黒猫の額:ペットロス日記

息子は18歳7か月で虹の橋を渡りました。大河ドラマが好き。

「ワリエワ戦争」勃発かと思った

ワリエワ選手とウクライナ情勢

 あと少しで北京五輪の女子フィギュアフリーが始まる。アイスダンスのディーン・トービル組の素晴らしい演技に魅了されて以来、冬季五輪ではフィギュアスケートは私の中では欠かせない。

 それが、こんな緊迫した状況になろうとは。

 出場する選手は、余計なプレッシャーを背負いながらオリンピックを迎えることになり、何と気の毒なのだろう。特に全世界的に期待を寄せられてしまったらしい坂本花織選手は。(参考:坂本花織にのしかかる「お門違い」の重圧 ワリエワ薬物問題で世界中から過剰な大絶賛(日刊ゲンダイDIGITAL) - Yahoo!ニュース

 ロシアオリンピック委員会(ROC)のカミラ・ワリエワ選手が、五輪大会前の昨年12月の検査において、ドーピング陽性判定が出ていたと報道されている。大会中の検査では陰性、けれど陽性判定(これがまた、微妙に遅れて結果が出てきたのも作為があったのかなかったのか)が五輪前のこんなに近接した時期に出ていたというのでは、いくら同居するおじいちゃんの薬を誤って摂取したと抗弁しても、心証的には真っ黒だ。

 特に、心臓病治療に使われる禁止薬物以外にも、禁止ではないが同様の働きが認められる物が検出されていたという。3つもですか。(ワリエワのドーピング新事実判明に海外メディアは疑念…「3種類の薬物“カクテル”はロシアの組織的関与を示しているのかも」の専門家意見も(Yahoo!ニュース オリジナル THE PAGE)

 ともかく、スポーツ仲裁裁判所の14日の裁定によって、ワリエワ選手は15日のショートプラグラムに引き続き、17日の今夜のフリープログラムにも出場する。(スポーツ仲裁裁判所、ワリエワ選手の北京五輪出場を認める(CNN.co.jp) - Yahoo!ニュース

 これに関する山のような報道の中で気になったのが、ウクライナ女子選手がドーピングで一発退場になった話だ。(ウクライナ女子スキー選手がドーピング陽性で「一発アウト」 ロシアとの〝違い〟が波紋!(東スポWeb) - Yahoo!ニュース

 北京五輪ドーピング検査を担当する国際検査機関(ITA)が16日、スキー距離女子ウクライナ代表ワレンチナ・カミンスカ(34)がドーピング検査で陽性判定が出て、暫定的に出場停止処分がくだされたと発表した。(略)

 カミンスカが〝一発アウト〟となったことに、ネット上では「ロシアはOKでウクライナはNGなんだ」「ロシアが許されてる以上、ウクライナも許されるのが、当然だろう。もう、収拾がつかなくなっている。絶対に、ロシアを許可してはいけなかったのに」などの声が続出。

 フィギュアスケート女子ロシア・オリンピック委員会(ROC)のカミラ・ワリエワはドーピング違反が発覚しながらその後も個人戦への出場が許可されており、対応の違いを疑問視する意見が相次いだ。(略)

 言うまでもなく、北京五輪の最中だというのに、ロシアとウクライナを巡る情勢は現在も緊迫したままだ。五輪の半年前、国連ではオリパラの大会期間中の休戦協定を結ぶと聞いたのだが。

 今もウクライナ国境にはロシア軍10万超が集結してプレッシャーを与え続けているとの報道があり、昨日16日には武力侵攻が開始されるかもしれず、ウクライナ大統領はその日を「団結の日」として国民に団結を呼び掛けていた。私でさえ固唾を飲んでいた。

 16日、軍事行動は回避されたようだが、ウクライナ側へのサイバー攻撃はあったらしい。

五輪が大好きなプーチン大統領

 実は、その前のワリエワ選手に対するCAS裁定が出た14日にも、裁定の結果次第ではロシア軍の侵攻は始まるのではないかと私はかなり心配だった。

 ソチ五輪での組織的ドーピングの結果、今回の北京五輪では「ロシアの選手」は「ROCの選手」として出ている。それにもかかわらず、開会式にプーチン大統領は開催国中国の招待という形で出席していたらしい。

 オリンピックが大好きなようだ。

 テレビで見たところでは、ワリエワ選手を含むROCの選手たちは、揃いのブルーのスーツを着て整列し、プーチン大統領に「ロシアのために戦う」旨を大会前に宣言していた。プーチン氏も喜々としてそれに応えていた。

 五輪での選手の活躍は国威発揚に役立つと、彼は未だに信じていそうだ。

 そして、彼の期待に選手がしっかり応えるように、五輪で活躍した選手だけでなくその指導者や周囲にまで恩恵が及ぶ仕組みがあるらしい。(村主章枝さん、ワリエワのドーピング背景にロシアの「貧富の格差」指摘…「ありとあらゆる手を使ってくる」(スポーツ報知) - Yahoo!ニュース

 これでは、選手は追い込まれて逃げようがない。

 選手個人の前に国。日本も、多少笑えない部分はまだあるようにも思うけれど、国のために幼いころから徹底的に選手が利用され、薬物まみれに育てられていくシステムは恐ろしい。

 以前、13歳の選手がファンとのやり取りで「勝つ秘訣はドーピング」と正直に答えてしまって後から謝罪したケースもあったようだし。

 何年前だったか、ロシアの潜水艦が事故を起こした時に、搭乗員の母とみられる人物が必死になって何かを訴えている(多分、子の安否について尋ねていたのだろう)現場で、いきなり注射されて意識を失った映像を見たことがある。

 鎮静剤か何かを注射されたのだろう。あまりの乱暴さに声を失った。

 医学的に彼女のために必要な注射だと言うなら、医療施設で検査してから注射するとか、他の取るべきステップがあったはず。しかし、彼女は一生懸命話をしている最中に、いきなり背後から闇討ちのように注射をされていた。私のような薬物アレルギーの人間からすると、注射で死ぬかもしれず、忘れられない衝撃的なシーンだった。

 (虫けら扱いか。そうやって個人の声は尊重されないんだ、ロシアでは。)そう思った。薬物への慎重さも欠落しているとしか言えないシーンだった。

プーチン氏が典型的なDV男に見える

 ロシアを見て思うのは、強権的な国は恐ろしいということ。プーチン大統領を喜ばせるために選手は五輪で勝とうとしているように見える。同様に、プーチン氏の過剰な不安を取り除くためにロシア国軍はウクライナ国境に詰めかけているようにも見える。

 旧ソ連から離れた国であるウクライナは、立派に独立した国家で、主権はもちろんウクライナにある。それなのに、プーチン大統領はウクライナにNATOに参加されたらロシアの危機だからと止めさせようと軍まで出す。

 キューバ危機と比べる向きもあるが、そこまでロシアが切迫した不安に直面していると言い募る状況だろうか。逆に過剰な不安から、ウクライナを脅迫しているとしか見えない。

 ウクライナがベラルーシのように親ロシア国になって、ロシアに従順になれば安心か。旧ソ連時代に回帰しないとダメなのか。

 その主張は、まるで離婚したにもかかわらず、未だに元妻(ウクライナ)に権限を行使して支配下に置きたいDV元夫のようだ。

 元妻が、どのグループに参加しようが元妻の勝手のはずで、元夫には何の権限も無いことは常識的にはわかるはず。しかし、DV気質のある人たちはそれを理解しない。元妻を対等な存在だと見なさず、いつまでも元妻の行動に対して自分は難癖を付けられる特権があると信じている。

 プーチン氏が、ウクライナにNATOには参加しないよう欧米諸国に要求することは無理筋ではないのか。自分の要求は特別で絶対だと信じているのか。

 そして、要求が実現するまでもっと力を行使して無理やりにでも実現させる手段を選ぼうとするとしたら、まさにDV気質。(何か問題が起きた場合、普通の人たちは、互いを尊重して話し合い、落としどころを探そうとするものなのに。)

 そういうジャイアンのような気分を振り回す、分からず屋を相手にしているのだとしたら。プーチン氏は特に、フィギュアとホッケーには注目しているらしいから、ワリエワ選手の処遇で神経を逆なでされれば、せっかくの大好きな五輪が台無し。ウクライナ国境で暴発することは想像に難くない。

 五輪も戦争も、「自分の気に入らない状況は受け入れられない」プーチン氏の顔色次第で国際社会が振り回され、物事が進行しているのかもしれない。

 2月14日のCAS裁定の日は、ウクライナ情勢は緊張の度を増して正に戦争の瀬戸際にあるタイミングに見えた。だからCASは、いわゆる「高度に政治的な判断」をワリエワ選手に関しては下し、「ワリエワ戦争」をひとまず回避する道を選んだのではないのだろうか。

 五輪大会が終わっても、ワリエワ問題に決着が付くのは時間がかかりそうだ。ウクライナ情勢を横目でにらみつつの今回の裁定は致し方なかったにしても、ロシアの子どもたちが「ひとりの大人」のご機嫌を取るために薬物まみれになる状況が変わるよう、きっちりした判断を関係機関には求めたい。

追記:女子フィギュアのフリープログラムで、ワリエワ選手はミスが相次ぎ暫定4位の結果に。上位3人は無事にメダルを獲得した。坂本選手、銅メダルおめでとう!