ずっと心にしまわれていた、あの日の事
NHK大河ドラマ「光る君へ」第5回「告白」が立春の日の2/4に放送された。公式サイトからあらすじを引用させていただく。
(5)告白
初回放送日: 2024年2月4日
道長(柄本佑)が右大臣家の子息であり、6年前に母を手にかけた道兼(玉置玲央)の弟であることを知ったまひろ(吉高由里子)はショックを受けて寝込んでしまう。事態を重く見た、いと(信川清順)はおはらいを試みる。一方、まひろが倒れたことを聞いた道長は、自らの身分を偽ったことを直接会って説明したいとまひろに文をしたためる。直秀(毎熊克哉)の導きでようやく再会することができたまひろと道長だったが…((5)告白 - 大河ドラマ「光る君へ」 - NHK)
前回描かれた五節の舞の後、やっぱり倒れて寝込んでいたまひろ。お祓いに来た憑坐と法師陰陽師は、乳母のいとが御方様は亡くなったと言ったことで怪しげに頷き合い、まひろが倒れたのを亡き母ちやはのせいにしてお礼の米を稼いで去った。
いとは弟惟規の乳母であり、初回から登場しているが、いいとこある。ちゃんとまひろのことも心配して、当時の人並みな「治療」のために彼らを呼んだわけだ。「もう呼ばないで」とまひろは言ったが。
まひろは、お礼参りの帰りに母親が殺されているのだ。神仏等への信頼は薄くもなるだろう。
父・為時が、正気に戻ったまひろに、初めて思いを正面から告白した場面も心に残った。父にお願いもされた。でも、それをまひろが素直に聞ける訳もない。家族の誰かが殺されて、皆が皆同じタイミングで同じ方向を向ける訳もなかろう。
為時:わしは賭けたのじゃ。お前が幼い日に見た咎人の顔を忘れていることに。されど、お前は覚えておった。何もかも分かってしまったゆえ、分かった上で頼みたい。惟規の行く末のためにも、道兼様のことは胸にしまって生きてくれ。ちやはも、きっとそれを望んでおろう。
まひろ:母上が?
為時:お前が男であれば大学で立派な成果を残し、自分の力で地位を得たであろう。されど惟規はそうはゆかぬ。誰かの引き立てなくば、真っ当な官職を得ることもできぬ。
まひろ:右大臣様におすがりせねばならぬゆえ、母上を殺した咎人のことは許せと?!
為時:お前は賢い。わしに逆らいつつも何もかも分かっておるはずじゃ。
まひろ:わかりません。(顔をそむける)
五節の舞姫のひとり(まひろ)が倒れたことは憑き物につかれたと噂になっており、それが道長の耳にも届いた。分かりやすく、無言で立ち往生した道長は、まひろの昏倒は自分の素性を舞の途中に知ってしまったことが理由だと考え、手紙を書いたんだけど・・・。
この時点での手紙の様子を察するに、色恋のカケラもない感じ。道長はまひろへの気持ちがまだニュートラルだと信じていて恋だとは意識できていないからなのか、単に彼が無粋なのか。この時点では何とも言えない。
とにかく道長はまひろに謝りたい気持ちになった訳だが、彼が思いもしなかった告白が待っていたんだよね。
(六条のどこか、まひろが待っていると直秀が道長を連れてくる)
道長:右大臣藤原兼家の三男、道長だ。
まひろ:三郎じゃなかったのね。(横目で見ている)
道長:三郎は幼い時の呼び名だ。出会った頃は三郎であった。お前を騙そうと思ったことは一度とてない。驚かせてしまって済まなかった。会って話がしたいと思い、文を書いた。
まひろ:父の前でそのことを詫びて、どうしようと思ったの?
道長:ただ・・・詫びるつもりであった。(柱の陰で直秀が聞いている)
まひろ:(道長の方を向いて)誠は・・・三郎が道長様だったから倒れたのではありません。あなたの隣に座っていた男の顔を見たからなのです。
道長:道兼のことか?
まひろ:あの顔は一生忘れない。
道長:兄を・・・知っているのか?
まひろ:6年前・・・母はあなたの兄に殺されました。私の目の前で。(驚く道長)6年前、父は播磨の国から戻っても官職を得られず、食べることにも事欠いて下男や下女が逃げ出してしまうほど貧しくて・・・そんな時、右大臣様が東宮様の漢文の指南役に父を推挙してくださったのです。官職ではないけれど、父も母もこれで食べていけると喜んで、次の日、母はお礼参りに行くと言いました。
私が河原で三郎と会う約束をしていた日で・・・私は三郎に会いたかった。行かないって言ったけど、行きたかった。
回想のちやは:(小走りのまひろに)まひろ、今日のあなたはおかしいわよ。(馬のいななき)
回想の少女まひろ:あっ!
回想の道兼:(馬で疾走、まひろと出会い頭にぶつかりそうになり、落馬。下男の刀を抜いて走り、その場からまひろを守って離れようとするちやはを背後から刺す)
まひろ:あの道兼が・・・(ちやはの返り血を浴びる道兼の顔)三郎の隣に座ってた。もし道兼だけだったなら、私は人殺しと叫んでいたかもしれない。でも、三郎が居て。
道長:(表情を失って)すまない。
まひろ:父は、禄を頂いている右大臣様の次郎君を人殺しにできなかったの。
回想の為時:(涙を流しながら)急な病で死んだことといたす。
回想の少女まひろ:なぜ!母上は殺されたのよ!父上!
まひろ:東宮様のご様子を右大臣様にひそかに知らせる役目もしていたから。
道長:すまない。謝って済むことではない・・・が、一族の罪を詫びる。許してくれ(頭を垂れる)。
まひろ:兄はそのようなことをする人ではないと言わないの?
道長:俺は・・・まひろの言うことを信じる。・・・すまない。
まひろ:別に三郎に謝ってもらいたいと思った訳じゃない。
道長:ならば、どうすればよい。
まひろ:わかんない・・・三郎のことは恨まない。でも、道兼のことは生涯呪う。
道長:(胸を押さえて)恨めばよい。呪えばよい。
まひろ:あの日、私が三郎に会いたいって思わなければ・・・あの時、私が走り出さなければ・・・道兼が馬から落ちなければ・・・母は、殺されなかったの。だから、母上が死んだのは私のせいなの。(しゃくり上げ、ひどく泣きながら)
道長:(まひろに歩み寄り、背中に手を回す)(直秀、去ろうとする)待て。お前、名前は?
直秀:直秀だ。
道長:直秀殿。今宵は助かった。礼を言う。
直秀:直秀でいい。
道長:まひろを頼む。(走って去る)
直秀:帰るのかよ・・・。(まひろ、泣き続けている。馬のいななきが響く)
今回のクライマックス。この吉高由里子の演技を、柄本佑は「ゾーンに入っていた」と2/10のスタジオパークで言っていたが、本当に演技とは思えない、見ているこちらも心が深く痛む、涙を抑えられない演技だった。
まひろ、この6年間ずっと辛かったね!と、そっと背中に手を置きたい気持ちにこちらもなっていたので、「まひろを頼む」とその場を後にする道長に「帰るのかよ」と直秀と一緒に突っ込んだ。
気持ちは分かるけど、まひろが6年越しにやっとのことで心の中身を言葉にしたのだから(多分初めてのことだろう)、自分の気持ちの解決に走らず、一旦受け止めてほしかった。
まひろは「母上が死んだのは私のせいなの」と言った。そう言葉にするのはどれだけ辛かったことか。だけれど、そうじゃない。仮に、馬上にいたのが道兼じゃなくて道長だったら?長兄の道隆でも良い。少女まひろに出会い頭にぶつかるのを避けようと落馬したとしても、ちやはが殺されることなぞは無かったと容易に想像がつく。
あれは道兼個人のせい。まひろのせいではない。まひろは悪くないんだよ、と言ってあげたいけど・・・この被害者遺族の罪悪感・自責の念(サバイバーズギルト)は、周りがそう言っても理屈じゃなく、簡単には拭えるものじゃないと聞く。それは故人を助けたかった愛情ゆえのことだよね。苦しみから脱するには時間もかかるだろう、本当に痛ましい。
(孫娘が殺され、その時に在宅していた祖母が事件に気づかず孫娘を守れなかった罪悪感から「私が殺した~(ようなもの)」と嘆き悲しんだら、それを真に受けた警察に逮捕されてしまった冤罪事件が昔あったと記憶している。いやいや、あなたは家にいただけで殺してないでしょ、というロジックが通じない程の大きすぎる悲しみの表明が祖母の「私が殺した~」だったのだろう。今は被害者支援も進み、そんなポンコツ警察は無いだろうけど。)
この重すぎる罪悪感を、物語とはいえ、まひろはたった6歳で抱えてしまった。殺人者は処断もされずにおれば、余計に心の中で自責感が膨れ上がるんじゃないか。その溜め込んだ感情が怒りとなって、父に向っていたのだろうね。
自分は加害者の弟、という重い事実
「まひろを頼む」と言って道長が向かった先は、道兼の下。当時、自分が道兼から受け続けた暴力の経験からも、道兼ならやりかねないと考えただろうが、道長らしく、慎重に確認から入った。
満月の夜、ひとり馬を走らせる道長の複雑な胸中を思うと・・・自分はまひろの仇の弟かもしれないのだ。兄弟の縁は切りたくても切れない。道兼には否定してほしいと、そう思っていただろうな。
道長:兄上。6年前、人を殺めましたか?お答えください。
道兼:やっと聞いたな、お前。やはり見ておったか。(回想。返り血を浴びた道兼の姿を見てしまった、当時の三郎)虫けらのひとりやふたり、殺したとてどうということもないわ。
道長:何だと・・・(道兼の胸ぐらをつかんで)虫けらは・・・お前だ!(道兼に殴りかかる)
道兼:(殴られ、烏帽子も取れて)父上に言ったのはお前ではないのか?
道長:え?
道兼:父上もご存知だぞ。何もかも父上が揉み消してくださったのだ。
道長:(兼家を見て)誠でございますか?!
兼家:我が一族の不始末、捨て置くわけにはゆかぬでな。(愕然とする道長)
道兼:そもそもお前が悪いんだぞ。
回想の時姫:何をしておる!
回想の三郎:弱き者に乱暴を働くは心小さき者のすることと申したら、兄上が・・・。
道兼:お前が俺をイラ立たせなかったら、あのようなことは起こらなかった。あの女が死んだのも、お前のせいだ。(道長、言葉を失う)
兼家:ハハハハハハハ・・・。道長にこのような熱き心があったとは知らなんだ。これなら我が一族の行く末は安泰じゃ。今日は良い日じゃ。ハハハハハハ・・・。
まひろの仇の弟だったと分かった道長には最悪の日を、良い日じゃと言って笑う父兼家。道長にも闘争心があると見て、安泰じゃと言ったのだろう。熱き心が発動するポイントは、親子で大きく違いそうだけれど。
道兼がネットでサイコパスと呼ばれていたが、サイコパスならこの父の方では。前述の例え、もし兼家が馬上にあって少女まひろと出くわしていたら?彼なら、片頬にあの笑みを浮かべつつ事も無げにちやはを惨殺したかもしれない。その前に、まひろをも平然と片付けたかも。ゾッとする。
兼家と道兼は同じ思考回路を持つかのように見えるが違うようだ。道兼は、ただ父に褒められたい一心なのだと思う。
そして道兼にとり、父母それぞれが目をかける弟は、どこまでいっても憎い存在。ただ、武官でもあり体格で上回る道長には、いつの時点からか力で叶わないと観念しているのだろうか。殴り返しては来なかった。
しかし、道兼は言葉で道長の心を抉った。「お前が俺をイラ立たせなかったら」「あの女が死んだのも、お前のせいだ」と。優しい普通の人たちは、こういった言葉に素直にやられる。道兼は典型的な「せいだ病」にかかっているDV気質のクズ男だとよくわかる。
まず「子どもじゃあるまいし、自分で自分の機嫌ぐらい取れ!」と、こういうクズ男には言いたい。転んだ娘の定子に、自分で起き上がるように導いた道隆の妻・高階貴子に指導してもらいたい。そんな弱い心で、宮廷を渡っていける訳がない。
そして、「じゃあ何?あんたは遠隔操作されて人を殺したとでも?頭が空っぽな操り人形なんだね!」と言いたい。「大奥」の黒木様だとはとても思えない。ああ、ムカムカする(程の素晴らしい演技をするよね、中の人)。
このクズ男の兄になんか負けるな、道長!しかし、道長の心はクズ男の言葉にハマって罪悪感いっぱい。自分はまひろの仇の弟、それも自分のせいだという重い十字架をドーンと背負ってしまった(たぶん)。まひろは道長のことは恨まないと言っていたけれど、恨まれて当然だ、と(きっとそう)。
公式サイトの相関図を見ると、まひろと道長の間には「特別な絆」があると示されているが・・・それは、身内が被害者と加害者の「仇関係」だったのか。しかも「そもそもは自分のせいだ」と思う自責感の強い者同士。この心理的な障壁は手ごわそうだ。貴族の格の差もあるし。
まあ、まだ数え年12歳と19歳だから。まひろが書くことになる「源氏物語」では紫の上も12歳で適齢期扱いだったけれど、NHK的には現代の視聴者向けにそんな恋人関係は描きたくないだろう。しばらくは焦らされるはず。でもずっと焦らされたくはないなあ。
ところで、どこかで見たが(多分X)、紫式部が後々イケオジ宣孝と結婚して儲ける賢子は実は道長との子で、カモフラージュのために宣孝が結婚した形にしてくれるのでは?という考察だったのだけど・・・なぜにカモフラージュする必要に迫られるのかはさて置いておいても、もう道長と結ばれない結末は悲しすぎるから、その路線に1票入れておきたい。
花山天皇、政争に敗れたから悪評をたてられた?
前回書きそびれた花山天皇。今回、彼が愛する忯子(井上咲楽。はんにゃ金田演じる斉信の妹・弘徽殿女御)は、何かセリフを言う前に早くも病んだ。
前回入内し、NHK的には限界プレイ(手首にリボンをぐ~るぐる)に挑んでいたとネットでも騒がれたが、ご寵愛が過ぎて・・・というか、要するに懐妊し、つわりに苦しんでいるようだ。
この忯子の腹の子を呪詛し奉ることを、安倍晴明が藤原兼家だけじゃなく、公卿一同に命じられていたシーンが怖かった。御簾の陰に並んでいた皆が皆、自分たちが仕える今上天皇の子を殺そうと言っているのだ。
段田安則の兼家は、以前は関白の娘・遵子が身籠らないように何とかしろと晴明に命じていた。娘が天皇の子を産むかどうか、それで一族の命運が分かれる時代だ。
そして権力闘争によって何かが歪み、おかしくなった人間が兼家なんだろう。「内裏の仕事は騙し合いじゃ。嘘も上手にならねばならぬぞ」と息子に教えていた。
道長:そういえば、先日四条の宮で公任や斉信らが帝のご在位は長かろうと話しておりました。
兼家:ほう。
道長:帝はお若く、お志が高く、すばらしいと。
兼家:お前もそう思うのか?
道長:分かりませぬ。
兼家:分らぬことを分からぬと言うところはお前の良いところでもあるが、何か、己の考えは無いのか?
道長:私は、帝がどなたであろうと変わらないと思っております。
兼家:ほほう・・・。
道長:大事なのは、帝をお支えする者が誰かということではないかと。
兼家:そのとおりじゃ。よう分かっておるではないか。フフ。我が一族は、帝をお支えする者たちの筆頭に立たねばならぬ。筆頭に立つためには東宮様に帝になっていただかねばならぬのだ。わしが生きておればわしが立ち、わしが死ねば道隆が立つ。道隆が死ねば道兼がお前か、道隆の子、小千代が立つ。その道のためにお前の命もある。そのことを覚えておけ。
このあたり、「鎌倉殿の13人」で聞いたような話だ。同じようなことを、若き北条義時も、道長も言われている。筆頭=てっぺんに立ちたいんだね。その争いがドロドロの素だ。
兼家は、道長とのやり取りで、花山天皇が若く、志高く、思いのほか長期政権になるのではとの若手連中の見方を知り、早速阻止に動いたようだ。関白、左大臣と談合し「未熟な帝と成り上がりの義懐ごときは、ねじ伏せればよろしい」と息巻き、珍しくも大臣同士意気投合した。
花山天皇は、贅沢を禁じ、銅銭を世に広め、正しい手続きを経ていない荘園を没収する荘園整理令など「新しい政治」と称してあからさまに関白と左右大臣らの力を抑える思い切った政策を取ろうとし、危なっかしい。ロバート秋山(黒いけど、思いの外ちゃんと演技しているよね)の実資も忠告していたが、若い天皇を、側近の義懐(「梅ちゃん先生」が懐かしい高橋光臣)らも守り切れなかったのだろう。
次回以降に描かれる退位の顛末が注目だが、まだ20歳にもなっていない真っ直ぐな若さ、純情さが哀れだ。あっけなく兼家の描いた罠にはまるのだろう。
花山天皇は、あまり評判が良くない人物だが、公卿らに真正面から戦いを挑み過ぎ敗れ、そのせいでこれでもかと悪評をたてられ、女好きなどの人物像も作られたような気がしてならない。
現代の政治にも通じる話か。自分たちの脅威になってくると見ると、お雇いのDappiを使って悪評を散々に煽り立て、精神的に追い詰めてお払い箱にする、とか?権力を握る人間のやることは変わらない。
前回、父兼家になるべく早く花山天皇を退位させる方策を問われて、天皇としてとても相応しくない悪い噂を流す、その準備は万端整っていると道隆は言っていた。(以前に卑怯な噂を流せと言われて怯んでいたけど、父に言われれば何でもやるようになるんだな・・・。)
それが、即位式で高御座に女官を引っ張り込んで事に及び・・・との噂だったのだろう。即位式では本郷奏多の花山天皇は、女を引っ張り込むどころか、「ほれ、ほれ」と扇を操る奇妙な足技を見せることも無く、大人しく座っている映像が出たものね。
次回、悲しんで心が弱っているところをやられてしまうのだね。哀れだ。
倫子様のたくらみ?
一つ一つの出来事が、当時は計算尽くで企まれ動いていたと見えてきてしまうと、あの猫が走り抜けたのも、もしかしたら・・・と思った。
冒頭の、まひろが倒れて不在の左大臣家のサロン。メンバーの茅子が「どうせなら、帝とか右大臣家の3人のご兄弟とかならよかったのにね」とサブングル加藤の侍従宰相のお通いがあった肇子について話す。
倫子は「右大臣家の3人のご兄弟はそんなに見目麗しいの?」と聞く。茅子は「はい。皆様お背が高くお美しゅうございました」と、にこやかに答えた。
ふうん、お美しいんだ・・・そう心にとめた倫子が行動を起こしたのではないか。
左大臣家で関白と右大臣が談合をする場に、倫子は猫を追って現れた。「小麻呂!」と呼ぶ倫子の声が響き渡り、一旦猫が逃げた方向に消えたが、戻って「失礼いたしました」と詫びた。
そこで父の左大臣が「ご無礼致しました。今のは我が娘、倫子にございます」と説明、右大臣の兼家は興味深そうに目を凝らして倫子を見ていた。
これで、見目麗しい3兄弟は射程に入った。関白の様子は不明だったが、関白の嫡男の公任は尚更美しい公達であるし、どちらに転んでも悪くはない。姫様、やる時はやる。
詮子の「裏の手」
道長の姉の詮子にも注目している。今回は、兄の道隆が父・兼家との仲たがいを収めようと詮子の下に来ていた。妹でも女御様で東宮の母だから「詮子様」だ。
「分かり切ったことを、誰に向かって言っているのですか?兄上は」と詮子が腐す。道隆は「分かっておられるなら是非、父上と和解を」と畳みかけるが、詮子は「嫌です」ときっぱり。
さらに「愛しき夫に毒を盛った父を、私は生涯許しませぬ」「父上には屈しませぬ。私には裏の手がありますゆえ」と宣言した。
この「裏の手」は何だろう?とワクワクする。前回、気に入りの道長を左大臣家に婿入りさせ、右大臣家の権力を道長に取って代わらせることを目指して詮子が動くのかと思ったが、婿入りの話は、また別口で兼家と倫子の思惑で動きそうな雲行きだ。
となると、裏の手?楽しみにしておく。
(敬称略)