黒猫の額:ペットロス日記

息子は18歳7か月で虹の橋を渡りました。大河ドラマが好き。

【どうする家康】#34 自分のお気持ち大事な家康、数正・忠次・正信・於愛の連係プレーでようやく上洛へ

瀬名ロスがぶり返す押し花の秘密

 NHK大河ドラマ「どうする家康」第34回「豊臣の花嫁」が2週間前の9/3に放送されていた。体調不良時を除き、一応、毎週感想をダラダラと書いてきているのに、今回は何の理由もなく通過するところだった。危ない危ない。

 34回も決して見どころが無かったわけではなく楽しんで見たのだが、このところのジャニーズ問題の方に気を取られていたら・・・今作は、ガッツリとジャニーズ大河だ。9/15発表の新キャストにもジャニーズタレントがいる。とはいえ、主役を挿げ替える訳にも行かないから、今年はこのままだろう。

 さて、早速あらすじを公式サイトから引用させていただく。

打倒・秀吉(ムロツヨシ)を誓ったはずの数正(松重豊)が豊臣方に出奔、徳川家中に衝撃が走る。敵に手の内を知られたも同然となり、家康(松本潤)は追い詰められるが、そこに未曽有の大地震が発生し、両軍戦どころではなくなる。何とか家康を上洛させたい秀吉は、妹の旭(山田真歩)を家康に嫁がせ、さらに老いた母まで人質に差し出す。秀吉に屈服するか、全面対決するかの二択を迫られた家康は……。(これまでのあらすじ | 大河ドラマ「どうする家康」 - NHK

 前のブログで、出奔した石川数正が残していった物を「残されていたのは木彫りの仏、たぶん秀吉に押し付けられたという金の入った箱、『関白殿下是天下人也』という書き付け」とテキトーに書いていたのが、今回の放送でバレてしまった。

 録画を見直してみたら、「木彫りの仏」と「書き付け」は合っていたが、「たぶん秀吉に押し付けられたという金の入った箱」は、寧々が「奥方に」と言って数正に差し出した高価な櫛入りの箱だった。

 そして!築山のお花畑の花であろう押し花が入った箱が、仏様と一緒に置いてあったのだった。それが、今回のキーアイテムになった。

 押し花の上には、「正信念仏偈」と題された紙が入っており、さも念仏入れの箱に押し花を入れてあっただけであるかのように一見、見えた。しかし、実は大切なのは花の方だった。築山にいた瀬名の花を、念仏で供養している箱なんだね。

 於愛の方は「もしかしたら、今は無きあの場所を数正殿はここに閉じ込めたのではありませんか。いつも築山に手を合わせておられたのではありませんか」と言っていた。

 妻の鍋も知っていて(というか、不器用だという数正ではなく、鍋が押し花を作ったのだろう)、だから瀬名への供養にと、寧々からの高価な櫛もお供えとして置いていったのだろう。

 今回の冒頭、なでしこと見える花を生けつつ鍋が物思いにふけっていたのは、岡崎の屋敷に残してきた押し花を思ってのことだったのだね。オープニングのミニアニメも花々だったし(残念ながら名前が分からない💦)。

 瀬名ロスがぶり返す思いだ😢😢徳川家中の妻女は、実はほとんどが築山の花の押し花を似たような形でこっそり供養しているのかも。「誰も世話する人がいなくなるから持って行って」と生前の瀬名は来訪者に勧めていたしね。花を貰った人が、持って帰って捨てられる訳がない➡押し花にしよう、ということになるから。

「チームA」があの手この手で上洛への道筋をつけた

 ドラマでは、家康に上洛を決断させようと働きかけていた「チームA」が、酒井忠次、本多正信、於愛の方。反対に、殿と足並み揃えて「秀吉には跪けない」と意地を張っていた「チームB」が、本多忠勝、榊原康政、井伊直政だった。

 ざっくりと、チームAは親・石川数正というか現実派だ。この3人が、評定ではまるで打ち合わせでもしたかのように絶妙に合いの手を入れ合い、殿らチームBを追い込んだ。

忠次:(「何年でも戦い続けて領国を守り抜く」と言う忠勝らに)それが本心か、平八郎、直政。本当に戦えると思うか。どんな勝ち筋があるというんじゃ!殿、殿も本当は分かっておられるはず、我らは負けたのだと。それを認めることがお出来にならんのは、お心を囚われているからでございましょう。

正信:囚われているとは、何に?

忠次:今は亡き、御方様と信康様。そうでござろう。

家康:悪いか。もう誰にも何も奪わせぬ、わしが、わしが戦無き世を作る、ふたりにそう誓ったんじゃ。(略)評定のさ中ぞ(於愛が何か抱えて入ってくる)。

於愛:私には難しいことは分かりません。なれど、御方様が目指した世は、殿が成さなければならぬものでございますか?他の人が戦無き世を作るなら、それでも良いのでは?

忠次:数正には、それが見えておったのかもしれんな。自分が出奔すれば、戦はもう、したくてもできん。それが殿と皆を、ひいては徳川を守ることだと。

正信:だから誰も巻き込まずに己ひとりで間者となった。罪をすべて一人で背負った。殿のご迷惑にならぬように。

於愛の方:私、ずっと考えておりました。なぜ数正殿が仏様を置いていかれたのか。(お経の入った木箱を開き、底に仕込んである押し花を出して見せる)私にもわかりません。でも、もしかしたら今は無きあの場所を数正殿はここに閉じ込めたのではありませんか。いつも築山に手を合わせておられたのではありませんか。

井伊直政:良い香りだ。

鳥居元忠:懐かしい、築山の香りだ(泣く)。

本多正信:なんとまあ、不器用な御方じゃな。

酒井忠次:それが石川数正よ。(座を正して)殿。お心を縛り付けていた鎖、そろそろ解いてもよろしいのでは。これ以上、己を苦しめなさるな!

 この後、家康は涙をボロボロ流して天下を取ることを諦めても良いか?秀吉に跪いても良いか?とチームBに聞いた。そして、数正の裏切りのせいで戦えなくなった、数正のせいじゃー、殿は悪くないー・・・と皆が泣き叫んで徳川家中のガス抜きも完了、話が上洛&秀吉臣従でまとまった。ヤレヤレ。

頼りになる副将・酒井忠次、ずっといてほしい

 このドラマの酒井忠次(A-1)は、殿の意向に反するゆえに誰も切り出せない話を、きっちり的を射た上に殿の心情を害さないように提示して説得する、頼りになる家老であり続けている。

 演じているのが大森南朋だし「カッコいいな~、カッコいいよ~」と隣で見ている家族がいつもうるさい。でも確かにずっといてほしい。

 忠次は「数正には数正なりの何か深い考えがあってのことじゃろ」と言い、出奔前に何の相談が無くても、数正への信頼は揺るぎない。一方、家康は「決してお忘れあるな。私はどこまでも殿と一緒でござる」と去り際の数正にしっかり言われたにも拘らず、裏切られた~なんでじゃ~数正~と涙目で悪夢を見てしまう。

 いつまでもシャッキリしない殿だよなあ・・・ご機嫌を取って導く副将忠次は大変だ。でも、義理の叔父さんだから頑張るしかないもんね。

 家康は、未だに家臣を信頼できないご様子。その点はドラマ当初から成長が見られないじゃないか~と見ている方もガッカリだ。なぜ数正を信頼できない?

 こんな殿だから、副将である忠次に共感してしまうのだろうなあ。今回も、旭姫を家康正室の名目で人質に送ってくるという話に「秀吉としてはこの上ない歩み寄り」ときちんと分析していたし、いよいよ後が無くなった評定で、腹を括って殿を説得にかかった。

 家康が幼少期に人質に取られていた時から徳川はずっと、彼が副将として家中の舵取りをしてきたのだろう。いなかったら徳川はどうなったか。こんなに優秀で、よく下剋上を考えなかったよなあ。

数正の意図を早くからつかんでいただろう正信

 忠次と共に、ちょいちょい数正の考えに沿った言葉を挟んできていたのが本多正信(A-2)だ。数正の出奔の意図は、早くから分かっていた様子だ。それだけ感情に左右されない怜悧な頭を持っているから、見ていてホッとする。脚本家が一番好きなキャラは彼なんじゃないか?

正信:難儀なのは今後。あの御人が敵方に付いたということは、我が方の子細、裏の裏まで秀吉に渡ったと見るべきでござる。今度こそ迷うことなく攻めて参りましょう。これでも尚、戦えますかのー。奴が先方かもしれませんぞ。

 そして陣立ての刷新を家康に提言した。数正出奔に対して怒ったりショックを受けたり涙したりする前に、現時点でのToDoが良く分かっている。また、数正が秀吉によって「飼い殺し」になっている実情をちゃんと調べていた。それを伝える際も、言い回しが殿の心証を害しないよう、プラス自分の同情心を隠して絶妙だ。

正信:殿、老婆心ながらそれとなく探らせておりまして、大坂まわりを。例の裏切り者でござる。秀吉の下でいかなる悪だくみを図っておるかと思いましてな。

 その結果を「放っておけばよいのではないのか」との声もある中、「せっかくじゃ、申してみよ。秀吉の下で何をしておる」と家康や皆の耳に入れようとするA-1忠次。連係プレーはバッチリだ。そして、数正は単に飼い殺しになっていると皆が知る。

 正信は、あくまで仕事をサクサクするポーズを取っているが、そこに「殿もバカだな~、考えなくたって数正の意図は分かりそうなものを」という気分が見え隠れする。このまま家康が上洛しないで戦うと最終的に決めたら、呆れて秀吉方に寝返ったかも。

 ところで、正信は食べ物があれば必ず手を出して食べるし(大きな味噌田楽を食べながら喋るのは大変そうだったけど美味しそうだった)、秀吉からの金にも手を出して数正に叩かれていたし、殿の部屋の本も懐に入れてしまう。とにかく正信は手癖が悪い。

 その点で、何かあればすぐにポケットに入れ、後の戦いで面白く活用して見せる「マスターキートン」の主人公のエージェントを思い出した。正信もキートンも、気分の浮き沈みが少なく安定している。共に、冷静に物事を考えられる性質なんだろう。

切り札はやっぱり瀬名(於愛)

 忠次と正信のふたりは、家康の外堀をどんどん埋める。しかし、自分のお気持ちを何より大切にする今作の家康は、頭の理解より心の納得が何より大事だ。

 そこに、瀬名関連の品を引っ提げて登場、殿の心のど真ん中を撃ち抜いたのがチームAの切り札、於愛の方だった。出奔した数正が、木彫りの仏と一緒に、押し花入りの箱(=つまり瀬名)にも祈りを捧げていた・・・というのが今回の家康ら家臣団の涙腺崩壊ポイントになったのは前述の通りだ。

 「数正のせいじゃ~」と家康含む家臣団が涙にむせびながら叫ぶ場面、正信を除く、御方様を慕う男どもは評定の場で皆泣いているのに、於愛は泣かずにニッコリ。いつまでも子どもの殿に、ヤレヤレか?彼女が今回、家康の心を動かしたMVPだった。

 それにしても於愛。亡き正室・瀬名への愛情にどっぷりのままの家康に笑顔で仕え、御方様が遺した夢の実現に向けて心を砕く。そして継室の旭が来ても「お仕えしていて楽しゅうございます」と屈託なく言ってのける度量の広さ、評定にもズカズカ入り込む度胸、なかなかの人物だ。

 於愛には、人を思いやれる真っ直ぐな優しさもある。秀吉が妹と母をも差し出すのに戦をするのかと家康に問い、夫と無理やり離縁して浜松に来た旭を慮って家康に食って掛かる。旭の元夫が行方知れずであることも家康に伝えた。ただ旭や仲が不憫だからだと言う。

 演じる広瀬アリスは、ちょっとテンポが早すぎだーと感じる場面が前にはあったが、もう慣れた。於愛の人間性は出来過ぎだが、中の人そのままかもしれないとも思える爽やかさ。そんな訳ないか。

 大河ドラマでは、竹下景子が演じた於愛を憶えている。だが、今作ほど家康にガンガン物を言う於愛は面白い。今作の家康がフニャフニャ煮え切らないから丁度いいのかな。

 ドラマの最後で、瀬名を象徴する木彫りの兎を箱にしまった後、家康は「関白を操りこの世を浄土にする。手伝ってくれ」と於愛に告げる。「はい」と答えた彼女は輝く笑顔だったが、旭と共に退場が近く残念だ。だが、そこは史実だから変えられない。だから今回は於愛に花を持たせたか。

 家康が長生きだからか、他のキャラが悉く短命に思えてしまう。四天王も、誰も大坂の陣の時には生き延びていないと思うと寂しい。イカサマ師の正信はいてくれるが。

 ということで、そろそろ切れ者の阿茶の局が出てきてもいいのに。彼女も長生き。それも楽しみではある。

思い出す泉ピン子に清水ミチコ

 今作の旭姫はワンポイントで終わってしまいそうだが、演じる山田真歩は良かった。「えー、中の人はあの『花子とアン』に出てたクールな人でしょ。信じられなーい」と思った。役者さんは凄い。隣で家族も「うまいよね、泣けるよね」と絶賛していた。

 自分が家康を上洛させる役目を果たせず、老いた母・大政所も浜松にやってくると知ってショックを受けた旭。一瞬言い淀んでもすぐに於大らにおどけてみせたが、ひとりになったら頭を床にゴンとぶつけて(あれ本当に痛そう)オイオイ泣き、家康が評定から戻った時にも、大泣きの後の涙がまだ目の端に光っていた。

家康:もう良い、もうおどけなくて良い。辛い気持ちを押し隠し、両家の間を取り持とうと懸命に明るく振る舞ってくれたのに、老いた母君まで来させることになり誠に申し訳ない。この通りじゃ(頭を下げる)。わしは上洛する。そなたのお陰で、我が家中が少しだけ明るくなった。礼を言うぞ。そなたはわしの大事な妻じゃ。(旭、また頭を床にゴンとぶつけ、泣く)

 しかし、低い声でしゃべる、こわーい兄・秀吉に、問答無用で夫と離縁させられ見知らぬ土地に人質同然で送り込まれるなんて、病になるに決まっている。実際の彼女、44歳で嫁いで47歳で没しているようだ。なんてことだ。ご正室様でございますと祀り上げられ、命を縮めたんだな。

 ただ、最新の説では彼女は本能寺の変の頃には既に前夫とは離縁していたとか。「問答無用で夫と離縁させられ」の泣きポイント1つは、そうじゃなかったことになる。

 この役は、つい最近もBSで再放送されていた「おんな太閤記」(1981年)で見たばかりだ。泉ピン子の朝日姫は、よくしゃべる義理の妹として主人公の寧々(佐久間良子)の生活に早くから関り、夫の副田甚兵衛(?だったかな)を演じるせんだみつおと仲の良い面白夫婦の体だったが、家康に嫁ぐ段になると一転、涙を大いに誘った。

 本放送で見た42年前も、泉ピン子の朝日がかわいそうで泣いた覚えがあるのだが、最近の再放送でも「ピン子ってものすごく良い女優さんじゃないの!」と涙が出た。

 フランキー堺の家康が驚くぐらいの善人設定で、ピン子の朝日も大事にされたのだったが、朝日との離縁を言い渡されて行方不明になっていたせんだみつおが芸人一座に入っていて、浜松城下にその一座がやってきた時に「元気のない御方様(ピン子)」に城で芸を見せることになり再会。このくだりが本当に泣けた。

 そういえばこの時、篠ひろ子演じる阿茶の局が、不自然に意地悪で意気軒昂だった。いじめられる朝日!かわいそう!との演出だったのだろうけど。

 という訳で、私の中で朝日姫と言えば=ピン子の位置は刷り込まれて揺るぎないが、「真田丸」(2016年)の清水ミチコはどうしようもないくらいおかしくて、忘れられない。もう反則でしょう。ほぼ無言の仏頂面で、今書きながらも笑ってしまう。大政所と再会した時の「おっかあ」と抱きついて泣くぐらいしか、表情の変化を覚えていない。

 あと、美人すぎるんじゃ・・・と思った朝日は「秀吉」(1996年)の細川直美。イメージピッタリなのにあまり覚えていないのは「功名が辻」(2006年)の松本明子だ。

 短い出演でも今作の山田真歩は印象的。とても良かった。次回は大政所(高畑淳子)が登場、全部持って行きそうだ。

 秀吉一家は皆天パ。それはママがそうだからなんだね~と分かるビジュアルを予告で見たが、面白さばかりじゃなく、ちゃんと母娘の心細さ、哀れさも表現してほしいところ。そうじゃないと、高畑淳子と山田真歩の無駄遣いになりそう。はてさて。

(敬称略)