黒猫の額:ペットロス日記

息子は18歳7か月で虹の橋を渡りました。大河ドラマが好き。

【光る君へ】#25 手抜かりなきオヤジ宣孝、道長を使って内・外堀を埋める「まひろ捕獲作戦」を実行す

現代政治への風刺も盛り込む

 NHK大河ドラマ「光る君へ」第25回「決意」が6/23に放送された。今週は例の「我が家の一大事」のための遠出もあって疲労困憊、土曜日のこんな遅くになってから書き始めても、明日の次回までに書き終わるものかなあ・・・ガンバレ自分。

 まずは今回のあらすじを公式サイトから引用する。

(25)決意

初回放送日:2024年6月23日

越前の紙の美しさに心躍らせるまひろ(吉高由里子)。その頃、まひろのもとには宣孝(佐々木蔵之介)から恋文がマメに届いていた。為時(岸谷五朗)からの勧めもあり、まひろは都に戻り身の振り方を考えることに。道長(柄本佑)は、定子(高畑充希)を愛しむあまり政が疎かになっている一条天皇(塩野瑛久)に頭を悩ませていた。そんな中、晴明(ユースケ・サンタマリア)の予言通り、次々と災害が起こる。そこで道長は…((25)決意 - 大河ドラマ「光る君へ」 - NHK

 さて、今回の冒頭、主人公まひろは越前和紙の製作工程を視察に行った為時パパに同行した。

 彼女にとって将来、紙は「源氏物語」を書く上で必要不可欠な物となる訳で、それでわざわざ越前紙にまつわるエピソードが入ったのだろうけれど・・・それがバッチリ現代の政治家への皮肉にもなっていたと感じた。

 昨今話題の話では、マネーロンダリングよろしく国民の税金があれへこれへと名を変えて、結局は一部与党議員様方の懐を潤すシステムになっていたことがはっきりしたと私は理解した。国民の負担ばかり増やしておいて、何が「政治には金がかかる」だ。

 今回のエピソードを見て、心の痛む国会議員の先生方はおいでだっただろうか。

 大量に越前国府に納められた艶のある美しい紙を手にした時に、その1枚をくすねようとして、まひろは為時パパに窘められた。ビシッと為時パパは言うのだ。

まひろ:これがあの紙なのですね。まことに艶やかな・・・。一枚頂いてもよろしいかしら。

為時:ならぬ。

まひろ:(口を尖らせて)一枚くらい、よろしいのでは・・・

為時:これらは民人らが収めた租税であるぞ。全て都に送るのだ。

まひろ:わかりました。

 まひろは全然分かっていなかった。口先で形ばかりの「分かりました」を言っても、しばらくたって彼女は懲りずにまたこう言うのだ。

為時:決められた租税よりも納められた紙が多い。越前では2000張を納めることになっておるが、ここには2300ある。

まひろ:父上。これまでの国守様は決められた租税を納めた後、残った紙を売って儲けていたのではないですか?

為時:さすが、まひろであるな。

まひろ:父上もお気づきだったのでございますか?

為時:わしは国守ぞ。

まひろ:ご無礼致しました。

為時:余分な紙は返してやることにする

まひろ:返すくらいでしたら、何枚か私に・・・!

為時:いやいや、だからそれはならぬと言っておるだろう。その考えは宣孝殿に吹き込まれたのか?

まひろ:そのようなことはございませぬ。(不機嫌そう)

 まひろ、先の国守の搾取方法に気づいて為時パパに褒められたのに、お前までが民から搾取しようとしてどうする!こうやって中抜きに中抜きを重ね、間が肥えていくシステムによって、民に過大な負担がかかっているのをパパは憂えているのに、まひろがその中抜きシステムに乗っかろうとして反省がまるで無いどころか不機嫌になった。

 すごい厚顔なヒロインだ。どこかの党から立候補してそうだ。

 今も昔も変わりなく、こういう悪事が為政者側によって行われてきたんだとドラマは指摘する。ただ、ヒロインその人が悪の方に片足を突っ込んで見せるなんてすごいね。

 結局、4年しかいない国守様に正論を吐かれて紙を返されても困ると村長から断られ、為時パパは「わしは世の中が見えておらぬ」と己を嘆く。そして、清濁併せ呑むことができる宣孝だから大宰府でもうまくやっていたのだろうと、宣孝を肯定した。末端の民の1人として、何だかやりきれない。

「仕事」が早い宣孝、外堀が埋められていく恐怖

 さて、前回は大人にしかできないプロポーズをカッコ良く見せつけていた宣孝だが・・・まひろが自分になびきそうだと見るや、返事を待たず、彼女の思いもお構いなしの捕獲作戦を発動した。彼は仕事が早いというか、サクサクとタスクを済ませていくものだから、外堀が埋められていく恐怖感があった。

 前述のエピソードの続き、多少自信喪失の為時パパは、清濁併せ吞み世渡りのうまい宣孝に娘は心を寄せたのかと言って、まひろに帰京を勧める。筆まめに文をよこす宣孝は、まひろに本気であろうと言った上で、

為時:都に帰って確かめてみよ。ただ、これだけは心しておけ。宣孝殿には妻もおるし妾も何人もおる。お前を慈しむであろうが、他のおなごも慈しむであろう。お前は潔癖ゆえ、そのことで傷つかぬよう心構えはしておけよ。

まひろ:そのことも都で考えてみます。

 こんな友人(親戚)に、為時パパはよくも娘を与える気になったと思う。よほど自信が無くなったのか、何か弱味でも握られているのか。困窮していたから、金銭的な援助でも受けていたのか?

 昔、前田利家がまつとの間に生まれた「まあ姫」を、古い友人である秀吉に差し出したと知った時の気持ち悪さを思い出した。権力者になってしまった秀吉に「人質」の意味があったのだが、娘を友人の側室とするのだ。豪姫を養女にやっているのに、それでも足りない。秀吉の下、生き残るには仕方なかった訳だ。

 前回、宣孝とまひろは釣り合わないと為時パパご本人がまひろに言っていたから、物語世界の中の世間一般で考えても異質なカップル。それだけ宣孝の押しが強かったのか、宣孝の意志を通さねばならない、宣孝に対して抗えずに「人質」を差し出さねばならない理由が、為時側にはあったのか。

 だから、勝手な妄想だけど、歪な結婚が通る理由は、まひろの方の「訳アリ」だと思ったんだけどな・・・まひろが道長の子を身籠ったことで早急に父親(庇護者)が必要になっての結婚か?と散々妄想を広げてきたが、残念ながらそれはハズレで終わったようだしねえ。

 まひろは「確かめろ」と父に言われ、自分でも「都で考える」と言っていたが、そんなゆっくりと考える暇は宣孝が与えなかった。まひろからの返事も待たずに、結婚相手が帰ってきたー!とばかりに、宣孝が待ち構えていたからだ。

 まひろ帰宅をどうやって嗅ぎつけたのだろう。間者がいるのかな。

 まひろの弟・惟規が目を白黒させているのを尻目に、宣孝は堂々といやらしい視線をまひろに送った。酒を飲み色っぽい「催馬楽」を歌い、もう俺の女だとばかりに、強引にヒタとターゲットを捉えた視線が・・・うわー耐えられない。気持ち悪い。

 まひろ、まひろ、まひろー💕結婚、結婚、ケッコーン💕という、宣孝の荒い鼻息が画面からも伝わってくるようだった。ゾッとして「まひろ、よく笑っていられるね」と思った。一応苦笑いだったが。

 佐々木蔵之介の前回のイケオジから一転しての今回のいやらしいスケベオヤジ演技に切り替えるうまさは分かったが、中の人もご自身の好感度を気にしたらどうだろうか、と思うくらいの強烈さだった。

 その場では、惟規が、宣孝とまひろを前に無言ながら違和感いっぱいの顔芸をおもしろく披露していた。「えーっ!」の3段活用みたいな。「えーっ!2人はそういう仲?」「えーっ!いつから?」「えーっ!なんでそうなったの?」と、後から「いと」を問い詰めてそうだよなあ。

 聞かれても、いともびっくりかも。道長との仲は勘付いていても、宣孝については灯台下暗しだったのでは。それとも、為時から何か聞いたかな。 

 とにかく、オヤジ臭漂う宣孝のいやらしさの演技に、この時点で既にお腹いっぱいだが、宣孝はまだ止まらない。

まひろの元カレ・道長相手に、満面の笑み

 宣孝は、まひろがまだ自分の人生を考え中だろうが何だろうが、結婚は決定事項とばかりに、対外的な挨拶も敢行。つまり、元カレ道長にわざわざ結婚の報告に行った。

 分かってやっているなら人が悪すぎるが(by「鎌倉殿の13人」北条政子)・・・いや、あれは確実に分かってやっていた。

宣孝:お忙しいところ申し訳ありませぬ。川岸の検分に御自らお出ましと聞いて恐れ入り奉っておりました。

道長:何か用か?

宣孝:先の除目で山城守を仰せつかりましたのでお礼を申し上げに参りました。

道長:うむ。お上のために励んでもらいたい。(言いながら目を落として仕事に取り掛かろうとする)

宣孝:親戚である藤原朝臣為時も越前守に任じていただき早一年、つつがなく勤めておるようにございます。(道長、聞きながら何か手紙を広げる)おかげさまで為時の娘も夫を持てることになりました

道長:文書から顔を上げて)それはめでたいことであった。(にやりにやりとしながら、道長の顔を見て黙っている宣孝)何だ?

宣孝:(笑顔がこぼれて)実は私なのでございます。

道長:(首をかしげ、努めて平静を装っている)何が私なのだ?

宣孝:ドヤ顔)為時の娘の夫にございます。

道長:微かに力み、文書を持つ左手に力が入る。宣孝の顔を見て笑い)フッ・・・それは何より。

宣孝:すぐに文書に目を落とした道長の顔を、しげしげと覗き込む

 やっぱりな、宣孝はまひろの元カレが道長だと分かっていたんだ・・・。それでまひろとの結婚を告げ、「俺がもらっちゃうもんね」とばかりに、道長の反応を見て楽しんでいる。本当に人が悪い💦

 「お前を妻としたい旨もお伝えしたら、つつがなくと仰せであった」と宣孝がまひろに報告したら、当然なのだが、返事を言っていないまひろは狼狽して「そのようなこと、何故左大臣様に!」と彼を責めた。

 でも、まひろは反発しても宣孝の「いや、挨拶はしておかねば。後から意地悪されても困るからな」との言い分は分かる。道長は時の為政者。やろうと思えば、宣孝など、何とでもされてしまうのだから。ただ、まひろの同意も得ずにタイミングが早すぎでしょ💦

 この場面、宣孝が帰ってからひとりで縁に座ったままで動かないまひろのシーンがかなり長かった。「やられたー」という怒りを心の内に納め、考えを巡らすのに大変だったという訳だ。「瞳だけが、小刻みに動く」と副音声の解説には入っていた。

 ちなみに、宣孝が訪れた時にまひろが読んでいた白楽天の新楽府は、こんな内容だったらしい。Xで見た。

 そして、定子サロンで清少納言と公任が披露していた連歌の下敷きになったのは、同じ白楽天の「南奏の雪」だそうだ。なんと雅なことよ。こちらのブログが勉強になった。

ameblo.jp

空寒み 花にまがえて ちる雪に(清少納言パート)

少し春ある 心地こそすれ(公任パート)

【三 時 雲 冷 多 飛 雪(三時 雲冷ややかにして多く雪を飛ばし)

二 月 山 寒 少 有 春(二月山寒うして少しく春あり)】

 古文漢文は高校時代以来の不勉強さなので、博学の方々の書きこみがドラマ理解の助けになっている。たびたび書いているけれど「かしまし歴史チャンネル」のきりゅうさんの解説も、歴史の観点から平安が得意だとおっしゃっているだけに分かりやすくて為になるし、同じこと考えてたなと同意できる点も多い(たまに勢い余って?となることもあるけれど)。

 こういう盛り上がりが、いち大河ファンとしては本当に楽しい。

youtu.be

まひろ、意を決する

 道長は、宣孝が訪れたその日の夕暮れに迎えの車を一旦断って「今日は帰らぬ」と言った。宣孝の前では何とかやり過ごした苦い心の動揺を納める時間が、こちらにも必要だったか。

 まあ、自分は結婚して何人も子どもをもうけているのだから、そんなことも言えないだろうとか、ため息をつき、アレコレ考えただろうな。最終的には乱れる心を整理して、まひろの幸せを願ったのだろう。

 ということで、道長は年月を経て立派になった百舌彦を遣わし、まひろに結婚祝いの品々を贈ってきた。これで、まだ迷っているとか考え中とかグダグダしたことを、まひろは言えなくなった。

 すっかり主導権を宣孝に握られ、皮肉にも、外堀は「まひろはまだ考え中」だとかの事情を知らない元カレ道長の手によって完全に埋められた。そうさせた宣孝の狡猾さよ。

百舌彦:(祝いの品々を届けに来て)こたびはおめでとうございます。

まひろ:(お辞儀を返し、百舌彦の装いを見つめる)偉くなったのね。

百舌彦:長い月日が流れましたので。

まひろ:まことに。

百舌彦:もろもろお話したきこともございまするが、本日はこれにて。(挨拶をし、文を渡して去る)

まひろの心の声:(ひとりになって、祝いの品に添えられた文を読む)あの人の字ではない・・・。(文から顔を上げる)

 これで、内堀埋めも完了。まひろは、形式通りの他人の手による祝い文が祝いの品々と共に道長から届いたことを以て、踏ん切りを無理やりにでも付けたようだった。私と道長様の関係は終わった、と。

いとと乙丸

 内堀埋めとの点では、「いと」が良い人を見つけて片付いているは、あの忠実な従者の乙丸でさえ彼女を越前から連れ帰るはで、まひろ家に長年仕えてきた2人がそれぞれに相手を見つけ、カップル続出だったことも、まひろの無意識に働いたのではないか。

 ただ、いとが良い人を作った驚きが、まひろの人生のトップ3に入るのっておかしくないか。その上の1、2には母・ちやはが殺された事、そして三郎が実は右大臣家の道長様&犯罪者ミチカネの弟だった事が来るのかな・・・いとの事よりも、もっと色々な驚きはあったと思うのだけれども。

 いとが「自分の言うことを聞いてくれるこの人が尊い」という恋人選考基準も、まひろを感心させたかな。

 それから、前回キュンとさせてくれたばかりの乙丸が、「あまちゃん」(言わずと知れた人気朝ドラ、主人公の天野アキが海女をやっていた)でGMT47のメンバーだった中の人演じる海女・きぬを射止めていた。ウニをまひろと宣孝がせっせと食べていたのは、そういうことだったのか💦

 乙丸は「まひろ様は宣孝様との結婚を決めて帰京するらしい」と考えて、姫様を守るという自分の任務も一段落したと思っていたんじゃないのかな。

 ただ、最終的にまひろが宣孝への誘い文を乙丸に託した時のやりとり。「本当にいいんですか?」という行間の言外の声が聞こえてくるような、そんな間のある乙丸の演技が良かった。

 従者としてずっと姫様まひろを見守り、道長との恋も陰から知り抜いている。それで、まひろの決意を込めた文を持って宣孝の下へ行った乙丸の胸中たるや。まひろの複雑な思いを一番分かっていたかもしれない。

上手い処理の仕方

 道長が奮闘する政治向きのこともあと少しだけ書いておくと・・・前回から一条帝が出家したはずの定子の下へと入り浸り、政が疎かになって公卿らの眉を顰めさせている。

 災害によって人民の命が失われる被害も出ており、帝抜きで政を実行するのは「もう無理でございます」と、匙を投げた道長は左大臣の辞職を申し出た。

 それに先だち、その年は災害が続くと安倍晴明に聞かされた道長は、「邪気払いをしてくれ」と晴明に依頼。しかし、晴明にはこう言われてしまった。

安倍晴明:災いの根本を取り除かねば、何をやっても無駄にございます。

道長:根本?

晴明:帝を諫め奉り、国が傾くことを防げる御方は左大臣様しかおられませぬ。

道長:私にどうせよと申すのだ。

晴明:よいものをお持ちではございませぬか。お宝をお使いなされませ。

道長:はっきりと言ってくれねば分からぬ。

晴明:よ~く、よ~くお考えなされませ。お邪魔いたしました。(礼をして去る。目で追う道長)

 視聴者のこちらもよ~く考えさせられた訳だが、史実に照らせば、なるほど、ドラマではあれだけ道長も倫子様も抵抗感を示してきていたからどうするのだろうと思っていた娘の入内は、こうやって道筋をつけるのだな。うまいなー。これなら道長を悪の権化「黒道長」にせずに、定子いじめを正当化できる。

 なんだかんだ、今回もダラダラ書き終えられた。

(ほぼ敬称略)