黒猫の額:ペットロス日記

息子は18歳7か月で虹の橋を渡りました。大河ドラマが好き。

【光る君へ】#22 問題山積で歯噛みする道長、好奇心旺盛なまひろは越前生活をエンジョイ

積極的なまひろ、第一宋人(イケメン)発見

 NHK大河ドラマ「光る君へ」第22回「越前の出会い」が6/2に放送された。依然として我が家の一大事が解決を見ない中・・・というか佳境を迎えテンテコ舞の中、それでも目が離せない今年の大河ドラマ。少しでも書いておこうと思う。

 まずは公式サイトからあらすじを引用する。

(22)越前の出会い

初回放送日:2024年6月2日

敦賀の松原客館に立ち寄ったまひろ(吉高由里子)と為時(岸谷五朗)は、宋人の朱(浩歌)、通事の三国(安井順平)らに迎えられる。浜辺に出かけたまひろは、そこで佇む周明(松下洸平)と出会う。その夜、国守を歓迎する宴が行われ、まひろは皆と楽しいひと時を過ごす。翌日、越前国府に到着し、大野(徳井優)、源光雅(玉置孝匡)に出迎えられるが、為時は早々に激務で体調を崩してしまう。医師として現れたのは…((22)越前の出会い - 大河ドラマ「光る君へ」 - NHK

 医師として現れたのは周明だった。中国鍼を操る鍼灸医というか。まひろは驚くが、その前に逆ナンに及んでいた相手だったから、まーそうだろうね。

 積極的なまひろは浜辺で周明に出会い、乙丸が例のごとく止めるのも全く意に介さず、ガンガン話しかけていた。その初対面の時、周明は首を横に振り「ワタシ日本語ワカリマセーン」の態度を取っていたんだけど・・・松下洸平だもの、そんな訳ないと視聴者は知っている。

 周明は砂浜に自分の名を書いてみせ、まひろも筆談で質問。何か、幼き三郎がまひろに足で名を書いて見せた場面を思い出す。まひろの運命の相手は、いつもその登場の仕方なのかな。

 それで、周明に対して、まひろは宋人だから言葉が分かるはずないと安心してか、羊肉はあんまり美味しくなかっただの一方的に吐露していた(こんがり焼かれて、本当は美味しそうだったけどね)。だから今回ラストの日本語ペラペラの周明登場には、彼女は度肝を抜かれたようだった。

 前述の通り、いつかは日本語をしゃべり始めるはずだと、こちらは今か今かと待っていた。故に大した驚きはない。ただ、どういう訳ありでそうなったのか。次回のお楽しみらしい。

 勝手に設定を考えてみる。中国の鍼灸を日本人の父が学びに中国へと渡ったら、鑑真和上のパターンで全然帰れず、父は現地で死去。周明は現地の母との間に生まれたハーフ、父に鍼灸を習い、言葉もバイリンガル。そんな設定でいかが?

 前朝ドラ「ブギウギ」でも登場していた森田順平が演じる通詞が殺され、にわかに火曜サスペンス劇場みたいな空気になっているが、それで周明とまひろの仲がグッと深まる仕掛けなんだろうか。

 まひろは前回、道長に「今度こそ、越前の地で生まれ変わりたいと願っておりまする」と宣言していた。きれいさっぱり、道長との恋からは旅立った?それで、早くも宋人のイケメンを発見して、越前での恋に飛び込んでいくつもりなのか。宣孝にも、もしかして宋の殿御と・・・ルンルン、みたいなこと言っていたから。

 初めて都を出て越前に赴き、開放感いっぱいに「生まれ変わるぞー」と思っているまひろが見慣れない異国のアレコレに触れてのワクワクは分かるんだけど、置いていかれて政に揉まれている道長が気の毒にも見えてくる。

 まひろは体調の悪いパパに代わり自分が手紙を書き、「左大臣様としたことが、ずいぶんと頼りないものでございますね」と道長に文句タラタラ。手紙の文字で私が書いたと分かったはずなのに、何もしてくれないじゃない!的なむくれ方だ。まひろ、道長は今、越前どころじゃないと思うよ。

まひろはなぜ越前を去ることになるのだろう

 しかし、作中ではこんなにも好奇心旺盛で外交的なまひろが、しかも私がいるから大丈夫!みたいに為時パパにも啖呵を切っていた彼女が、史実に沿うとすると1年やそこらで為時パパを置いて都に帰ることになる。

 史実のリアル紫式部は都が恋しくて、宣孝との結婚を口実に早々に逃げ帰ったというが、このドラマのまひろに限って言えば、余程のことが無ければ京に帰ると言い出すとは思えない。そんな行動は信じられない。辻褄が合わない。

 そのよほどのことは何か?と考えると・・・思わぬ妊娠だと思うんだよなあ。道長との機会はあった。それとも、周明と、のっぴきならない事態に早くも陥るのか?それはちょっと納得できないなあ・・・そうか、次回はイケオジ宣孝も越前に来るか。いよいよプロポーズか。

 まひろは20代後半、眩しい程の人生花盛り、モテモテだね。

 秘書まひろが帰京するなら、越前守として赴任したパパ為時はただでさえ四面楚歌なのに、大変なことになりそう。「守vs.介掾目」という、「守介掾目」のうち地元で任じられている方々が受け入れてくれねば誰の支えもない状況で、道長から命じられた務めを全うできるかどうか。宣孝が言う「懐を肥やす」どころじゃない。

 まひろの恋愛はどうでもいいが、今後、為時パパがどう事態を打開していくのかには興味がある。宋の商人だという朱仁聡らの一行の滞在は、隆家ご活躍の、後の刀伊の入寇にも関わりがある設定なんだろうか?

 今回は、新天地越前での新しいミステリーの登場人物などセッティングのご紹介や状況説明が主だったが、次から話が転がり出すだろう。松下洸平の周明が、為時パパの通訳となって大活躍かな。

道長に降りかかる懊悩

 新キャラも登場した越前パートには、徳井優のメイク盛りすぎ別人キャラもいながら(去年の「どうする家康」でも上杉景勝が超盛りすぎな髭面だったね、毎年1人いるのか?)、まだ面白味をそれほど感じられない。

 だが、今回の道長パートは気の毒だけど面白く見た。道長は前回、まひろと会った時には、自分による陰謀論をそうじゃないのに受け入れてしまうほど、自棄的で気落ちしていた。

道長:俺の無力のせいで誰もかれも全て不幸になった。お前と交わした約束は、いまだ何一つ果たせておらぬ。これからどこへ向かってゆけば良いのかそれも見えぬ。

 こんな風に言っていた。まひろと会えたことで、道長も自分の志を思い出しエネルギーは再注入されたようだと前回ブログで書いたものの、今回、まだ元気のない道長を見る限り、そうでもなさそう。元々、元気いっぱいキャラでもないが。

 義理の姉・高階貴子が瀕死と聞いた甥・伊周が、流刑地の大宰府から逃げ出して母に会うため上京。姪・定子は自ら断りなく出家した身で一条帝の子を身籠り、道長に助けを求めてきた。まだまだ「長徳の変」は収まりきっていない。道長は越前どころじゃない。

 道長が驚き困ろうが、マザコン伊周には当然の行動なんだろう。母に会いたいし、呪詛なんかしてないから無実の罪だとの気持ちも捨てきれないだろうし・・・それとも、もう落ちるところまで落ちてどうでもよくなった?

 ヘナチョコ烏帽子が伊周はもうお決まりになっちゃって💦中の人、相変わらず突き抜けた演技だ。

 伊周は、菅原道真や、明子の父・源高明みたいに大宰府に行かされたら終わりと思っているからこその抵抗なんだろうが、これはもう無実かどうかじゃない。脇の甘い自分たちが墓穴を掘って女院様との政争に敗れたって流れなんだと事態を理解し切り替えない限り、再浮上もままならない。

中宮の捨て身の訴え、取り乱す一条帝。つらい道長

 伊周が立ち直らないと、兄と弟に巻き込まれた定子、そして彼女を心から愛する一条帝のカップルが可哀そう。道長も、愛し合う彼らの間に隔てを置くような真似をしなければならない立場なのが可哀そう。

 このドラマの道長なら、中関白家の没落を喜んではいない。悩みが深まって胃に穴が何個か空いたでしょうよ。

道長:(鈍色の喪服にて参上。廊下で足を止め、御簾越しに頭を下げる)この度は何とお悔やみ申すべきか言の葉も浮かびませぬ。

中宮定子:喪に服しておるこの身をいとわず、左大臣殿御自らお越しとは痛み入ります。

道長:亡き義姉上には幼き頃からお世話になりましたゆえ。

定子:帝の御心に背き続けた兄の所業、許してください。

道長:はっ。

定子:道長殿、近くへ来ていただけませぬか。

清少納言(ききょう):中宮様・・・!

定子:お願いします。

(ききょうが御簾を上げる。道長、近くの廊下に控える。めくられた几帳の奥に定子が寄りかかって座り、腹を押さえている)

定子:帝のお子を身籠っております。(雷鳴)父も母も逝き、兄も弟も遠く、高階に力はなく・・・帝のお子をこの先どうやって生み育てていけばよいのか、途方に暮れております。左大臣殿、どうか・・・どうかこの子を(身を乗り出して)あなたの力で守ってください。私はどうなっても良いのです。(道長、目を泳がせ固唾を飲む)されど、この子だけは。

道長:(息を漏らし、歯噛みする)

 定子の捨て身の訴え。もう貴子は亡くなり、喪服を着て弔問に訪れた柄本佑の道長の姿が、「源氏物語」の光源氏を思わせるほど清々しく美しかった。喪服には製作費の関係で手が出せないのかと思っていたが、道長・定子・清少納言や家人がまとう薄き・濃き鈍色の喪服を拝めたのは眼福、この上なくありがたかった。

 さて・・・これまで健気にも表向きは厳しく出ていたものの、一条帝にとっては最愛の定子。前回書きそびれたが、一条帝の深い嘆きには、道長も涙を誘われていたように見えた。

 だから今回、彼女の妊娠を告げれば、ガマンも限界の帝の心が乱れるのは必至、実際、帝は取り乱した。

一条帝:なんと・・・!

道長:まもなくご誕生だそうにございます。

一条帝:今から高階の屋敷に行く!

道長:お上!なりませぬ!勅命に背き、自ら髪を下された中宮様をお上がお訪ねになれば、朝廷のけじめは付きませぬ。

一条帝:ならば中宮を内裏に呼び戻す!

道長:朝廷の安定を、第一にお考え下さいませ。

一条帝:我が子まで宿している中宮に、朕は生涯会えぬのか!・・・生涯、会えぬのか?

道長:(閉じていた目を開き)・・・遠くから、お見守り頂くことしかできませぬ。

一条帝:(落胆)

 本来は、中宮が帝の子を身籠るなんて、世の中的にも喜びの極みのはず。なんでこうなっちゃった?あれだけ「皇子を産め」と父と兄に苛まれていた定子には、ドヤ顔で彼らを見返せるくらい(定子はしないだろうけど)幸いでしかない話だったのに。何というタイミング。

 道長のあの苦悶の表情は、直秀らの一味が道長が住む東三条邸に盗みに入って捕まった時に見せた表情と似ている。あの直前、直秀を「最近見つかった弟」と称して邸に招き入れたのは道長だったね。

 今回は「定子と帝をこっそり会わせちゃったのは俺だったよなあ・・・」と自分の責任も自覚して唇を噛んだだろうか。今さら、更なる苦しみを呼んでしまった原因は俺だと。「俺って優しいから、苦手だなあ」と伊周捕縛を渋る検非違使別当の公任に負けないくらい、今作の道長も優しいからね。

 顔を見るに、道長も、為時パパのように周明に中国鍼を打ってもらって治療した方が良いね。

怖さの源泉=明子の執着、詮子の権力

 このドラマは、比較的たくましくて怖い女性が多く出てくる。たとえオホホホと扇で口を隠して上品に笑っていても、心の底に滓が溜まっている。今回は、道長パパの兼家を呪殺した実績を誇る源明子が「殿にはいつか、明子なしには生きられぬと言わせてみせます」と、道長に迫っていた。

 もし当初の彼女の目論見通りだったら、呪詛されて「俺は生きてはいなかった訳だな」と道長も理解した。好かれたら好かれたで迷惑なぐらい執着心が強そうだ。「源氏物語」の六条御息所の役回りだと言うから、さもありなんか。支配欲が強いDV系の人間だ。

 嫡妻の倫子様も、本来は優しいのにアンテナを張り巡らせてピリピリと怖くなっちゃってるし、道長が心休まる場はないのか・・・と言うか、そもそも当時の婚姻システムがいけないね。女が皆、愛に悩んで苦しみ、鬼になるようにできている。

 ということで、道長がリラックスできる数少ない場が、姉の詮子の下なのかな。姉は姉で好きに世の中を動かせる権力者であり、それが怖いけれど、道長と2人の時はノビノビしゃべっている。

 公式サイトの相関図に、彼女の感情が「仲良し」「不快」と、しっかり書きこまれているのが特異的でおもしろい。そんなの彼女だけじゃないか?

 それにしても、前回、中関白家の二条邸が炎上するのを眺め、「やってやった」と清々しい顔を見せていたのは凄まじかった。昔、伊周が身の程知らずにも中宮サロンはこうあるべきなんて詮子に説教なんか垂れたから、それに対する闘将の答え、女兼家の勝利宣言って感じだった。

 次回予告では、道長がまひろとのことをキャッキャと姉上におしゃべりしてしまっていたようだったけれど、まひろは大丈夫なのか。女院はすぐに手の者に命じてまひろを特定し、個人情報を握りそうだ。

 そして、明子と倫子様のどちらの耳に入るのも怖いのに、2人と接点のあるお姉さんは、まひろ情報をうかつにも(わざと)漏らしちゃいそうじゃない?

 わー、それって本当に怖いことになりそう。

(ほぼ敬称略)