黒猫の額:ペットロス日記

息子は18歳7か月で虹の橋を渡りました。大河ドラマが好き。

【どうする家康】#27 サイコパスじゃない岡田信長、蓄積疲労で限界だった模様

瀬名ロスです

 NHK大河ドラマ「どうする家康」第27回「安土城の決闘」が7/16に放送された。タイトルは「決闘」だけれど、物理的に乱闘があった訳でもなく(7/22「土スタ」出演の岡田准一によると、脚本上は相撲を取る設定だったらしい)・・・狸の化けの皮が剥がれた子どもっぽい家康が、疲れ切った信長に「告白」された話だった。そこからの「国譲り」みたいな。

 テンション低めですみませんね・・・瀬名ロスですよ、どっぷりと。

 オープニングでは、主役の家康直後のヒロイン席「瀬名 有村架純」がぽっかり空いていて、これまで瀬名推しで見ていたこちらとしては大層悲しかった😢於愛の広瀬アリスの表記はもう少し後ろの方で、ヒロイン席を埋めるには至らないってことか。じゃあ、あそこはずっと空席になるの?

 家康は「誰にも、わしの大切なものを奪わせはせぬ」と言ってたけれど、もうしっかり奪われちゃった後じゃないの・・・。

 今の「大切なもの」は於愛とその息子たちとの方向で、割り切れたのか。瀬名じゃなくても、於愛でもいいのか。なんだかなー。

 彼女本人を愛していたというよりも、彼女が担っていた機能を愛していたのか?その考え方は母の於大譲りだ。「妻も子も、すぐまた持てます」って「⑤瀬名奪還作戦」で言っちゃってたもの。

 家康に「案外、(そこらじゅうにいる)兎の方がたくましいのかもしれませぬなあ」と明るく言う於愛は、確かに健気。男の子もふたり産んだ。ただ、死別した妻には敵わないとも言うし、家康の中での瀬名には敵わなさそう。特にあんな「徳川を守る」形で死を遂げたら、もう誰も敵わないかな。

 瀬名、帰ってきてー(←ムリだって)。

徳川家臣達、安土訪問は怖くてたまらなかっただろうな

 気を取り直して、「安土城の決闘」のあらすじを公式サイトから引用する。

京の本能寺で信長(岡田准一)を討つ計画を家臣たちに明かした家康(松本潤)。なみなみならぬ家康の決意に、家臣たちの意見は賛成と反対で真っ二つに割れるが、忠次(大森南朋)は、家康の決断を信じようと家臣団を諭す。やがて家康たちは信長に招かれ、安土城へ。だが酒宴の席で、家康は供された鯉が臭うと言い出した。信長は激高し、接待役の明智(酒向芳)を打ちのめし、追放する。その夜、信長と家康は2人きりで対峙しーー。(これまでのあらすじ | 大河ドラマ「どうする家康」 - NHK

 あれ、ちょっと待って。明智ってこのドラマの中でも追放されてないよね?だって毛利攻めの最中の秀吉軍のお手伝いに行かされるのだから。それに、忠次は「家康の決断を信じよう」とは言ってない。「委ねよう」と言ったのだ。

徳川家康:信長を殺す。わしは天下を取る。安土ではやらん。信長は京に移るはずじゃ。今や都は信長の庭。すっかり穏やかになり、敵への備えは極めて手薄。既に半蔵たちを忍ばせてある。服部党と伊賀から逃れてきた伊賀者たちを集めておる。近頃の信長の宿は本能寺という寺だそうじゃ。茶屋四郎次郎の屋敷はすぐそば。様々な支度をぬかりなく進めさせておる。信長を・・・本能寺で討つ。

 家康はこう家臣団に告げた。そして対話。

  • 信長さえ討ち取れば、織田は混乱に陥るけれど配下の将がいる➡いない。秀吉は毛利攻め、柴田は北国。力ある連中は各地に打って出ている。すぐには駆けつけられない。千載一遇の好機。
  • 唯一厄介なのが饗応役の明智。しかし「奴を遠ざける策も考えてある」と家康。
  • 「異存、反論、一切許さぬ。従えぬ者はこの場で斬る。わしはもう誰の指図も受けん。誰にも、わしの大切なものを奪わせはせぬ」と家康は宣言した。

 徳川生き残りのため、順調に信長の足を舐め続けていると思っていた殿から、えらい話を聞かされた家臣たちは、額を突き合わせて「このまま安土に殿を行かせて良いものか」「殿は並々ならぬ決意、やり遂げるだろう」「そうたやすい話ではない。今信長を討てば乱世に逆戻り」「安土に行ったら殿が信長に殺される方が心配」「罠かもしれん。毒を盛られるかも」と考えを巡らせた。

 心配が募った石川数正が「殿をお止めしてくる」と腰を上げた時、酒井忠次は数正の前に立ちはだかり、言った。

忠次:御方様と若殿様を失って、殿はお心が壊れた。「信長を討つ」この3年の間、ただその一事のみを支えに辛うじてお心を保ってこられたのじゃろう。それを止めることは、殿から生きる意味を奪うのと同じじゃ。わしにはできん。殿に委ねよう。そして最後は、我らが殿を守ろう。

 悲壮な決意だ。もし安土への招待が信長の罠であったなら、全員討死、徳川滅亡の局面になる。それでも殿に殉じて家臣の我らは死のうと言っている。「殿に委ねよう」だと、思考抜きでそうなる。

 ここでその覚悟を皆にさせた忠次は、徳川ナンバー2としてパーフェクト。だけど、実際のところ安土へのお供の皆さんは怖かっただろうなー。

信長も、理不尽な教育を叩きこまれた子だった

 冒頭は、信長の夢だった。顔を隠した武者と斬り合い、信長は致命的な傷を負わされたようだ。

 あれは誰だったんだろう。家康?信長自身?父親の信秀?武田信玄?勝頼(眞栄田郷敦勝頼だったら岡田師範信長も殺されそう)?市の夫で、金で塗られたしゃれこうべが酒宴の余興にされたとか聞く浅井長政?それとも、信長に殺されていった無数の人たちのミックス?

 夢は、信長が「その痛み苦しみ、恨みを全てこの身に受け止め」た姿だったのかな。家康を呼び出して対峙する場面といい、岡田准一渾身の演技だった。家康の前で、信長の心理的弱さをこんなにも出していいんですか?という程。それだけ家康に頼っていたとは・・・。

 信長って戦国時代のビッグネームだけに、大河ドラマ主人公に対して「無条件で好き」設定にしたくなるんだね。「麒麟がくる」では、信長は光秀ラブだった。

 さて、今作の信長は書棚で寝ている程、勉強熱心な人物らしい。焦燥感の表れなのかも。挟み込まれる信長幼少期の映像によると、理不尽なスパルタ教育を父親に叩き込まれている点で、信秀・信長父子も、武田信玄・勝頼父子も相似形だ。

 なぜ極端に暴力的な父子関係が、家康のライバル家族で続けざまに出てくるのか。暴力的でない父子は厳しい戦国時代には存在できないかのようだ。それとも、見ているこちらが現代的な親子関係の視線を持ちすぎているのか。

 今川義元・氏真父子も、義元は人格者設定なのに息子とコミュニケーションはうまくいっていない不全感があるし、今回、信長嫡子の信忠は姿も現さない。そう思うと、史実では信康を処分しているのに、このドラマの家康・信康父子は、問題も抱えていたが少しはマシに見えて皮肉だ。

 そういえば、家康は幼少期に父に死なれたのだった。その松平広忠は暴力的な人物ではなかった。父代わりの義元は、家康には優しかった。対比として、ライバル関係者は暴力的な父との関係に悩む設定になったのだろうか?ステレオタイプを感じて何か引っかかるけど。

心が壊れたからといって何でも許されるわけじゃない

 信長暗殺計画を胸に、にこやかな狸に化けていた・・・つもりの家康。信長は家康の暗殺計画なんて、ぜーんぶ知っていたんだろうな。何しろ、京は自分の庭同然。それで愛する白兎を好きに遊ばせてきたか。

 「京で待ち伏せして俺を討つつもりか」と、信長に計画が丸バレしていたことを知らされても、家康はまだ腹を割らずにいられたものの、瀬名と信康の死を「くだらない」と言う信長の挑発には、あっさり化けの皮が剥がれた。弱点を突かれると弱さが露呈、狸への道は遠かったね。

信長:謝ってほしいか?あん?妻と子供を殺して済まなかったと。謝ってほしいか?ハハハハハ!謝らんぞ。くだらん。

家康:くだらん?(目をしばたたかせる)我が妻と息子の死を・・・くだらんと申すのか!(立ち上がって信長と相対する)

信長:ああ、くだらんな。

家康:ふざけるな!

信長:俺はそのような感情、とうに捨てたわ!

家康:わしはお主とは違う。捨てられはせん!

信長:だからお前に俺の代わりは無理なんじゃ!人を殺めるということは、その痛み苦しみ、恨みを全てこの身に受け止めるということじゃ!十人殺せば十の痛み、百人殺せば百の痛み。万殺せば万の痛みじゃ!(太刀を掲げる信長の手が震え、上ずる声)俺は・・・どれだけ殺した?どれだけ・・・殺した?(涙を堪え、太刀を抜く)この報いは、必ず受けるであろう。俺は誰かに殺される。誰よりも無残にな。うああ~!(叫びと共に太刀で空を斬る)

 だが、俺は覚悟ができている。お前はどうじゃ?お前には、できてせいぜい俺を支えることぐらいじゃ。これからなんじゃ・・・大変なのはこれからなんじゃ。(座り込む)戦無き世の政は、乱世を鎮めるよりはるかに困難じゃろう。この国の有姿のためには、やらねばならぬことが多すぎる。(家康を振り返って)恨め。憎んでもいい。だから・・・俺の傍で俺を支えろ

家康:(頬に、涙がつたう)私には・・・あなたの真似はできん。したいとも思わん。わしは・・・わしのやり方で世を治める。確かにわしは弱い。だが、弱ければこそできる事があると、わしは信じる。(信長の傍に行き、上から)行き詰っておるのは、お主ではないのか?(座っている信長の耳に口を寄せて)弱き兎が・・・狼を食らうんじゃ

信長:(落ち着いた、優しい声音で)なら、やればいい。(家康を正面から見る)俺はわずかな手勢を率いて京に向かう。本当にお前が俺の代わりをやる覚悟があるなら、俺を討て。待っててやるさ。やってみろ。

家康:(涙溢れる目で信長を見て、去っていく)

 この場面が、相撲に代わる信長と家康の「決闘」か。「弱き兎が狼を食らうんじゃ」の件は、どうしても家康が子どもっぽく見えてしまったなあ、「行き詰っているのはお主」だけで十分信長には刺さっていると思うから、蛇足に見えた。

 とても信長の代わりの統治者にはなれなさそう、と却って感じたが、家族は「カッコイイ!」と繰り返し言っていた。

 だいたい、どうして家康が信長を殺すんだ。それこそ、何のために瀬名と信康は死んだ?「徳川を守るため」だったのに台無しだ。武田が滅んで、徳川が織田の助けを必要とする状況はすっかり無くなったのか?

 「妻子を殺されて心が壊れて悔しい」殿のお気持ち優先で、家康が信長を討つとする。家康は、天下を取ると言うなら信長配下の将と順に戦わねばならなくなる。数珠つなぎに出てくる相手は主君の敵討ちの大義名分があって意気軒昂、徳川はエンドレスの戦いに耐えうるか。悪いが、どこかで殲滅され、徳川の滅亡完了だろう。

 それとも、信長配下の将を相手に瀬名のプランを実行するつもりなのだろうか。奪い合うのではなくて与え合う。これに乗ってくるか。

 でも、今の時点では現実的ではない。信長を討てば、徳川は大きな同盟相手を失って孤立しそう。なんという自殺行為。やっぱり家臣を巻き込んでの「拡大自殺計画」に見えてしまう。家康に全てを託し、支えようと言う天使のような徳川家臣団が不憫でならない。心が壊れたからって、何をしてもいいわけじゃない。

 本多正信だったか「妻子を取り戻そうとして戦をするような御方だ」と家康のことを評して言っていた。まだまだ同じ、お坊ちゃま思考なのではないだろうか。

信長はひとり苦しんできた

 ふたりが対峙する場面は、前述のように信長の弱みも見え、なかなか見応えがあった。信長は「俺はそのような感情、とうに捨てたわ」と死んだ妻子に執着する家康に言い、だから自分の代わりには家康はなれないと切り捨てた。

 今作の信長には、心理的支えになっている妻の気配がない。同じ脚本家作の映画「レジェンド&バタフライ」で理想の信長妻(綾瀬はるかの濃姫)を書いてしまったから、他のバージョンを書く気がなくて出てこないのかと思ったが、「そんな感情は捨てた」という信長の心理の表現として、省略されていたのかな。

 そもそも、信長といえば最近は「サイコパス」。「麒麟がくる」の染谷将太が演じた信長は、その信長像が哀れで出色だった。

 今作はそうではなく、世の「有姿」という理想を求める普通の人らしい。まさか、涙声で「俺は、どれだけ殺した?」と悩む人物だったとは・・・今川義元の首の扱いを見ると意外過ぎる。あれは強がり、だったにしてはあんまりだったが。

 信長は、天下布武の過程で奪ってきた命の痛みを、作用反作用的にかなり受け止めてきたことが今回の涙の告白でよく分かったが、サイコパスの気のない常人が、ひとりで背負っていたら辛かっただろうね。

 家康は、鳥居忠吉に「信じなければ、信じてもらえない。それで裏切られるなら、それまでの器だったのだ」と教わったから、家臣を信頼できるようになって今がある。そこで「友垣」のように扱う家臣に「足元をすくわれる」と信長に言われても、「それならそれで、しょうがない」と言うことができた。

 父も祖父も、家臣に足元をすくわれた過去がある家康が言っていると思えば、信長にもそれなりの重みを持って響いたか。

 その家康に、愛の告白のような「恨め。憎んでもいい。俺の傍で俺を支えろ」と。

 目を引くつかせ、疲れがありありと見える信長には「ビタミンB12入りの目薬がピクピクにはかなり効くよ」とお勧めしたくなったが、家康の言葉「行き詰っておるのは、お主ではないのか?」は、それこそ心身ともに図星だったんだろうな。もう限界を感じていたのだろう。

 目薬さして、ちゃんと寝て、すっきりした頭で考えなくちゃ。

 「俺を支えろ」と言う信長は、それが定説の家康に対してだったらもちろん人を見る目がある。ドラマには出てこなかったが、太原雪斎だって氏真を支える人物として家康を選び、育てたんだもんね。それだけの力があった。

 また、「戦無き世の政の方がよほど大変だ」という信長には「家康に任せておきなさいよ、260年超も平和になるから」と教えてあげたくもなる。

 でも、今作の家康に対してだと「俺を支えろ」と言いたいか。どうなんだろう。申し訳ないけどあまり使えないよ?なんで?品のある海老すくいが踊れてお顔がきれいだから?愛があるから?このドラマキャラの中で選ぶなら、文句なく酒井忠次でしょう。

 そして、だ。なんで「俺を討て。待っててやるさ、やってみろ」になるんだ・・・。白兎家康を見守る狼のセリフとしてはカッコいいが、蓄積疲労による気の迷い、自らの仕事をなげうちたいほど忙しい脚本家の心底が現れたようにも思ってしまった。

 自ら討たれて国譲りだとすると、何と言っても嫡男・信忠の存在を忘れ過ぎている。信長死後の群雄割拠の混乱の中から信忠も這い上がってこい、とでも?あまりにぶっ飛んでいる。

光秀の余計な気働きが、信長には不安だったか

 次回はついに本能寺の変。さて、そろそろダラダラ書くのも終いにと思ったが、家康接待での光秀(の失態)について、ちょっと書こう。

 光秀の中の人(酒向芳)が比較的高齢で非力に見えるので、岡田師範信長様には、かなーり力を抜いて折檻しないと本当に死んじゃうよ、とドキドキした。殴られているようにタイミングを合わせるのに苦労したとのインタビューを見てホッとしたが、逆に本当に殴っているとの記事もあったようだ。どっち?今どき殴るか?記者の勘違いでは?

 前回ブログで気になっていた予告部分ひそかに徳川殿の料理に入れることも」については、信長がどう返答したのかは分からずじまいだったが、そのやりとりが信長による光秀への激しい殴打につながったのではないか。光秀は「何の細工も」とも殴られながら弁明していたし。

 つまり、信長は、自分がNOと言ったのに、細工(食べ物に毒を仕込む)という指示違反を光秀が行い、その結果、愛する家康の命を危険に曝したと判断し、折檻に及んだのでは。淀の鯉を「臭う」と言った家康を「食べなくていい」と咄嗟に止めたのは、毒の作用の方を心配したのでは。

 あそこまで激高した理由は、単なる接待のしくじりではなく、そんなところでは。

 (ドラマで臭うのが「琵琶湖の鮒」でなくて良かった。どうしたって発酵食品の「鮒ずし」は日本酒にはぴったりだけど違った意味で「匂う」から、私みたいに好む人ばかりではあるまい。営業妨害にならないように、淀の鯉にしたのか?それともそういう記録があるのかな?)

 家康とすれば「光秀を遠ざける」程度の策のはずだったのに、光秀は腹を切ると言う。徳川の友垣文化にはない発想でも、しくじりを許さない織田カルチャーを良く分かっているはずなのに、という光秀の恨み言もごもっとも。そこら辺の配慮に欠けるから、家康は本能寺で光秀に先を越されることになるわけだ。

 結果的にそれで家康には良かったんだけど。

 光秀が信長を討った理由については最近の四国説とか、穴山梅雪の織田加入によって武田と気脈を通じていたのがバレるのを恐れて説とか、そういうのは今のところ全く触れられず。今作は怨恨説の変形版か。

 ここで濡れ衣を着せた光秀には、「悪いな」という思いを家康や徳川家中は抱きそう。これが、将来どう影響してくるのかな。

 さて、次回以降、本能寺の変➡神君伊賀越えだ。「真田丸」の爆笑伊賀越えを超越する名場面になるかな? 

(敬称略)