様な事、まことできますものでしょうか?
治済:天は、健やかなる体を持つ一橋の血を選ばれた。知に長けた田安でもなく、情に厚い先代の公方様の血筋でもない。これは、血脈を以て染め上げよという天のご意志。案ずるな。(信明と忠籌が目配せ)
わー、キモ過ぎる・・・でも、そう思うのは現代だから?と思ったら、ドラマの老中ふたりも気味悪がっていた。当時のリアルではどうだったんだろう?それ、その通り!という受け止めもあったのでは?と思うと、やっぱり江戸時代には生まれたくない。
(ほぼ敬称略)




