黒猫の額:ペットロス日記

息子は18歳7か月で虹の橋を渡りました。大河ドラマが好き。

【どうする家康】#46 家康不在で豊臣が勝利したら、秀頼はプーチンのようになったのか

砲撃にさらされ過呼吸の千姫。秀忠も泣く

 NHK大河ドラマ「どうする家康」は大詰めの第46回「大坂の陣」を12/3に放送した。あらすじを公式サイトから引用する。

豊臣家復活を願う方広寺の鐘に、家康(松本潤)を呪う言葉が刻まれたという。家康は茶々(北川景子)が徳川に従い、人質として江戸に来ることを要求。激怒した大野治長(玉山鉄二)は、両家の仲介役・片桐且元(川島潤哉)の暗殺を計画。家康はついに14年ぶりの大戦に踏み切る。全国大名に呼びかけ、30万の大軍で大坂城を包囲、三浦按針(村雨辰剛)に用意させたイギリス製大筒を配備。そんな徳川の前に真田丸が立ちはだかる。(これまでのあらすじ | 大河ドラマ「どうする家康」 - NHK

 物語は真田丸の活躍が見られる冬の陣に突入し、徳川方が3倍の大軍で囲んでも降伏しないどころか、雇われ牢人どもが大活躍で気を吐く豊臣方に、業を煮やした家康が、備前島砲台に用意した大筒からの砲撃を大坂城本丸に打ち込んだ。

 どうせ届かないとか、届くか?と危ぶむ声が両陣営から上がっていた大筒の威力は大方の予想に反して凄まじく、本丸から天守に次々と命中。砲台で指揮する本多正純の目は明らかに変になってるし(それだけの覚悟を固めていたとしても、一方的な殺戮をする方は気が変になるよね)、家康が「戦を知らんで良い」「人殺しの術など」と慮っていた秀忠は、やっぱり「止めろ~!」と泣いた。

 砲撃の先では、茶々ら大坂方の女どもが逃げ惑い(赤ちゃんの泣き声も聞こえた。秀頼の子だろうか)、秀忠が心配した通り、娘の千姫は砲撃に曝される中で過呼吸に陥っていた。天井が崩れ、茶々が千姫を庇って負傷、千姫が助けを呼ぶ「誰か~」の声も空しく響き・・・というところで次回へ。

 茶々は、家康の孫として千姫を意識していたとしても、妹・お江の娘(つまり姪)として千姫を可愛がる意識も強くあったのでは?茶々は、妹たちへの保護者意識がものすごくあるように思うから。だから天井が落ちてくる時に、身を投げ出し千姫を庇う気持ちは分かる。

 でも、自分が年を取ったからこそ思うのだけれど、身内じゃなくても若い子は庇ってあげたくなる。計算じゃなく反射的に、体が動くこともあるのでは。あちこち痛くても(茶々はまだそんな年じゃないけど)。

原爆投下を想起させられた

 砲撃の場面での、徳川家康・秀忠親子のやりとりを改めて記しておく。秀忠は戦を知らんで良い、指図はすべてこの自分が出すから従えと、全ての責めを自分が負うと宣言して、家康が総大将を務めている。その意味が、ここに来て秀忠には分かっただろう。言われた時は不満そうだったけど。

 家康は、腹心の本多正信に言っていた。「この戦は、徳川が汚名を着る戦となる。信長や秀吉と同じ地獄を背負い、あの世へ行く。それが最後の役目じゃ」と。

家康:(紙一面に南無阿弥陀仏を書き終えて)正信。あれを使うことにする。

秀忠:あれ・・・父上、あれは脅しのために並べておるのでは?本丸には届かんでしょう。

家康:秀頼を狙う。

秀忠:さ、されど、そうなれば・・・。

家康:戦が長引けば、より多くの者が死ぬ。これが、わずかな犠牲で終わらせる術じゃ。②主君たるもの、身内を守るために多くの者を死なせてはならぬ

(本多正純が指揮する砲撃が、大坂城本丸と天守に次々命中。城内では悲鳴)

秀忠:(続く砲撃音と破壊音)父上、止めてくだされ。父上・・・止めろー!こんなの戦ではない!父上!!もう止めろ~!(家康の胸元に食って掛かって泣く)

家康:(虚ろな表情)③これが戦じゃ。この世で最も愚かで・・・醜い(秀忠を振り捨て、顔を歪め泣きながら)人の所業じゃ

秀忠:(顔を歪め、砲撃される大坂城を見る)

 この場面、現代の私たちも深く考えさせられる。今、ウクライナ、パレスチナで起こっていることを思うと。

 ②で思い起こしたのは、家康が、かつては「身内のための戦」をして多くの家臣を死なせた殿だったということ。「主君たるもの、家臣と国のためならば、己の妻や子ごとき平気で打ち捨てなされ!」と母・於大の方に厳しく叱責されても、家康は、オリジナル大鼠らを犠牲にしながら瀬名と信康を奪還した。上之郷城を攻めて鵜殿氏の息子2人を奪い、瀬名・信康・亀姫と人質交換した。

 そんな家康も、国のためにその瀬名と信康を自死させ、慟哭の限りを味わった。それを踏まえ、孫娘を案じる息子秀忠と対峙していると思うと、たまらない。

 ③について。対武田勝頼の長篠の戦で、織田信長が仕掛けた圧倒的な銃撃による織田・徳川方の勝利に言葉を失っていた家康と信康を思い出す。若かった家康もなす術もなく、信康も、これは戦じゃなく殺戮だと非難していた。それを、家康は「する側」になったのだ。

 (その殺戮を成す信長には相手への敬意とそれなりの覚悟があったことや、秀吉が人の死をせせら笑っていたのも思い出す。)

 なぜそれを成すのか。その理由については①「戦が長引けば、より多くの者が死ぬ。これが、わずかな犠牲で終わらせる術じゃ」なのだが・・・私は広島・長崎への原爆投下を想起させられた。

 第二次世界大戦でアメリカは同じことを言って、広島と長崎への原爆投下による一般人の殺戮を正当化した。「原爆が戦争を終わらせた」と、それがアメリカでは定説だ。

 アメリカが気にしたのは自国兵の犠牲を減らすこと。広島や長崎に暮らす一般日本人の犠牲は思考の外にあったらしい。本丸や天守をダイレクトに狙うことで大坂方の首脳陣だけ砲撃し、無辜の民草には影響を及ぼさなかった家康の方がまだマシだ。(このドラマの上では。)

 (ちなみに、原爆投下を決断した当時のトルーマン大統領の子孫は、広島・長崎の被爆者らと交流し、被爆者の話をアメリカで伝えようと尽力している。興味深いインタビュー記事があった。【原爆投下】トルーマンの孫が語る謝罪と責任の意味(前編)|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト (newsweekjapan.jp) 「原爆投下が正しかったかという問いには関わらない。広島と長崎の人々への敬意は忘れていないが、結果を天秤にかければ、原爆が戦争終結を早めた証拠の方が説得力がある」そうだ。)

 今回の、大筒という圧倒的な兵器による殺戮を見て、現代の私が核兵器競争まで意識が飛ぶのは自然な話だし、制作側も意図していると思う。「これが戦。この世で最も愚かで醜い、人の所業」は、まだ失われていない。

 現代イスラエルは核兵器を所持しアメリカもバックアップしているから、パレスチナの庶民が砲撃を浴びて多くが落命しても、イスラム諸国は黙っているのだろう。戦を闇雲に広げないという点で、賢く弁えた選択とも言えるけれど。イスラエルの核所持に対抗するイラン、開発に血道を上げていた北朝鮮も、核の圧倒的な力が自らを守ると信じている。

 現代の世界は、核を持った者勝ちだ。まだ王道には遠く、覇道の世なのだ。

もし「負ける自信がある」」秀忠が総大将だったら

 もしも・・・既に家康がおらず、全軍の指揮を秀忠(王道を成す者として家康が温存した)が担っていたらどうなっただろう。

 「負ける自信がある」秀忠は、娘・千姫の命を案じてやまず、砲台に並べている大筒は「飾り」とばかりに実際に使おうとは思いもせず、大軍を擁しながらぐずぐずと豊臣に負けていったかもしれない。

 秀忠がいよいよ大筒を使おうと決めた時には、彼のことだからタイミングを逸し、豊臣方にまんまと奪われることにもなったのでは?覇道に生きる豊臣が、現代の核兵器のようなイギリス製の大筒を手にしたら、徳川は殲滅させられるだけ。王道が虚しい。

 徳川から覇権を取り戻した秀頼は、秀吉のように再度朝鮮へと唐(当時は明)狙いで出兵するはず。今回、「無き太閤殿下の夢は、唐にも攻め入り、海の果てまでも手に入れることであった。余はその夢を受け継ぐ」と、牢人どもの前で宣言していた通りだ。

 ただでさえ秀吉の出兵で国土が荒廃した朝鮮なのに、また秀頼が出兵するのでは気の毒な話。が、徳川滅亡後に秀頼を止める人は日本には誰もいない。

 秀頼は年齢も若いので、彼が延々と出兵を続けたら明だけでなく大陸の各勢力と泥沼の戦いに陥って・・・そして、当時の日本の兵力が世界最強とか評価されていた(だそうな)としても、最終的には疲弊し、勝てるとは思えない。

 日本には海を挟んでいる地の利があるとはいえ、あまりに迷惑な出兵が止まないとなれば、逆に、大陸側から大挙して日本が征討されそう。そうなれば、「日本」としてこのエリアが存続できたかどうか。

 こんな妄想を書いていたら、秀頼がプーチンのように見えてきた。ウクライナ出兵を推し進めるプーチンを、今やロシア国内では誰も止められないらしい。ウクライナが滅びれば、さらにプーチンは止められない。

 ここまで妄想して、最初の前提条件「家康が欠けること」の意味を思った。ドラマ上の話だけでなく、日本の歴史に非常に大きな悪影響を及ぼすことだったのではないか。「戦を求める者に天下を渡す」ことの怖さを思った。

大坂方が繰り出す passive aggression (PA)

 妄想からドラマに戻ろう。

 方広寺の鐘銘問題は、ドラマでは茶々が「面白いのう」といい、大坂方が徳川に仕掛けた嫌がらせだった。家康の諱が刻まれていると分からない訳がない。

 一番神経を使って避けなければならないと現代のボンクラでも気づくぐらいのことを、当時確かにやっているのだから、実際にもわざと仕掛ける意図はあっただろう。徳川のイチャモンだと逃げられると思う方がどうかしている。

 考えても見てほしい。現代でも独裁者のいる国で彼の名前を弄ぶようなことをした庶民がどうなるか。銃殺刑だろう。戦前の日本でも、不敬罪に問われたのでは?

 この鐘銘問題は、以前も触れたパッシブアグレッション(受動的攻撃、PA)の分かりやすい例だと思う。やってから「そんな意図はないのに」ととぼけて、相手を考えすぎだと責める。被害者支援関係で学んだ言葉が、ドラマの分析で役に立つとは。

 講師の先生は「日本語ではPAをズバリ言う言葉はないのに、日本はPAが溢れている面白い国だ」と指摘されていたが、「いやがらせ」「いじめ」「あてつけ」「いけず」「罠」等、類する言葉はいっぱいある、むしろ細分化されて全体が見えないか。

 PAの厄介なところはPAのターゲットとされた側が反撃すると、「大人げない」「神経質すぎる」「気のせいじゃないか」「やりすぎだ」とか周囲から非難を浴びがちなところだ。

 分かりやすいPAは、無視とか、黙って泣かれる、とかだ。いきなり泣かれれば「何もしていないのに」と呆然とし、「何かしちゃった?」と、やられた側が自分を責めるだろう。

 それを計算して繰り出されるのがPAで、弱者が強者に仕掛けるのはささやかなる抵抗手段として仕方ない面もある、と説明を受けた。

 ドラマでは、大坂方には10万もの反徳川の牢人が集まりつつあってドロンジョ茶々様らも裏ではノリノリ。鐘銘問題は、調子に乗ってきた大坂方が徳川を貶めるために巧妙に仕掛けた罠であり、徳川が捨て置けないと反応したのは正当だった。

 ただ、史実としては「こんなに大きな問題になるとは思わなかったんだもーん😢」と、かまってちゃんの大坂方の粋な遊びのつもり(=考え無しな悪ふざけ)と解する余地はあるかもなと個人的には思う。1やってみたら100倍返し、みたいな。

 PAについてサクッと知りたい方は、ウィキペディア先生では英語版のこちら(Workplace aggression - Wikipedia)を翻訳してご覧になると良いのでは。「Workplace aggression can be classified as either active or passive.[6][7][8] Active aggression is direct, overt, and obvious. It involves behaviors such as yelling, swearing, threatening, or physically attacking someone.[9][10] Passive aggression is indirect, covert, and subtle. It includes behaviors such as spreading rumors, gossiping, ignoring someone, or refusing to cooperate.」日本語版では病的なものの説明しかないようで、私が習ったのとはちょっと違った。

 これを踏まえ、徳川陣営でのやり取り(まさかの笑い飯哲男登場)を見てみたい。彼らに「これってPAなんだってば。躊躇うこと無し!」と言ってあげたい。

語り(春日局):豊臣の威信をかけて秀頼が建立した大仏殿。その梵鐘に刻んだ文字が、徳川に大きな波紋を投げかけておりました。

林羅山:「国家安康」家康を首と胴に切り分け、「君臣豊楽」豊臣を主君とする世を楽しむ。明らかに呪詛の言葉でございます。徳川を憎む者たちはこれに快哉を叫び、豊臣の世を更に望むことでしょう。

金地院崇伝:それは言いがかりというもの。言葉通り、国家の安康と君臣共に豊楽なる世を願うものであって、他意はございませぬ、と豊臣は申すでしょう。

羅山:大御所様の名が刻まれていることに気づかないわけはない!

崇伝:あくまで大御所様をお祝いする意図で刻みました・・・と豊臣は申すでしょう。

徳川秀忠:崇伝!お前はどっちの味方なんじゃ。

本多正信:要するに、これを見逃せば幕府の権威は失墜し、豊臣はますます力を増大させていく。されど処罰すれば、卑劣な言いがかりをつけてきたと見なされ、世を敵に回す。う~ん、実に見事な一手

本多正純:褒めてる場合ではござらぬ。

正信:うん?・・・腹を括られるほかないでしょうな。

阿茶局:おとなしくしておられれば豊臣は安泰であろうに。

秀忠:何故こうまでして天下を取り戻そうと・・・

家康:倒したいんじゃろう・・・このわしを。

語り:神の君、最後の戦が迫っておりました。

 正信が息子に「褒めてる場合ではござらぬ」と言われていたが、日本では正信の「見事な一手」のように、PAを賢く頭の良いやり方だと褒める風潮があると講師はおっしゃっていた。

 PA(受動的攻撃)が攻撃であることには変わりなく、それをAA(積極的攻撃)のようにあからさまにしないだけのこと。周囲の理解を得られないことで、PAを受ける側の精神的ダメージは、AAの時よりも深まっていく。

 むしろ被害者を装うなんて卑怯なんだ、攻撃なんだと理解が広まればいいなと個人的には思うところだ。まさに、攻撃者を褒めている場合ではない。

織田常信(信雄)の「わ・ぼ・く」炸裂

 この方広寺鐘銘問題だけではなかっただろうが、徳川との間に挟まれる取次役の片桐且元がとてもお気の毒だ。「真田丸」では常に胃薬を手放せなかったね。

 今回のドラマでは、駿府城内でキョドキョドして案内されている様子がまず可哀そう、そして平身低頭して「全て私の不手際。鐘は直ちに鋳つぶしまする」と謝っているのに、若造の正純に「それで済む話でございますまい!度重なる徳川への挑発、もはや看過できませぬ」と叱られていた。

 ただ、このドラマでは且元は家康にお目通りが叶い、直々に「3つの求めのうち、いずれかを飲むよう説き聞かせよ」と言われていた。すなわち、大坂退去の国替え、江戸参勤、茶々の江戸下向だ。

 これまでの大抵のドラマでは、且元は散々待たされた挙句に家康に会えず、正純から何とか条件を聞き出して帰る間に、茶々の乳母の大蔵卿局らが家康にも直接会い、歓待されて「何でもないって言ってました!」と且元の立つ瀬がなくなるようなことを言う。そのせいで、問題解決の条件を口にした且元が追い詰められるのだった。

 でも、それは無し。最近の研究で否定されたのかな?

 ドラマの且元の最大のお気の毒ポイントは、自分が仕える主人に本音を言ってもらえていないところだ。主人のために苦労しているのに、茶々も秀頼も裏では好戦的な大野治長にべったりだ。

片桐且元:修理!こうなると分かってあの文字を刻んだな・・・!

大野治長:片桐殿が頼りにならんので。

且元:戦をして豊臣を危うくする気か!

治長:(バン!と畳を叩き、挑戦的な目で見つつ手を振って)徳川に尻尾を振って豊臣を危うくしておるのはお手前であろう!

(両家臣の言い合い)

茶々:控えよ!

且元:秀頼様。引き続き、徳川様との取次、私に務めさせてくださいませ!

秀頼:・・・無論、頼りにしておる。ひとまずは屋敷にて十分に休むがよい。

且元:ははっ!(退出)

治長:あれはもう、狸に絡め捕られております。害しようとする者も現れますでしょう。

茶々:面白うないのう。

 取次役を害すれば、宣戦布告と見なされ戦だ。茶々の「面白うないのう」は、一応、且元殺害に異を唱えたのだろうか。あんなに徳川と戦をしたがっているのに??? 

 今作では、且元が大野治長からの刺客を察知して大坂城を脱出する話が、元々は千姫から情報がもたらされたおかげになっていた。千姫が織田信雄(常真)に伝えたのだった。

 久しぶりの信雄!この織田家のボンも、今回の「どう家」で汚名が雪がれた口のひとりになったか。今川氏真、武田勝頼、織田信雄。ダメな2代目よと言われてきた人たちだ。

 信雄を演じる浜野謙太は、再放送中の「まんぷく」で牧善之介として登場していて、先日も米軍に誤解からとっ掴まった主人公の夫・萬平さんのためにわざわざ証言しに来ていた。元々が良い人キャラだ。

 視聴者は、信雄の小牧長久手の戦いの右往左往ぶりを見て、その後勝手に秀吉と和睦しちゃって家康が迷惑を受けたと考えているだろうから、信雄が諸将を前に千姫にお酌されながら声高に自慢していた場面は「榊原康政の手柄じゃんね・・・」と白い目を向けていたと思う。

 ところが、廊下でべそをかいていた千姫に、信雄はこう言った。

織田常真(信雄):戦は避けましょう。あなたのおじい様には世話になった。ハハ・・やりとうない。わしの最も得意とする兵法をご存知かな?フフフ。わ、ぼ、く・・・でござる。へへへへへ・・・。(千姫の腕をポンと叩いて)大丈夫、うん。わしと片桐で、なんとかします。(去ろうとする)

千姫:(後ろから捕まえて、泣きながら)片桐殿は、おそらく明日、大野殿に。

 信雄いいとこあるじゃん!機能しているじゃん!と名誉挽回したのではないか。父を含めて天才ばかりがのし歩く戦国時代に、生き延びて家系をつないだけでも大したものだ。

 信康の妻だった妹の五徳が、信雄によって秀吉に人質に出され、側室にされていたのは憤懣やるかたないとも言えるが・・・今回、長生きしているはずの彼女の名前も、且元と信雄の大坂城脱出に絡んで聞けて良かった。

 そして、彼らの脱出を機に家康は「これで我らと話し合える者が豊臣にはいなくなった」「諸国の大名に大坂攻めの触れを出せ」「大筒の用意もじゃ」と言うに及んだ。

病んでも仕方ない千姫

 冒頭、家康が阿茶局と三浦按針からもらった鉛筆(今年、久能山にて見てきたばかり)の話をして、絵を描くのが好きな千姫にやればよかったと思いを馳せていた時、実際のところ家康は、彼女のいる大坂城の堀を埋め立てるよう戦略を巡らして鉛筆で堀を塗り潰していた。

 もう、砲撃を打ち込んだ後の一手を考えていたことになる。

 その砲撃を受ける側に居る千姫は、怖ーい姑であり伯母のドロンジョ茶々らから、徳川の一員としては見過ごせない、気持ちを弄られるような思いをさせられる日々を過ごしている。

 大野治長らとの会話を聞いているだけで胃に穴が開きそうだが、部屋に引きこもらず夫・秀頼と常に一緒に居続けて「何の話でございます?」と聞ける鈍感力があるのは、姫らしい強さだ。

 そして、「そなたも豊臣の家妻として皆を鼓舞せよ」と茶々に迫られ、牢人たちを前に「豊臣のために・・・励んでおくれ!」と気持ちを励まして言った。精神的にギリギリ頑張っているのが泣ける。

 (この時のドロンジョ茶々様の得意げな眉毛の上がり方が怖い。昨年の北条政子張りの演説も、秀頼よりも全然迫力があった。)

 そんな千姫からの問いかけ「あなた様は本当に戦をしたいのですか?本当のお気持ちですか?」に対し、夫の秀頼も思うところが少しはありそう。「余は、徳川から天下を取り戻さねばならぬ。それが正しきことなのだ。分かってほしい」「余は、豊臣秀頼なのじゃ」と逃れられない運命を受け入れている様子だった。

 かわいそうだね、本当に。ふたりとも可哀そうだ。

 今回はダラダラ書き過ぎだった。次回は夏の陣。

(敬称略)