黒猫の額:ペットロス日記

息子は18歳7か月で虹の橋を渡りました。大河ドラマが好き。

【光る君へ】#21 感涙の「春はあけぼの」誕生、まひろ&道長は再逢瀬からの新たな道へ

 NHK大河ドラマ「光る君へ」第21回「旅立ち」が5/26に放送された。まず公式サイトから、あらすじを引用する。

(21)旅立ち

初回放送日:2024年5月26日

定子(高畑充希)が髪をおろしたことは内裏に広まり、一条天皇(塩野瑛久)はショックを受ける。任地に赴くことを拒み逃亡する伊周(三浦翔平)を実資(秋山竜次)らが捜索し、やがて発見するが…。定子を守ることができず落胆するききょう(ファーストサマーウイカ)を励ましたいまひろ(吉高由里子)は、中宮のために何かを書いてはどうかとアドバイスする。越前へ旅立つ日が近づき、まひろは道長(柄本佑)に文を送り…((21)旅立ち - 大河ドラマ「光る君へ」 - NHK

 個人的に我が家の一大事+αが出来したので今回はブログは書けないと思ったのだが、書かないのはあまりに勿体ない話の展開があったので、今回は時間の許す限りダラダラでなく2点だけ書いておこうと思う。

①「枕草子」誕生の背景に号泣

 高校の古文で皆が習った(苦しんだ?)「枕草子」。それが、紫式部(=まひろ)が主人公の大河ドラマで、こんな形で感動的に映像化され描かれるだなんて誰が想像しただろうか?だって紫式部と清少納言は平安文学の二大巨頭だろうけれどバチバチの関係だろと、「紫式部日記」を読んでも清少納言への嫉妬丸出しだろと研究者でさえ仰る方もいるのだから。

 たとえば5/15放送の「歴史探偵」の「清少納言と枕草子」の回で「枕草子の素晴らしさを理解していたからこそ抱いた嫉妬だったかも」と言う方がいた。他方、そうではなく、紫式部が仕えていた道長の娘・彰子サロンを代表して、評判になってしまった枕草子=定子サロンに対し、彼女は反論していく必要が政治的にあったからだ、という指摘があった。私も後者に賛成で、政治的背景を十分に考慮せず「嫉妬」などと浅薄な文字面だけの判断に落ち着くのは、素人ながら危ういと思う。

 いやいや・・・でも、こんな理屈はどうでもいいぐらい、心を動かされた。前回、予告の「春はあけぼの」を見ただけで心をズギューンと撃ち抜かれたと書いたが、息を飲むほどの枕草子の春夏秋冬が映像美として表現されていったのが圧巻だった。すごいね。

 こちらも見ていて知らずに涙が流れ、生きながら死んでいる中宮定子が心動かされ、徐々に蘇生していく様に清少納言(=ききょう)が感動で打ち震えて涙するのも含めて、美しかった。

 古文の先生、ありがとうございます。この感動を味わえるのも、高校当時は軽いエッセイだし大した意味も無いと思いながらも(失礼)枕草子を諳んじたからなんでしょう。それがまさかの壮大な下地となって、映像が展開していくたびに知った文言が頭に浮かび、感動が感動を呼んで・・・となった。高校時代にこの時のための伏線を仕掛けられた心地がした。皆、そうだよね?その仕掛けを利用した制作側の深謀遠慮たるや・・・。

 また、枕草子を書くファーストサマーウイカが美文字だこと!驚いたが、彼女は書道10年の腕前で、さらに今回、練習を重ねたのだとSNSで知った。説得力のある熱演にも、すごいキャスティングとしか言いようがない。「清少納言といえばファーストサマーウイカ」だと、イメージがしっかりついた。私の中では、最近の例の中では「北条政子と言えば小池栄子」に匹敵するぐらいかも。

 この感動的な枕草子誕生についてだが。書くことには人(自他ともに)を動かす力があると感じ始めていた「まひろ」が、言葉遊びの末に(司馬遷の史記→敷物→枕の四季)アイデアを思いついてききょうに書くのを勧めた設定になっていた。つまり、清少納言は紫式部に手柄を奪われた格好だ。

 私も物書きの端くれも端くれとして、自分の代表作の発想の部分を奪われるなんて、ちょっとあんまり、気の毒に過ぎる気もする。主人公まひろ(紫式部)をききょう(清少納言)の親友に描いている時点でお察しではあったか・・・まあ、紫式部が主人公のドラマだから仕方ないのだろう。清少納言が主人公のドラマだったら、「源氏物語」は清少納言が発想したことになるんだろうか。

②まひろと道長の関係は次の段階へ?

 今回のサブタイトルは「旅立ち」であり、それは、中関白家の伊周や隆家が流刑先へとすったもんだで赴くことや、為時パパが越前守になって好奇心旺盛の(リアルでは違うみたいだが)まひろが琵琶湖を舟で渡って越前までパパに同道することを表向きは指しているのは明らかだ。

 定子と清少納言との関係にも変容が見られたし、まひろと道長の関係をも裏では指しているのだろう。

 まひろは宣孝と話した際に、中関白家が完膚なきまでに陥落していった今回の長徳の変で一番得をしたのは誰か、道長だろうと指摘されて真顔になった。巷では、道長が女院詮子様と企んでの謀略だと皆が噂していたのだろう。ドラマの中での実際は、女兼家である女院が謀って大勝利したのであり、道長はそれを阻止できなかった、ということだったのだが。

 まひろは、あの政変は道長の謀かと疑念を持ってしまったので、旅発つ前夜に手紙を書いて呼び出し、会いに行く。顔を見て「あなたはそういう人ではない」と分かり、一瞬でも疑ってゴメンねと謝った。その後、

道長:俺の無力のせいで誰もかれも全て不幸になった。お前と交わした約束は、いまだ何一つ果たせておらぬ。これからどこへ向かってゆけば良いのかそれも見えぬ。恐らく俺は、あの時、お前と遠くの国へ逃げていっていても、お前を守り切れなかったであろう。

・・・と気落ちする道長に、「彼の地であなたと共に滅びるのも良かったのやもしれませぬ」と、まひろから歩み寄って寄り添い、道長の腕の中でこれまでの後悔を打ち明けた。

まひろ:この10年、あなたを諦めたことを後悔しながら生きて参りました。妾でもいいからあなたのそばにいたいと願っていたのに、なぜあの時、己の心に従わなかったのか。いつもいつも、そのことを悔やんでおりました。いつの日も、いつの日も・・・。

道長:いつの日も、いつの日も、そなたのことを・・・。(ギュッと抱きしめる)

まひろ:今度こそ、越前の地で生まれ変わりたいと願っておりまする。

道長:そうか。体をいとえよ。

(微笑むまひろ、道長の顔を両手で引き寄せ、唇を重ねる。フェードアウト)

 これはもう、口吸いだけでは終わらなかったと思うんだけど・・・ここで前回も書いた、まひろが道長の子を身籠った説に含みを持たせて、まひろは道長から旅立った。

 10年間悔やんできたからあなたの妾になりますとはならないで、今度こそ生まれ変わりますと。それを「そうか」と見送る道長にも、俺の政をまひろが見つめているんだという意識を再確認させ、エネルギーを再注入したようだった。

 フェードアウトの後は、青い琵琶湖に少し離れて同方向を向くクラシックな舟が2艘、清々しく浮かぶ。まひろの越前への旅立ちも、舟がまひろと道長の在り方を示唆するようで、彼らの旅立ちにもふさわしいシーンになっているのが心憎かった。

 さらに絆を強めたまひろと道長。ドラマとしてはいいんだよ、いいんだけどね・・・道長嫡妻の倫子様がいるから、まひろと道長良かったねーバンザイともなれない気分だ。女院とも渡り合える傑物の倫子様は、今後どう動くのか。見逃せない。

(ほぼ敬称略)