黒猫の額:ペットロス日記

息子は18歳7か月で虹の橋を渡りました。大河ドラマが好き。

息子のヒーターにお別れ

ヒーター売る日 亡き猫のぬくもりよ

 先日、寒くなって、とうとう冬布団を納戸から出した。その時に、保管用の袋を掛けてしまってあったオイルヒーターが目に留まった。

 小さい、ミニサイズのデロンギ。病床にあった息子の傍らで、寒い冬に良く働いてくれた。どこでバッタリ横になってもいいようにと納戸内にも3つ設えた息子用ベッドの1つは、そのヒーターの真横にあったので、寒さが増すにつれ、息子はそのヒーター横のベッドで寝ることが多くなった。

 オイルヒーターはいい。陽だまりのようにポカポカで、サーモスタットもタイマーも温度管理には便利。猫の息子にも安心だった。

 ヒーターに寄って寝ている息子は、フワフワ度が増していくようだった。まさに陽だまりのような香ばしい匂いを発散させて、息子の癌発病という事実さえ忘れてしまえば、まさに家族の幸せの一瞬だった。

 ヒーターに寄って寝る猫ふわふわふわ・・・傍にいるこちらまでフワーっと気持ちが緩み、笑顔になった。

 そのデロンギは半ば息子専用になっていたから、今になって目にすれば、どうしても息子の生前の寝姿が浮かんでくる。横になりながら、じっと私の目を見返していた息子。「もう喋れるんでしょ?喋っちゃいなよ」と何度も話しかける猫バカに(何を言っているんだよー)と言いたげだった。

 この息子との思い出のオイルヒーターを、断捨離の一環で手放すことにした。

 もう使う主がいなくなって2年近くが経つ。納戸にしまいっぱなしにするのもどうなのか、どなたかが使ってくれるならその方が良いだろうと家族と話し、メルカリに出すことになった。

 ありがとうね、よく働いてくれたね、と心の中でお礼を言いながらヒーターの埃を払い、拭き掃除。コットンの保管用カバーは洗濯してアイロンをかけた。

 ヒーターを入れる箱も、本来の物ではなかったが、段ボール箱にさらに補強をして準備。粒が大きめのしっかり目のプチプチで本体を覆い、果物に付いていた緩衝材を足に巻き、箱の中で揺れないように空気のパックみたいなのをいくつも入れて・・・。

 息子の思い出のヒーターを手放すにあたり、自分なりに考えられる「装備」はしたつもりだった。

 買い手はすぐに見つかった。嬉しいことに、やはりペットを可愛がっている人だと後で知った。

スーパーすばらしい購入者

 重いのでピックアップしてもらう選択肢を選んだので、配送業者がすぐに来てヒーターを持っていった。渡された控えには「精密機械」「オイルヒーター」と記されていたので、それなりにちゃんと扱って運んでくれるだろうから安心だと思った。

 先方へは発送通知と「無事に届きますように」のメッセージを送った。

 今更よくできているなと思うけれど、メルカリも発送した荷物がどこにあるのかがわかる。送り出した翌日の夕方には、購入者のもとへと配達が完了していることが画面で分かった。

 でも、購入者からの反応は夜になっても無かった。嫌な予感・・・どうなったのだろう? そこで、発送から翌々日の朝、思い切って「無事に届いていますか?」とメッセージを送ってみた。

 午後になって先方から返事があった。思った通りの可愛い形で満足していること、しっかり梱包もしていただいて・・・まではホッとする内容だったが、続けて書いてあったのは「たぶん配送中に足の部分が割れて、本体も歪んでいた」とショックな内容だった。

 (息子のヒーターが・・・壊れちゃったのか。なぜ?ずっと手元に置いておけばよかったかな)と一瞬にして息子にも申し訳なく思い、壊れて戻ってくるヒーターの姿を想像してメルカリに出したことを後悔した。

 が、先方からのメッセージを読み進めると、割れた足にはアロンアルフアを使い、歪んだ本体は分解して、なんとご自身の手で修理してしまったという。性能に問題はないし配送業者の問題だから気にしないで、とおっしゃる。

 す、すごい・・・あっという間に修理してしまうって・・・簡単にはできないはず。私なら、修理すると言ってもアロンアルフアで足を付けるまでしか考えられない。本体を分解するなんて、文系の私はやってみようと考えもしないし、やり方も分からない。

 想定外のことで、とにかく感心してしまった。それで配達完了から返事までにほぼ丸1日のタイムラグがあったのか、とも合点がいった。

 さらに、メッセージのやり取りの中で、破損は配送業者の問題で梱包は丁寧だったから気にしなくていいと繰り返し、気に入ったから大切に使うと書いてくれた先方の思いやりにも、とても感服した。

 私だったら、配送業者の責任を問うためにメルカリに連絡することも考えるだろうなあ。でも、そうすると、取引はどうなってしまうのだろう。出品者に返品されることになるのか? そうすると、色々と面倒になりそう。

 それを回避する、先方が繰り出したウルトラCが「自主的に修理」という大技だった。亡き息子が「この人だったら優しいから、僕のヒーターを譲ってもいいよ」と選んでくれたのだろうか。

 あのヒーターも、今頃は新たな場所で、ペットと飼い主さんをホカホカに暖めているのだろう。やはり、ぐずぐずといつまでも納戸に入れておくよりもお譲りして良かった。そうだよね、息子。