黒猫の額:ペットロス日記

息子は18歳7か月で虹の橋を渡りました。大河ドラマが好き。

【光る君へ】#9 役目終えたキューピッド直秀、遠く黄泉の国へ😢

せっかくの成功オリジナルキャラ直秀なのに

 NHK大河ドラマ「光る君へ」第9回「遠くの国」が3/3の雛祭りの日に放送された。う~ん、直秀について残念過ぎて色々と言いたくなるが、まずはあらすじを公式サイトから引用しよう。

(9)遠くの国

初回放送日: 2024年3月3日

東三条殿に入った盗賊の正体は直秀(毎熊克哉)ら散楽一座だった。道長(柄本佑)の命で検非違使に引き渡される。一方、直秀らの隠れ家を訪ねていたまひろ(吉高由里子)は盗賊仲間と勘違いされ、獄に連行される。宮中では、花山天皇(本郷奏多)と義懐(高橋光臣)の関係が悪化し、代わって道兼(玉置玲央)が信頼を得始めていた。その頃、兼家(段田安則)を看病する詮子(吉田羊)を思いもよらぬ事態が待ち受けていた。((9)遠くの国 - 大河ドラマ「光る君へ」 - NHK

 ニコニコと桜餅を食べた日に、まさか我が推しキャラ直秀に涙で別れを告げねばならなくなるだなんて思いもしなかった。

 直秀は、主役のまひろを挟んで道長とトリオを形成する重要キャラだった。こんなにもあっさりと命を失うとは。2人をつなぐ闇のキューピッドであり、今後は、道長の隠密ポジションへと立場を変え、続けて活躍していくかと勝手に期待していた。ねずみ小僧とか、飛猿とか、風車の弥七とか、御庭番でもいいけどそんな感じ。

 ああ・・・でも、あれだけまひろと道長の2人が1日かけて埋葬したのだもの、本当に死んじゃった設定なんだなあ。実は生きてました!は無いのだろう。遠くの国に流罪になった直秀と数年後に再会とか、話としてアリだったと思うのだけど、死ななきゃならなかったかー。

 推しだから言う訳ではないが、ゼロから育ててこれだけ成功した人気オリジナルキャラだけに勿体ない。大河でオリジナルキャラが叩かれる例は「麒麟がくる」の駒ちゃんとかが記憶にあるが、愛される例になるのは大変なこと。

 その直秀を切っても構わず先に進んでいけるぐらい、このドラマは面白くなるんだね、そういうことだ。

 戦略的に言って、民放のドラマが10回前後で1クールだと思うから、50回近くとなる長い大河ドラマだと、1クールごとにスパイスとなるキャラを取り換えて進行するつもりなのだろうか。つまり、視聴者の飽き対策。次のクールは誰が担うのか。

手ずから直秀ら7人を葬った道長とまひろ

 さて、流罪になった直秀ら散楽一座7人が獄を出る時刻は、卯の刻というから、早朝5時から7時に当たるのだそうだ。確かに検非違使の獄前で道長とまひろが門番と相対した時には、まだ暗かった。

 (百舌彦が乙丸に、道長のモノマネをしてまひろへの伝言を告げる様子がおかしかった。並んで張り合って走って百舌彦がゼーハーしたり、最近は従者2人の関係が面白くて目が離せない。)

 そして「屍の捨て場ではないか」と道長が門番に言った鳥辺野へと、一座は既に向かっていた。馬で後を追った2人の頭上には、同方向に多くのカラスが飛ぶ。縄で手を縛られた一座が放免の2人に前後を挟まれ、靄の中を進む様子が見えた時にも、カラスが何かをついばむ様子が大きく映り、おどろおどろしかった。

 薄明るくなった頃、鳥辺野を進む道長とまひろが、とうとう直秀ら一座の亡き骸を発見。既に彼らをエサとしていたらしい複数のカラスが飛び去り、倒れている一座がはっきりと目に入った。これはショックだ。

 道長は、呆然として「手荒なことをしないでくれ」と心付けを渡した自身の行動を思い返した。彼の期待とは全く逆の結果が、悲しくも眼前にある。

 「愚かな」と一言つぶやき、うつぶせの直秀の骸を表に起こした道長は、固くこぶしに握られた土塊を払い(悔しさで死ぬ間際に握りしめたか😢)、代わりに両手に自分の扇を持たせた。

 これについて、ネットでは「芸人として葬りたかったから」扇を持たせたとの解釈を見たが、扇=あふぎ=また会おう、の意味があると京扇を餞別に渡された経験があるので、私としてはこちらの説を取りたい。

 扇を下さったのは、源氏物語がお好きだった高校時代の国語の先生。まだ大切に持っている。先生にお会いして「光る君へ」のお話がしたいなあ・・・。

 私の感慨はともかく、道長は、直秀との黄泉の国での再会を願って自分の扇を渡したのだろう。

 当時の死穢思想からは、貴族の坊ちゃんが自ら鳥辺野に赴いて、放置されている遺体に扇を握らせるなんて、めまいがするような格別の行動だろう。直秀への惜別の情を示すには、それだけでも十分だったかもしれない。

 しかし、そこでは終わらない。道長は、日が高い間ずっと、無言で手で土を掘ってせっせと7人を葬った。まひろもそれに付き合って。なぜそこまで・・・の理由は、皆を埋め終わってから道長が口にした。

道長:すまない(最初はまひろに。彼女の衣の汚れを払おうとする)。すまない(葬った7人に)。皆を殺したのは・・・(泣き顔になって)俺なんだ。(自分を拳で2度叩き)余計なことをした!(泣いて絞り出すように)すまない・・・すまない、すまない!すまなかった!(まひろ、背中から道長を抱く)すまなかった!(ふたりとも泣く)

 夕日の中、無言で帰途に就く2人ともが呆然とし、表情は生気を失っていた。馬の背に揺られるまひろも、馬を引く道長も。これが秀逸だった。

 道長が獄からまひろを連れ帰った時、道長はまひろに「信用できる者なぞ誰もおらぬ。親兄弟とて同じだ。まひろのことは信じておる。直秀も」「あいつはあれで筋が通っておる。散楽であれ盗賊であれ、直秀の敵は貴族だ。そこを貫いているところは信じられる」と言っていた。

 それなのに・・・道長にとっては人生で初めて経験する大きな挫折だろう。自分のせいで信頼できる2人のうちの1人の命を失った。痛恨の極みだ。

 まひろと道長は、まひろの母・ちやはの死で仇同士として忌まわしく結びついていた。特別な絆だ。ここにまたトリオの1人の直秀を共に葬った経験を経て、さらに心の結びつきは強くなっただろう。

 と言うか・・・直秀を欠いたからこそ、道長とまひろの間に離れがたい絆ができるのだと思う。こんな経験をしたんだから、幼なじみのような関係から本当の恋人同士へと一気に関係が変質するような気もする。直秀は、キューピッドの役目を終えたのだと思った。

貴族のたしなみ、穴掘り?

 それにしても。蛇足だが、素手であんな風に土を掘ったりできるのか?ベランダガーデニングの土作りが遅れている私は、7人をいとも簡単に貴族の坊ちゃんのヤワヤワな手で土葬できた鳥辺野のフカフカの土を見て瞠目した。

 道長も手伝ったまひろも2人とも、道具も軍手もないのに、指は血だらけにもなっていないようだった。

 一緒に見ていた家族も「きっと鋼鉄の指なんだ」「打毬のように平安貴族のたしなみとして穴掘り競技があるんだ」などと言い出したが、あそこは鳥葬や土葬の弔いの場だから・・・積み重なる遺体が微生物に解体され、フカフカの培養土みたいになっていたってことなんだろうか・・・怖すぎる。よく足を踏み入れたものだ。

 本来だったら前の方の骨とか衣類とか分解に難がある物が、2人が掘るたびにザクザク出てきたんだろうな。死臭もしただろう。背景の木には、死者が着ていただろう衣服が風化したっぽい布も引っかかっていた(NHK、芸が細かい)。

 でも、そんな恐怖もお構いなしに、直秀らを運命づけた自らの浅はかな行動への悔恨に突き動かされて、道長は行動したのだろうね。まひろも逃げずに最後までいた。これは、普通の姫にはできないよ。

なぜ直秀は殺されたのか?

 道長が「余計なことをした」と言った、心付け。公式サイト(用語集 大河ドラマ「光る君へ」第9回より - 大河ドラマ「光る君へ」 - NHK)によると、受け取ったのは看督長(かどのおさ)という検非違使長に属する下級役人で、牢獄の管理や犯人逮捕を行う役目があるそうだ。

 なぜ彼は、直秀らを殺すことにしたのだろうか。この看督長、以前に道長が誤認逮捕された時にいた人か?下っ端の放免の何人かはまひろの顔も覚えていて、お馴染みのようだったが。

 もし看督長が以前もいた人なら、道長に対して「あ~、前にも貴族様権限で解き放たれた右大臣家の坊ちゃんか」と、既に反感を持っていたかも。今回、道長があからさまに金に物を言わせたので、さらなる反感を買った可能性もある。同じ手を回すにしても兼家パパならもっとうまくやったんだろうが、狸寝入り中なので・・・。

 ネットで見た有力説は、この看督長が、道長に「手荒なことをしないでくれ」と言われたので⇒通常の鞭打ち30回や腕をへし折る刑を避け流刑にはなったが⇒流刑地に送る手間やコストを惜しみ⇒一座は殺された、というもの。

 そうなのかな・・・私は、まひろが先に看督長によって解き放たれたことが気になった。

 道長が心付けを渡した直後、道長は、偶然に捕らえられてきたまひろと乙丸を目にして「この者は私の知り合いゆえ身柄は預かる」と慌てて交渉し、看督長が「どうぞお帰り下さいませ」と縄を切ってまひろらを自由にした。そして、道長はまひろの手を引き、そそくさとその場を去ったが、見送る看督長の表情がねえ・・・。

 あの顔を見ると、当初「なぜそのようなお情けを」と訝しく思った看督長も「右大臣家の坊ちゃんの目的は女だったか、なるほどね」と合点し、「女を渡したのだから坊ちゃんは満足しただろう」と心付けの件は終わったと考えたのではないだろうか。

 だから、直秀ら一座に対しては、特に気にせず処断した、か。

 また、あの心付けの効力が直秀らにも及んだとしても、意味が逆に捉えられて念入りに吟味された可能性もある。余罪を調べていると言っていたから、通常は30回の鞭打ち刑のところ余罪が積み上がれば鞭打ち刑等は消え、流罪決定か。

 そこに、わざわざ一座を検非違使に引き渡してきた右大臣家が、心付けまでご丁寧に渡してきたのだ。散楽では散々右大臣家をバカにしていた一座だし。そこで、表向きは流罪、内々に処刑と決まったのでは。

 いずれにしても、道長はヘタを打ったってことなんだろうけど・・・でも、まひろは助かった。まひろが連行されてきた時、かなり心配そうだった直秀も、解き放たれたのを見てホッとしていた。彼はまひろを気にしていた。今思うと泣ける。

兼家始動、フィクサーは安倍晴明

 今回も、吉田羊の女御詮子様に「キャー」と叫ばせた時の兼家・段田安則の目が、権力奪取に向けて不気味にやる気満々だった。やっぱり兼家パパの謀略だった。

 こちらもキタキタキタキタと身構えたが、実は安倍晴明の策だったとは。兼家にはバカにされていたのに。・・・そうか、晴明はだからユースケ・サンタマリアなんだね。頭の中の野村萬斎は完全に消し去っておくよ。

 晴明に策があると持ち掛けられて「買おう」と言った時の、兼家パパの悪ーい生き生きとした表情が印象深い。右大臣様、お主もトコトン悪よのう。源雅信を取り込み兄らを圧倒していた詮子様でもまだまだ小玉、父親に及びもしなかった。

道長:ち・・・父上の病は偽りだったということでございますか?

兼家:内裏の殿上の間で倒れたところまでは真である。家で目覚めたが、目覚めなかったことにした。何故か。これは我が一族の命運に関わる大事な話じゃ。身を正してよく聞け。

回想の道隆:遅いではないか、晴明。

回想の晴明:瘴気が強すぎる。右大臣様と私だけにしてください。(気を失っている兼家の枕元で祈祷する。お不動様の真言が聞こえた)

回想の兼家:ううう・・・。

回想の晴明:右大臣様。気が付かれましたか?右大臣様。おお・・・ただいま皆様を。

回想の兼家:待て。わしはどうなる?このまま東宮懐仁様のご即位を見届けられず死ぬのか?

回想の晴明:そのようなことはございませぬ。安倍晴明が命懸けでご祈祷いたしておりますゆえ。

回想の兼家:帝には・・・(晴明に背中を支えられて起き上がる)速やかにご譲位いただき、懐仁様のご即位を急がねばならぬ。されど、帝は思いの外しぶとくおわし、わしには策が無い。

回想の晴明:策はございます。

回想の兼家:なんと・・・。

回想の晴明:私の秘策、お買いになりますか?

回想の兼家:買おう。

回想の晴明:されば・・・。

兼家:晴明は、このまま眠ったふりをしろと言いおった。そして内裏に亡き忯子様が怨霊となり、右大臣に憑りついたという噂を流した。晴明は自らその話を帝に申し上げた。愛しき忯子様の怨霊と知って帝は、おののいておいでらしい。のう道兼。

道兼:(誇らしげに兄らに少し視線をやってから)日々、涙ながらに憂いておられます。(父に頭を下げる道兼を、どういうこと?という視線で見る道隆、詮子、道長)

兼家:これから先が正念場じゃ。内裏でさらに色々なことが起きる。わしが正気を取り戻し、忯子様の迷える御霊が内裏に飛んでいき、彷徨っていると晴明が帝に申し伝える。忯子様の御霊を鎮め、成仏させるために帝が成すべきことは何か?これより力の全てを懸けて、帝を玉座より引き下ろし奉る。皆、心してついてこい

道兼、道隆:はっ。(道長、やや頭を下げるのみ)

兼家:詮子、源なぞ何の力もない。わしについてこなければ懐仁様ご即位は無いと思え!

 いつもは女御となった娘を「詮子様」と呼び、敬って会話をするのに今回は「詮子」。兼家の本音が出た。「帝を玉座より引き下ろし奉る」を聞いて、「日出処の天子」の蘇我馬子のセリフ「帝を弑し奉る」がバーンと頭に浮かんだのは、私だけじゃないはず。敬意が全くないすごいとしか言いようのない謙譲語(?たぶん)を久しぶりに聞いた。

 この時の道兼のドヤ顔が過ぎる。帝に取り入った手口を得意げに兄と弟に説明する場面も、虫唾が走る。DV気質丸出しだ。元々加害者側の人間だからこそ、上手に被害者ぶって振る舞うことができ、周りは騙され同情しがちだ。

 それに、愛する人を失って打ちひしがれる花山帝の弱みに付け込む人間のクズ、とんでもない奴だ。こんな兄からは距離を取りたいよね、道長。

 兄の道隆に、なぜ先に知っていたと問われた道兼は「兄上や道長より私が役に立つと父上がお思いになったからですよ」と大きく出た。そして「兄上や道長がのんびりと父上の枕元に座っている時に、私は体を張って父上の命を果たそうとしていたのです」と挑発した。

 子ども4人を前に真相を明かす兼家パパはド迫力。長男道隆、次男道兼は魅了された。だが、道長は、帝の亡き女御への哀惜の念を利用する心無い家族を前に、さらに心が離れそうに見える。驚きの陰謀は既に始まり、道長も片棒を担ぐことから逃げられない。次回、たまらんよなあ。

 詮子も無言だった。我が子の即位までは父親を利用しておこうと思うだろうが、彼女がまた、どう考えを巡らせるのか興味深い。

何となく・・・まひろの周りから人払い?

 今回は直秀惜別の回だったが、彼が去ったことで、まひろと道長の恋路が本格的にスタートすることになるのかもしれないと、先ほども書いた。

 あのグニャグニャしていた弟の惟規もそれなりに立派になり、大学の寮に入るため家を去った。あの時の父為時からのはなむけの言葉「一念通天、率先垂範、温故知新、独学孤陋」は、惟規が1つ分かった!と言って笑いを誘ったが、こちらも音だけパッと聞いても分からないものだ。花山帝への御進講といい、テロップを出してくれないかなあと時々思う。

 話がそれた。弟惟規が家を出て、父為時も「高倉の女のもとにお出かけ」で家を空けるのだよね・・・惟規乳母いとの嫉妬を買いながら。今後、長く帰ってこないらしい。

 となると、乙丸や、いと等の雇人が在宅するとしても、まひろはかなり自由だ。道長との恋の進展に、その自由の意味するところは・・・次回も見逃せない。小麻呂ちゃん登場も、また期待している。

(ほぼ敬称略)