黒猫の額:ペットロス日記

息子は18歳7か月で虹の橋を渡りました。大河ドラマが好き。

【光る君へ】#16 道長&まひろ悲田院での再会。別れから8年、すれ違いから4年(オリンピック?)

 NHK大河ドラマ「光る君へ」第16回「華の影」が4/21に放送された。まひろと道長のニアミスや再会があっても、一喜一憂せずフラットに受け止めると前回のすれ違いで反省して書いたが、今後は「いと」が私の代わりに大騒ぎしてくれそう。いと、いいねー。

 公式サイトからあらすじを引用する。

(16)華の影

初回放送日:2024年4月21日

石山寺からの帰路、まひろ(吉高由里子)は思いかけず、さわ(野村麻純)を傷つけていることを知り落胆する。宮中では、後宮に伊周(三浦翔平)や弟の隆家(竜星涼)らが集い賑わう中、詮子(吉田羊)が現れる。一条天皇(塩野瑛久)らが緊張する中、伊周は・・・その頃、都で疫病がまん延していた。ある日、たね(竹澤咲子)がまひろを訪ね、悲田院に行った父母が帰って来ないと助けを求める。悲田院でまひろが見たのは・・・。((16)華の影 - 大河ドラマ「光る君へ」 - NHK

まずは、さわへの手紙。でも・・・

 自分が「どうでもいい子」だと落ち込み、まひろに八つ当たりして鬱憤をぶちまけた「さわ」。まひろは涙目、せっせと乙丸にさわへの手紙を持って行かせたが、何度も突き返されていたようだった。

 せっかく実り多い石山寺詣でだったのにねえ・・・締めくくりがこれじゃあ台無し。これも道綱のせいだ。道綱といえば、「まひろ」と名前を口にし、夜這い失敗を報告した時の道長の表情が見ものだった。道長はまひろに対してまだ気持ちがちゃんとあるんだね、と確認できた。

 オープニング直前に、文机に向かったまひろが念入りに墨をスリスリスリスリしていたが、番組後の紀行のための墨のご紹介だったのかな。ずいぶん長いことスリスリしていたから「これって日記を書き始めるの?それとももう物語に行くの?」と、前のめりに期待してしまった。

 まあそうだよね。まひろとしては、まずはさわにお手紙なのもわかる。でも、旅で「書くことで己の悲しみを救った」と蜻蛉日記の作者・道綱の母藤原寧子にせっかく教えてもらったのだから、手紙以外に何か書き始めていてほしい。

 「源氏物語」は、起筆が1001年(長保3年)らしいので(倉本一宏著「紫式部と藤原道長」巻末の略年表による)、そうなると今回のドラマは994年(正暦5年)だから、まだ先か・・・。

道兼が変化、善人キャラに更生していた

 ドラマに出てくるのが全員善人ではお話にもならないから、さわみたいにグズグズ言うカマッテちゃんキャラがたまには必要なのはわかる。ただ、ごめんね、興味はそこに無いので何とも面倒な思いがして、げんなりしてしまった。早いところ仲直りしてね。

 面倒キャラと言えば、名物DV男道兼が、これまでの悪人キャラを返上したかのように人が変わっていた。前回、不貞腐れて飲んだくれて壊れていた道兼に、道長が言った;

道長:まだこれからではありませぬか!兄上は変われます。変わって生き抜いてください。この道長がお支えいたします。

 この続きの様子が、今回のドラマで見たかった。道長は、具体的には何をどうして兄のトゲを抜き、人格改善ができたのか興味があった。察するに、道兼と慎重に対話を重ねて、幼少期から兄の中で拗れていた誤解を解いていったのだろう。その対話のプロセスを見せてもらいたかった。

 このドラマの従来の道兼は、寂しさや嫉妬から兄も弟も強烈に敵視するばかりだった。が、今回を見る限り、道長とは互いを思い合う兄弟関係になったよう。人を見抜ける倫子様が「殿のように心の優しい人に育ちますように」と眠る彰子に言ったように、道長は優しい。その心が届いたらしい。

 道兼は、不貞腐れていないでちゃんと内裏にも出仕していた(991年に内大臣になり、994年には右大臣。この時伊周が内大臣へ)。疫病対策を講じるよう兄道隆に進言して、逆に放火の件で「役目不行き届き」と咎められ、睨みあってきた道長にも、こんな声を掛けた。

道兼:(廊下ですれ違い)どうした。そんな顔をして。

道長:関白と話しても無駄なので、自分で悲田院を見て参ろうと思います。

道兼:やめておけ。都の様子なら、俺が見てくる。

道長:(振り返って)え?

道兼:汚れ仕事は俺の役目だ。(去っていく道兼を、道長が目で追う。道兼、悲田院に向かう馬上で小さく微笑む)(悲田院に到着、庭に置き去りになった死体を見て、口を袖で覆う)

道長:(後から従者・百舌彦と来る)兄上。

道兼:お前が来ては元も子もないではないか

道長:私は死ぬ気がいたしませぬゆえ。

道兼:相変わらず、間抜けな奴だ。

 「汚れ仕事は俺の役目だ」って・・・一族のためにと父・兼家に押し付けられたその役目を、父に気に入られるためや自らの出世のためでなく、弟のために買って出たことが分かる会話だった。意識は切り変わっている。

 その前にも、鼻持ちならない甥・伊周にこんな口を利かれていたが、激高しなかった。

内大臣伊周:若輩者ゆえ、お二人(右大臣道兼と、左大臣重信か)にお力添えしていただきたくお願い申し上げまする。(道兼に)叔父上とこのようにお話しするのは何年ぶりでしょうか。

道兼:お前は疫病のことをどう思っておる?

伊周:それについては父が策を講じております。それに貧しい者に移る病ですゆえ、我々は心配ないかと存じます。

道兼:そのような考えで内大臣が務まるとは思えぬな。

伊周:ハハハハ・・・叔父上は、何か良きことをなさったのでしょうか?このまま何もなさらないのも、悪くはないと存じますが。

道兼:(無言で伊周を見据える)

 この変わり様。当然中の人の演技によるのだが、もう表情からしてギラギラ感が抜けて別人だ。この人があの時の道兼だったなら、まひろの母・ちやはは殺されなかった。ちょっと「大奥」のカッコイイ黒木様が時を遡り転生して蘇っている印象があるかな。

 こういう悪人キャラが善人に更生するのは、「闇落ち」ならぬ「光落ち」と今どきは言うそうだ。良くなるんだから「落ち」じゃなくて「上がる」方で良いような気もするが、面白い言い方。

 悲田院(なんか懐かしい言葉)で、薬師は「仲間は次々に倒れている。手が足りない」「(内裏には)これまで何度となく申し出たが、何もしてはくれぬ」と道兼に訴えた。なるほどね・・・こういう経緯で道兼は悲田院へ継続的に出入りするようになるのだろう。道兼の運命を知っているだけに、次回以降、泣けそうだ。

まひろが悲田院に~!

 この道長と道兼の悲田院訪問では、電撃的なまひろと道長の再会が待っていた。

 まひろは、以前文字を教えていた「たね」という少女が、父母が悲田院に行って帰ってこないと訴えるので、乙丸が止めるのも聞かず、たねと一緒に探しに来た。そこで父母の遺体を見つけたが、たね自身が発病、まひろがその場で世話を続けた。

 不幸にも、たねが死んだ後も、まひろは行きがかり上他の患者の看病を続けてしまった。コロナを経験した視聴者は、まひろが口も覆わず、手も満足に洗わないで次々と汗まみれの患者の顔を拭うのを見て「ひゃ~💦」と背筋がゾッとしたと思うが、当時、まひろが危険性を知る由もない。

 乙丸はここでも止めるのに、帰らないまひろ。とうとう、咳が出始めて顔が赤くなり、発病。そこに!なんと!訪問した道長がタイミングよくぶつかって再会するという・・・🎵出会いは~スローモーション~と、一瞬、中森明菜が脳裏に流れた。

 道長は自分の馬に乗せてまひろを連れ帰り(百舌彦&乙丸の従者コンビも復活)、彼女を御姫様抱っこで邸に運び込んだ。その時、いとが良い反応をした。

いと:ああ、姫様!

道長:藤原道長である。乙丸!

乙丸:こちらでございます!(部屋に駆け込む)

いと:藤原ミチナガ・・・誰?はっ、殿様!(呼びに行く)

道長:(まひろを寝具に横たえる)

為時:(いとと急ぎ来て)まひろ!

道長:疫病かもしれません。

いと:ああ!(悲鳴)

道長:私が看病いたしますので、あなた方はこの部屋に入らないでください。

為時:あ・・・されど大納言様に・・・。

道長:私のことは良い!

為時、いと:(気圧されて、一礼して下がる)

いと:(まひろからもらった石山寺のお守りを手に)姫様のご回復を、殿様、お祈りいたしましょう・・・殿様。姫様と大納言様はどういうアレなんでしょうか。こうやって、抱いて見えたんですよ。こうやって!(お姫様抱っこの真似)

 主人公を歴史の流れにどう絡ませるのかは歴代大河の、特に女性主人公の場合に課題になっているように思うが、こうきたか。そこでさらに道長にまで再会させてラブストーリー要素を持ってくるなんて、なんて抜かりない脚本なんだろう。さすがだ。

 いとがヤキモキしているのも面白いし、道長の夜通しの看病の後、眠気と必死に戦う百舌彦の横で、乙丸がぱっちり目を開けてまひろの生死を案じている描写も面白い。従者に至るまで、キャラが立っている。

 少女たねについては、直秀の時も思ったけれど、なんともったいない。彼女は賢いから、両親が亡くなった後、引き取られてまひろの侍女に成長するかと期待した。それがあっけなく両親に続いて死んでしまった。庶民の運命には厳しい。

 疫病は身分を選ばないけれど、庶民の生活場所はどう見ても密。貴族は広々とした場所に住み、扇で顔を隠し、手指もお着物でお隠しになって雅やかにお暮らしだから、庶民に比べれば疫病罹患の危険性は低かったのかも。

 年表(田中重太郎著「校注枕冊子」巻末の略年表)を見ると、それでも、993年から「この年の夏、咳疫流行」、994年「この年、天災多く疫疾が流行する」、そして995年に「上達部・殿上人にして罹病死没する者が甚だ多かった」とあり、貴族だからといってインフルエンザ(?)の流行から免れなかったことがわかる。

 ドラマでどこまで描くか分からないけれど、上記年表によると996年には大地震もあるし、997年にも日食と大地震、998年には「赤斑瘡流行、死者が多かった」とあるから、人々は病やら天災の多い大変な時代に生きていたと分かる。神仏に頼りたくなる。

まひろ、死地を脱する

 苦しい夜を過ごして、まひろは生き延びた。看病する道長の声は届いていただろうか。次回分かることだが。 

まひろ:(額に汗がにじみ、荒い息遣いで目を閉じ横たわる)

道長:(まひろの額の汗を布でぬぐう)久しいのう。(布を濯ぎ、絞って)なぜあそこにいた。(まひろの首筋を濡らした布で冷やす)生まれてきた意味は、見つかったのか?(まひろの息が苦し気に)逝くな、戻ってこい!(頬に触れ、まひろを見つめる)

まひろ:(朝になり、赤みが引いて穏やかな寝顔)

道長:(ハーッと溜息)

為時:失礼いたします。一晩中ご看病くださってありがとうございました。娘も喜んでおることでございましょう。されど、大納言様には朝廷での重いお役目がおありになりますでしょう。この先は、娘は我が家で看ますので、どうぞお帰り下さいませ。

道長:わかりました。(まひろの手に触れようとして手を止め、心の中で「大事に致せ」と声を掛ける。そっと出ていく)

 このロマンチックな看病シーンは、「おんな城主直虎」を思い出させる。井伊直虎(柴咲コウ)は、今川家に呼び出されたが時間稼ぎのために薬物(?)を使ってわざと発熱し、床に臥す。それを小野政次(高橋一生)が看病するのだ。

 「俺の手は冷たかろう」と言って、自分の冷たい手で直虎の額(たぶん)を冷やそうとする政次。直虎も「昔から誰よりも冷たい手だった」と応えたと思ったが、実際の中の人は平熱でも37℃とのことで、氷で手を冷やして本番に臨んだとどこかで見て、ブログにも書いた覚えがある。

 昔だったら主人公(男)が美しきヒロインに看病されるのが相場だったと思うが、今作も逆。病になれば無防備だし、距離を縮めるチャンスとなりそうなものだ。

 「直虎」の時は、まだ彼女の意識があったんだよね。だから政次と会話も交わした。しかし今回は、まひろは生死の境を彷徨っている状態。道長の存在を確認できたかどうか・・・4年前の土御門殿でのすれ違いと同じく、これじゃあ会ってはいるけど会話を交わすことは無理だった。

 それにしても、4年置きにしかこの2人は会えないのか。オリンピックイヤーみたいな話だ。次はまた4年後?

倫子様がますます怖い

 帰宅した道長を待ち構えていたのが、嫡妻の倫子だった。手には小麻呂(たぶん)が抱っこされている!良かった~久しいのう。でも、小麻呂の再登場を喜んでばかりもいられない。場面は不穏だ。

 帰ってきた道長について、倫子は赤染衛門にこう言う。

赤染衛門:ゆうべは高松殿でございましたか・・・ご無礼致しました。

倫子:(腕の中の猫を撫でながら)衛門。

赤染衛門:はい。

倫子:殿様、ゆうべは高松殿ではないと思うの。

赤染衛門:は?

倫子:殿のお心には私ではない、明子様でもない、もう一人の誰かがいるわ。・・・フフフ・・・オホホホホホ・・・

 「お帰りなさいませ」「うん」だけの会話の、どこで倫子様は「もう一人」の影を感じ取ったというのだろう。道長の笑顔、そして背中から伝わる少し浮ついた様子からなのだろうか?洞察力が半端ない。

 そして、最後の高笑いが怖い。赤染衛門もい訝しげに見ていたが、この笑いはどこかで・・・母(石野真子の穆子)譲りなのかな。

 もう一人がまひろだと気づいた時、どうなるのか。意外に近く、もう時間の問題のような気もしてきた。怖いよ~。

中の関白家の命運は東三条院が握る

 清少納言と定子の「香炉峰の雪」についてのやりとりは、多くの人がお書きになってるから別にここで触れなくてもいいだろう。公式サイトでも解説があった。

www.nhk.jp

 次回、とうとう中の関白家の井浦新の道隆とお別れになりそうだ。大酒は体に悪いよ、と現代の視聴者にも知らしめる役回り。もっと彼が節酒して長生きしていたら、道長の出番など無かったかもしれないのに・・・。歴史を変えた大酒飲みだ。それと、疫病も絡むのかな?あれだけ疫病を無視し続けているのは何かのサイン?

 彼の庶長子の道頼が出ていないようなのだけれど、もったいない。もうひとり伊周の三浦翔平レベルに美しい俳優さんを連れてくると、何かと集中できなくて大変だから止めたのだろうか?

 天狗になって帝と同じ白っぽい色の直衣を身に着け、公任らに陰で責められていた伊周。摂政・関白の道隆も白っぽいから、なんと、ぱっと見で帝が3人いるみたいだ。

 伊周は怖いもの知らずで、帝の母である東三条院に説教を垂れた。道綱が、その場は凍り付いたと言っていたが、そんな恥をかかされて帝の母たる者が終わらせる訳がない。

 しれっと「他の公卿を取り込んでおくわ」というセリフが予告には切り取られていたが、彼女の意志1つで道隆・伊周らには大打撃、道長らには心強いお話が待ってる訳だね。本当に伊周はおバカさん。母に絶賛されて育ったからなあ。

 演じる三浦翔平はかなり整ったお綺麗な顔立ちをしている。だからこういう役が回ってくる。ハンサムの宿命だ。ドラマでは、道兼のように「光落ち」する余地はあるのだろうか?

(ほぼ敬称略)