黒猫の額:ペットロス日記

息子は18歳7か月で虹の橋を渡りました。大河ドラマが好き。

「カムカム」安子編が終わったが

初代は、応援しにくいヒロインになってしまった

 NHK朝ドラ「カムカムエヴリバディ」が、二代目ヒロインの深津絵里が演じる「るい編」に入った。Twitter等ネットを見ると、阿鼻叫喚というか・・・初代ヒロインの「安子編」の終わり方に納得していない人が多いような気がする。それは私もだ。

 (あれ?朝ドラ見てたんだよね、昼ドラじゃなくて?)と思わされた安子編ラストの12/22。いつの間にか「犬神家の一族」チックなおどろおどろしさまでチラ見えして・・・これ、朝ドラで良いんですか?小さいお子さんたちも見てましたよね?

 びっくりしたのは、これまで安子を陰ながら守ってきた「いい奴」「純愛」の勇ちゃんが、ダークキャラにいきなり堕とされたこと。まさか、女中さんを人とも思わない悪人が勇ちゃんの正体で、そんな奴があの両親と兄を持つ家庭で育ったとは。とても唐突な変身だった。

 勇ちゃんを演じている中の人も、いきなり悪人にされて、やってられないのでは。こういう、周りの人間を貶めてヒロインを持ち上げるやり口は、好きになれない。「やっぱり安子はアメリカに行って良かったよ」と言わせたいがための、勇ちゃんの転落に見えた。

 前の朝ドラ「おかえりモネ」で、不器用だけれど誠実な菅モネの恋愛模様を含む丁寧な心理描写を見せられた後なので、ジェットコースター的に進む今作の100年の物語には、振り落とされ気味だ。

 ただ、時間経過がスピーディなのだとしても、ひとりひとりのキャラクターが記号的なコマのように見えてしまうし、話運びに無理やり感が残る。伏線を仕込むつもりであえて描かないだけなのか?うーん。

 そして、初代ヒロインの安子。きぬちゃんや吉右衛門ちゃんのように、一を聞いて十を知りヒロインを助ける便利なキャラがいるかと思うと、その対比なのかとは思うけれども、安子は、かなり抜けている。

 他人の感情へのアンテナが立っていないところに頑固さが加わり、そのせいで「すれ違って」不幸が連鎖していく様を見ていると、正に彼女の自業自得に見えてきてしまい、誠に応援しにくいヒロインに転がり落ちたものだと思う。

 安子はあれだけ「るいは私の命」とか「るいが一番大事」「るいが私の幸せ」と公言しているのに、たちばなの店再建や兄の算太を探すほどの情熱を注いで、るいの誤解を解くようになぜ努めないのか?と思わされる。

 小さいからわからないとでも?「お母さんは、算太おじさんがいなくなったから探しに行かなきゃいけない」と、大阪に行く前にちゃんとるいに伝えたらよかったね、安子。その後も、るいを残して何日も家を空けるなんて・・・。

 SNSで多くのママたちが指摘していたように、安子は、何か言ってること(=るいが一番大事)と努力する方向がズレていてとんちんかん。

 「るいの額の傷を、雉真家に頼らず自分の稼ぎで治す!」と誰も喜ばない頑なさを発揮した結果が、るいを放っておはぎを売り歩くことになったり、それがいつの間にか店再建へとベクトルが向いていったり。大阪に行ったのも、算太が心配というよりもお金を持ち逃げされたことが諦められなかったのか?それで、るいの入学式にも気絶して間に合わなかった。

 気を失って倒れるのも3度目だ。仏の顔も3度、芸が無い。キャパオーバーで倒れること3度目ともなると、ヒロインなんだけれどあまり同情できない。(突っ走る前に己を知りましょうよ、大人なんだから)(倒れた後、様々な後始末の世話をする人の迷惑を考えてますか)と、心の中で考えてしまう。

 挙句、SNS上で「母親がたった1度娘に嫌いと言われたからって、娘を置いてアメリカに渡ることなどあるか、あまりに短絡的」と指摘されるありさま。ロバートからの「I love you」があった上に、るいからの「 I hate you 」が決定打となって安子を渡米させたと言いたいようだけれど、納得には程遠かった。

 勇ちゃんが12/23に言ったように「よほどのことがあった」と感じた視聴者は多かったのか、そうでもなかったのか。ドラマ制作の現場に、リアルな子育てをしているママさんの声は生かされていたのか。「ママ嫌い!、ハイハイ、てな感じで毎日のようにスルーしてますよ、ハハハ!」なんて話は聞いたことが無かったのか。

 前に、「稔さんアメリカで生存説」を書いたけれど、その方がマシじゃなかったかなあ?なんて。

toyamona.hatenablog.com

 まあ、あの抜けてて努力の方向がとんちんかんな安子だからもういっぱいいっぱい、だから渡米決断も仕方ない・・・と理解しましょう、ということか。だとしたら、キャラへの愛があまり感じられない。

 成長したるいに、安子が会い、汚名返上できる場面は今後あるのだろうか?ぜひ、そうであってほしい。その時には、上白石萌音に作りが似ている宮崎美子が演じるのはいかがだろう。

 同じヒロイン三代を描くドラマでも、松嶋菜々子主演の橋田壽賀子作「百年の物語」は心に響くものがあったなあと、今ふと思い出した。たぶんTBSで放送した。現代の私からは理解できない描写もあったけれど(ヒロイン自立の象徴として堕胎を描いた点)、それぞれの時代をキャラが懸命に生きたと感じる感動作だった。

 ここまで、「カムカムエヴリバディ」の初代ヒロイン安子が不幸の連鎖を自らの自業自得で引き寄せるような造形で良いのか?と考えてきたけれど、そうか、それで良いのかもしれない。これで初代ヒロインを視聴者が疎ましく思って、二代目ヒロインにスムーズに感情移入して物語を見続けることができれば・・・できるかなあ。

 そのための、満を持しての深津絵里の投入なのかな。

(敬称略)