黒猫の額:ペットロス日記

息子は18歳7か月で虹の橋を渡りました。大河ドラマが好き。

【どうする家康】#38 傾城の女狐・茶々は意志を秘めて悪女全振り、家康の防波堤は阿茶局

なんかちょっとマンガチック

 NHK大河ドラマ「どうする家康」第38回「唐入り」が先週10/8に放送された。あと10回かと思うと感慨深い。残り10回で、女狐お茶々を打ち破って天下泰平の世を築けるのかタヌキ家康!狐と狸の化かし合い!みたいな流れになってきた。

 何とも善悪がはっきりし過ぎ、茶々が全部悪を被る方向(でも麗しい悲劇のヒロインなのよ)なのがどうもマンガチックだ。ジャニーズ崩壊といえど、松潤を悪者には「絶対」しないんだろうね。既定路線、当たり前か。そう考えると、岡田准一は爽やかとは縁遠い、思い切った信長を演じたものだ。

 公式サイトからあらすじを引用する。

天下統一を果たした秀吉(ムロツヨシ)は、次の狙いを国外に求めた。江戸開発に勤しんでいた家康(松本潤)をはじめ、諸大名を肥前名古屋城に集め、唐入りを命じる。朝鮮に渡った加藤清正たちから連戦連勝という知らせが届き、秀吉はご満悦だが、家康は苦戦を強いられているという裏情報をつかむ。家康は石田三成(中村七之助)と共に渡海しようとする秀吉を必死に止めようとする。そんな時、家康の前に茶々(北川景子)が現れる。(これまでのあらすじ | 大河ドラマ「どうする家康」 - NHK

 今作の茶々は、全身全霊を懸けて目的を果たそうとしている。死に際の母と約束した「母上の無念は茶々が晴らします。茶々が天下を取ります」(第30回)との、その言葉だ。

 ロックオンした秀吉は既に籠絡済み。このドラマでは南殿も出てこないし鶴松は秀吉の初子の設定なので、茶々の魔法もより強力だ。そして今回、次のターゲットである家康の心を奪っておこうと、秀吉が大政所危篤で肥前名護屋を離れている間に、茶々は家康の陣所に美々しく出現した。秀吉に困ったら頼れと言われたのは前田利家だったのに、わざわざ策略を胸に出向いてきた。

 天下の美女・北川景子が本気で演じる茶々の涙顔は何と美しいことか。あんなに間近にあの美しい顔があって、さらに両手でしっかり手を握られ涙ながらに懇願されたら、迫力に負けて内容はともかく誰でも何でもOKしちゃいそうだ。

茶々:やにわに押しかけて申し訳ございませぬ。何か困ったことがあらば家康殿にご相談申し上げよと殿下が。・・・何か?

家康:いえ。

茶々:母に似ている・・・よく言われます。

家康:(座敷に招じ入れて)お困りな事とは?

茶々:ずっと家康殿とお話がしたかったのです。我が母の事。母からよう聞かされておりました。あなた様は母がお慕い申し上げた御方だったと。

家康:いや・・・そのようなことは。

茶々:隠さなくてもようございます。北ノ庄城が落城する中、母は最後まで家康殿の助けを待っておりました。なぜ、来て下さらなかったのですか?

家康:(頭を下げて)済まなかったと思っております。

茶々:時折、無性につらくなります。父と母を死なせた御方の妻であることが。

家康:殿下を恨んでおいでで?

茶々:わかりませぬ。手を差し伸べていただいて感謝もしております。でも、はしゃいでいなければどうかしてしまいそうな時も。(すすり泣く。立ち上がり、家康のそばに来る)茶々は、ずっと思っておりました。あなた様は私の父であったかもしれぬ御方なのだと。真の父は、あなた様なのかもと。

家康:滅相も無い。

茶々:父上だと思って・・・お慕いしてもようございますか?茶々は(両手で家康の手を取り、胸元に引き寄せる)あなた様に守っていただきとうございます。

家康:もちろん・・・お守りいたします。私にできる事あらば何なりと。

阿茶:殿、そろそろ。

 母・お市の方は気高い敗軍の将として振る舞ったのに、茶々、こんなにも母について嘘をつきまくって、お市に恨まれるぞ。

 だけれど、軽々しい思い付きではなく、自分で覚悟を決めて北ノ庄落城当時から実行している復讐の一環なんだろう。ちゃんと母の思い出話で「実は母が慕っていたのはあなた」と家康をキュンとさせ舞い上がらせておいてから、「父として慕っていいか」と、NOを言いにくい攻め方をしている。

 この時に利用した「家康がわれらの父だったかもしれない」ロジックは、お市が生前に次女のお初にぶつけられていた。明確に否定をするお市の話を全然聞かずに暴走するお初の妄想が不自然で、将来のトラブルメーカーになるのを案じてその時の回のブログにも書いたのだった。そのお初の言ったロジックを今になって利用してきたのは、その場では妹の話を否定したお茶々の方だった。怖ーい。

初:母上は、徳川殿に輿入れするかもしれなかったというのは誠でございますか?

市:えっ?誰がそのような・・・。

江:そうなのですか?

市:嘘じゃ。幼い時分に顔見知りであっただけ。

初:もしかしたら、私たちの父上は徳川殿だったかもしれないのですね

茶々:つまらぬことを申すな。我らの父は浅井長政じゃ。

(第30回「新たなる覇者」より)

toyamona.hatenablog.com

 家康はあっさり「お守りいたします」との言質を取られてしまった。その時、茶々はほくそ笑んでいた。この言葉だけでも将来どんな災いが降りかかるか・・・阿茶が「殿、そろそろ」と場に切り込んできてくれなかったら、いったいどれだけの約束を家康はさせられていたことか。

 お茶々との戦いに登場した、とても頭の切れる生徒会書記風の阿茶も良かったが、このドラマの北川景子のあざといお茶々がとても良い。申し訳ないけど「西郷どん」の篤姫は、きれいどころなら誰でもできそうな出来だった。今回は一味違う。

 「真田丸」のメンヘラで食べづわりの淀殿を演じた竹内結子も、個人的にとても気に入っているが、竹内お茶々がかなり辛そうで気の毒な人生を歩んでいたのに対して、北川お茶々は復讐への戦闘意欲満々なのが清々しいほど。3人姉妹の状況と、どう憎い秀吉と家康に対峙するかの筋立てを全て企み、強い意志を以て遂行してきたように思える。

 ドラマとしては悪女の立ち位置でも、北川景子は生き生きと演じている。代表作になりそうだ。

このための古田新太だったのか

 ところで家康は、阿茶のしっかりとした教育のお陰か、秀吉に茶々から離れるように助言した。茶々としては思惑外れの行動か。

家康:改めて大政所様、お悔やみ申し上げます。

秀吉:うーん。わしは阿呆になった、皆そう思っとるらしい。狐に取りつかれとる。このわしが、小娘相手に思慮を失うと思うか?

家康:恐れながら、茶々様は遠ざけられるべきと存じまする。あの御方はどこか計り知れぬところがございます。人の心にいつの間にか入り込むような。

秀吉:わかっとる!わしゃ、み~んな全て分かっとる。のう?あれで政を危うくはせん。(真顔になって)茶々は離さんぞ。

家康:殿下のお心を惑わす御方。

秀吉:(膳をぶちまけて家康に詰め寄り)茶々を愚弄するのか。図に乗るなよ・・・わしは太閤じゃ。その気になれば徳川くらい潰せるぞ。

家康:(睨み合ったまま)かつての底知れぬ怖さがあった秀吉ならば、そんなことは口にすまい。(秀吉の腕をつかんで)目を覚ませ。(秀吉の腕を引っ張り、つかみかかられた手を外させて)惨めぞ、猿!(払って秀吉を畳の上に転がす)

 おおお!ようやくか・・・ようやく神君家康公はここまでのご成長。あの弱虫泣き虫鼻水垂れの殿が。齢50歳(数えで51歳)を超え、とうとう戦国の覇者・太閤秀吉にこんな口が叩けるようになった。かえって家康としては強く出すぎてやしないかと冷や冷やするぐらいだ。

 ここで、タイミングを計ったような闖入者が。まさかの元将軍・足利義昭(出家して昌山)だったのが面白かった。以前に出てきた義昭だけではかなり物足りなくて、申し訳ないが「古田新太の無駄遣い」と前に書いたかもしれない。だが今回「そうかーこのための古田新太だったんだな」と納得した。軽やかに、言いたいことだけ言って出て行った。彼にぴったりだ。

忠勝:お待ちを!

昌山:よいよい構うな、わしは将軍だ。(家康と秀吉のいる部屋に入ってくる)おう、また来たぞ大納言。太閤殿下も一緒だと聞いてな。3人でやろうではないか。

忠勝:今度にしてくだされ。

昌山:1杯だけじゃ。将軍だった頃はな、この世の一番高い山のてっぺんに立ってるようなもんでな、下々の者がよ~く見えた。何もかも分かっておった。そう、思い込んでおった。(秀吉の顔色が変わる)だが、実のところは全く逆でな。霞がかって何も見えとらん。周りが良いことしか言わんからじゃ。自分はそうはならん。そう思っておっても、なるんじゃ。遠慮なく厳しいことを言ってくれる者がおって、どれだけ助かったか。てっぺんは独りぼっちじゃ。信用する者を間違えてはならんのう。・・・さて、伊達のところに行くか。あいつは酒が強いからの。

 この義昭に厳しいことを言ってくれたのは誰だったのだろう。出てこなかった細川藤孝か?「麒麟がくる」の明智十兵衛光秀だったなら、確かに厳しいことも言っただろう。でも、この「どうする家康」の光秀だと、ぜーんぜんそんなことは無さそう。

 古田新太の昌山が、光秀や信長を振り返るセリフは今後あるのかな。どう死んでいった彼らを評するのか、聞いてみたいものだ。

 さて、義昭(昌山)が一瞬の嵐のように去り、毒気が完全に抜かれた秀吉は家康に「おめえさんはええのう、わしには誰もおらんかった」云々と言い出した。そして「自分が本当は何が欲しかったんだか」分からずに欲望の塊になったという母の最期の言葉に思いを馳せ、家康に「わしを見捨てるなよ」と一言。黙ってうなずく家康。

 この後のシーンで秀吉は茶々に京に帰るように告げ、「殿下と一緒に唐に渡るのでは?」「茶々は、殿下のおそばにいとうございます」と詰め寄られて泣かれても秀吉の決意は変わらなかった。

 これで茶々は完全敗北かと思われたが、終わり際で逆転満塁ホームランをかっ飛ばした。皆が無理だと思っていたこと=再度の妊娠を果たしたのだった。これで秀吉は理性のネジがぶっ飛んだ。

 まさに傾城の女狐・茶々。次回、カオスを遺して秀吉がこの世を去るとすると、今度は三成が茶々に翻弄される番だ。この純情っぽい三成だと、ひとひねりだろうな。既に朝鮮出兵で大陸に渡り、疲れ切って帰国していたやつれっぷりが見事、気の毒だったのに、三成も大変だ。

 昨年は「全部大泉のせい」だったけれど、今年の今後は「全部茶々のせい」で朝鮮出兵も続き、関が原も大坂の陣も引き起こされる事になりそうだ。となると、家康の防波堤としての阿茶局の存在は大きくなっていくね。

服部半蔵の出番がまだあった

 前回、大久保忠世(1594年没)もそうだけれど、史実的にそろそろ亡くなる服部半蔵(1596年没、酒井忠次と同じ)の見せ場の回でもあったのかなと書いたところ、今回もまだ文禄の役(1592年~93年)の頃の話で、山田孝之の半蔵が大鼠とともに活躍した。

 彼らは、実際に朝鮮半島に出兵している家中の、現地とのやり取りの手紙等を潜入して入手し、現状を家康が把握することに貢献した。明の助けを得た朝鮮が反転攻勢、水軍がやられ補給が途絶え、現地の寒さにもやられ、日の本の国の軍は苦戦していた。

 肥前名護屋には重臣が本多忠勝ぐらいしか来ていないらしく、本多正信も姿が見えない。オープニングにも榊原康政や井伊直政ら最近の常連の名前が無かったから寂しいものだ・・・と思ったところ、タイトルロゴ明けにドーンと表示されたのが大鼠・松本まりか。そこに来るか~と期待が湧いた。

 大鼠を呼ぶとき、半蔵は指笛がなかなか鳴らせなくて、結局「おい」と呼んだら「呼んだか?」と大鼠登場。半蔵は相変わらずの面白担当だ。今後、山田孝之がいなくなったら面白はどうするんだろう。

 そういうドラマの作りもあるが、後述するが、今回見返した「真田太平記」との忍びのノリの違いよ。「どう家」では明るく面白く、大して苦労もしていないように見えてしまう忍び達。「真田丸」でも佐助を演じたのが藤井隆だったので、完全に面白担当だった。忍びは自由だから面白担当にしやすいかな。他方、「真田太平記」では暗く重く痛そうでしぶとい戦いを、主のために忍び達が続け、命を無駄に落としていっていた。

 忍びは人とも思われない、と言ってみても、「どう家」では、家康が忍びにも思いやりがある行動をする設定なので、あんなに明るく家康と話せてたじゃん、と思ってしまう。「真田丸」「真田太平記」では、「あの御方は人扱いしてくれる」と喜ぶ忍び達だが、あくまで控え目だ。ドラマを見比べてみると面白いものだ。

 次回は酒井忠次の終わりの回で、たっぷりと忠次の見せ場があるようだ。ということは、同年に死ぬからには服部半蔵も華々しい終わりが描かれるか。そして慶長の役が始まり、秀吉の死。しっかり見届けたい。

「瓜売り」比べ

 さて、こんなことに注目したのは私だけかもしれないが、肥前名護屋城で退屈しのぎに秀吉が催した遊びの瓜売りの謡いが気になってしまった。はっきりと耳に残っている「真田丸」のものとは明らかに違った。

  • 真田丸:味良しの瓜 召されそうらえ 召されそうらえ
  • どうする家康:味良しのう~りうり 召され 召され 召されそうらえ、 味良しのう~りうり あじか かわし 召されそうらえ
  • 真田太平記:瓜よ瓜 味良しの瓜を 召されそうらえ

 思いついて「真田太平記」の録画も引っ張り出して見てみた。第15回「暗闘忍びの群れ」の回で、長門裕之演じる秀吉が謡っていた。

 今回の「どうする家康」では、異国人の笛の演奏付きで家康の「あじか売り」も輪に加わり、皆でどんちゃん騒ぎをする体で「味良しのう~りうり」が唄われていた。途中の「あじかかわし」はどういう意味だろう。あじか(ざる)に攫われないうちにお召し上がりを、ということか。

 期待の佐藤浩市の真田昌幸はここでは登場してこなかったが、彼の扮装は何だったのだろう。

 「真田丸」第26回のその名も「瓜売」では、秀吉お声がかりの「やつし比べ」で、秀吉と、同じ瓜売りでバッティングしてしまって悩む草刈正雄の真田昌幸が、同じ節回しを別々に謡っていた。(もちろん優勝は秀吉。昌幸は秀吉を憚って「急な病により」当日欠席、忍びの佐助に教わっての瓜売り練習がムダになった。危篤の母・トリの枕元で披露しても「うるさい」で終わった。)

 各番組を作る側としては、少しでも節回しに変化をつけ差別化しようとしたのかなあ・・・要らない差別化だ。「どう家」バージョンは、どうもうるさい。「真田丸」の方が自然で、軍配を上げたい。

 ちなみにタヌキ比べをすると、

  • 「真田丸」の内野聖陽演じる家康は、太って出っ張ったお腹をわざわざ出して見せての熱演で、いかにもタヌキ親父だった。役のために太ったんだろう。
  • 「真田太平記」の中村梅之助は、最初からタヌキ親父のイメージどんぴしゃり、そのまま家康であるかのよう。しかし50歳にも見えず、もっと老けて見える。
  • 「どう家」松潤はどうしても小顔で若く姿も細く美しく、タヌキと呼ぶには未だかなり躊躇がある。
家康は自分に「腹を召す」?

 瓜売りの「召されそうらえ」でも出てきた「召す」という言葉。重要なシーンで家康の口から出てきた時、ちょっと面食らった。どうした家康!

 一瞬何を言ったのかと思って確認したら、家康は「腹を召しまする」と自分に尊敬語を使っていたのだった。えええー、そんなバカな。腹を切るでいいじゃんね。

 「お腹を召されませ」「腹を召されたそうな」と他人の話なら「腹を召す」で当然わかる。けれど、今回のセリフには「?」だ。それとも、切腹という行為は武将として尊敬すべき特別なものだから自らに対しても「召す」の言い回しを使ってもOKという使用法でも存在するのか?

 そんな話、聞いたこと無い。誰か、国語の得意な人の解説が無いかな。

石田三成:嵐が多く海が荒れる時節に差し掛かります。海が静まるのを待ってから、殿下には悠々と御渡りいただくのがよろしいのではないかと。

家康:殿下はこの日の本には無くてはならぬ御方。万が一があればまた天下は乱れましょう。どうかお考え直しを。

侍女たち:茶々様!

茶々:(いきなり入ってきて)我的名子是茶茶!我が名は茶々である。ウフフフ。

(略)

秀吉:茶々、少し外しておれ。のう?(茶々、不服そうに家康に一瞥をくれてから廊下に出る。立ち止まり聞き耳を立てている)

家康:殿下。差し出がましいことを申し上げます。若君様の事、心よりお悔やみ申し上げます。茶々様の御心を思えば、その悲しみいかばかりか。されど、それと政は別の事。

秀吉:あ~大納言。そなたは余が茶々を慰めるためにこの戦をしているとでも申すか?アハハハハ。余計なお世話じゃ。(膳をひっくり返す。その音で三成が驚き、茶々が逃げる)おめえが口出しすることではねえ。余は日の本の民の為、明・朝鮮の民のために唐を斬り従えるんじゃ!(立ち上がって出て行こうとする)

三成:殿下!(先回りして廊下へ)殿下に先んじてこの三成と(大谷)刑部、そして増田長盛が朝鮮へ奉行として海を渡り、じきじきに指図をいたしまする!そして御座所を設け・・・。

秀吉:どけ!(三成を蹴り飛ばす)

家康:お待ちくだされ、殿下。(廊下に脇差を差し出し、通せんぼして座る)どうしても参られるのであれば、この家康、ここで腹を召しまする!殿下のお代わりは殿下しかおりませぬゆえ。

秀吉:(暫し考え、無言で立ち去る。家康と三成が揃って頭を下げる)

三成:徳川殿・・・我らの留守を、よろしくお頼み申し上げまする。

家康:御武運を。

 鶴松を亡くした直後、秀吉の「次は何を手に入れようかのう」で既にビビっていた三成。秀吉が間違ったら止めると言ったじゃないか・・・ということで、家康と二人がかりで秀吉の朝鮮半島への渡航を何としても止めるという、とてもいい見せ場だった。

 逸話によれば、実際の浅野長政が担った役割を受け継いだような家康の決死の言葉だった(浅野長政 - Wikipedia)。リアルの家康は、ここまで積極的に秀吉を止めていたのだろうか?

 浅野長政は「おんな太閤記」では尾藤イサオが気の弱い感じで演じていたと思う。秀吉正室の「ねね」の妹の「やや」と結婚しており、秀吉とは相婿同士だ。口の立つ浅茅陽子のややに完全にやり込められていたおとなしめな夫、秀吉にも相婿というよりも従順な家来だった。

 今作にもちゃんと浅野長政はいた。「おんな太閤記」の長政よりは重々しい。「どうかしておる!正気の沙汰とは思えませぬ。バカげた戦じゃ。殿下はどうかされてしまわれた。(つまみ出されながら)殿下は狐に取り付かれておる!狐に取り付かれておるんじゃ。もう昔の殿下ではのうなってしもうたわ!」と、一同の前で叫んでいた。

 義理とはいえ弟、秀長亡き後には唯一の存在だったはず。仲さんがよそに儲けたか、惨めに処分された秀吉のかわいそうな弟妹の話はなかなか大河ドラマでは出てこない。

 この長政の役者さん、どこかで見た。長政は旭姫に付き従って浜松に行ったはず。そこで出てきていたろうか。

 長政は、秀吉と姻戚であり長い付き合いだからこそ、身内の責任を感じていただろう。ドラマでは「浅野殿にはよく言って聞かせます。ここは家康にお預けくださいますよう」と秀吉をなだめ長政を守る側に回った家康にポイントが入った。

 しかし、後には家康も長政に従うか。寧々を含め、入れ代わり立ち代わり、秀吉を止めようとした人たちはいたんだろう。でも、結局止めきれない。ドラマでは戦を煽る滅びの女狐も存在するから。

 権力者が独断でする戦争は本当に迷惑だ。今のロシアでも、どれだけの人たちがプーチンを止めようとして処分されていったのだろう。現代になっていても、秀吉のように彼が死ぬまで、ロシアは戦争を止められなさそうだ。

 それに、プーチンが死んだ時点では既にお隣中国がロシアにつられて戦に足を踏み入れ、引き返せなくなっていそうなのが怖い。

 そうなったら、日本で大河ドラマどころでもなくなる。楽しむのは今のうちだ。

(敬称略)