黒猫の額:ペットロス日記

息子は18歳7か月で虹の橋を渡りました。大河ドラマが好き。

【どうする家康】やっぱりファンタジーの香り

瀬名を襲う苦難、必要なのは可愛らしい瀬名

 NHK大河ドラマ「どうする家康」の第4回「清須でどうする!」。再放送を見ようとしていたのだが、見そびれたので今さらながら録画を見た。日曜日の本放送は外出している時間帯なので、ここのところ帰宅途中にNHK+をスマホの小さな画面で見て済ませるようになってしまった。

 やっぱり大きな画面で見ると違う。当然ながらスケールも、役者の細かい表情も。せっかく録画してあるのだし、大きな画面で見ようと思いながら、いつでも見られると思ってしまってずるずると土曜日になってしまった。

 さて、第4回のあらすじを公式サイトから引用しておこう。

松平元康(松本潤)は信長(岡田准一)が待つ尾張・清須城へ向かった。幼き頃に織田に捕らえられていた元康は、信長から再会のあいさつ代わりに相撲の相手を命ぜられる。くせ者・木下藤吉郎(ムロツヨシ)や信長の妹・市(北川景子)を紹介される中、信長から盟約を結ぶ代わりに、驚くべき条件を提示される。一方、駿府に残された元康の妻・瀬名(有村架純)は、今川氏真(溝端淳平)から元康と離縁して、側室になれと迫られる。(これまでのあらすじ | 大河ドラマ「どうする家康」 - NHK

 ・・・あれ?そうだったかな。公式にはこう(↑)書いてあったのだけれど、ドラマでは瀬名が氏真から求められていたのは側室になることではなかった。だから、今川本家筋の母・巴(真矢ミキ)が怒っていたのだ。

氏真:我が父の大恩を忘れ、妻も子も捨て、己ひとりが助かるがために仇敵に頭を下げて尻尾を振る。犬より劣るな、お前の夫。不忠者を出したるは一族の罪である。関口の縁者、ひとり残らず打ち首!と言わねばならぬところだが・・・瀬名、幼いころからよう知っておるお前じゃ、余が情けをかけてやろう(瀬名の顎をつかむ氏真)

 そして、氏真からの申し渡しについて妻・巴に説明する関口氏純(渡部篤郎)。

巴:瀬名を、氏真様の妻にしていただけるのですか?それでわれら一同お咎めが無いのなら、この上ない良いお話ではありませぬか。三河の不忠者などより氏真様の方がよほどご立派

氏純:いや・・・妻という訳ではない

と:そりゃ、殿にはご正室がおわします。側室でもありがたいことではありませぬか

う:側室でもない。つまりは妻という立場ではない御奉公じゃ

と:それは・・・夜伽役ということでございますか?遊び女扱いさせるということでございますか?私は今川本家につながる身ですよ!その私の娘を!?

瀬名:母上、瀬名は氏真様にご奉公いたしとうございます。

う:瀬名

せ:瀬名は、幼い頃より氏真様をお慕い申し上げておりました。どのような形であれ、彼の方のお傍にいらるるはこの上ない喜びでございます

と:瀬名

せ:竹千代と姫をよろしくお願い申し上げまする(亀姫の泣き声)

 このように、瀬名が求められていたのは「遊び女扱い」であって妻である「側室」ではなかった。「妾」となり、良家の娘とは思えない扱いを受けることになるのだろう。

 そして、この親子の会話を聞いている人たちがいたことに気づく。監視役の兵たちだ。だから瀬名は心にもないことを彼らにわざわざ聞こえるように喋っているのだ。家族を守ろうとする一心だろう、これまでのような今川御一門としての自由は無い。 

 この後、瀬名は氏真と褥を共にするのだが、その時に手に握っていた守り袋(初回登場の元康手彫りのウサギのぴょん吉入り)を見咎められ、「氏真様の武運長久をお祈りするための」と、またもや心にもないことを口走る。もう本心など言えない状況なのはわかるけど、口から出るのは嘘ばかり。「氏真様の武運長久」はあまりにも見え透いている。言われた氏真も頭にくるのではないか。下手な嘘はつかないほうが良い。

 しかし、こういう状況下のかわいそうな瀬名を描くのだから、やっぱり可愛らしい有村架純が瀬名として選ばれたのだろう。私の脳内の築山殿キャラは、ここまでは「長勝院の萩」のお領がベースだったのであり、それにぴったりなのは「おんな城主直虎」の菜々緒。古くは「徳川家康」で築山殿を演じた池上季実子だ。有村架純とはだいぶタイプが違うが、菜々緒や池上季実子なら氏真に対してただ黙って頭を下げてなどいない気がする。

 氏真によって瀬名は指を切られ、血文字でむりやり「たすけて せな」と書かされる。そしてそれが壊されたぴょん吉と共に元康の下に送られたのだった。氏真からの「今川に戻らねば関口家は皆殺し」との通告文も来た。元康は床を叩いて慟哭、信長に命じられたお市との祝言を明日に控えた土壇場で、断ろうとする。

 しかしそこで、察しの良いお市の方から「元康殿のようなか弱き男の妻となるのはやはり嫌じゃ」と言い出してくれた(何と都合の良い。好きになった方が負けってことか)。

 信長には「つまりお主は織田との盟約を取りやめ今川に戻りたいと、そう申すか」と睨まれ刃を向けられるものの、元康は「私は信長殿を我が兄と存じております(略)ただただ兄上と結びし約定をしっかりと果すまで。元康、今川領をことごとく切り取り今川を滅ぼしまする!そして我が妻と子をこの手で取り返しまする!ご異存おありでございましょうや」と宣言して乗り切った。

 この時、信長が向ける刀をつかんだ元康。日本刀なんか握ったりしたら指が落ちちゃうんじゃないの?と心配したのにそうではなかったが、よくよく大きな画面で見てみたら、ちゃんと元康の手からは血が流れている。血は刃を伝い、鍔にたまっていた。元康の本気が炸裂したシーンだった。

 元康と瀬名は、それぞれが信長と氏真という強者に顎クイされたり指を傷つけられたり。ふたりの苦難をシンクロさせて表現したようだ。顎クイされながら「未だ白兎か」と信長に揶揄されていた元康も、妻子を殺される恐怖に突き動かされての今川滅亡宣言なのはもちろんだが、お市に言われた「竹殿、申したはずです。この世は力だと。欲しいものは力で奪い取るのです」も元康には効いただろう。

 次回の瀬名の奪還作戦が楽しみだ。山田孝之と、大河「平清盛」主演の松山ケンイチも登場する。これで大河の主演経験者は何人目?岡田准一と松嶋菜々子に続いて3人目かな。

 次回では瀬名の父母は非業の死を遂げそうだが、渡部篤郎は「北条時宗」では、ここで死ぬはずだけど?という時点で死なず、かなり生き延びた北条時輔を演じたこともある。今回も、実は生き延びてました、となってほしいものだが無理そうだなぁ。

地元民の困る山が出現したとか

 今回、気になったポイントはお市の初恋の相手が竹千代だったこと。ちょっとね・・・白けちゃったかな。それ無くても全然いいでしょう?女性キャラが出てくると無理やりの恋愛エピ。会ってたとしたら、竹千代は6~8歳、お市は1~3歳なんだそうですよ!それに、あの白兎の竹千代が、なぜにいきなりたくましく変身していたか、ちょっと理解に苦しんだ。「お市様のことは、この竹千代がお助けします!必ず助けます!」なんて・・・3歳の幼女に言うのか8歳が。松潤ファンが喜ぶのか?

 それから清須を訪れた元康は、信長の妹・市に清須を案内された。馬に乗って訪れたのは、たぶん清須の城下町や小牧山まで見渡せる高さのある場所だった。あんな所あるの?と思ったら・・・。

 まあ、フィクションなんでね、と思っていても、地元民からしたら当然の困惑。清須に観光客として訪れたにすぎない自分でも「あれ?」と訝しく思ったぐらいだし。

 それから、あの清須のお城はどう見ても北京にある故宮のイメージが強すぎる。何度も故宮の中を歩いたことがあってまだ覚えているので、あのドラマのお城では中国風味が強すぎるように感じた。後で千田嘉博著『信長の城』で清須城を改めてチェックしてみたい。

 そういう各国イメージを借りて、国の力関係を理解させようとしているのかな?信長の国は、中国の強大なイメージ。そして信玄の国は、ローマ帝国のイメージ。信玄の息子・勝頼は眞栄田郷敦が演じると聞いて、またローマ風の濃い顔を集めているなと思った。やっぱりローマなんだな。

 何か、第3回の映像を見た時点では百姓の描写など、細かい史実に沿った事柄を映像で見せていく代わりにストーリーは松潤ファン仕様のわかりやすさで行くのかと考えた。でも、今回の清須城の映像を見ていると、大河ドラマというよりはKOEIの信長ゲームのような気になってくる。

 申し訳ないのだけれど、ちょっと邪魔なんだけれどもね、そういった家臣団の色分けとか、各国のイメージ付けとか・・・ノイズに思えてしまう。このままファンタジー映像で行くんでしょうかね?

今回のお気に入りシーン、ムロツヨシの熱演

 ムロツヨシ演じる木下藤吉郎が、桶狭間の戦いの大高城を巡るからくりを説明したあたりはとても面白く、見応えがあった。そっちの方で充実してくださるとありがたいなと思った。

 今回のお気に入り部分を記録しておこう。ムロツヨシ熱演だ。

元康:信長殿、私は臣下の礼を取りに来たのではございませぬ。織田の軍門に下った訳でもありませぬ。むしろ、先の戦では勝っておると存じておりまする

信長:ほう

も:織田勢が守る丸根砦を落とし、大高城を守り通しました。信長殿は運よく今川本軍への奇襲が成功し桶狭間の勝利者とされておりますが、あの大高城を巡る戦で勝利したのはこの私と存じまする

の:なるほど・・・物の見方とは色々じゃ

も:見方も何も、事実はひとつ

藤吉郎:元康殿、こういう見方はいかがきゃ?大高城を、殿は端から力攻めなさらんかった。周りに砦を築き、こう命じられたんだわ。大高をじわじわじわじわじわじわじわじわと苦しめよ、だが決して落とすな

も:落とすな?

と:大高が苦しめば今川義元は助けに出てこなならんでしょう。だが落ちてまえば引っ込んでまうかもしれん。大高は今川義元をおびき出すための餌だて。だが義元はなかなか腰を上げん。お陰で大高は落ちる寸前。そこに我らが元康殿が兵糧入れにやって来てくれた!これじゃ。殿は儂ら兵に命じられたわ。そこそこにあしらって・・・通したれ、と。お陰で大高は蘇り、気を良くした義元はのこのこと罠にはまりに来てくれたんだわ。元康殿、そなたのお陰で殿はまんまと義元の首を・・・

も:嘘じゃ、ありえぬ。全てが罠だったなど、嘘じゃ!そんな芸当ができるのは戦神ぐらいのものじゃ!

の:神か・・・

と:まあ、物の見方という話でごぜーます。フフフフフ

も:(涙目)

 三河衆の心の拠り所だった大高城での勝利が罠だったと言われたら、元康はかなりショックだったろう。家臣たちも元康からこれを聞かされたら肩を落とすだろうな。信長の戦神張りの恐ろしさ、偉大さを見せつけられて、心理的にはもう今川を見限り従うしかないと(形ばかりは対等同盟でも)心底観念したはずだ。また、藤吉郎が噛んで含めるように元康に説明できるほど、きっちり信長の策を理解している頭の良さを持つことも知らしめたシーンだった。

 この今川義元をおびき出したとの策は、時代考証の小和田哲男先生も「新鮮」と感嘆されていて、脚本家のアイデアとのこと。やりますねー。

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 これ、さらに実は元康と信長が示し合わせての策で、今川義元をおびき出して討ち取っていたなんてことは・・・なんて考えた。もちろんドラマの松潤元康はそんなことはしないけど、史実の元康さんがどうだったかな、ちょっと面白いけどな、と考えた。あくどいことは神君は関わってないことになって伝わってそうだし。

 しかし、三英傑の揃い踏み。信長と後の家康の盟約に、後の秀吉が立ち会っていたという図は面白かった。若さゆえか、元康の未熟さが目立ってしまっているけれど、まだまだこれから重い荷を負うて歩む道は長い。ドラマの方もこれからね。

(失礼ながら敬称略)