まず、この事件についての時事通信の報道を引用する。
仮設住宅で同居女性暴行=50歳男を逮捕—宮城県警
時事通信8月19日(金)20時38分
・・・同じ事件について、もう一つ読売新聞の記事を引用する。
内縁の妻、仮設住宅で暴行され死亡…男逮捕
読売新聞8月19日(金)20時51分
内縁の妻は同日、死亡し、同署は逮捕監禁致死容疑を視野に調べている。
発表によると、浅倉容疑者は同日午前0時頃、仮設住宅で、同居する無職小山田真由美さん(46)の顔を殴るなどしたうえ、タオルで両手足首を縛ったり、口をふさいだりしてけがを負わせた疑い。
同日午前7時頃、浅倉容疑者が「起きたら妻が動かなくなっていた」と119番して発覚。「妻が酒を飲み、口論になって暴れた。騒がれると近所迷惑になると思い、縛った」と供述しているという。
・・・読み比べて、みなさんはどうお感じになっただろうか。後者の読売の記事は、殺されてしまって反論できない被害者・小山田さんの名誉を守るということまでは、意識が及ばなかったのだろうと思う。この時点で容疑者の一方的な説明だけを報道して、何か得られるものがあるのだろうか?
もちろん、「近所迷惑になるからって殺していいわけあるまい」とか、「自分の身を守るために相手を悪く言うなんて。何をふざけたことを言っているんだ」と捉える人も読者にはいると思う(いてほしい)。しかし、この本当かどうかも分からない言い訳を鵜呑みにして「あ~、奥さんストレスで酒飲んで暴れちゃったのかあ。縛るのも仕方ないね」的にとらえる人もいるのではないだろうか。
死人に口なし。真実は、他の所にあるのではないか???問題が起きたからといって、その解決のために暴力を振るっていいと考えているメンタリティーこそがおかしいのだ、とDVの本には書いてあるが、この事件からはDVの匂いがぷんぷん漂っている。
まともな人は、パートナーがひどく酔って暴れたからといって両手両足を縛って口までふさぐことはしないのではないか?そんなにひどく酔っているなら、かえって縛ったりしたら危険ではないのか。たとえ一時的に拘束したとしても、すみやかに医療機関に相談し、点滴でも打ってもらった方が早く酔いから回復するのではないか。ましてや、縛ったままそんなに酔った人を放置するなんて、死んでもかまわないと思っていたとしか思えない。また、アルコール依存症だったとしたら、家族だけで抱え込まず、医療や福祉と連携する道も考えてもらいたい。
いずれにしても、手や足や口までも縛って放置するなどという一番危うい道は、まともな人なら選べないだろう。
もしも、DVなどでお悩みの方には、全国どこからでも24時間無料でかけられる相談電話がある。「女性と子どものための相談電話 パープルホットライン」といい、番号は 0120-941-826。また、「震災後の暴力・DVメール相談」は 0874helpsa*gmail.com (*を@に置き換える)で受け付けている。信頼できる相談先なので、殺される前に、ぜひ相談してほしい。せっかく震災を生き延びたのだから。