黒猫の額:ペットロス日記

息子は18歳7か月で虹の橋を渡りました。大河ドラマが好き。

黒猫タクシー

 今年のGW、というか2年連続となったステイホーム週間が終わろうとしている。その間、愛する猫息子の月命日もあったり、いつもこの時期には息子のこたつを片付けてたなとか、今日みたいに暑くなれば壁際の床でひっくり返って半分持ち上げた足を壁に預けて寝てただろうなとか、いつも通りに息子のことを想う毎日だった。

 家にずっと引きこもっているから、余計に亡き息子を想い、姿を追ってしまう毎日。相変わらず、そこここをしゅるんと走り抜け、こちらを見上げる姿が見える気がする。

 いつも息子を想い続けているのは家族も同じようだ。ちょうど夕刊に、江戸時代にあった子どもの生まれ変わりの不思議伝説の記事が載っていて、近隣に生まれ変わった息子が亡くなった息子にそっくりで元の親も喜んだとの話だったので、読んで羨ましくなった私は「クロスケ、いつでも帰っておいで」と、つい口にした。

 それが聞こえた家族。息子クロスケは帰ってこなくてもいい、次に会うのは天国でいいと言う。帰ってきた息子を、再度見送ることになるなら、それにまた耐えられるとは思わないからだそうだ。

 そうだよね・・・息子が死んでいた朝の姿が一気に思い浮かんで、ダメだ、私も耐えられないと一瞬思った。でも、でもどうなんだろう。もう抱っこできなくなって1年3か月・・・やっぱりすぐにも会いたい。生まれ変わってでも帰ってきてくれるなら、私は喜んで迎えたいと思い直した。

 感じ方は、人それぞれ。私と同様、亡き息子に心が占領されたままの家族であっても、違って当たり前だ。

 そんな家族が、最近とうとう使えなくなってしまった我が家のプリンターを買い替えるために、近くのコジマへ歩いて出かけて行った。近くと言っても、徒歩では20分ぐらいはかかる。車を手放して、自転車も処分してしまった我が家は、歩くしかない。確か、息子の月命日の前日だった。

 すぐに買い替えてしまわないと、連休明けの仕事に支障が出るので困る。コロナが怖いが、今のうちに行くしかないと、ひとりで家族は出て行った。店頭からビデオ通話が来て私とあれこれ相談。少し予算オーバーのプリンターなら在庫があるらしいとのことで、仕方ないからとそれを買うことに決めた。

 それからすぐに帰ってきたが、プリンターが無い。手ぶらだ。

 なんでも、そのプリンターは取っておいてもらってあるが、無料で下取りしてもらうために壊れた方を今から持って行くのだと言う。時間は11時頃になっていた。

 「え?もう時間ないけど大丈夫?1時から仕事だったらギリギリじゃないの?」と聞いたが、「だから大急ぎで行ってくる」と言って、慌ててイケアの青い袋にプリンターを突っ込んで、それを抱えて出て行った。「配送してもらえばよかったじゃない」と言ったら、2200円はかかるのだとか。予算はオーバーしてるし、微妙にもったいないか。

 気を揉んで昼食を用意しつつ待つことしばらくして、家族は笑顔で新しいプリンターと共に帰ってきた。思っていたよりも早い帰宅だ。

 行きは仕事に間に合わせようとアドレナリンが出ていたこともあり、重かったけれども何とか着いた。店側も、取り置いてくれていたプリンターをいつでも運べるように、包みに取っ手などを付けて用意してくれていたそうだ。

 しかし、ホッとしての帰り道。重いプリンター入りの箱を再度抱えて歩き出してみると、以前手術を受けた鼠径ヘルニアの治療痕が痛みだし、慌てていたから普段から抑えるために使っていた腰痛ベルトも着け忘れていたことに「そういえば」と気づいた家族。「これはまずい、どうしよう」とタクシーを探したが、コジマのある大通りで待ってみても、まったく来ない。

 諦めて、痛みに耐えつつ大通りから自宅方向の道に入ってプリンターを抱えて歩き出したところ、すぐの交差点に1台だけ停まっていたのが黒いタクシーだったそうだ。変な話だが、家族は、その黒いタクシーが最初に目に入った時に黒猫の息子だと感じたのだと言う。

 手を挙げて、「近いけどいいですか」と聞いたところ、若い運転手はにこやかに「いいですよ」と言ってくれたんだとか。ものの数分で着いてしまったので、ろくに会話もせずに降車することになった。

 映画「となりのトトロ」の猫バスならぬ猫タクシー。近隣では最近よく見る黒いタクシーはボックスタイプばかりだから、あまり見かけなくなったセダンタイプの黒塗り車両が忽然と目の前に出現し、息子が自分を助けに来てくれたように感じたんだそうだ。

 そうかもね、パパっ子だったしね。いいなあ、いいなあ。私も乗りたい猫タクシー。乗って毛艶ツヤツヤの息子をなでに行きたいものだ。

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