黒猫の額:ペットロス日記

息子は18歳7か月で虹の橋を渡りました。大河ドラマが好き。

【光る君へ】#3 「謎の男」は「まんぷく」塩軍団の彼!「どう家」に続いて大河出演おめでとう~

まひろと父・為時との緊張関係は続く

 2024年NHK大河ドラマ「光る君へ」第3回「謎の男」が1/21に放送された。毎回、と言ってもまだ3回だけど、テーマ音楽を聞くたびに素晴らしくてため息が出る。

 かのショパンの名手・反田恭平さんが弾くピアノの、ヒラヒラと舞ってホロホロと崩れ落ちていくような表現が軽やかに凄すぎるし、朝川朋之さんのハープの波状攻撃にも息を飲む。そして、後半の感情を揺さぶる力強さ。何回も聴きたい。

 音楽担当の冬野ユミさんって朝ドラ「スカーレット」の人か・・・「スカーレット」も面白かった。深いチェロ(たぶん)の音が思い出される。大河ドラマのテーマ曲でハズレって本当に無い。選ばれた作曲家が渾身の力を注ぎ込むからだろう。今年も例に漏れず、素晴らしいの一言だ。

 では、第3回のあらすじを公式サイトから引用させていただく。

(3)謎の男

初回放送日: 2024年1月21日

 放免に捕えられた道長(柄本佑)を案ずるまひろ(吉高由里子)。為時(岸谷五朗)に謹慎を強いられ、成すすべもない。ある日、まひろは為時から思わぬ依頼を受けることに。

 自分のせいで放免に捕らえられた道長(柄本佑)を心配するまひろ(吉高由里子)。しかし、父の為時(岸谷五朗)に謹慎を強いられたため、ただ案じることしかできない。兼家(段田安則)の指示で道兼(玉置玲央)は女官を使って帝の食事に毒を仕込み、円融天皇(坂東巳之助)は急激に体が弱っていく。政権を掌握するために二の手を打ちたい兼家は、ライバルの左大臣家の動向を探るため、為時を利用してまひろを間者として送り込む。((3)謎の男 - 大河ドラマ「光る君へ」 - NHK

 まひろが間者として左大臣家に送り込まれた件。まひろは当初、心底嬉しかっただろうなあ、父・為時が「お前は賢い。身分など乗り越える才がある」と自分の才能を認めてくれ、「安心して楽しんでくるがいい」と、自分のことを思って左大臣家の源倫子(黒木華)のサロンに送り出してくれたと思っていたみたいだから。

 一応まひろは下級とはいえ貴族の娘だから、本当は街を駆け回ったりできる訳もない。父と決裂して家に居にくくなって外で代筆仕事なんかこっそりやってたぐらいだし、じっと家に籠っていては精神的に辛いばかりだっただろう。

 で、倫子のサロンに行ってみたら、楽しくて、場の空気を読むのを忘れるほど偏つぎ遊びに熱中したと。和歌の素養のある赤染衛門の存在に刺激され、ちょうどサロンで紹介されていた和歌;

秋の夜も名のみなりけり 逢ふといへば ことぞともなく 明けぬるものを(小野小町、古今和歌集)

・・・の「秋の夜長が長いなんて名前ばっかり」と言いたい気持ちと同様に、サロンでは時間があっという間に短く感じたんじゃないか。

 それなのに。ガッカリもきっとひとしお、父親は自分の気持ちを慮って外出を勧めたのではなく、期待された役目はまさかの間者。でも、そこで反抗したらもうサロンにも行けなくなって外出もできなくなる。少し大人になってグッと堪えたんだろう。

まひろ:ただいま戻りました。

為時:土御門殿はいかがであった?

まひろ:良い時を過ごしました。

為時:まことか。倫子様という左大臣様の一の姫はどういう御方であった?

まひろ:今まで、あのような御方とは会ったことがありません。

為時:それはどういうことだ?

まひろ:よくお笑いになる方で姫君たちにも慕われておられました。

為時:婿を取る話などは出なかったか?

まひろ:・・・いえ。(不審に思う)

為時:左大臣の姫君はお年頃と聞いている。東宮の后となさってもおかしくない。

まひろ:なぜ、そのようなことをおっしゃるのですか?(為時、一瞬まひろを見る)・・・兼家様に何か頼まれたのですか?・・・私を間者にしろと。

為時:(目を伏せて)お前が外に出たがっていたのではないか。それに、高貴な方とお近づきになっておいて損はない。嫌なら行かなくていい。(視線を合わせず横を向いてしまう)

まひろ:はい、余計なことを申しました。(為時がまひろを見る)倫子様のお気に入りになれるよう努めます。

為時:うん。

まひろ:(礼をして退出、亡き母の琵琶の置いてある部屋=自室?で泣くのを堪える)

 母の遺品の琵琶を見やったまひろ。亡くなった母が自分にくれた愛情と、父が自分を利用しようとする事実とを比べたら、涙も出ようというものだ。緊張の父娘関係は続くが、とはいえ、まひろも父の立場を理解し自分の得を取る賢さがある。

 今回、為時にも変化が見られた。世渡り上手の宣孝ほどではないにせよ、学者一辺倒の考え方から、まひろを左大臣家に間者として送り込むことを考えついて兼家に進言する程になった。

 また、家人が逃げ出すほどの困窮にあえいでいた初回と違い、為時家の経済は上向いたのか、今回は家人も下女も数人いるようになった。兼家からの禄で何かと賄えるようになったのだろう。

 家人が多くいては、まひろも以前のように自由に逃げ出すのは難しい。まあ、まひろを外に出すための設定だったのかなと思うけれど、ちょっと貧乏過ぎたもんね。

別れも出会いもスローモーション🎵

 前回の終わり~今回の冒頭で、逃げていた「謎の男(直秀・毎熊克哉)」と見間違われて三郎(道長)が放免という元罪人の岡っ引きみたいなのに捕まった。その原因を作ったのは、テキトーに放免を案内したまひろだった。

 「お前も盗賊の仲間か」と疑われて、「逃げていたのはその人じゃありません!」と言い募れなくなったまひろだったけれど、何だろうあれ。この時代の人は超能力者なのか・・・連行される三郎の「心の声」が、まひろにもちゃんと届き、まひろが突然黙った。

放免:ほら、行け!

まひろ:やめて!

三郎(道長):(心の声)来るな!俺は大丈夫だ。(放免に向かって)行こう。

放免:何様だ!

 心の声の部分はスローモーション。ふたりの心が、目を交わしただけで通じ合ったってことなのかな・・・ちょいと無理がある。

 道長は、当然ながら父・兼家の右大臣の権力を発動して無事にご帰還。それを直秀も陰から見届け、ちゃんとまひろに「あいつは無事だ」と報告に来た。

 直秀は「見るな。声を上げるな、危害は加えぬ」と告げてから一方的に道長の消息を伝え、この時点では身元は明かさなかった。だから、今回の終わりで道長と再会できたまひろは、直秀が散楽一座のメンバーと分かってダブルで驚いていた。

 あの時、直秀はうっかりまひろと道長にそれぞれ駆け寄っちゃってキューピットになっちゃったのかな?彼も驚いていたもんね。

 ちなみに、その時もスローモーション。つい中森明菜の歌声「🎵出会いは~スローモーション~」が頭の中で響いてしまった。

 この直秀、今後はまひろと道長をつなぐ存在になっていくのか?まひろも道長も、そうそう自由に会えないのだろう。このドラマオリジナルキャラの直秀が、どう物語の中で動いていくのか注目したい。とりあえず、次回予告だとまひろの心を弄ぶなと道長に言うみたいだけど。

 演じている中の人・毎熊克哉は、昨年「どうする家康」で汚れ役の大岡弥四郎に抜擢されていた、「まんぷく」塩軍団の人。あの少し暗めな表情がこういった役にはまるんだろうな。2年連続の大河ドラマ出演、大したものだ。おめでとう!

toyamona.hatenablog.com

兼家も詮子も、下々に関心を向ける道長を理解しない

 さて、兼家は安定の権力欲の権化のまま、詮子が産んだ孫の親王を早く東宮にするために円融天皇の譲位を早めようと画策中だ。

 父の指示で策謀に手を染めている次男の道兼には、天皇に薬を盛らせた陪膳の女房が吐かねば証拠は無いから、当分大切にしておけと言う。「お前に守られておると思えば口は割らぬ」と。

 そして「一族の命運はお前にかかっておる。頼んだぞ、道兼」と言った。その時の道兼の嬉しそうな顔!こんな、人を人とも思わぬ、息子を駒としか思わぬ父の愛を乞い、操られて哀れだ。その道兼に使われる陪膳女房も。

 家族であっても、物事を上へと上昇するためにしか考えない強烈な兼家。ここまでくるとむしろ潔い。利用できるかできないかの彼の物差しは、強固な身分の上下意識が基礎にある。

 道長が釈放された時の兼家との会話はこうだった。

藤原兼家:お前は右大臣の息子だ。放免なぞを相手にする身分ではない。

道長:相手にしておりませぬ。

兼家:では、なぜ捕らえられた。

道長:さあ?

兼家:もし、わしが屋敷におらねばお前は獄でなぶり殺されていたやもしれぬぞ。

道長:屋敷におられて、ようございました。

兼家:大体、その格好は何だ。

道長:これは・・・民に紛れて下々の暮らしを・・・。

兼家:民の暮らしなぞ知らんで良い!なまじ知れば、思い切った政は出来ぬ。わしにとっても一族にとっても今がどういう時か、お前も分かっておろう。

道長:ん~分かっておらぬやもしれませぬな。

兼家:何だと?!分らぬのか。詮子は帝に嫌われておる。その上、お前までが厄介ごとを起こせばどうなる。我が一族だけでなく、懐仁親王様にまで傷がつくことになるのだぞ。今は、1つの過ちもあってはならぬ。一刻も早く懐仁親王様を東宮にし、帝になし奉らねばならぬのだ。わしとて、そうでなければ摂政になれぬ。

道長:父上は既に右大臣。これ以上、偉くおなりにならずとも。

兼家:上を目指すことは我が一族の宿命である!お前もそのことは肝に銘じよ。

道長:私は三男ですので。

兼家:わしも三男だ!ゆえに三男のお前には望みを懸けたが、間違いであったようだな。

道長:あっ。お顔に虫が・・・。

兼家:(慌てて払う。口の端で笑う道長)・・・うつけ者!

 上を目指すことにしか目を向けられない父と、下々にも関心を向けている変わった息子。兼家は怒って出ていくが、この後、話を聞いていた詮子は「面白いわね、道長って」と笑う。

 道長と親しいこの姉も、言うことは父と変わりない。従者の百舌彦を庇おうとした道長に「あの従者はお前の秘密を知っているのね?」と問うのだ。秘密を知られている=利用価値がある従者だから弟が庇おうとしていると彼女は考えたのだろう。

 そして詮子は「隠してもダメよ、道長は下々の女子に懸想している」「身分の卑しい女なぞ所詮いっときの慰み者。早めに捨てておしまいなさい」と現代人が卒倒しそうな言葉を吐くのだ。

 道長はそれには構わず百舌彦を助けるように詮子に頼み、ひとりになって「待ってください!逃げていたのはその人じゃありません!」と言って駆け寄ったまひろの姿を思い出し、ほっこりしている。まひろも、捕らえられた道長を心配している。恋だねえ。

 この兼家一族の中では、今のところ道長は相当な変わり者だ。ドラマの中ではどのタイミングでどう変化し、権力を極めていくのだろうか。それとも兼家の考えには染まらず、このままで変わらないのか?興味が尽きない。

まひろ画伯

 今回、まひろの弟・太郎がお姉ちゃん思いなのが良く分かった。いくら何でも、あのまひろ画伯の描いた三郎の似顔絵と「身の丈6尺以上、名前は三郎」という情報だけでは、どう見ても人探しは無理だろう。

 それなのに、まひろに頼まれた三郎を本気になって探し、一応数人の候補者を屋敷に連れてきた。「歌はうまいけど絵は下手だな~」と嬉しそうに言いながら。

 絵は本人には似ても似つかないから、道長本人が乗る馬を引く従者の百舌彦に太郎が絵を見せても「さあ」と言われていたのは笑えた。

 太郎は、まひろが代筆業をやっていた雇われ主の絵師にも「何だよ恩知らず、姉上が歌の代筆をやったおかげで相当儲かったくせに!」と噛みついていた。可愛い弟だ。

 その太郎が、まひろに「貴族じゃないのかよ、はあ、まずいよそれ。釣り合わないでしょ」と言った。当時の厳しい身分の上下を、主人公たちの姉弟である詮子と太郎が、視聴者に教えてくれている。

 太郎はさらに「姉上の三郎?幻じゃないの?鬼とか悪霊とか怨霊とかさ」とまひろに聞いた。その後に、まひろとはいつも関係なく存在しているようで実は物語世界をコントロールしているような、怪しげな安倍晴明が出てくる。話運びがうまくて感心するが・・・うさんくさい安倍晴明だ。

道長らの「雨夜の品定め」

 藤原公任、藤原斉信と道長が宿直をする場面。これは「光る君へ」版の源氏物語「雨夜の品定め」がキターと身構えた。元々がキラキラしている町田啓太の公任はともかく、はんにゃ金田の上級貴族っぷりが意外なほどぴったりで、キャスティングは正解だ。

 が、シチュエーションはそうだったけど、公任のモテっぷりがわかったぐらいで夕顔らしい話も出ず、大した品定めにはならなかったね。現代のドラマでは女の人の品評会みたいな話はコンプライアンス的に難しいか。

 そして、道長の懐から出てきた手紙の中身が明かされなかったので、誰から?何の手紙?と気になった。もしかしたら、ただの懸想文じゃないのでは?謎だ。

 道長は自分で「俺のように字が下手で歌も下手だと困るな」と言っていた。確かに書いている場面では、独特な字だった。世界遺産(!)にもなっているという道長の実際の字(それが「御堂関白記」かな)に似せて書くそうだから、大変だ。しかし、字も歌もうまいまひろと、更なるつながりが後々期待できそうな話だ。

助かる解説「かしまし歴史チャンネル」

 上級貴族の公達が、休日でも関白の屋敷で学んでいたという漢籍。「国家を率いていく者としての研鑽を積む」とナレーションが入った場面で、孟子の「人に忍びざるの心有り」が出てきた。公任がそらんじていたのは、字幕によると、こうだった。

藤原公任:人皆 人に忍びざるの心有りと謂う所以の者は、今人たちまち孺子の将に井に入らんとするを見れば、皆怵惕(じゅってき) 惻隠の心有り。交(まじわり)を孺子の父母に内るる所以に非ざるなり。誉を郷党 朋友に要むる所以に非ざるなり。(略)辞譲の心無きは 人に非ざるなり。是非の心無きは 人に非ざるなり。

 小さな子が井戸に入ろうとするのを見れば、人はとっさに助けるものだという話らしい。別にその子の父母が知り合いだとか、みんなに褒められるとか関係ないと・・・。字幕を見ればやっとこさ内容が推測できるが、とても聞き取れない。

 「光る君へ」の公式サイトでは、平安時代を扱うとあって説明することがいつもの大河ドラマよりも多くて大変だろうけれど、平安の知識をそれなりに説明してくれている。が、それでも足りない点もある。

 そこで!頼りになるのがこちらのYouTube動画だ。私が大ファンのきりゅうさんが、付け焼刃ではない、深い知識を楽しく分かりやすく披露してくれている。この孟子の「人に忍びざるの心有り」についても、説明があった。

youtu.be

 この「かしまし歴史チャンネル」を放送後に見て、なるほど!と理解して、またドラマの録画を見直すコースがとても楽しい。言い間違えもしょっちゅうあるけれど、それもご愛敬。きりゅうさんの博識には驚かされるばかりだ。

 「平安でわからないから」といったドラマ脱落組を引き留め、むしろファンを増やしていそう。NHKはきりゅうさんのサポートに感謝すべきだろうなあ。

(基本は敬称略)