黒猫の額:ペットロス日記

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BPO、やっぱりテレビ局に甘い


BPO、フジテレビのバラエティー番組で見解「放送倫理上問題ある」
フジテレビ系(FNN) 5月16日(月)18時59分配信

BPO(放送倫理・番組向上機構)の放送人権委員会は、2015年2月に放送されたフジテレビのバラエティー番組の内容について、「放送倫理上問題がある」との見解を出した。

フジテレビは、2015年2月に、バラエティー番組「カスぺ!『あなたの知るかもしれない世界6』」で、自転車事故の問題を取り上げた企画を放送した。

この放送について、インタビュー取材に応じた自転車事故の被害者の遺族である男性が、「ドラマで当たり屋を扱うことの説明がなかったことは、取材方法として不適切であり、自分も当たり屋であるかのような誤解を与えかねない内容で、名誉を侵害された」などとして、申し立てを行っていた。

BPOの放送人権委員会は、「ドラマ部分とインタビュー場面のある情報部分が区別されている」ことなどから、「人権侵害は認められない」と判断したものの、「番組の趣旨や取材意図を十分に説明したとは言えない」として、「放送倫理上の問題がある」との見解をまとめた。

フジテレビは、「BPO放送人権委員会の決定を真摯(しんし)に受け止め、今後の番組制作に生かしてまいります」とコメントしている。

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この番組の録画を見たら、当たり屋のコーナーの前振りに遺族インタビューが使われていた。遺族を何だと思っているんだろうと思ったし、気の毒で心が痛んだ。

放送後、ネットでは、番組を見て実際に遺族を当たり屋だと勘違いして、なんでそんな人を出演させるのかと思ったって書き込みも見かけた。他の遺族が見たら、出演したこの遺族のことを、何を考えてそんなのに協力して出てるんだと神経を疑うだろうし。

BPOの「倫理上の問題がある」との見解は当たり前のことだと思います。でも、人権侵害にも踏み込めなかったのかなあ。

<追記>

BPOの審理結果、アップされてたのでざっと読みました。

・本件ドラマ部分と情報部分とは区別されており、その区別は一般視聴者にとっても明白。

・一般視聴者は、申立人の母親が死亡した事故は、本件ドラマがとりあげている事故と関係のない別事案であることを理解する。

・当たり屋が理不尽に高額な損害賠償金を得た場合とは異なることが一般視聴者に伝わる。

・・・って書いてあり、名誉棄損といった人権侵害については否定されている。でも、どうなんでしょう。

どうやら、BPOで審理した方たちは、「カスペ!」という長時間あった特番のうち、そのコーナー「もしもわが子が自転車事故を起こしてしまったら」のおよそ20分しかご覧になっていないご様子。ちがうかな~。

もしそうだとしたら、一般の視聴者が、ダラダラいくつかのコーナーで構成されている長時間の特番を見る集中力の中でその20分間のコーナーを見るのと、BPOの方たちが約20分間のコーナーだけ審理のためにしっかりご覧になる場合のそれとは、印象がかなり異なるのではないのかな。

ドラマブロック・情報ブロックが、その20分のコーナー中では分かれているから大丈夫でしょって言うけど・・・この「カスペ!」という特番の中では、他のトピックを扱うコーナーもいくつかあったわけだから、各コーナーごとの区切れに比べたら、コーナーの中での区切りなんて印象薄かったけどなあ。そんなにくっきり分かれてました? 

あの20分のコーナーは、ドラマが入ったり合間に情報が入ったりと、ブロックが交互に連続して差し込まれてる感じだった。視聴者の意識の中で丁寧に情報ブロック・ドラマブロックと切り分けて理解されるよりも、むしろ、自転車事故関連の不可分の塊として受け止められる可能性の方が高かったのではない?

でも、そんな区別なんかよりもBPOで見るべきだったのは、遺族インタビューの意味づけのあり方だったんじゃないでしょうかね。

たとえしっかり情報・ドラマが区切れて別事例と理解され得るとしても・・・だからって、遺族インタビューが何を伝える材料として流されているのかといった意図まで、BPOが言うような性善説的捉え方をされたかどうか怪しい。遺族インタビューは、当たり屋メインの自転車コーナーの前振りに乱暴に並べられていただけだし。

再現ドラマの核心である「小学生は、実は被害者を装った当たり屋でした」の種明かしがあった後も、スタジオのコメントできちんとしたフォローはなかったんじゃないかなあ。むしろスタジオは当たり屋について盛り上がっただけのように見えたから、あの遺族インタビューを「再現ドラマの1500万円よりも高額の金銭を、見事に被害者からせしめた実例」として見てしまう視聴者は、あの作りなら存在すると思うけどな~。

だって、再現ドラマでは、名前もあまり存じ上げない役者さんの中で、ただ一人、野々村真が主人公の当たり屋に騙される「加害者の親」を演じて目立っているわけだし。視聴者がどっちに感情移入させられるかは明らかじゃないですか。

それに、健全な思考の人は「自分がもし加害者になったらどうしよう」と恐れている傾向があるんだと聞く。人に迷惑をかけたくないし、翻って自分が窮地に陥るのは困るから。で、自分が被害者側に回ることは、あまり考えないらしいですよ。「自分だけは大丈夫」って思って。

そうすると、この「カスペ!」の自転車コーナーでまず遺族インタビューに加えて高額賠償の見出しが躍る新聞報道の画像が流れれば、多くの視聴者は「うわ、こんなに払うことになるのか」って考えるように誘導されちゃうでしょう?

その後、再現ドラマで野々村真演じる、「善良な一市民」的な主人公が加害者側になったのを見て、彼に自己を投影していた視聴者は「そんなことになったらどうしよう」と困惑しますでしょ。挙句、被害者だと思ったら当たり屋で騙された!となって、ショックがエスカレートするんだろうな~「あ~自転車って当たり屋にやられるのが怖いから、保険、チェックしとかなくちゃ」って・・・それが普通の流れじゃないですか?

その流れでは、遺族は高額な金銭を要求してくる「脅威」っていう点で、大多数の視聴者にとっては当たり屋と同一視されてませんか。はっきり言って、悪役。被害者遺族を思いやる視点は感じられないと思う。

そんな、「脅威」扱いの役割を演じさせるために、利用されてしまった遺族・・・・。

実際に、インタビュー勘違いしてました!ムカムカして見てたけど出てた人は当たり屋じゃなかったんですね~みたいなネットでの反応が、BPOへの遺族申し立て後の報道を見てあったわけだし。ばっちり、人権侵害的な番組の見方をされちゃってるじゃないですか。私、見ましたよw

やっぱり、BPOも「疑わしきは被告人の利益に」って感じのお裁きになっちゃうのでしょうか。つまり、BPOの審理では被告人席に座ることになるのは常にテレビ局。そっちに甘いね。