黒猫の額:ペットロス日記

息子は18歳7か月で虹の橋を渡りました。大河ドラマが好き。

【どうする家康】#13 「麒麟がくる」ファン号泣(?)回、あんまりな光秀&義昭

神君同様、15代将軍様の見事な貶されっぷり

 選挙があった関係で、公共放送NHKもその役割を果たすために看板の大河ドラマを1回お休みした。4/2に放送のあった第13回「家康、都へゆく」についてこのブログに書くのも、こちらも体調不良を引きずりお休みになりそうだったが、タイミングよく間に合いました。

 気づけば、こんなダラダラ適当な大河ドラマ雑感でも、お読みくださる方がこんなにおいでなんだなーと驚いている。そろそろ床上げも近い。寝床から起きて、少しでも書いておきます。

 ということで、まずは公式サイトから13回のあらすじを引用する。

家康(松本潤)は、徳川領となった遠江の情勢も不安定な中、信長(岡田准一)の後ろ盾で将軍となった足利義昭(古田新太)の命令で京へ向かうことになる。そこで義昭の家臣・明智光秀(酒向芳)や商人・茶屋四郎次郎(中村勘九郎)、市(北川景子)の夫・浅井長政(大貫勇輔)らと出会う。やがて義昭に謁見した家康は、将軍の器とは思えないその愚かな振る舞いに戸惑う。なぜ義昭を擁立したのか、そこには信長のある思惑があった。(これまでのあらすじ | 大河ドラマ「どうする家康」 - NHK

 「将軍の器とは思えないその愚かな振る舞いに戸惑う」という表現だと、明らかにバカにされ敵意さえ向けられてしまったことにビックリ、キラキラ思い描いていた将軍様とちがーう、という家康のがっかり😞な思いとはまた少しズレた、客観的でよそゆきな物言いに感じてしまう。

 しかし、思い描いていた将軍様とちがーう!という点では「麒麟がくる」ファンの皆さん・・・きっと家康に共感したはず。「麒麟」で滝藤賢一が演じた15代義昭とのあまりの落差に驚愕なさいましたよね?これじゃ駒ちゃんは確実に逃げ出します。

 もちろん、演じているのは癖のある役をやらせたらピカ一の古田新太。ただじゃ済まないとは思っていたけれど、泥酔した様子でゲップまでさせて、烏帽子も取れてあの醜い白塗り。室町幕府15代将軍ともあろう御方が、見事な貶されっぷりでした。

 烏帽子については、前年の「鎌倉殿の13人」で「烏帽子が外れるのはかなり恥ずかしい」と学習してきたイチ視聴者としては「あ!」のポイントだった。まあ、ここまで時代が下がると烏帽子の件は別にものすごく恥ずかしいことでもなくなってるとの話だけれど、将軍様として褒められたものではないのは確かだろう。

 NHKの大河で、ここまで将軍様を貶めちゃっていいのかな?と感じた訳だけれど・・・いいのか、主人公の神君家康公だって大河ファンが驚くぐらいここまで十分貶されてきているもんね、今作では。先人に対しては、リスペクトと言う名のオブラートで包み続けてきた王道のNHK大河ドラマをほぼ半世紀見てきたので、やっぱり不快さ剝き出しには慣れませんな。

これがあの明智十兵衛とは💦

 そして今回、私を含め「麒麟」ファンの皆さんが涙した(たぶん)大きながっかりポイントは、ええ、そうですよね・・・あの明智十兵衛光秀の描き方だと思うんだけれど・・・今作で明智光秀を演じている役者さんは、「青天を衝け」で少年時代の主人公をいたぶり、金だけ運ばせて土砂降りの雨の中に放置したあの御代官様ですよね?

 いやいや、悪役がうますぎるでしょう。彼が演じる光秀は、あの「麒麟がくる」の世界に同じように存在した人物であると、私の頭の中では想像することさえちょっとできなかった。この落差よ💦ある意味、すごい役者さんだ。

 逆に、長谷川博己が演じてマジレス蛮族とまで言われていた「麒麟がくる」の真っすぐな十兵衛が、家康への処分が叶わなかったことを根に持って、家康がせっかく手に入れた貴重なコンフェイトを義昭に献上せざるを得ないように抜け目なく嵌め、頬の端を緩ませて冷笑するなんてことも、また想像できない。したくない。

 今作の明智光秀なら、どこまでも私怨で信長を討ち取ろうと考えそう。「麒麟」であったような家康との気持ちの交流もなく、疎遠なままで。

 それとも、途中で家康と手を結ぶ世界線へと進む路線変更はあるのかな?その場合、家康の側から光秀をデレさせることができるんだったら、今回の家康も大したものだけれど、そんな気働きは期待できなさそうな殿だしなー。

 なんか、主人公にずっとガッカリして期待もせず大河ドラマを見続けているのも、やっぱり何かつまらない・・・せっかくの松潤なのにね。しかしもう、気にしないことにした。そして、後々を考えると空恐ろしいほどの夢物語の住人として描かれている瀬名のことも、なるべく先は気にしないようにしよう。

 考えれば考えるほど悲劇的な築山殿。もしかしたら脚本家は、あまりにも気の毒な彼女の生涯を知って、何とか彼女を復権させて家康夫妻を幸せにしてあげたいと考えて、この物語を書こうと決めたのだろうか。そんな気もする。彼女の件だけを考えても、家康が信長を恨むには十分だもんね。

よくわからなかった三河と遠江平定の凄さ

 家康の描き方については、ちょっと言い訳的にも感じる動画が公式サイトでも配信されていた。従来の大河ファン、家康ファンから、主人公のヘタレ設定についてよほど苦情が多かったのだろうか?ちゃんと研究に基づいての人物描写ですよーみたいに神君と同じ岡崎出身を誇りとしていると言っていたアナウンサーが、冒頭で説明していた。彼女も心中では今作の家康公には違和感ありありではないだろうか?

www.nhk.or.jp

 家康が上洛して義昭に対面したのが1570年3月ということで、家康にとっては運命の元亀元年が4月には改元で始まる。桶狭間から10年経ったこの年は、立て続けに家康を鍛え上げる軍事イベントが控えている年だそうなので、これまでのように泣きべそをかいて振り回されるだけじゃない、主体的に成長を見せる主人公の姿も見たいものだ。

 何しろ、くどいかもしれないけれど、今作の家康がどうして天下人に成れたのかが全く見えてこないものだから。ナンバー2の酒井忠次が素晴らしく優秀な人物だったんだろうな、石川数正が異様にキレッキレだったんだろうなぐらいにしか考えられない。

 歴史家の磯田道史先生が何かの番組で、家康は当時可能性があった5万分の1もの争いの中から頭角を現してきた存在だという話をしていたのだけれど、今作の家康は、「どうしたらいいんじゃ~」と泣きべそをかいている間に、いつのまにか三河を平定。誰がどう頑張っていたの?遠江の攻略にしても、掛川城の戦いだけで他の家臣団の働きが見えなかったので、よくわからなかった=つまらなかった。

 なんだかんだで上洛して将軍に謁見できるだけの存在に上っていくプロセスがちゃんと知りたかったな・・・そう思うのは私だけだろうか。

 でも、気になるなら自分で本でもウィキでも何でも読んで調べたらいいよね、というのが今作のスタンスなのか?そういった事柄は、これまでの大河ドラマで散々描いてきているからもうお腹いっぱいでしょ、だから今年の大河ドラマではやらないよ、ということか。

 しかし、研究の進展は日進月歩。その最先端の知識をどんどん生かしてこちらの古い知識を塗り替えてほしい欲求も、大河ドラマを楽しみに見てきた側には大いにある。

 「どうしたらええんじゃあ」に限らず、今作は「家康公のお気持ち」を描くことには力を入れている。大河ドラマは大抵偉人伝だから、主人公は自分の気持ちに蓋をして役割に生きたり、滅私奉公の末に何かを成し遂げたり、そんなパターンが古くは称賛され描かれてきたように思う。

 でもそんな超人偉人を描くパターンが変わってきたのはいつからか。少なくとも、最近BSで再放送の始まった「篤姫」では、役割を懸命に生きることを旨としつつも主人公の篤姫は気持ちを大事にする人物だった。そこが胸を打たれたんだよなあ。

 人間なんだから弱い所もあるんだよね、は分かる。でもね、今作は主人公家康を徹底的に弱虫ヘタレにしすぎた。本来は大偉人なのに、良い所が全く見えてこないとなると、やり過ぎ感がある。せっかく松潤なのに。

3か月経って、主要キャストは衣装刷新

 そういえば、新章突入を機にキャストの衣装が刷新されましたよね。家康は、相変わらずのブルー主体の白っぽくぼかした染めのお着物。生地は絹ではない、程度は分かるけれど高価な感じはまだない。

 今思うと、今川義元公と氏真が紺色とスカイブルーを着ていたのは、家康の心情的なベースが今川にあるんだよと感じさせるためだったのだろうか?

 織田信長は仕方なくついて行ってるけど怖くて大嫌いだからブラック企業らしく暗黒の黒。秀吉も光秀も義昭将軍も、色じゃないけど殊更に醜く不快なビジュアルで描かれているのは、家康の気持ちの反映ならさもありなんだ。

 そうすると、ビジュアル的にとても美しく描かれているのは、今回登場した浅井長政とお市の方。長政の衣装は、他の武将たちのように何か1色で済ませず、柄もふんだんに取り入れられてカラフルおしゃれさで抜きんでていた。何か特別感がある。

 このふたりにシンパシーを感じながらも滅ぼす側に立つ家康、というあたり、深いドラマになっていくのかな。

 そうそう、やっと井伊谷から井伊直政がやってくるみたいだ。「青天を衝け」で徳川昭武を好演していた中の人が演じる直政には、物語の清涼剤となることを期待している。予告編で見た彼はまた、マンガの王子様のような美しさだったのが引っ掛かったけれども。マンガチックにしなくてもいいんだけどなあ。十分清々しいから。

 それから、今のところ妄想でちょっと期待していることがある。今作は大河ドラマでの主演経験のある俳優がザクザク出てきているので、長谷川博己が天海僧正役で出てこないかな?という点なんですけどね・・・💦

 そうすれば、「麒麟がくる」の最終回で胸を熱くした麒麟ファンもかなり感動すると思うし、今回のギャップありすぎ光秀の登場で心の隅にくすぶった恨みも、帳消しになりそうな気がする。

 次回はお市の方の侍女の阿月(あづき)が、有名な話をもじって浅井の裏切りの知らせを届ける運びになるようだ。信長軍側の大混乱と浅井家の苦難とが描かれるはず。大混乱を、今作はきれいごとにはせず、目も当てられない描き方にするだろうか。そこは注目していきたい。

(敬称ほぼ略)